許して、2Vのタツベイあげるから(
フィールド全域に降り注ぐりゅうせいぐんは回避のしようがないほどにピッチリと、しかしラティオスにはぎりぎり当たらない位置に降り注いだ。天から落ちる青い炎を纏った隕石はどうやっても避けようがないので、
自分に当たる隕石を一つ、使わない左手で勢いを殺し、そうして右足でラティオスに向かって蹴り出した。左手はこの試合の間使い物にならなくなってしまったが、今、この時においてはその痛みを意地で押さえ込み、隕石が命中してふらりとたたらを踏んだラティオスに肉薄し、
左手の分の怒りを込めた“げきりん”をレッドの指示で急所に命中させた。
右腕で自分のストレスをそのままぶつけるように、あるいは殺意の求めるままに、赤と青のオーラを纏った拳をラティオスの人中に叩き込む。鼻と口の間にある窪みがそうだ、ともあれ、ラティオスにげきりんを打ち込んで、
──そうして気合いでHPを残したラティオスに何の慈悲も容赦もなく、確実に仕留めるためにみぞおちに拳を叩き込む。こふ、とラティオスが肺に溜まった息を絞り出すように噴出しながら、それでも痛みに耐え、無理やり意識を繋ぎ止めて此方に右手を向ける。わざわざ当たってやる義務も存在しないので、右手を掴んで上に逸らし、そこから放たれたりゅうのはどうが砲筒から放たれたように、一直線に空へと飛んで、そして雲を消し飛ばした。
そしてそこで力が尽きたのか、がくりと意識を失ってラティオスが倒れる。それを慌てて抱え、仰向けに地面に寝かせてやると、ラティオスに向かって一条の赤い光が進んだ。ラティオスを赤に染め上げ、光に変化し、それをモンスターボールの中に取り込んで、
「あー、負けたなあ……惜しかったなあ!」
「それはそうと田舎とはいえ町中でりゅうせいぐんをぶっ放すお前はなかなかにぶっ飛んでることが分かった」
「へへ──そんな褒めんなよ! 潰したくなるだろ!」
「褒めてないし正直言って内心引いてる」
そういって嘆息したレッドは左腕を押さえる手を離し、ボールを此方に向ける。グリーンがへへへ、と笑いながら、
「じゃあ回復したあと反省会開始な! じーちゃんの研究所で!」
「そうだね。お互いから見た反省点を──博士の研究所で」
こいつら揃いも揃ってクソだった。オーキド博士に迷惑を掛ける気満々な二人を見て、ボールの中に吸い込まれていくのだった。
◇
オーキド博士からテーブルを勝ち取った二人が、それの正面から見て右側に対面して座り、そうしてその横に二人──戦いを通じて仲良くなったラティオスと自分が座る。ラティオスが笑いながらまた戦おうね、と言って、それに笑顔付きでそうね、と返した。どうやら彼女は戦闘狂の気があるらしく、今のやり取りで戦闘の誘いはかれこれ三十九回になる。目に闘争の色を映している彼女を見て、ドラゴンタイプはやはり生来のプライドが強いんだな──そんなことを思う。
自分も同じ口だ──ケンタロスを相手に、初代ルールという制約が付いたということを抜きにして、覇者たる、王者たるドラゴンの自分が勝てない、ピカチュウに譲るしかない──それを理解して、ピカチュウに譲って、プライドとの葛藤の狭間に今は居る。
けど、だからこそ、その生まれ持った種族値にあぐらをかかずに、慢心も油断も一切捨てて、勝つために研鑚出来るのだ──プライドというものは決して悪いものではない。それを実感しつつ、一ヶ月間、ラティオスとの戦闘をし続けるだろうなと、漠然としたイメージでだがそう思った。
一ヶ月後、レッドとグリーンはここを離れるのだから。
とそこで、グリーンが切り出した。
「じゃあまずはレッドの欠点から挙げていくが──まあなんだ、全体的にゴリ押し感が否めない」
「うん、それは俺も思ってた──高いポケモンの能力と、その本能に任せて戦ってる感はあった」
そうだよな、と呟いてグリーンは言う。
「全体的に読みが荒い、指示も甘い──咄嗟の事態に反応し切れていない」
「そうなんだよねぇ──……」
とはいえ、トレーナーになって二ヶ月、かなりレッドの成長は速めだと思うのだが、グリーンにとっては違うようで、
「リンクも多用しすぎだ、お前りゅうせいぐんはじいた時もリンク繋げてたろ? ──……戦闘バカでもそれはせんわぁ!!」
「うん、私もそう思ったわね」
「残念だけどレッド君、ボクには擁護出来ないよ……」
「え゙、うそ、あれ普通じゃないの」
「お前はポケモントレーナーをなんだと思ってるんだ……」
「キチガイ」
「否定はしない」
グリーンも思い出すように天を眺め、そうして遠いホウエン地方にだろうか、思いを馳せる。ふふっ、と笑って、ああ──、と口から声が漏れ出ていた。ラティオスはそんなトレーナーの醜態を笑って、此方に同意を求めてくる。面白いことには全くの同感だったが、ギリギリ笑いを押し込めてラティオスに注意する。
「こら……っ、笑っちゃダメでしょうが……っっっ……」
「おい、笑ってんぞ」
しかしまあ、とグリーンが呟いて、
「まさか笑ってぜったいれいど必中にしてくるとは思わなかったけどな……!!」
「あー……あれはキツかったねぇ……ノーガードのカイリキーで無理やりじわれねじ込んで倒したっけ……」
「ジムリーダーって怖い……!!」
未だ九歳の子供相手に全力を出す大人がそこにはあった。
──まあ。
──そんな感じで、時間は過ぎていった。
技概要とか載せときますね
・さついのはどう
簡単に次の攻撃を必中にさせる技。
・レールガン
威力180 追い打ち効果の付与付きだから交代する敵は基本ワンパン。公式戦出場が遠ざかった理由の一つ。
・むげんふぶき
簡単にふぶき×5。初代ルールの中で落ちない敵はいない……!! とグリーンが自信を持っていた技。ピカチュウに真っ向から粉砕された。
・りゅうのほうげき
威力100。りゅうのはどうの範囲を広くして威力を上げた技。最終的にはドラゴンブレイカーに(
このくらいかな。こう書いてみるとグリーン側のむげんふぶきの威力が酷い……!!
あ、ケンタロスのこうげきが最大まで上がったのはいかりのつぼの変種だと思ってください。
さて、次回はついにーーー