萌えもんは鹿バージョンをやってました。グラフィックの違いもあるので、取りあえずはこれをいっておきます。
咄嗟にその場から飛びのき、そして逃げの体制を取りながら相手を見る。
グラエナだった。黒と灰色の毛並みで柔らかそうなそのわんわんお、もしくはお父さんは鋭い視線で此方をいかくしながら、ぐるる、と獰猛にうめいた。
戦うのは危険である。明確な数値は分からないものの、現在感覚的に分かっているのは前の自分の体のほうが強かった、という事実であった。
現実世界。わざの制限はないだろう。しかし、経験が足りない。いくらタマゴ技を全部使えていたところで圧倒的レベルの差で殺されてしまうだろう。能力的に見ても差がある。いくら舞った所で、撃破は難しい。よって、今取る行動は一つきり。
──飛び込め!
飛びかかってきたグラエナを回避するため、川の中に飛び込んでじっと待つ。心臓が荒く鳴るなか、申し訳程度に舞を積む。控えめにやらないと水ポケを呼び出して食われるかもだから、ゆっくりゆっくりと積んでいく。
そうして、数分舞を積み、完全強化されたことを感じると、水の中から飛び上がる。グラエナは居ない。安堵が心のなかを駆け、そしてそれを抑えこんだ。
強くならないと、死ぬ。
それを明確に分からされた。
◇
駆ける。駆けて、ドラゴンクローを放ち、そして逃げる。圧倒的練度の差。それを補うために最大まで積んだ後、ちまちまとヒットアンドアウェイ戦法で敵を叩いていく。こうでもしていないと、確実にレベルの差で負ける。タイプ一致の1.5倍増加、これを生かして戦っていく。囲まれたら終わり。人生終了。いや、いまは人じゃないからなんだろうか。
一発目に遭遇したのがハピナスで助かった。人懐っこい笑みを浮かべて、こちらの体力を回復して死んだハピナスのことはきっと忘れない。疲労回復。体力全快。ついでに大量レベルアップ。一石三鳥である。
故に、こうして戦って、十分近くかけてようやく一体を倒せる状況には持っていけた。ありがとうハピナス。もう一体出てきてくれ。
再度ドラゴンクローが入る。それでようやく敵を倒せたことを実感し、そして再度上がるレベルとそれにより溜まる疲労感に膝を付いた。
「きっつ……」
おそらく今倒したやつはレベル三十クラス。ここにいるポケモンの中ではかなり弱い部類に入るであろう、そんなレベルでしかない。そんな程度のやつでも一方的に殴って、それを倒すのに十分掛かるというレベルである。
空を飛ぶにはまだまだ遠い。
「ハァアアアアアピィイイイイイヌェエエエエエスゥウウウウ!!」
疲弊した俺の下に奇声を上げてハピナスがどっすどっすとやってくる。そうして願いを託して、疲労を回復させて力尽きた。
何をやりたいのか分からなかったが、再度レベルが上がったことは自覚出来た。けど、それでも進化にはまだまだ遠い。トレーナー補正のないハピナスレベル100を六体倒してようやく進化するというレベルであろうか。ともあれ、疲れが一切無くなった体を起こして、次の標的を探した。
◇
小さな体躯を生かして、巨大な奴の股下をくぐり抜け、そうしてそのまま逃亡するためににじりにじりと少しずつ後ろに下がって行く。
調子付いていた。順調すぎて怖いくらいに、さくさくとレベルは上がっていた。ハピナス二体のお陰で。
だから、そのまま調子付いて行こうとして、引っ掛けてしまった。
レベル100の萌えもんを。
黄土色の髪を背中辺りまで下げ、青い瞳を持ち、その背中には黄と青で彩られた翼があり、服は着ぐるみのような黄土色の竜の体を模したものを着ていた。
──カイリュー(LV100)だった。
さっきまでのやつとは桁が違う。さっきのが二桁で、こっちは三桁。
なぜレベル100と分かるかといえば、純粋に纏う殺意と戦意が段違いなのである。プレッシャー、であるのだろうか。さっきのが鉄だとすると、こっちはダイヤモンドである。マイクラではない。
ぶん、と無造作に振られたように見えて、その実全身の筋肉のバネを用いながら捻りを加えた、殺人的な拳が迫る。うひゃあ、と間抜けな声を上げながら、間一髪のところで回避し、そして軽い尻尾の振りに弾き飛ばされた。
「にゃっ!?」と悲鳴を上げながらそのまま吹き飛び、そして壁にぶつかる。ズン、と体に響く衝撃に意識を持っていかれそうになりながらなんとか立ち上がり、カイリューの方を気丈に睨んでみせる。しかし向こうは興味をなくしたのか。ふい、とへちを向いてそのままどこかへ飛んでいってしまった。
「いったぁ……」
涙目になりながら、それだけで済んだことに安堵する。全力でやられてしまえば、まず間違いなく胴体がパーンッてなってグチャア、ってなる。今回は運がよかった。カイリューの気まぐれで助かった。
けど、やられたままでいられるものじゃない。必ずやり返して、あのカイリューをぎゃふん、といわせてやる。
そう、固く決意した。
◇
ハピナスは現れなかった。仕方ないので洞窟の外に出て、傷を癒やす。
ドラゴンテール。便利であるだろうが、しかし使うには尻尾が短い。コモルーに進化すればもう少し長くなるのだろうが。
カイリューが自分をあしらうように使用した技だった。これ以上強くなれないが為の、戦闘の強制終了。あのカイリューはこうはなせいかくなのだろうか。能力補正は無しだった。
仰向けに寝転がりながら、これからの戦法を考える。今回のことでよく分かった。レベル100には遊ばれる程度の実力しかないことが。まあ、未だレベルは二十そこらだろうから当たり前のことなのだが。
当然、ここが現実だからターンなんてものはない。現実にそれがあったのなら本気でどうなってんだおい。プロレスじゃないのだから相手の攻撃を喰らう義務なんてないのだぞ。
日の光は優しく体を包み込む。草タイプじゃないが、こうごうせいをしている気分になってきた。体力回復するのだろうか。そのままじっとしているのは暇だが、寝ると襲われることは目に見えてるからそのままぼーっとしておく。移り変わる雲を眺めていると、触手が体を撫でた。ドククラゲだった。
触手に現在のロリボディとくればなかなかあれな発想が湧くのだが、それはともかくとしてドククラゲに視線を向けると目が合った。
数秒間の視線の交錯のあと、ドククラゲは何をするわけでもなく水に沈んでいった。何がしたかったのかよく分からないが、取りあえず当たりをつけるとするならば好奇心でちょっかいを出した、とかだろうか。
ぱしゃり、と水が跳ねた。何か、と目を向ければ、人型の少女がそこにいた。彼女はにっこりと笑うと、水から上がり、そうして横で自分と同じように仰向けになった。
「平和よねー」
「洞窟の中は魔窟となっていますよー」
「なにそれ」
彼女がくすくすと笑うと、ついつられて同じように笑ってしまう。そうしてそのまま空を眺める彼女を横目でみながら、白い肌だと思う。そうして空に視線を向ければ、雲が太陽を覆い隠した。
「あーあ、隠れちゃった」
「そうね、多分雨が降るわよ?」
此方の呟きに、彼女が返す。
しばらくして、ぽつりと雨が降った。
そのまま、しばらく仰向けでいた。
タツベイもコモルーもマンダもかわいい。擬人化絵やばい。かわいすぎて筋肉痛になった(関係なし)
それはそうとなんで最終進化のマンダでもあんな少女なんですかねえ……。かわいいからいいけど、フライゴンさんとの差がすごい。デビューは同じホウエンなのに、何が彼らを分けるのだろうか。種族値か。