今回は短めです。投稿が遅れたので手早くキリのいいところまで書きました
「な、ナナミさん……」
「おお、レッド君が珍しく敬語を使ったねー。──それで、何やってるのかな?」
そうして無表情で頭に青筋を浮かべた女性──ナナミに、レッドが何かを言おうと唇を震わせて、口をつぐんで、そして口を開く。その口からはあー、やらいー、やらと言葉にならないうめきが漏れていた。
ナナミがいった。
「いや、ね。本当は全部聞いてたんだけど。だから私は彼女を捕まえることには何も言わないよ? ……私が怒ってるのは、何で私にそれを言わなかったのか」
ヤバい、ぶちギレてらっしゃる。
思わず敬語になってしまいそうなほど見事な、能面のような無表情。自然体故に細められた瞳がレッドを射抜いて、そうして関係のない此方もびく、と震えた。
──何あれこわい。
「え、と。……いや、ナナミさんは、反対するんじゃないかと、思いまして」
「へえ」
そうして足を動かすことなくレッドの前に近付いたナナミさんを見て、飛びついて来たピカチュウの背中に顔をうずめながら上目で彼女を見る。蒼白といっていいほど顔をレッドは青くして。
そうして、ナナミさんが動いた。
「──私はそこまで鬼じゃないわよぉおおおおおおッ!!」
見事な昇竜拳だった。それは、レッドの顔が天井にめり込むほどの。
ナナミさんの鋭い目が此方を射抜いた。石で壁を消し飛ばすピカチュウが怯えるほどのその眼光は、耐性のない、ピカチュウより弱い此方には到底耐えられる物ではなかった。意地で泣き出しそうな精神を抑え、ナナミさんに言った。
「あ、あの」
「ああ、大丈夫よ。すぐ抜け出すわ、レッド君なら。それよりちょっと待っててくれる? お爺ちゃんから許可証をぶん──貰ってくるから。あ、あと私の名前はナナミ。レッド君の幼なじみの姉よ」
「は、はい、──私は、えと、ボーマンダって種族の……」
「へえ。そんな種族がいるんだあ。カントーやジョウトには居ないわよね。ホウエン出身?」
「は、はい。それで、えと、名前はどうなるんでしょう」
「敬語じゃなくていいわよ。名前は安直だけどソラ、とかどうかしらね。まあ、それはレッド君が決めるか。じゃあちょっとお爺ちゃんから許可証ぶん──貰ってくるね!」
そうして疾風のように足を動かさず去っていくナナミさん。ネタでマサラ人なんていうものがあったが案外冗談ではないのかもしれない。ともあれ、未だ天井でぷらーんするレッドを引き抜こうと、レッドの足を掴んで引っ張る。案外するっと抜けたレッドは、顎を押さえて冷蔵庫に向かっていった。
ピカチュウを撫でて一言。
「凄い人だったな……」
オーキド博士も苦労しているのだろう。そっと、静かに、世界最高峰の権威に向けて合掌した。
◇
拳に血を付けたナナミさんが戻ってきて。
その手に持つ学生証のような物を専用であろう札入れにぶち込んで、首掛けに繋いでレッドの首にそっと掛けた。氷のうで顎を冷やすのを止めたレッドが、ぽつりと呟く。
「マンダちゃんのニックネームどうしよう……」
「私個人としてはナナミさんが考えてくれたソラが一番しっくり来るんだけど。あんたはどうするの?」
「……ソラでいいか、本人が望んでるんだし。無駄に凝った名前とか痛々しいだけだし」
「レッド君も言うようになってきたね……年齢で言えばまだ九歳なのに」
「俺は成長が早いんで」
「ピー……?」
そういってピカチュウは此方を見る。それは、こっちにもっと若い人がいますよー、ということなのだろうか。分からないので言ってみた。
「私は生後五日よ」
そう言えばナナミさんがくすくすと笑って、さらりと言った。
「ソラちゃんはもう成長の見込みがなさそうね」
「最終進化しちゃったらしいしね……」
レッドが「じゃあ、」と切り出して、さっき渡したボールをぽんぽんと手で弄びながら。
「──そろそろ、といきましょうか」
そういって。
此方にそのボールを向けるレッドを見て、ついにこの時がやってきたか、と思う。
ピカチュウがわくわくと期待に鳴き。
「……、そんな気負う程のものでもないでしょうね」
笑い混じりにそう言って、モンスターボールに手を触れた。
◇
ピンク色の、年頃の女の子の部屋。
柔らかそうなベットが置かれ、机の上にはマイクがある。部屋一杯にぬいぐるみが散乱していて。
「…………はい?」
ここがモンスターボールの中だと気付くのに、数分を要した。
おうみんないいか今から叫ぶぞ、いくぞ、ロリマンダアアアアアア!!
はい。更新です。やろうと思えば、特に用事のない日は三話投稿いけそうです。
そして感想欄のみんなロリマンダへの愛が天限突破してるんだね
次回予告ってやってみたいけどめんどくさいからやらない。ちなみに現状最強はピカチュウです。理由は次回辺りにでもかけたらいいなあ……
帽子を食わえるロリマンダを想像して授業中死にました。