四ツ谷文太郎の幻想怪奇語   作:綾辻真

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時期的には幕間・弐の『二次会』中。四ツ谷が『怪談』を始める直前の出来事です。


『新・幻想郷縁起』

四ツ谷会館、その完成祝いの宴会はどこもかしこもワイワイと賑やかなものになっていた――。

好き勝手に騒ぐ妖怪たちを見ながら、そろそろ『怪談』の頃合か、と四ツ谷が考えていた時、稗田阿求が四ツ谷の元にやって来た。

 

「四ツ谷さん。どうも」

「阿求か。何だ?」

「はい、ちょっとこれを見ていただきたくて……」

 

そういて四ツ谷に差し出してきたのは、真新しい『幻想郷縁起』であった。

 

「そいつは、『幻想郷縁起』か?」

「ええ。それも、ついこの間できたばかりの最新版ですよ。この中には四ツ谷さんたちの事も記してありますので、一度目を通してもらおうかと」

「ほぅ、どれどれ……」

 

阿求が差し出して来た『幻想郷縁起』を受け取った四ツ谷は、(ページ)をパラパラとめくると、自分や金小僧、折り畳み入道が載っている所を探し出す。

そうして、自分の名前が載っている頁が眼に留まると同時に手も止める。

すると、四ツ谷はその頁を見てピクリとわずかに反応する。

何故ならそこには、以前から載っていた小傘の解説も改変されて記入されていたからだ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ×○×○×○×

 

 

 

 

名前:四ツ谷文太郎(よつやぶんたろう)

 

二つ名:『百奇(ひゃっき)の語り手』

職業:四ツ谷会館・館長

能力:『怪異を創る程度の能力』

人間友好度:高

危険度:低(ただし、場合によっては・高)

住んでいる所:人間の里

 

解説:元人間の怪異。かつては外の世界の住人であったが、怪異となって幻想入りする。怪談とそれで生まれる他者の悲鳴が大好きではあるが、基本人間に対しては決して害ある存在ではない。

しかし、彼の持つ『最恐の怪談』の聞き手に選ばれてしまったら最後、一生正気を失ってしまう。

紆余曲折を経て、八雲紫の手引きで四ツ谷会館の館長に就任する。

暇さえあれば、人間の里の子供たち相手に『怪談』を語っている。

怪異である事以外、普通の人間と変わらず、弾幕を撃つ事も、自力で空を飛ぶ事もできない(空を飛ぶ時は特殊な傘を使う)。一人称は基本「俺」(しかし、『最恐の怪談』時とかには、「私」や「僕」も使う)。

 

 

 

 

 

名前:多々良小傘(たたらこがさ)

 

二つ名:『進化した紅い唐傘娘』

職業:四ツ谷会館・従業員、及び四ツ谷文太郎の第一助手(副業で鍛冶師も行っている)

能力:『(現在の能力不明につき、以前同様《人間を脅かす程度の能力》と記す)』

人間友好度:高

危険度:低

住んでいる所:人間の里

 

解説:かつては人一人を驚かせることすらできなかった下級妖怪だが、四ツ谷文太郎の助力により大妖怪へと進化を果たす。しかし、その性格は以前とは全くと言っていいほど変わってはいない。

大妖怪となって以来、四ツ谷文太郎を『師匠』と呼んで慕い、第一助手として彼の手足となって働く事となる。そのため、以前までよく行っていた命蓮寺に足を運ぶ事が少なくなった。

大妖怪としての彼女の実力は未だ計り知れず、未知数であり、今後も調査し続ける必要があると判断する。また、あまり知られていない事ではあるが、副業で鍛冶師も兼任している。一人称は「わちき」。

 

 

 

 

 

名前:金小僧(かねこぞう)

 

二つ名:『忘れ去られし金精霊』

職業:四ツ谷会館・従業員

能力:『隠し金を召喚する程度の能力』

人間友好度:高

危険度:低

住んでいる所:人間の里

 

解説:四ツ谷文太郎によって生み出された怪異。

埋蔵金から誕生したつくも神のような存在で、その能力は金銭やそれに類する価値あるものを召喚出来るというもの。

その特性故、四ツ谷文太郎率いる者たちの金銭面を管理する役目を担っており、それに関する事を一手に引き受けている『縁の下の力持ち』的存在。

またその能力を持っているがために、博麗の巫女から目をつけられている哀れな妖怪でもある。

四ツ谷を「父上」と呼んで慕っている。一人称は「我輩」。

 

 

 

 

 

名前:折り畳み入道(おりたたみにゅうどう)

 

二つ名:『箱の中の怪奇』

職業:四ツ谷会館・従業員

能力:『箱から箱へと移動する程度の能力』

人間友好度:中(ただし極一部の人間に対しては・高)

危険度:中

住んでいる所:人間の里(あるいは別次元のどこか)

 

解説:四ツ谷文太郎によって生み出された怪異。その二。

下半身が帯状になっている山伏のような姿をした妖怪。箱という箱の類の中を自在に移動できる。

ある意味、生きた『ビックリ箱』のような存在である。

その能力を生かし、他者を箱を介して別の場所へと一瞬へ送ることができる。

とある一件がきっかけで、人間の里に住むとある少女を『相棒』として接するようになる。

四ツ谷を「父ちゃん」と呼び、慕っている。一人称は「オラ」。

 

 

 

 

 

 

   ×○×○×○×

 

 

 

 

 

 

「……どうでしょうか四ツ谷さん?どこか気になる部分があれば、遠慮なく言ってください」

「いんや。別に悪くは無いが……。以前見た『幻想郷縁起』には、小傘は命蓮寺組の奴らと一緒に書かれていたんだが、今回から俺らと一緒に記されるようになったんだな」

「そりゃそうですよ。何せ小傘さんはもう四ツ谷さんの助手なんですから」

 

最新版の『幻想郷縁起』を眺めながら、自分の顎に手を添えてそうポツリと響く四ツ谷に、阿求がそう返す。

 

「それもそうか。……にしても俺の二つ名、『百奇の語り手』ってのはいつついたんだ?金小僧たちもそうだが……」

「気に入りませんか?私が考えた二つ名ですよ?四ツ谷さんのは呼んで字の如く『百の怪奇を語る者』という意味を込めて、そう名づけました」

「『百の怪奇』、ねぇ……ヒヒッ、俺がその気になれば、『百』どころか『千』や『万』の怪談を語る事だって造作も無いぞ?」

「『百』にしたのは、ただ単に語呂が良いからに過ぎないのですが……。どうします?気に入らないようでしたら改変しますが……」

「ヒヒッ、いやいいよ。気に入った!……これで俺も晴れてこの世界の資料に載るほどの有名人となったわけだ――」

 

 

 

 

(――そして晴れて、この世界の『妖怪たち』の仲間入りを果たしちまったわけだ……)

 

 

 

内心苦笑しながら、最後にそう思った四ツ谷は、『幻想郷縁起』に載った自身の名前を指先で優しくなぞって見せた――。

 

 

そしてその数分後に阿求と入れ違いに紫が四ツ谷の元を訪れ、四ツ谷は幻想郷の有力者たちに対して『怪談』を語っていく事となる――。




前回、直ぐに投稿すると書いておきながら、一週間も待たせてしまい、どうもすみませんでした!
次回の投稿も来週以降になりそうです。重ね重ね申し訳ありません!



四ツ谷の『幻想郷縁起』の中の二つ名ななのですが、彼だけは実はもう二つほど考えていたものがあります。

一つは『東方鈴奈庵』風に『創造のホラーテラー』。
もう一つは『東方茨歌仙』風に、原作タイトルの文を取って『詭弁学派な怪人』という二つ名です。

本文のも含め、四ツ谷の二つ名が気に入らないと言う方がいましたら、ご容赦の程よろしくお願いいたしますw

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