ようやく屋敷の出口を見つけたイトハだったが、直後に赤糸の毒脚によって腕を深く貫かれてしまう――。
「…………あは。アハハハハハハハハハハハッ!!アーッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァッ!!!!」
――イトハの腕が猛毒の脚に貫かれるのと同時に、彼女は膝から崩れ落ち、血に倒れ伏した。
その頭上で、毒とイトハの血にまみれた足を掲げて、狂ったように赤糸が笑う、嗤う、
「――アハハハハハハッ!!……やった!やっとヤッてやったァ!!!このクソ生意気なガキを……!!やっとォ……!!」
「クッ……うぅ……!」
苦しそうに呻きながら地面に蹲るイトハを、赤糸はしてやったりと下卑た笑みを浮かべながら見下ろす。しかしその目は今まで獲物であるはずのイトハに振り回され、してやられてばかりだったために憎悪と憤怒に煮えたぎっていた。
「おやおや、どうしたんだい?こんな所でみっともなく蹲って……さっきまでの威勢の良さは何処行ったの、さぁっ!!」
「がはっ!!」
怨嗟を入り交えた言葉と同時に、赤糸はイトハの腹部に思いっきり蹴りを入れた。
その衝撃と共にイトハの口から息が強制的に吐き出され、体は『く』の字に曲がる。
そして、そのまま間髪入れづに赤糸はイトハの腹部に何度も蹴りを入れ続けた。
「クソガキが!!クソガキが、クソガキがぁッ!!!良くも今まで私をコケにしてくれたねぇ!!?」
「がっ!……はぁっ!……ぐぅっ!」
赤糸の蹴りが入るたびに、イトハの口から苦悶の声が漏れる。
それを見た赤糸は愉悦にまみれた高笑いを上げた。
「アッハハハハハハハハハ!!良いザマだ!!ようやく狩られる獲物らしく無様な醜態を見せてくれたじゃないか!!……だが、まだ終わんないよ!!」
そう叫んだ赤糸はイトハの髪を乱暴に鷲掴みにすると強引に頭を持ち上げる。
「ぐぅ!」とイトハが呻くのも構わず、赤糸は彼女の耳元で言葉を続けた。
「……さっきまで散々やらかしてくれたんだ。この借りはたぁ~っぷりと利子付けて返させてもらわないとねぇ~!……爪を剥いで、髪をむしり、四肢を千切って、その可愛いらしい顔を
そこまで言った赤糸はそのままイトハの髪を掴んだまま彼女を崖の淵へと乱暴に引きずり始めた。
「っぐ……あぅ……!」
プチプチと何本か毛髪が抜けてしまうほど力任せに髪を引っ張られ、されど毒で思うように体が動かないイトハは小さく呻きながらズルズルと赤糸にされるがままに引きずられていくしかなかった。
そうして崖っぷちへと連れて来られたイトハは、赤糸によって強引に崖下の方へと目を向けされられる。
崖の遥か真下は薄暗くもされどぼんやりと底が見えた。
その仄暗い崖の下には細い糸のような川が流れており、耳を澄ませてみると僅かに川の流れる音が届いて来ていた。
「見えるだろう?崖下にあるあの川が。……あの川底にはねぇ、今まで私が捕まえた
「……!!」
赤糸のその言葉にイトハは僅かに目を見開く。
連れ去られた子供の中には妖精たちも何匹かおり、彼女たちの行方だけが今まで掴めずじまいであったが、まさかここで彼女たちの居場所を知る事になるとは思いもしなかった。
そんなイトハの様子には気づいていないのか、赤糸はイトハの頭上でケラケラと笑う。
「あの妖精共もザマぁないよ!!自分たちは不滅だからって私から逃げ切れると思ってたのかねぇ?……だけど残念!!あいつらの特性を私が視野に入れてないわけないじゃないか!!……あいつらが死んでも復活できるって言うんなら、
「――ッ!!」
赤糸のその言葉を聞いたイトハは腸が煮えくり返る思いが沸き上がり、無意識に自身の唇をかんでいた。
今の赤糸の言った事が本当なら、連れ去られた妖精たちは、今もあの冷たい川の底で生き地獄を味わい続けているという事になる。
「下衆が……!」
屋敷での『隠れ鬼ごっこ』に【拷問部屋】での子供たちへの所業。果ては妖精たちに対しても信じられないほどの非道を平然とやってのけた赤糸に、イトハは思わずそう零していた。
それを耳ざとく聞きつけた赤糸は、地面にイトハの顔面を叩きつける。
「ぐ、ふぅ……!」
「口には気を付けなガキがッ!!あんたも最後はあの川の底に沈めてやるよ。あそこにいる妖精共もお友達が増えてさぞかし嬉しがるだろうしなぁ……!!」
頬に当たる衝撃と痛みで苦悶の声を力なく漏らすイトハの頭上で、こめかみに血管を浮き立たせながら狂気の笑みを浮かべる赤糸がそう怒鳴り散らす。
そして、そこである程度満足したのか赤糸はイトハの髪を掴んだまま引きずり、来た道を戻り始める。
「私の体をこんだけボロボロにしてくれたんだ。その分はきっちりと楽しませてもらうよぉ~?」
「…………」
嘲笑しながらそう言う赤糸に、イトハは沈黙したままされるがままに赤糸に引きずられ続ける。
横穴を通り、つり橋を渡り、やがて屋敷に戻って来た二人は、赤糸の私室へと入って行く、そうしてそこを通って目的地の【拷問部屋】へと鼻歌を歌いながら赤糸が体を向けた――その時だった。
「……ッ!?」
私室を通り過ぎようとした赤糸の視界に『ある物』が映り込み、それを見た赤糸の動きが強制的に止まる。
そして突然、目をカッと大きく見開きその場で固まってしまった。
「……?」
ふいに動きが止まった赤糸に、イトハは何事かと眼だけを動かして証を見上げる。
そして、赤糸が見る視線の先を辿ると、そこには壁に掛けられた大きめの振り子時計があった。
先のこの部屋の戦闘で運よくその被害を受けずに済んだその時計は、いつも通りの変わらぬ動きでカッチカッチと時を刻んでいる。
そして、その針が指している今現在の時刻は――。
――午後五時前。
「……あ、あぁあぁぁ!?」
イトハが時計を目にした直後に頭上から驚愕を露にしたかのような声が響き、それとほぼ同時にイトハの髪の毛を掴んでいた赤糸の手がフッと離れる。
「うっ」
畳の上にイトハの頭が落ち、その衝撃で彼女の口から苦悶の声が小さく漏れた。
痛みに耐えながらイトハが再度、赤糸を見上げると、赤糸は必死の形相で自身の懐から懐中時計を引っ張り出している所だった。
そうして今一度、懐中時計で現在の時刻を確認した赤糸は再び愕然とした表情を顔に浮かべる。
「う、うそ!?うそうそうそうそうそォ!?嘘でしょう!?もうこんな時間!?何で!?さっき見た時はまだ四時だったはずなのにッ!!!」
懐中時計の時刻も五時をさしている事を確認した赤糸は激しく動揺しながらそうわめき散らす。
イトハとの戦闘、そして散々その彼女に煽られ、挑発されて頭に血が登っていた赤糸は、平常心を保つことも出来なかっただけでなく、時間の感覚すらも希薄になっていたのだ。
それ故、廊下の壁掛け時計で時間を確認してから今まで、赤糸の感覚では数分と経っていないと思われていたのが、実際は時計の長針が一周近く廻るほどの時間を費やしていたのである。
「ど、どうしよう!?どうするどうするどうする!??
一人ブツブツと呟きながら頭を抱えて悩む赤糸。その顔はひどく追い詰められた様相だった。
「ヂィッ!!!!」
次の瞬間、大きく舌打ちをした赤糸は、イトハの髪の毛を再び掴むと隣の拷問部屋へとイトハを文字通り放り込んだ。
「うッ!!」
身体を強か打ち付け、部屋の真ん中に転がされるイトハの上から赤糸の怒声が飛ぶ。
「私が帰って来るまでここに居な!!帰ったらすぐに八つ裂きにしてやる!!」
そう捨て台詞を残して、赤糸は拷問部屋の戸を乱暴に閉めると、直ぐに
(……大丈夫だ!あのガキにはさっき毒を大量に打ち込んでる。逃げようにももう立つことも出来ないはずだ!……せいぜい部屋の真ん中で芋虫みたいに無様にのたうち回って私が帰って来るその時まで無駄な足搔きをしてればいいさ……!)
そう……まるで
屋敷の場所を知る者は外部におらず、唯一にして最大の問題だったイトハも封じることが出来た。
もはや、自身を脅かす者は何も無い。赤糸はそう確信し、一人安堵の息を漏らす――。
――だが、だからこそ赤糸は気づく事が無かった。
本来なら赤糸の猛毒は、多量に含ませれば対象を短時間で
それはイトハを旧都から連れ去る時も、その効果は実際に発揮されている。
しかし、先程洞窟の出入り口でイトハに毒を打ち込んだ時。そこから拷問部屋に放り込まれるまで、彼女は
その違和感の正体に慌てて旧都に向かった赤糸は最後まで気がつかなかった。
――そしてもう一つ。赤糸は
イトハに注視するあまり、周囲に気を配ることが出来ず、散漫になっていた。
そのため、毒を打ち込んでイトハを屋敷に引っ張り戻す姿を
「ヒュー……ヒュー……」
拷問部屋の真ん中で、体を丸めながらイトハはか細い呼吸を繰り返す。
次いでゴロンと仰向けに寝転がると先程赤糸から受けた毒脚の傷の状態を確かめべく、震える手で何とか右腕の袖を肩口まで大きくまくってみた。
「うわぁ……」
それを見てイトハは嫌そうに顔をしかめながらも何処か他人事のように声を漏らす。
袖の下にある右二の腕部分には、赤糸の毒脚によってピンポン玉サイズの穴が穿たれており、そこを中心に毒が回っているのを示すかのように、白かった肌が濃い紫色へと変色していたのである。
既に変色は右手手首近くまで浸食しており、今なお毒が体全体へと広まろうとしている様子であった。
「やれやれ……最初に左腕に毒を受けた時点で再び毒を受けるのを考慮して
そう呟きながらイトハは今度は自身の左腕肩口の方へと視線を送る。
するとそこには左腕の応急処置の際、止血帯として使われ、戦闘時にはたすき掛けに使われた帯が、
――毒の脚が左腕をかすめた際、イトハはこのままでは赤糸から逃げ切る事は不可能だと本能的にそう直感していた。
応急処置を施しても毒が抜け切れていない今の体では、例え出口を見つけてそこから脱出し、助けを呼ぼうにもそれだけの体力や気力が残っている自信がイトハには無かった。それに、脱出したら赤糸の方も死に物狂いで自身を追ってくるのは確実。もはや手段など選びはしないだろう。
――だからこそ、イトハは
もし、赤糸に追いつかれ、その毒脚で貫かれることになったその時、
そうすれば、毒の影響を直接受けるのは右腕だけで済むと、そう踏んで。
(……まあそれでも、少しなりとも全身に毒がイッてしまったようですがね)
脂汗をかきながらイトハは一人自虐的に笑う。
洞窟の出入り口で赤糸に背後を取られた際、イトハの方が赤糸よりも一瞬早く先に反応していた。
毒の脚が振り下ろされる直前、イトハは振り向きざまに体を横に傾け、毒の脚が振りぬかれる軌道上に右腕が重なるように仕組んだのだ。
もう赤糸から逃げ切る事は出来ない。そう踏ん切りをつけた上で、
ちょっと前から赤糸は時間を気にして焦っているのが見て取れていた。明らかに『時間が無い』そう言いたげな顔をして。
それ故、たとえ屋敷に連れ戻されたとしても、自分に手を下す余裕はないと、そう予想していたのだが……その予想は見事に的中していた。
時間が五時になるのを知った時の赤糸は、イトハでも呆気にとられるほどに見事に取り乱し、すぐさま自身を拷問部屋に押し込むとさっさと何処かへと出かけて行ったのだから。
(私を放置してまで出かけるとは……それ程の理由が何かあるようではありますが、結果的にそれで時間を稼ぐことが出来ました……)
次に赤糸が帰って来るとすれば、恐らくは次の日の明朝。十二時間ほど時間に余裕が出来た事になる。
ホッと安堵の息を吐くも、すぐさまイトハは「これからどうしようか」と思案顔になる。
(正直な所……もう立って歩く事は出来そうにありません。このままの状態で助けを呼びに屋敷の外に出るのはまず不可能。……ならば、下にいる尾花さんたちに私の代わりに助けを呼んでもらうよう頼むしかありませんね……。でも、尾花さんたちがいる部屋はここからだと遠そうですが……。まぁ、仕方ありません。時間はかかりますが這ってでも行くしかあしませんよね……)
そこまで考えたイトハは早速行動に移ろうとし――その直前に
(――!まさか!戻って来た……!?)
隣の部屋に
部屋に入ってきたその人物は、やがて足音を響かせて
そうして、
ゴクリと唾を飲み込みながら、倒れた状態で戸を凝視するイトハ。
すると、イトハの目の前でその戸がゆっくりと開かれ、彼女の視界にその人物が姿を現した――。
「――うにゅ?何この部屋、血まみれで気持ち悪い……って、うにゃあッ!?女の子が倒れてるぅ!?ねぇねぇどうしたの!!こんなにボロボロになって……!!」
拷問部屋の惨状と部屋の真ん中で倒れているイトハを見て、その人物はその場であたふたとしだす。
それを見つめるイトハは疲れたような声でその人物に声をかけていた――。
「……落ち着いてください。と言うか、昨日会ったばかりなのに、もう私の事忘れたのですか?――」
「――
――時間はほんの少し前に
イトハを連れ去る赤糸が屋敷に通じる洞窟へと入って行くのを確認し――その後、無線機の使い方や地霊殿への帰る方向すらも忘れたお空は、丸一日近くも迷子のまま、地底をさ迷い続けていた。
「うぐっ……えぐぅっ……ここどこぉ?お家に帰りたいよぉ。さとり様ぁ……お燐~……」
目元を腫らしてなおも泣きじゃくりながら、行く当てもなくフラフラと地底を飛び続ける。
涙にぬれる眼をごしごしと擦りながら、お空は正面を向く。するとそこには大きな断崖絶壁がそびえ、その壁にくり抜かれるようにして出来た洞窟から誰かが出て来るのが見えたのだ。
「――!誰かいる。やったぁ!帰り道教えてもらお!」
喜び勇んでその人物へと道を尋ねようと近づくお空。まだゴマ粒ほどに見える距離であったが、お空の飛行速度は速く、瞬く間にその人物との距離が縮まって行く。
しかし、その人物の輪郭がはっきりとし始めてきた距離まで近づいた時、思わぬ事態が起こる。
「うにゅ!?」
突然、洞窟の中からもう一人――誰かが飛び出し、先に洞窟の外に立っていた人物に一瞬重なったかと思うと、次の瞬間には片方がその場に倒れたのだ。
「え?え?……何?何???」
事態が呑み込めず、思わず物陰に隠れて様子をうかがうお空。
倒れている方とは違うもう一歩の人物が、倒れている人物に向けて何やらわめいたり、何かをしている様子であったが、お空がいる場所からではその者が何を言って何をしているのか聞き取る事も見る事も出来なかった。
――やがて倒れている人物をもう片方が引きずって洞窟の中へと戻って行くのを見届けると、お空は恐る恐る洞窟の入り口へと降り立つ。
「うぅ……何だろうこの洞窟。……なんか前にどこかで見たことあるような……」
自身が一日前にイトハが赤糸によって連れ込まれるのを確認したのと
やがて洞窟が開け、目の前に大きな屋敷が現れるとお空は「はえ~」と呟きながら呆然とその屋敷を見上げた。
すると直後に、目の前にあるつり橋の向こう――屋敷の出入り口だと思われる穴の仲から奇声が響き渡った。
「!?」
突然の事にびくりと身を震わせたお空は空を飛んで屋敷の裏の方に回り込むとそこから出入り口の方へと顔を覗かせる。
するとしばらくして、そこから
それを見届けたお空は思い切って屋敷の中へと突入し――そして『
「ふぇ?……えーっと、えーっとぉ………………あ、あああぁっ!?」
イトハの顔を見た事とその彼女に「もう忘れたのか?」と問われたことで、ここに来てようやくお空は自分が一日前に何をやっていたのか思い出すことが出来た。
「そうだ。……そうだそうだそうだったぁ!!知らせなくちゃ、早く伝えなくちゃ!さとり様に!お燐に!!『イツキ』が連れてかれた場所のこと!!『ハイヨー、シルバー』で!!」
「ですから落ち着てください空さん。後、私の名前は『イツキ』じゃなくて『イトハ』。『ハイヨー、シルバー』じゃなく『
自分が今死に
イトハのその言葉を聞きながら、お空は自身の体をあちこちまさぐりながら、ポケットに入ったままになっていた無線機をようやく見つけ引っ張り出す。
しかし、いざ使おうとした矢先、またもやお空が慌てふためき始めた。
「あ~う~~っ、そうだった!使いかた忘れちゃってたんだ!どうしよう、どうしよう~~~っ!!」
「全く貴女は……。はぁーっ……貸してください。私が使いますから……」
「うぇっ……?使い方、知ってるの?」
驚きながらそう尋ねるお空に、イトハは呆れた目を向けながら口を開いた。
「……私のそばで何度も何度もさとりさんが使い方を繰り返し貴女に教えていたのを聞いてたんですよ?……嫌でも覚えちゃいましたよ」
と言うか、教えられている本人ではなく傍で半ば無意識に聞いているだけの者の方が詳しくなるってどうなのだろうか?と、毒で半ばぼんやりとする頭でそう思いながら、イトハはお空から無線機を受け取った。
そうして受け取った無線機を見つめながらイトハは力なく口の端を小さく吊り上げる。
(……やはり、河童の技術は凄いですね。例え居場所が分かったとしても
――そう、実はこの無線機にもにとりの手によって一つ仕掛けが施されていた。
匂い袋に入れていた発信機――それと同じ物がこの無線機にも仕込まれていたのだ。
お空が順調にイトハの連れ込まれた場所を特定たとしても、その場所が地底のどこにあるのか分からなければ意味がない。
そのためにとりは、
……最も、手渡されたお空本人は無線機の電源の入れ方すら奇麗さっぱり忘れてしまっていたのだが。
(……
そんな事を思いながらイトハは無線機の電源を振るえる指でゆっくりと入れた――。
――そこから先の展開は速かった。
無線機の電源が入った事で、地霊殿に待機していた小傘たちの所に繋がり、屋敷の場所がすぐさま特定される。
そうして赤糸の屋敷に小傘たち全員が駆けつけると、拷問部屋にいたイトハとお空を発見。
絶望の淵で戦っていたイトハはようやく救助されたのであった――。
旧都から駆けつけてきた自警団の団員たちによって、ボロボロになったイトハは担架に乗せられ、旧都へと運ばれて行く――。
それより少し前に、小傘と小傘に抱えられたテレビ通信機越しに映る四ツ谷に、この屋敷で起こったことを全て話し終えたイトハは、その途端糸が切れた人形のようにフッと意識を手放していた。
担架で運ばれて行くイトハを見据えながら、四ツ谷は意を決した目で小さく呟く――。
『……よくやった。十分すぎるほどの収穫だ。後は何も気にせず安心してゆっくり休んでいるが良い。……まかせろ。こっから先は――』
『――俺らの出番だ……!!』
最新話投稿です。
長く時間がかかりましたが、ようやくイトハVS赤糸の死闘、決着です!
そしてここから先はいよいよ四ツ谷のターンになります。
ですが次回は確実に来年となりますのでこの作品はこの話で投稿納めとさせていただきます。
それでは皆さん、良いお年を!