四ツ谷文太郎の幻想怪奇語   作:綾辻真

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前回のあらすじ。

紅魔館に拉致された四ツ谷はレミリアに『最恐の怪談』を創る事を強要される。


其ノ三

「ふぅ……」

 

玉座の間から自分の寝室にやってきたレミリアは、ガウンを脱いでナイトドレスに着替えると、そのままベットにその身を投げ出し、仰向けに寝転がった――。

そうして一息つくと、豪華な装飾の成された天蓋を見上げて、ふと物思いにふける。

思い出すのは先の四ツ谷の言った一言だった――。

 

 

 

――お前の身内だろ?何とも思わないのか?

 

 

 

(……思わないわけ、無いじゃない)

 

寝返りを打ちながら、レミリアは心の中でそう響く――。

今まで散々、顔を合わせる度に罵りあい、いがみ合い、そして度を越してはいたが喧嘩もしあいを何度も何度も繰り返してきた身ではあれど、それでもレミリアにとってフランドールは血を分けた唯一の家族であり、大切な妹である事に変わりはなかった。

されど、そんな大事な妹ではあれど彼女の狂気的な行動が日に日に目に余るものへとなっていったのも、また事実であった――。

何度(しか)り、そして(いさ)めようとしたかも数知れず。

しかし、それでもフランドールは全く気にも留めず、(つい)には実力行使に出なければならないほどの事態にまで発展してしまったのだ。

もはや、姉である自分の手で押さえ込められるのも時間の問題。

そしてその時が来て、自分の手から離れた彼女が外へ飛び出し、そこで思いっきり自身の力を振るってしまったら、幻想郷は地獄絵図に変わることは想像に難くなかった。

そうなってしまったら最後、もはや自分ではどうすることもできない。

幻想郷を危機に(おちい)らせてしまったら、他の有力者――特にあの妖怪の賢者に睨まれてしまったら、もうこの地に住めなくなるどころか、最悪フランを文字通り存在を抹消させられてしまうかもしれない――。

 

(……それだけは、絶対に回避しなくてはいけないわ……!)

 

――髪の毛一本も残さずに最愛の妹を消されるくらいなら……心を鬼にしてでも、あの子の心を壊そう――。

 

ギュッと握りこぶしに力を入れ、その拳を見つめながらレミリアはその瞳に決意を宿らせる。

そして、今一度天蓋を見上げると、今度は愁いを秘めた瞳でとある人物を思う。

 

(お母様、もしあなたが今も生きていてくれれば、私はここまで悩む事は無かったのでしょうね……)

 

しかし、それはもはや考えても詮無い事であった――。

 

それもそのはず、レミリアとフランドールの母親は実は『人間』であり、生きていた時代も五百年も前だったからだ――。

 

人間を辞めなければ叶えられそうにない無茶な要求である。

レミリア自身、それはちゃんと頭の中では理解している事ではあったが、今のこの現状を前にどうしてもそう思わずにはいられなかったのだ。

 

――ゆっくりと瞳を閉じ、レミリアは自身の脳裏に母親との思い出を投影する。

 

フランが言った通り、彼女には数は少ないがそれでも母親との思い出は確かにあった――。

――そう、()()()()()()で幼いフランと三人で()()()()()()()()を楽しんだ事も――。

――そこで母親の作った特性のクッキーをフランと仲良く分け合って食べた事も――。

――そのクッキーの味がとても美味しく、今もその味の記憶がちゃんと残っている事も――。

 

 

 

 

 

――そして……――。

 

 

 

 

 

――彼岸へと旅たつ少し前、病弱な身体を引きずって()()()()()()へと私たちを連れて行った母が、そこで最後に自分に向けて残していった()()()()も……――。

 

「お母様……ごめんなさい……。『約束』……守れそうに、ありません……っ!」

 

母親との思い出を頭の中で思い巡らせながら、レミリアは目尻に一筋の涙を流すとそのまま夢の中へと意識を沈めていった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ったく、無理矢理連れて来た上にたった一日で『最恐の怪談』を創れだなんて、あんたん所の主はどんだけ傍若無人なんだよ」

「文句を垂れている暇があるならさっさと怪談を創ってくれるかしら?そうすれば早々に紅魔館(ここ)から開放されるわよ?」

「馬鹿言うな。創れと言われてそうほいほいと出来るほど、俺の『最恐の怪談』は安くはねーんだよ」

 

レミリアが去った玉座の間、箸と茶碗を床に置いて、未だにその場に座って文句を垂れている四ツ谷とナイフの切っ先を四ツ谷に向けて冷ややかな目で見下ろす咲夜が言い争っていた。

そこへ同じくご立腹状態の小傘が口を挟んでくる。

 

「聞く必要無いですよ師匠。こんな横暴な頼み事、承諾する義理はありません。さっさと帰って朝食の続きをしましょう?」

「口を挟まないでくれるかしら器物妖怪の唐傘娘さん。私のナイフの餌食になりたい?」

「おあいにくさま。わちきはもう以前のわちきじゃないんですよ咲夜さん。余裕で返り討ちにしてあげますよ!」

 

番傘とナイフをそれぞれ構えて臨戦態勢をとる小傘と咲夜。

しかしそこへ四ツ谷が待ったをかけた。

 

「まぁ、待て小傘。ここで戦って逃げられたとしてもこのメイド、必ずここに俺を連れ戻すぞ?時間止める能力持ちみたいだしな。さすがのお前もそれやられちゃあお手上げだろ?」

「むー……」

 

事実、四ツ谷の言う事は的を射ていた。

今ここで戦って勝てたとして、紅魔館を出られたとしても、この咲夜は自身の能力を使って再び四ツ谷をこの館に縛り付けてくるだろう。

そして、運良く咲夜を気絶させたとしてもその結果は同じだ。結果が遅いか速いかの違いでしかない。

レミリアからの命令がある以上、彼女に対して忠誠心の深いこのメイドは地の果てまでも四ツ谷たちを追いかけて連れ戻しに来るに決まっている。

こういう咲夜のようなタイプは以前、四ツ谷を監禁した霊夢とは方向性は違えど厄介極まる事には違いは無かった。

ふくれっ面を作る小傘を尻目に、四ツ谷は次に咲夜に眼を向ける。

 

「言っておくが銀髪メイド、俺は別に怪談を創らないとは言ってない。さっきあの吸血鬼にも了承したばっかだしな。……ただ、こんな強引な方法をとらずに普通に呼んでくれれば良かったってだけなんだよ、俺が言いたいのは。……飯もちゃんと食えたはずだしな」

「…………、その点に関しては、悪かったと思ってるわよ」

 

目の前に置いた箸と()()()()()()()茶碗を指差しながらジト目で抗議する四ツ谷に、バツが悪そうに咲夜はそっぽを向く。

そんな彼女を見ながらやれやれと首を振って四ツ谷は立ち上がる。

 

「……そんなに言うなら創ってやるよ、俺の『最恐の怪談』を……!」

 

その言葉を聞いた咲夜は安堵からか構えていたナイフを下ろす。

と同時に小傘の方も、納得いかないまでも渋々と言った(てい)で構えを解いた。

 

「……感謝するわ」

「だがな。勘違いするんじゃねぇぞ銀髪メイド。お前らから受けたこの仕打ちを俺は忘れるつもりは無いし、これから創る『最恐の怪談』も、決してあの吸血鬼の為なんかじゃ()ぇ」

 

どう言う事?と、怪訝な顔を向ける咲夜に、四ツ谷はニヤリと不気味な笑みを浮かべて、決まってるだろ?と、得意げに響いた――。

 

「――俺が『最恐の怪談』を創るのは、今も昔も、()()()()()()なんだよ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それじゃあ、期限までに『最恐の怪談』を創ってさっさと帰るとするかねぇ」

「はい、師匠」

 

玉座の間を出て広い廊下を歩きながらそう言う四ツ谷に、後ろを歩く小傘は強く頷く。

そしてさらに後ろからついてくる金小僧、そして彼に担がれている折り畳み入道も同様に頷いた。

小傘、金小僧、折り畳み入道は全員、先の四ツ谷の拉致からレミリアの要求で『最恐の怪談』を創る事にはあまり納得できてはいなかったものの、四ツ谷が最後に言った「さっさと帰る」という発言には全員同感であった。

 

「……さァて、怪談を創るとしても一体何を創ったモンか……」

「あら?直ぐには思いつけるものでもないの?」

 

そう呟いて考える四ツ谷に、咲夜は小首を傾げてそう問いかけた。

それに四ツ谷は答える。

 

「いや、別にそうと言うわけじゃないが、今回は今日の夜までって言う急な話だろ?そんな短期間で強烈なインパクトを持つ怪談を創るとなると、『聞き手』の心に直接響くようなモンでもないと意味がないんだよ」

「……妹様の心に、直接……」

 

誰に言うでもなく咲夜がそうポツリと呟くと、四ツ谷は立ち止まって咲夜に顔を向ける。

 

「ああ、そうだ。……そもそも俺はお前の言う『妹様』の事なんて何も知らないぞ?会った事はおろか顔だって見た事が無い」

「そう言えばそうだったわね。宴会とかにも連れて行ったことは無かったですし……」

 

四ツ谷にとって、紅魔館組で以前から顔見知りだったのはレミリアと咲夜だけであった。

他の有力者たちは皆それぞれ、体調の具合やフランドールの見張り、そして『睡眠』などで留守番をしていたのである。

 

「今、妹様はお嬢様同様眠ってらっしゃるわ。安眠の妨げになるから会わせるのは無理ね」

「じゃあ写真かなんか無いのか?」

 

その四ツ谷の問いに咲夜は顎に手を当てて思案顔になる。

 

「写真ねぇ……残念だけど無いわね。……思えば妹様と写真を撮った事なんて一度も……いや、待ってそう言えば……」

 

何か心当たりがあるのかブツブツと独り言を呟きはじめた咲夜は、次の瞬間にふと顔を上げると四ツ谷を追い越し――。

 

「一つだけ妹様の姿を写したモノがあるわ。来なさい」

 

――そう、自分に付いて来るように促した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ここは、物置か……?」

 

咲夜を先頭に四ツ谷たちがやって来たのは、使わない家具や調度品などが白いシーツに被せられて乱雑に置かれている部屋であった。

その部屋の様子から物置だと推察した四ツ谷は、前を進む咲夜にそう問いかけ、咲夜もそれに背中を向けたまま頷き、答えた。

 

「そうよ。なにせ今から見せるのはモノがモノだけに普通の部屋やエントランスには飾っておけない代物でね、仕方なくここに置かれている物なのよ」

 

そう言いながら咲夜は、部屋の一番奥に置かれている物へと歩み寄っていった。

それもまた周囲のもの同様、白いシーツが被せられているためどんな物なのかは外から見てみても分からなかったが、咲夜がそのシーツの端を掴んでスルリと引き剥がすと、その中身が四ツ谷たちの前にさらされた。

 

「……コイツは」

「……家族の肖像画、ですか……?でも、それにしては……」

 

四ツ谷が最初に呟き、続いて小傘も言葉を発するも、途中からそれが濁したモノへと変わる――。

彼らが見た物、それは小傘の言うとおり、二人の夫婦とその娘らしき二人の少女たちが描かれた家族の肖像画であったが、初めて見る四ツ谷たちでもその肖像画がだいぶ()()()()であるのが直ぐに分かった。

 

その肖像画はレミリアとフランドール、そして()()()()()()()()()が描かれた絵であった――。

 

肖像画の中央に置かれた派手な装飾の成された大きな椅子にはこの紅魔館の先代にしてレミリアとフランドールの()()()()()男が背もたれに上半身を預けて座っている姿があり、向かって男の左側には今よりもさらに幼い姿のレミリアが、そして挟んで男の右側には腰まである長い金髪に白いドレスを纏った女性が、これまた今よりもさらに幼いフランドールを抱っこして立っていたのだ。

言葉にするだけなら何処にでもあるかのような家族の肖像画。しかし、奇妙だったのは中央に座る先代らしき男の頭の部分が、まるで獣の爪に引き裂かれたかのようにズタズタにされており、どのような顔立ちだったのか判別不可能となっていたのである。

それだけではない。男のその傍に立つレミリアたちもまた奇妙であった。

家族を模した肖像がであるにも拘らずレミリアたち三人の顔は、まるで能面でもつけているかのように感情の抜け落ちた真顔だったのである。

傍から見ても一家団欒(いっかだんらん)の幸せそうな雰囲気ではない表情で描かれたレミリアたち。

その違和感のある肖像画を何とも言えない表情で見る四ツ谷たちに咲夜が声をかける。

 

「……これは、この館に存在するお嬢様たちの唯一の家族の肖像画です。この長い金髪の女性――当時の奥方様が抱えてらっしゃるのが妹様……フランドール・スカーレット様です」

「……あの、咲夜さん。この真ん中に描かれている男の方ってレミリアさんたちのお父さんですよね……?どうしてこんな……」

 

恐る恐ると言った調子で小傘が咲夜に問いかける。問われた咲夜も何とも言えない表情を作り、やや顔を俯かせながらもそれに答えた。

 

「……これはお嬢様がやった事のようなの。()()()()()()()()()()()()()()()……」

「レミリアさんが?」

「ええ……。話を聞く限りだけど、お嬢様も妹様も、先代当主様にはあまり良い印象を持っていなかったようなのよ」

「一体、どうして……?」

 

小傘の更なる問いに、咲夜は力無く首を振る。

 

「分からないわ……。お嬢様も妹様も、先代当主様や奥様の事をあまり話したがらなかったから……」

 

咲夜と小傘がそんな会話を続けている中でも、四ツ谷はジッとその肖像画を見つめ続けていた。

それに気づいた金小僧は四ツ谷に声をかける。

 

「父上……、その絵が気になるのですか?」

「ああ……、もしかしたら『最恐の怪談』を創るための糸口になるかもしれん……。特にこの――」

 

そう言って四ツ谷はフランドールを抱えている女性を指差し、続けて口を開く。

 

「――先代奥様。……理由は分からねぇが、なーんか引っかかんだよなぁ……」

「奥様が……?……そう言えば、あなたをここに連れて来る少し前にも妹様が『発作』を起こして暴れたのよ。……その時お嬢様が奥様の事を口にしたら、妹様が激しく動揺して……」

「へぇ……」

 

その時の事を思い出しながらそう呟く咲夜に、四ツ谷は興味深げに相づちを打つ。

そして次の瞬間、咲夜は四ツ谷に向けて顔を上げると、やや真剣な目つきで彼に問いかけた。

 

「……そんなに気になるなら、詳しく知っていそうな方がいるけど、行ってみる?」

「……いいのか?」

 

その意外な提案に四ツ谷はやや眼を丸くして咲夜に聞き返す。

その言葉の『意味』を即座に理解した咲夜は、ほんの少し悩む素振りを見せるも、直ぐに首を振って口を開く。

 

「……本来なら、主の過去を勝手に詮索するのは従者としてあるまじき行動だし、許されない事だけれど……。お嬢様からあなたの怪談完成に協力するように言われている事だし……今回は、『特別措置』と言う事で」

「ハッ……モノは言いようだな」

 

苦笑交じりに皮肉を言う四ツ谷に、咲夜は然とした姿勢で返す。

 

「これもまた、メイド長である私の役目。主の意に反する事であっても主に与えられた任務を全うするためならそれでも貫くべきだと考えているわ」

「主からの命のために主の機嫌を損ねる事をする、ねぇ……矛盾してね?」

「なんとでも。これも全てはお嬢様のため。そのためならお嬢様からの罵りだって甘んじて受け入れる覚悟よ」

 

「それに――」と、咲夜は真剣な目で四ツ谷を真っ直ぐに見据えると続けて口を開いた。

 

「――これは、私にとってもお嬢様たちの事をもっとよく知るいい機会だわ。今までの私はあの方たちの事をよく知りもしないでこれまで従事して来た……。でもそれじゃ駄目、私がこの紅魔館のメイド長であり、お嬢様からの信頼の深い臣下でいるためにも――」

 

 

 

 

「――避けては通れぬ道よ……!」

 

決意に満ちた咲夜のその言葉に、四ツ谷を含む誰もが口を出す事は無かった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――で、ここへやって来たってわけね。咲夜」

「はい。パチュリー様」

 

紅魔館の地下、大図書館にて机に頬杖をつきながらそう言うパチュリーに咲夜は強く頷いた。

肖像画が置かれていた物置から大図書館にやって来た四ツ谷たちは、丁度よく先のフランドールが暴れたために散らかった書物を片付け終えたばかりのパチュリーと小悪魔と会うことが出来たのだった。

咲夜から事の仔細を聞いたパチュリーは、頬杖をついたまま何かを考える素振りを見せると小さくため息をついて、咲夜が思っても見なかった言葉を口にした。

 

「話は分かったけど、咲夜。残念だけれど私もレミィたちの両親の事については何も知らないのよ。恐らくあなたと同じぐらいの事しかね……」

「え、そうなのですか?」

「えぇ……。あの子とは確かに親友の間柄だけど、あの子は自分の過去を私にもなかなか明かそうとはしなかったし、かく言う私もそんなあの子の様子からいろいろと察して深く聞き出そうともしなかったからね……」

 

「それにしても……」と、続けて呟いたパチュリーは顔を上げると、自身の大図書館を物珍しそうにキョロキョロと見渡す四ツ谷たちを見て眼を細めて口を開く。

 

「……まさかレミィがフランの凶行を沈めるためにそんな事を考えるなんてねぇ……。ま、あの子の暴れっぷりが最近日増しにエスカレートしてきてるし、手に負えない所まで来ているのも本当だけど……。実際、あの男の言う『怪談』って本当に使えるの?それでフランを止められる、と?」

「……少なくともお嬢様はそうお考えになられているようですが……」

 

咲夜のその言葉にパチュリーは「ふーん」と興味なさげに相づちを打つ。それから次に四ツ谷から咲夜に視線を戻すと、パチュリーは()()()()()()驚きの言葉を投げかけた――。

 

「……そんなにレミィたちの事が知りたいなら、もっと()()()()がいるじゃない。そっちに聞きに行けば?」

「………………………、はい?」

 

パチュリーが何を言っているのか理解が追いつかず、咲夜は首をかしげて彼女に聞き返す。

 

「えーと、パチュリー様?『最適な奴』とは一体……?」

「え?いやだから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。彼女に聞けば手っ取り早いじゃない」

「……え?」

「え?」

 

ますますパチュリーの言ってる意味が分からず咲夜は頭に『?』マークを浮かべる、対してパチュリーも話が噛みあっていない事に気づき、小首をかしげた。

数秒間、二人の間に何ともいえない空気が漂うも、直ぐにパチュリーは何かに気づきハッとなる。

そして、確認するかのように咲夜に慎重な口調で問いかけた。

 

「咲夜……。もしかしてあなた……知らなかった?」

「……えーと、何がでしょうか?」

 

咲夜のその返答にパチュリーは「やっぱり」と、頭を抱えて言う。

 

「……その様子じゃ知らなかったみたいね。あの『門番』が()()()()()()()だって事……」

「…………………………、え?」

 

呆然となる咲夜に、パチュリーは呆れた目で彼女を見つめると、衝撃的な真実を咲夜に打ち明けた――。

 

「この館の門番、『紅 美鈴(ほん めいりん)』。彼女はこの紅魔館に仕えている者たちの中で一番の古株なのよ。しかも、()()()()()()()()()()()()()()()()、ね……」

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………。

 えええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーッッッ!!!???」

 

あまりにも衝撃的な事実に、完全で瀟洒(しょうしゃ)従者(メイド)の絶叫が大図書館の中に響き渡った――。




最新話投稿です。

咲夜にとって衝撃的な事実が今明かされましたw
『彼女』の存在が、この章の最大のキーパーソンとなります。

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