魔法科高校の愛溺事録   作:薔薇大書館の管理人

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達也の快進撃が止まらない!!


エピローグ~男だけの遊戯会~第七話 超一級

 

 

 エアホッケーでの屈辱を晴らすために、将輝も本腰を入れてきた。

 

 レオとボクシングパンチ勝負をし、将輝が相手の急所に全て狙いを定め、グリーンヒットさせていく。反対にレオは持ち味の重みが入ったパンチが炸裂し、二人ともなかなかいい勝負をする。しかし、結果は将輝が勝った。急所を確実に決めていたため、高得点を連発していたのが勝因だ。

 

 

 「くそ~!! 負けてしまったぜ~!! 一条もやるな!俺、これは結構得意分野だったんだけどな~。」

 

 

 「いや、西城もなかなか魅せてくれた。あのパンチはかなりの威力を感じたからな。あれで急所を狙われていたら、こっちが危うく持っていかれる所だった。」

 

 

 「そうか? まぁ、一条がそう言うならそうなんだろうな。よし、次はぜって~負けね!!」

 

 

 お互いに握手し、健闘を称える。

 

 

 その後は、幹比古ともゲームで勝負し、反射神経ゲームで競った。色鮮やかに流れてくる光の玉をタイミングよく指定されたボタンを押していくゲームだ。日頃から精霊魔法の訓練を積んでいる幹比古は、去年の九校戦の時から練習していた”感覚同調”を使いこなせるようになり、精霊と”同調”する事で、精霊の動きや感覚だけでなく、自らの反射神経も向上していた。

 だからか、流れてくる光の玉を取りこぼす事はほとんどなく、高得点をたたき出していた。しかし、将輝も負けていない。幹比古と同じタイミングで次々と高得点をたたき出す。

 二人の白熱した勝負の行方にレオは歓声をあげて応援している。そして、野次馬も集まり、盛り上がっていた。いつの間にか反射神経ゲームに記録された最高スコアを更新していた二人に興味が向いたからかもしれない。

 幹比古と将輝の周りに人が集まって、二人を応援する声が上がる中、一人だけ冷静に二人の行く末を観察する少年がいた。

 ……達也だ。

 

 

 (二人ともいい勝負をするな。今の所、互角と言ってもいいかもしれない。だが、集中力が切れた方がこの勝負…、負けるな。そしておそらくそれは…… )

 

 

 冷静に分析し、勝敗を予測した達也は、敗者となるであろう少年に向かって、苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ~…、負けてしまった…。さすがだよ、僕もまだまだ鍛え方が足りないらしい。」

 

 

 そう言って、盛大にため息を吐いて、落ち込むのは、先程の反射神経ゲームで負けた幹比古だった。

 近くの館内売店で飲み物を買って、休憩する4人は、度々視線を向けられながらも、先程の勝負について反省会?を行っていた。

 

 

 「そんな事はない。西城との勝負もそうだったが、吉田も素晴らしい反射神経だった。もしかしたら俺の方が負けていたかもしれない。」

 

 

 「ははは、でも負けたのは事実だよ。やっぱり一条君は凄いの一言に尽きる。」

 

 

 乾いた笑いをしながら、自分の負けを認めつつも、悔しそうにしている表情を隠せていない幹比古に、将輝はどう答えていいのか分からなかった。自分が言った事は本当だし、どういう訳か、後もう少しで終了という所で幹比古がミスを連発しなかったら、僅差で負けていたのではないかと思ったほどだ。

 将輝は一高に転校(説明もめんどいので将輝は転校だと思う事にした)してから間もない初めての実習の事を思い出していた。

 

 転校して二日目にして、最初の魔法実習を受ける事になった。課題は「魔法の終了条件定義」。あれは苦汁を嘗めさせられた。深雪とペアになれたのはよかったが、深雪にアシストしてもらわなければ合格できなかったのは、かなりへこんだ。さらに追い打ちをかけるようにして、ほのかだけでなく、あの恋敵である達也が完璧に合格したというではないか!

 

 それが一番悔しくてあれから任務の間を使って、別荘でひたすら課題の克服に励んだ。その成果としてかは分からないが、時間の感覚を秒刻みで身体に刻み付ける事が出来た。魔法を使用した課題とは少し主旨は違うが、確かにその課題の下積みがあったからこそこの反射神経ゲームにもすぐに対応力を見出したのではないかと、ここでそれが改めて証明できて胸が躍った。

 あの時は、一高の課題は三高の実戦的な実習と比べて、小手先の器用さを競うだけのものだと思っていたが、今はそんな甘い考えを捨てた。

 これで俺も一歩、あの人に近づけたと自負できるんではないかとさえ思える。

 

 こうして将輝は己の中で確かな手応えを感じるのだった。

 

 

 

 「幹比古、そこまで落ち込む必要は無いと思うぞ? あれは、なかなかの勝負だった。人見知りが災いしなければ、僅差で一条に勝っていたかもしれない。」

 

 

 「え?」   「は?」

 

 

 幹比古と将輝が同時に達也に振り向く。

 

 

 「二人ともそれぞれの持ち味を出して、望んでいたが、終盤で幹比古、お前は野次馬の歓声で周りの雰囲気に圧倒され、集中力が切れた事でミスを連発したからな。

  野次馬が目に入らなければ、それこそどうなっていたかはわからない。」

 

 

 「要は、幹比古の人見知りが出てしまったって事だろ? 相変わらずそこらへんは幹比古も変わらないな!」

 

 

 達也の補足説明にレオがおかしそうに笑う。それを見て、幹比古が顔を真っ赤にして、立ち上がる。

 

 

 「た、確かに僕は人見知りだけど、あれは、誰だって驚くはずだ!!

  あんなに……、注目されていたなんて思わなかったんだ…。」

 

 

 「何をいまさら。それこそ幹比古は九校戦でさっきの野次馬以上の観客の視線を浴びてるじゃねぇ~か!」

 

 

 「だ、だけど…」

 

 

 「レオ、そこまでにしておけ。 少年は皆、シャイなんだ。」

 

 

 「…恥ずかしがっているのが普通なら、あの状況を面白がっているレオや当たり前だと弁えている達也は普通じゃないよ。」

 

 

 「ん?何か言ったか?幹比古。」

 

 

 「ううん、なんでもない!!」

 

 

 二人に対して文句を言ったが、聞こえていなかった事が幸いし、幹比古は持っていた飲み物を一気に飲み干し、次は何をやろうかと話し合っている達也とレオに駆け寄っていく。

 その姿を眺めていた将輝は、唯一幹比古の文句を聞いていて、呆然としていた。

 

 

 (そうか…。普通の少年はシャイなんだな…。)

 

 

 …とあの時の雰囲気を寧ろ注目されているのは当然と考えていた将輝は、自分が普通ではないのかという考えが脳裏に浮かび、溜息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからは、様々なゲームに挑戦した。

 

 

 しかし、自分達よりはるかに圧倒したスコアを連発する達也の超一級な離れ業にレオだけでなく、幹比古も、将輝も引いていた。

 

 だって、カーチェイスも、ガンアクションゲームも、スロットも、フリースローも、音楽ゲームも、クレーンゲームも、あらゆるゲームに対して全てハイスコアをたたき出したんだから!

 

 カーチェイスは4人対戦ができる物でやった結果、ぶっちきりでゴールするし、スロットは回して見せる度に最低でも2つはそろって、メダルを大量にゲットするし、フリースローは見事な放物線を描いてゴールに入っていく。最難関コースだとゴールが動き出すがそれを物ともしないシュートを遣るのだ! 終いには片手で軽く投げただけでブザービートを決めるほどに。音楽ゲームも流れてくる音符を指定の位置で押していくが、それを見事な手さばきでパーフェクトを記録するし、クレーンゲームではやる度に必ず商品をゲットする始末。

 一番驚いたのは、ガンアクションゲームで、達也は本来は1Pと2Pという形で二人で目の前のゾンビを倒していくというシナリオのゲームで、いつも通りの2丁拳銃スタイルで挑んだ。それだけでも凄いのに、達也が狙いを定め、見事にゾンビを倒した箇所は全て脳天だった。そこが一番のゾンビの弱点であり、高得点を狙える事を知っていたかはわからないが、そのお蔭でまたしてもパーフェクトをたたき出す。しかも、両方とも同じハイスコアで…。

 

 

 レオたちもこの達也の超一級と思わせる展開に引いていたが、レオたちよりもさらに引き、ムンクの叫びの如く、嘆いていたのはこのゲームセンターの従業員並びにセンター長だ。

 まさかの達也のハイスコア連続において、賞品が次々に持っていかれる様に、初めは拍手で迎えていたが、今では、「もうやめてくれ~~!!」という声が聞こえんばかりの落ち込み様だ。

 

 そんな従業員達の憂いを作っている当の本人の達也は、疲れた感じはあるものの、悪気は全く感じられない。寧ろ、これくらいは普通だろ?という顔をするばかりだ。

 

 

 「…なぁ~、達也。そろそろ加減してくれねぇ~か?」

 

 

 「?何を加減すればいいんだ?」

 

 

 「それは、その…。 ほら! 少しミスしてみるとか!」

 

 

 「?なぜミスする必要があるんだ? やるからにはちゃんと応えてやるのが当然だと思うが?」

 

 

 「それは人間相手にしてあげて! これは、ゲームだから! 達也が本気になると、誰も勝ち目が見れないんだよ!」

 

 

 「幹比古…、ゲームだからと言って、手加減すると後で痛い目に遭うんじゃないか?」

 

 

 「……よくわかったよ。達也……、少し休憩していてくれないかな!」

 

 

 「その方がいいな。」

 

 

 「そうだな、俺達のためにここは見学していてくれ、達也!」

 

 

 レオと幹比古だけでなく、将輝までしばらくゲームをするなと押し切ってくる様に未だ不快感があるものの、確かに疲労感があったため、3人の言葉を呑む事にした。

 

 

 (何かまずい事でもしたのか? だが、ゲームというものは全力で遊ぶためのものだと聞いていた事だし、そうしたまでなんだが…。

 

  まぁ、あいつらの勝負でも見ながら少し休憩した後で、あれをやってみるか…。)

 

 

 …と安堵のため息を吐く3人の後ろで、達也は次なる獲物を見つめて、休憩スペースの椅子に座りこんだ。

 

 

 その視線の先には………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昔からの愛されゲーム…

 

 

 

 

 ”もぐらたたき”があった………。

 

 

 

 

 




達也のもぐらたたきはスゴイに尽きるだろうな!

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