魔法科高校の愛溺事録   作:薔薇大書館の管理人

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そりゃあ、十門親分も怒るよね。


卑劣な窃盗団

 

 

 

 十門親分が凄い人だっという事は知っていた。

 

 …というより、十文字先輩と変わらない。部下を従える雰囲気も既に高校生離れしている所とか同じ…、いや、こっちの方が年上か?

 それは横に置くとしても、人を束ねる事が当たり前な貫録を見せつける十門親分が自分に思いの丈を綴って頼んでいるのだ。ここまでされて、『やはり無理です、申し訳ありません。」と断る気は幹比古はもうなかった。

 

 

 「はい、精いっぱいお役に立てるように尽力させていただきます。…それでその江戸に起きている連続窃盗事件とは一体?」

 

 

 幹比古も決意を見せ、話に入り込む。そんな幹比古の決意を受け取った十門親分は、視線で服部たちに説明をするように促す。それを承知したと言わんばかりの頷きをした服部たちは、真剣な面持ちで幹比古に語りだす。

 

 

 「先程話した通り、最近江戸では金回りの良い豪商や屋敷が狙われ、金になる物を全部盗まれる事件が起きている。これは事実だ。しかしこれは江戸に住む者達の間で広まっている内容だ。真実のほんの一部と言ってもいい。」

 

 

 「…というのも、真実全てを江戸の民達に話してしまうと、混乱が起きてしまうぜ。特にまだ事件も解決していない今は、な。」

 

 

 「それを回避するためもあって、連続で窃盗事件が起きていて、狙われそうな商人達には警告し、巡回も強化している。しかし、事態はもっと険悪なんだ。」

 

 

 「険悪…ですか?」

 

 

 「………これまで被害を受けた商人や宿屋たち全員…、金目の物だけでなく、全て奪われている。…命も。」

 

 

 「なっ!!」

 

 

 その隠されていいた真実の一部を聞いただけで、幹比古は絶句した。慌てて声を荒げそうになった言葉を呑み込んで、服部たちに先を促す。

 

 

 「しかもその家や店の店主だけを殺して、家族や奉公人は縛っておくとかそういう事じゃねぇ。屋敷にいる者全員の皆殺しだ。更に言うなら、その屋敷に飼っていた犬までも見事の斬り口で殺されていたぜ。…俺から見ても相当な使い手だな、あれは。」

 

 

 「毎回現場を調べてみるが、やはり手口が同じなんだ。同じ窃盗団で間違いないだろう。被害者の多くにはかなり小判を蓄えている豪商もいて、一人での犯行は困難だからな。」

 

 

 「ああ、分かっているだけで、この連続窃盗事件を起こしている下手人達は、複数犯で、しかも手馴れが揃っている事と、緻密に計画を練っている点が一致している。」

 

 

 「計画を練っている、ですか?あ、すみません。」

 

 

 話の途中に割り込んだ事に幹比古が謝罪するが、十門親分は先を続けるように視線で促す。疑問をそのままにしてしまうと、いざという時に連携が取れなくなる場合があるからだ。

 

 

 「ありがとうございます。…下手人達の殺しや盗みの手口が同じだと言うなら、この一連の事件を連続窃盗事件と断定するのは分かります。ですが、計画を練ると言っても、盗みを働くために屋敷の内部を把握したり、いつ盗むかを決める…様な計画性があるという訳ではないのですか?…服部さん達の説明を聞いていると、なんだか少し違うような気がして…。」

 

 

 服部たちが話す説明を聞くうちに、徐々に声色が深刻になっていき、「緻密に計画を練っている」というフレーズで憤りと悔しさが混じった力みを感じた幹比古は、何か不審に思ったのだった。だが、その幹比古の勘は当たっていた。それを肯定したのは、今まで黙って服部たちの説明を見届けていたレオだった。

 

 

 「幹比古の言うとおりだぜ。ただ頭の回る連中で、腕も立つ窃盗団ならその賢さを利用するなりして、逆に罠にかけるっていう事もできた。まぁ、実際に初めはしていたぜ?でも、すぐにこれはお手上げになったけどな。」

 

 

 「……そんな、服部さん達だけじゃないだろ?十門親分まで動いているならお手上げになんてなるはずが。」

 

 

 どんなに頭が良くて、腕が立つと言っても、十門親分たちがいれば手馴れだろうと捕まえる事が出来るはずだ。それだけの実力があると幹比古は確信しているし、その幹比古の評価も間違ってはいない。実際に十門親分が率いる奉行所は江戸ではかなり優秀な人材がそろっている。町では彼らがいれば安寧が続くと言われているのを耳にするほどだ。だから幹比古は江戸での彼らの評価と自分が体で感じた彼らの強さと頼もしさを知った今、レオが口にした”お手上げ”という言葉をすんなり呑み込む事は出来なかった。

 そんな幹比古の心情を察したレオは、一瞬だけ十門親分を見て、幹比古の顔をじっと見つめたまま、その訳を口にした。

 

 それはレオが口にした言葉の理由としては納得できる一方、決して許せるものではないものだった…。

 

 

 「……調べているうちに判明したんだけどよ、どうやら、その窃盗団と裏で繋がっている役人がいるみたいなんだ。その所為で、手詰まり状態になっちまっている。」

 

 

 その隠された真実の一片を知り、幹比古は連続窃盗事件の根が深い所まである事を悟ったのであった。

 

 




唯の窃盗事件で終わるほど、魔法科は甘くないのだ~!!

裏に大きなものが渦巻くのは魔法科ではおなじみ~。

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