「おしっ!! お前達、休憩だ~!!しっかり体力付けておけ!」
「「「「「はいっ!!!」」」」」
「休憩終了次第、俺が直々に稽古の相手になってやる!まとめてかかってこい!!」
「「「「「…はいっ!」」」」」
一瞬の間があったが、何を思ったのかはここは彼らのためにも言わないでおこう。それよりも休憩に入った事で、各々仲間達と雑談しながら、お裾分けとして出された握り飯を奪い合いながら食べている。先程までの真剣稽古と違って、和気藹々とした道場内で、幹比古もレオに誘われる形でこの流れに参加する。レオがいてくれるおかげで知り合いのいない中で一人立往生になってしまうという悲しい状況に置かれずに済むからだ。そうなれば人見知りの幹比古にはトラウマにもなりそうなくらい恥ずかしい思いをする事になっただろう。
「次はいよいよ親分とやれるんだな~。これは気合が入って来るぜ!」
両手の拳をガツンと言う音を立てて、面白がっている表情を浮かべるレオに、幹比古は乾いた笑いを返した。
「レオはいいよ、得意分野だし。でも僕はどちらかというと自分から突っ込んでいくタイプじゃないし、それは僕のやり方ではないから。さっきだって稽古では大分動けていたけど、何とか捌けているだけだった。相手がまだ本気を出していない中でこれじゃ、実戦ではあっという間に相手に反撃されてしまうよ、僕の場合は。」
「まぁ、幹比古は姿を隠して陰から反撃するタイプだしな。それでもさっきの動きは中々だと思うぜ?前から鍛えていたとは知っていたけど、いい感じに仕上がっているしな。」
「親分の様子を見ると、近距離戦になるのは明白だし、僕の相性的には勝つのは難しいかも。」
幹比古は、ため息を吐きながら今淹れられた湯呑の緑茶を見つめながら考えていた。
元々魔法も古式魔法を使う幹比古の場合、剣で戦う相手とは、精霊を通じて遠距離で仕留めるのが普通だ。しかし今は魔法を使う事も出来ない上、肉弾戦を仕掛けてくるかもしれない相手と正面衝突は避けたいと思う。魔法を使えないならもっとも警戒し、相手にしたくない部類だ。
しかし、幹比古は自分が不利だと言う事が十分に理解している。それでも親分に勝ちたいという思いが湧いてくる。それは先程の言葉でも表現されていた。
「へぇ~、”勝つ”って親分にか?」
「面白い事を言うね、君は。さっきまでの稽古を見た限りじゃ、君の言うとおり不利な面が強い。あの筋肉質ながっちりした身体からは想像できないくらいの足の速さを見せるからな。君の闘い方だけではあっという間に間合いを詰められてしまう。」
「そんな不利な状況にもかかわらず、勝つ気なのか?」
幹比古の話を聞いていた役人たちが近寄ってきて、共に床に腰を下ろす。その役人たちの顔を見て、幹比古は更に驚きを隠せないくらい息をのみ、目を丸くしたのであった。
ここであいつらが出てきて~…、