団子屋でお腹を膨らませたレオは、ミツに案内されながら目的地に向かって行く。途中から幹比古もレオに誘われて団子を食べ、あまりにも美味しかったので、ミツも一緒になって食べていた。そのために町へと赴いてから少し時間が経っていた。
「レオ、時間は大丈夫?僕たちをどこかへ連れて行きたいみたいだけど。」
「ああ、そうなんだけどよ。鐘が鳴るまでに戻ってくればいいって言ってたし、そんなに急がなくてもいいぜ。今急いでもピリピリしているお役人達が出迎える事になるしな。」
「……それならレオに任せる事にするよ。奉行人と顔合わせるのはまずいだろうし。」
「あ、ああ…そうだな。ゆっくり町を回ってからで行こうぜ!!」
若干言葉に詰まったレオの反応を見て、レオが幹比古達を連れて行こうとしている場所に心当たりがあった。そしてそこにはあまりミツを連れて行きたくないと思った。しかしレオが友人を傷つけるような真似はしないとも思っているため、今はこのまま町観光を楽しむ事にした。
歩いていると、市場に辿り着き、異国から仕入れた商品が扱われていた。見事な細工が施されたガラス細工や食器、陶器が数多く並んでいた。これらにミツは目を輝かせて、熱心に市場で売られている異国のモノを観察し、お店のシンボルとして買うべきかどうか悩み始めた。レオと幹比古は荷物持ち…ではなくただの付添になってしまい、ミツが満足するまでこの市場から離れる事は出来ず、二人は暇を持て余す事になった。
「こりゃしばらくかかりそうだな。」
「彼女が納得するまで待っていようよ。」
「別にそれに関しちゃあ、良いんだけどよ?」
体格の良いレオの背中が若干曲がり、レオの表情も険しくなる。
「…何?」
「歩き回ったらお腹すいたぜ~~!!」
「……ふ、ふふふ。レオらしいね。」
「それはどういう意味だよ。」
深刻そうな表情するから何があったのかと思ったら、とんだ拍子抜けを味わっただけだった。
いつもと変わらないやりとりした幹比古は、ふと思い出した事を聞いてきた。
「そう言えば、一条君や達也は何処にいるんだろう。この夢世界に来ているとは思うんだけど。」
「ああ、幹比古と会えたんだし、そろそろ合流してくれてもいいんじゃね?」
「合流するって言ったって、この夢世界は意外と範囲が大きいし、見つけるのも時間かかるよ。」
「そうだよな…、ったくmあいつら何処にいるんだ?」
残りはぐれて未だに姿を確認していない二人の安否について話をしていると、ミツが戻ってきた。何か買い物をしてきたのかと思ったが、何も買わなかったらしくもう大丈夫なので参りましょうと言った。
どうやらお値段が足りなかったみたいで、断念したようだった。
ミツは芸術的なツボを見つけたようで、どうしても欲しかったが、町娘が買える金額ではなかったため、諦めた。
…そんな話を聞きながら、和菓子屋さんで和菓子を一杯食べると、そのままレオが連れてきたがっていた場所に辿り着いた。
「ここだ。ありがとな、ミツ。」
「いえ、構いませんよ。…でも驚きました。」
「確かに…。レオ、僕たちが入って大丈夫なのかな?」
ただ門の前で呆然と立つ二人の視線の先には木版に墨で書かれた場所の名前が書いてあった。
……”江戸奉行所”と。
レオが泊めてもらっている奉行所へ連れてきちゃった!! 本当に大丈夫なのか?