魔法科高校の愛溺事録   作:薔薇大書館の管理人

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うんうん、これは気まずいよね~。


気まずい中で

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ~…、どうしよう…、このままずっとこの調子なのかな…。」

 

 

 庭先を箒で掃きながら、肩を落とし、ため息を吐いて呟いた幹比古は背後から見ても、落ち込んでいる事が明白な印象を与えていた。履いている箒にも力が入っておらず、なかなか落ち葉やゴミがたまらない。度々ついている溜息も重い。ため息を吐くたびにどんどん沈んで行っているような幹比古がここまで精神的に落ち込んでいるのは、先日の件が原因だ。

 

 ミツに運悪く美月と瓜二つで重ねてしまうという話をレオとしている時誤って聞かれてしまってから(場所が宿屋の前なのだから、そこで話していた二人が悪いと思うが。)、廊下や庭で遭遇すると、幹比古の顔を見るなり、慌てて小走りで通り過ぎたり、回れ右をして去っていったりとするようになったミツの態度に更に居た堪れない気持ちを抱くとともに、完全に嫌われたと思って、落胆しているという訳だ。

 

 改めてミツも大事な人だという事を伝えたいと思っている幹比古だったが、話す前に逃げられるため、いつも去っていくミツの背中に手を伸ばしてしばらく固まり、伸ばした手が空を掴むだけで、みじめになるといういつもの繰り返しが続いていた。

 

 

 「やっぱり嫌われたか…。 話すと決めた時は、覚悟決めてたのに…、いざこうなると結構きつい…。 はぁ~…、完全に失敗だったな~。」

 

 

 心が折れそうになるほどダメージを負ってしまっている幹比古。だがいつまでも落ち込んでいてはせっかく泊めてもらっているのに、仕事が捗れず迷惑をかけてしまうと思い、無心になって仕事をこなし始めていく。

 

 そんな幹比古の姿を陰からこっそりと窺って、見つめているのは、ミツだった。

 

 

 

 (どうしましょう…、幹比古さんと今度は絶対に逃げずに話をしたいと思っているのに、怖くて一歩踏み出せません…。)

 

 

 陰から様子を窺いながらミツもまた、幹比古と同じくこの気まずい雰囲気から話をする機会を持とうとし、苦戦していた。

 

 本当はもっと早くに話ししようとしても、いざ幹比古を目の前にすると、どういう顔でいればいいか分からず、咄嗟に逃げ出してしまうのだ。

 

 

 (言いたい事があるのに、全然言えないなんて…。私ってこういう性格だったでしょうか?)

 

 

 いつしか顔を真っ赤にして、考えるミツだが、勇気を振り絞って話しかける機会をずっと狙っている。だってどうしても幹比古に言っておきたい事があるから…。

 

 

 幹比古から自分とそっくりな人と重ねられていた事にショックを受けたが、それ以上にその彼女の事を話す幹比古の甘い顔が、あれから頭から離れない。その時の顔を思い出すと、どうしようもなく胸がチクチク痛みだす。

 

 

 (こんな事今までなかったのに…。 私は病気なのでしょう。それなら最後に幹比古さんに言わないといけない事が…。)

 

 

 今の自分に起きている事態が初めての事で、不安だが、それよりもこの気まずい中で幹比古とこのままでいるのはミツも嫌なので、後悔しないように今伝えたい事を言おうと、今度こそ勇気を振り絞って一歩を踏み出すミツだったのである。

 

 

 「あ、あの!! 幹比古さん!!」

 

 

 大声になってしまったが、ミツが幹比古に話しかける。

 

 そしてそのミツの声を聞いて、振り向く幹比古の表情はとても喜んでいるのが分かるくらいミツに話しかけられて嬉しかったのであった。

 

 

 




おやおや、ミツさんや。何があったのですかな?ニヤニヤ

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