幹比古がフフフな展開に遭遇するとはね~…。いじめ甲斐がありそうだ…。(個人的にはエリカと気が合いそう)
飛ばされた先で…
「わぁ~~~~!!!」
時空の歪みを通り、光が差し込む出口からようやく出られた幹比古が現れた所は……
空中だった。
「ちょ、何で~~!!え~~とぉ……!!」
空中と言っても、地上3メートルとかそう言った高さではない。完全に飛行機が飛ぶくらいの高さだ。雲が薄く漂っていて、地上を見ると、緑あふれる樹木が広がっていた。川も流れているみたいで、上空から見ても分かるほど大きい。あそこならここから落ちても衝撃は和らげられる筈だ。…多分。
しかし、幹比古が落下する真下だけはみどりは綺麗に抜き取られたようになく、地面がはっきりと見え、徐々に米粒のように見えてきたのは、民家だった。直接地面に叩きつけられれば間違いなく命はない。更に言うと、もし民家に落ちても内装がどうなっているとか、住人がいるかとか分からない状態でもしもの事があったら始まって早々に自分はみじめな最後になって、悪夢を見続け、魘される夜を当分は見る事になるだろう。それだけは何とかして避けたい。…絶対に避けたいっ!
「そうだ!札があったはず…。」
いつも肌身離さず携帯している特製の札を探し出す。徐々に近づいてくる地面との距離も猶予がない事を示してきている。急いで身体中に手を回してポケットを確認するが、札一枚も見つからない。寝る前にもちゃんと確認したのに…。
”あ、ここ、夢の中ですから札なんてないですよ~。ついでに言うと魔法は使えないから。あくまで自力で頑張ってください!では~。”
突如として聞こえてきたあの少女の声の言葉が幹比古の顔色を青白く染める。
「…って! それならこの状況~~!!どうすればいいんだ~~~~~!!!!」
身が縮まるような感覚が身体に張り廻る中、必死に助かる方法を考えようとするが、地面が迫ってくる視界を目にして、そんなこと考えられるはずがないじゃないか!目を瞑る事も恐ろしい…。試しに何度も魔法を使おうとしたが、起動式を読む事も出来なかった。
ここは夢の中。構造上の情報を夢の中で再現しただけに過ぎないこの状況で、実際に魔法を使えることは無い。精神干渉魔法なら使えそうだが。
しかしあいにく幹比古にはそんな魔法を修得してもいないから、無理だ。
…という事で、ついに民家の輪郭がはっきりと見えてくる所まで落ちてきた幹比古は、あと数分もしない内に地面に叩きつけられる事を悟った。
「…どうせなら、こんな夢じゃなくて、もっと幸せに包まれた夢を見たかったよ。」
そう呟いて、反動で目を瞑った。その光景には地面に顔面から突っ込むイメージが浮かんだ。
バシャ~~~~~~ン!!!
しかし、痛みがあるものの、幹比古の身体はなぜか水…、いやお湯の中にいた。水に突っ込んだ事で顔面が痛かったが、辛うじて生きているようなので、お湯から出ようともがく。しかし、やけに狭い所のようで、起き上がるのに時間がかかった。そしてやっとの事で水面に顔を出すと、そこには人の顔の輪郭が目に入った。
(誰なんだろう?)
顔に付いた水滴を手でふき取り、再び視界に入れるとそこには、見知った少女が幹比古の顔を覗き込んでいた。
「あ、あの~~…? 大丈夫ですか? お怪我はありませんでしょうか?」
その少女の顔を見て、思わず驚愕したが、口は素直なのか、一言つぶやく。
「………柴田さん?」
まさかの美月との対面に心底驚きを見せる幹比古だった。
落下して落ちたところで、美月と逢えるとはね~~。良かったね~~、幹比古~~!!ここからが男の見せ所だぞ~~?