魔法科高校の愛溺事録   作:薔薇大書館の管理人

15 / 51
乙女な存在が再び…!

そして将輝のキャラ崩壊があるかも?


共通ルート メルヘンな将輝と愚昧

 

 

 

 

 

 

 「ハァ…、ハァ…、ハァ…、え~っと、ここで合っているのか?」

 

 

 息を切らしながら駅に走ってきたのは、先程まで達也たちと遊んだ将輝だった。

 

 将輝は達也たちと帰りの挨拶を軽く交わした後、急いで駅に向かってきたのだ。それは、もうすぐ東京にやってくる妹の茜を迎えに来るためだ。

 

 

 「まったく親父も勝手な事を言いやがって…。事件の後始末も俺にやらせる気満々な上に茜の東京観光の案内までしろなんて無茶を言ってきたもんだ!

  俺だって、観光名所とか知らねぇ~よ!」

 

 

 白い息を吐き出しながら、自分の父親に対して悪態着く将輝。

 

 そこには親への鬱憤もありながら、達也への溜まった鬱憤を上乗せしていた。事件の疲れがあった昨日は、休息に充てていた。そこに達也からの電話が入ったものの、愛しの深雪と逢えると思ったら、疲れなんて吹き飛んでしまうほど楽しみになった。しかし、いざ行ってみれば深雪はいないし、達也への敗北感は積る一方だし、とんだ災難にも遭うしで散々な一日だった…。

 

 

 今日の出来事を脳裏に思い浮かべた将輝は急に深雪の顔を思い出す。

 

 達也に渡されたバーシャルドールを両手で持ち、呆然と見つめる。その将輝の目には自分に微笑みを向けて慰めてくれる深雪が映っていた。

 

 

 (司波さん…、いや、深雪さん…!!ああ…!!僕の女神!!

 

  あなたを想うだけでこんなにも癒される…。それなのにあなたは既にあの男のものだ。なんて僕は儚いんだろう…。でも、僕はそれを乗り切って深雪さん!!あなたをあの男から奪ってみせます!!

  どうか…、僕にあなたと二人で逢う機会をください…!)

 

 

 若干頬を赤くし、心の中で深雪に跪いてお願いする妄想を繰り広げている将輝。一人称も”俺”から”僕”に変わっており、メルヘンチックな思考をする様は将輝の周りを通り過ぎる通行人たちにとって、少し危険(変態的な意味で)だという認識を持たれつつあった。

 

 バーチャルドールと無言で見つめ合う将輝は外の寒さもあり、目の前の深雪(バーチャルドール)と何を話そうかと照れて、そわそわしだした所に将輝に声を掛けてくる少女が現れた。

 

 

 「………何をやってるの? 気持ち悪い…。兄さんじゃなかったら声なんてかけないから…。本当に勘弁してくれない?」

 

 

 声を掛けてきたと思った最初の言葉から毒舌を放つ少女に将輝はやっと現実復帰し、覚えのあるこの流れを向けてくる少女を不愉快たっぷりの視線で答えるのだった。

 

 

 「……ああ、やっと来たか。茜…、遅いぞ。」

 

 

 「ちゃんと時間通りに来たんだけど?兄さんが遅れてきたんでしょ。待っても来ないと思ったら変なもの抱えて走って来るし、やっと来たと思ったら変なものを瞳を潤ませて見つめ合うし、本当に気持ち悪かった…。」

 

 

 「な!? 俺はそんなことしてないぞ!」

 

 

 「してた! ちゃんと証拠があるんだから!!」

 

 

 そして茜が取り出したのは、情報端末に保存していた映像だった。その映像を覗き込んで見た将輝は、絶句する。そこには本当に茜が言ったとおりの自分がいた。しかも度アップで!茜に声を掛けられなかったらバーチャルドールとキスするのではないかという距離で見つめ合っていた。

 

 

 「ほら! 公共の場で厭らしい真似しないでよね! このまま続けられていたら、一条家の恥になるところだったよ。」

 

 

 暴言が止まる事も知らずに将輝に降り注がれる。

 

 

 いつものように可愛げのない(将輝にとっては)やりとりだが、それ以上に自分が無意識に深雪を求めていて、それを愚妹に目撃された事がよほどショックだったのと羞恥で将輝は肩を落として落ち込んだ。

 

 

 (お、俺は…、そんなに…、厭らしいのか…。……もしかして深雪さんもそう思っているんじゃ…?いやいやいやいや!!あの才色兼備で俺の女神がそんな醜い感情を持つものか!!

  あの人は別格なんだ! この愚妹と一緒にするなよ、俺~~!!)

 

 

 首を激しく横に振り、思考をリセットしている将輝を茜は怪訝な視線で一定の距離を持って見つめるのだった。

 兄弟仲は更に溝が開いたと将輝が思ったその時、親しみのある声が耳に入ってきた。

 

 

 「相変わらず仲が良いね、将輝はいいお兄さんだよ。元気そうでよかった。」

 

 

 「ジョージ!!? お前も来てくれたのか!?」

 

 

 「うん、『茜ちゃんだけじゃ心配だから一緒に将輝の所へ行ってくれない?』ってみどりさんにお願いされたんだ。僕も将輝に会ってみたかったし、サプライズの意味も込めて泊りに来たよ。」

 

 

 「そうか! ありがとう! ジョージ!! 俺は今最高に幸せな気分だぜ!」

 

 

 まだ二週間も経っていないのに随分久しぶりな気がする。それは将輝だけではなかったようで、将輝が肩を組んでくるのを吉祥寺も肩を組む事で再会を喜び合った。その雰囲気に茜が随分とへそを曲げていた。仮にも兄とはいえ、自分の想い人と慣れ合っている様子を見せつけられるのはいい気分はしない。

 だが、将輝は茜がへそを曲げて睨んでくる理由を、兄弟仲より友情の方を優先した自分に対して睨んでいるのだと勘違いしていた。

 

 「不潔…。」

 

 

 「変態…。」

 

 

 そのため、茜が将輝を言葉で罵倒していくが、先程の自分の行いを忘れているのか、訳の分からない事を言っていると放っておいた。

 

 

 そしてしばらく再会を喜んだあと、外でいつまでもいる訳にはいかないし、そろそろお腹も空いてきたところだったので、一八六九年創業のすき焼きの老舗へ二人を連れて行った。

 

 愚妹とだけなら適当なレストランで済ませるつもりだったが、遠路はるばる来てくれた親友を粗末に扱うなんて真似は出来ない。

 

 

 美味しいすき焼きを食べられ、親友の喜ぶ顔も見れた。

 

 将輝はこの至福の一時を噛み締め、一条家の別荘へと二人を連れて帰った。

 

 

 二人に部屋をそれぞれ提供した後、離れていた間の事を将輝は親友に語り合った。山のように膨らんだ話はとにかく話しつくせないほどだった。

 

 

 茜も初めは話を聞いていたが、興味が尽きたのか、もう眠たくなったのか部屋へ行ってしまった。

 

 茜がいなくなった事で将輝は、大いに喜び、茜がいて言えなかった事が言えると口を開く。しかし、吉祥寺の方が一足早く話し出した。

 

 

 「ねぇ…、将輝。再会した時から気になっていたんだけど…、それ…。」

 

 

 指を指して気まずそうに尋ねる吉祥寺を見て、指の先を見つめるとそこにはバーチャルドールが置いてあった。

 

 

 「ああ…、あれはアイツに渡されたんだ。 本当に迷惑だよな…!」

 

 

 口ではそう言いつつ、二人を待っている間に深雪とのイチャイチャ妄想をしたお蔭で使い道は決まっていた。あれにこっそりと隠し取っていた深雪の写真やデータをインストールして深雪の抱き枕を作ろうと画策していた。

 

 

 (これであの人に告白する練習もできるし…、色んな事が…。)

 

 

 耳まで真っ赤になりそうになるほど妄想させた将輝はそれを知られないように魔法で体内の血液を調整し、平然を装う。そして、それを更に印象付けるために嘘の使い道を吉祥寺に話す。…しかしこれが大きな間違いだったと気づかされ、心身ともにショックを受ける事になる。

 

 

 「こうなったら、アイツのデータをインストールして、サンドバッグにしてやる!!」

 

 

 「そうなんだ、うん、それがいいよ。…というよりそのために彼が渡したのかもしれないしね。」

 

 

 「………どういう意味だ、ジョージ?」

 

 

 「え?だって、あれは男性用だよ? 男性のデータしか起動しないから、いくら女性のデータを入れても起動しないよ。依然間違って購入した人が根性で何とかなるって好きな女性のデータを入れたら、その女性が筋肉質なマッチョの男性になってしまって、そのギャップでその人…、精神病院で集中治療している最中だってニュースになったから。」

 

 

 「……そ、そんな事があったのか。…まぁ、その男は馬鹿な実験をしてみたもんだな、はは…、ははははは………。」

 

 

 危うく自分も同じ過ちをするところだったと気づかされ、もし深雪がマッチョで見るのも憚られる姿になると思ったら、多分一生立ち直れないだろうと確信した将輝は嘘の使い道を本当に使い道に変えるほかなかった。

 

 

 そして、それからは達也のデータをインストールしたバーチャルドールで高速パンチを連打するほど殴りまくった。

 

 

 その将輝の頬には、血の涙が出てきそうな勢いで憂いと悔しさが滲んだ涙が激しく流れているのだった。

 

 

 

 「おのれ~~!!! 司波~~~~~~!!!!」

 

 

 

 

 

 

 




将輝…、気付いていると思っていたけど…。

本当に達也の言った事を考えていた…。

将輝が達也に勝てる日って来ないんじゃ~。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。