……でもこれって、”鬼ごっこ”だよね?もうこれで勝負すればいいんじゃ?
ゲーマー集団に因縁をつけられ、ゲームセンター内を逃げ惑う達也たちは、この終わりそうもない状況にさすがに飽き飽きしてきた。
というのも………
「なぁ…、達也?」
「何だ?レオ。」
「これさ、いつまで続くんだろうな?」
「……俺に聞くな。あいつらに聞いてみてくれないか。」
達也が走りながら、親指を後ろに指す。軽く死んだ目を後ろへと向けるレオの目はゲーマー集団の物凄く必死に走る姿が広がった。
「いやいや! あれに何で聞けばいいんだよ!? 『いつまで追いかけてくる気だ!』って言えねぇ~!!」
「だがこのままだと一向に終わらないぞ?」
「だからって、あれが大人しく話を聞くような感じじゃないのは分かるだろ!?」
げっそりとした顔で後ろを指差しながら、大声で達也に抗議するレオに達也も苦笑いするしかなかった。達也もレオの言いたい事が分かる。達也たちを追いかけてきているゲーマー集団は、元々ゲームに情熱を注ぐ生活をしているためか、インドア派が多い。日頃から鍛錬や訓練で鍛えている達也たちとは違って、生活する上で健康的な身体を作る程度しか運動していない彼らでは達也たちを捕まえるどころか、追いつく事も出来ない。もう彼らは虫の息状態…。既に体力が削がれ、追いかけるというよりは悲鳴を上げる足を何とか一歩踏み出すので精いっぱいという足取りを見せる。息も上がり、走りながら雄叫びを上げていたため、声も掠れている。顔も今にも死にそうにげっそりして青ざめ、苦しくて涙を流している者までいる。そしてそんな状態なのに、誰ひとり諦めようとしない、ひたすら「勝負しろ~~!!」という彼らに追いかけられて、幹比古はもちろん、猛獣とかも平気そうなレオや戦闘経験のある将輝でさえ、彼らの勢いと執念を見せる言動に背筋が凍るような戦闘での恐怖とは違った恐怖を感じていた。
(((まるで、リアルなゾンビを目の当たりにして、追いかけられているみたいだ…!!)))
だから、レオたちはゲーマー集団を見て、同じことを考えた。達也もレオたちの心を読んだ訳ではないが、まさしくこの表現がぴったり合うな…と追い掛けられる前にしたゲームの一つの展開を思い出し、無意識に頷くのだった。
ゾンビ化したゲーマー集団から逃げ惑い、さすがに疲れが見えてきた達也たち。しかし一向に収まるどころか勢いづく彼らから逃れ続けなければいけない。走る速度も初盤の頃と同じで。
「はぁ…、はぁ…、はぁ…、な、なんでまだあんなに…、追いかけてくるのかな…!」
「……ふぅ、心なしかゾンビが増えている気がしないか?」
苦しそうに走り続ける幹比古が息を切らしかけながら文句を言い、将輝は頭の中で考えていたゾンビの事をうっかり漏らしてしまったが、誰もそこに突っ込んだりからかったりしなかった。寧ろ当然の如く受け入れる。
「そういえば…、そうだよな~。 元気なゾンビが先導しているみたいけど、後ろの方は走り疲れてよろよろしたゾンビが群れってるぜ…!」
「まさか新手のゲーマーが加わったんじゃないのか!?」
「まさか!!………と言いたいところだけど、それが答えだと思う…。はぁ…、はぁ…、もう勘弁してほしいよ…。」
「幹比古!!しっかりしろ!! ここで今、減速なんてしたらあいつらの餌食になってしまう!!」
「だ、だけどあれから休まずに走っているんだよ?たとえ鍛えていたとしてもこれは…、きつい…。」
「…確かに吉田の言うとおりだ。ここは一旦、彼らの目から欺ける場所を走りながら探し出し、そこでこの事態を打開するしか俺たちの未来はないっ!!」
「なら、あいつらを撒くか!」
「………彼らを撒く事はできても、さらに厄介なものに狙われるだけだ。」
「おおっ!!?」
「うわっ!!」
「!!」
突然後ろから達也に声をかけられて、驚く三人。
「達也! 今は心臓に負担かけるような事はやめてくれよ~!!」
「そうだ!!こっちも真剣なんだ! …ん?ところで、司波…。お前はさっきまでここにいなかったか?」
いきなり話に割り込んできた達也に尋ねる将輝。そういえば、先ほどからレオたちと話していても、達也の声を聴いていなかったのだ。
「いや、少し外れていた。用事があったからな。」
「「「何(だって/だと)!!!」」」
衝撃の事実にさっきよりも驚く三人。そして走りながら達也を攻め立てる。
「俺たちが誰のために必死に走り回っていると思っているんだ!司波!!」
「それはないぜ!達也~!!」
「…お陰で僕の寿命が…。」
「悪かった。実はあいつらが勝負をどうしても申し込もうとする根源を調べるために動いていたんだ。」
「なんだって…? いつの間に…。」
自分が必死になって走っている間にゲーマー集団の言動の理由を調べていた達也に驚くとともに嫉妬する将輝。そこまで頭が回らなかった自分に一番腹が立ったが。
しかし、この状況を打開できる鍵かもしれない。自分の感情は後回しにし、達也の話に集中することにした。
「理由はこのゲームセンターを出てからだ。ここでは言えない。……レオ。」
達也の言葉を聞こうと神経を研ぎ澄ませていた将輝に、あっさりと今はその時ではないと断り、一緒に走るレオに顔を向ける。その顔には申し訳なさそうにしていた。
「やりたかっていたゲームはまた今度でいいか? その時は思う存分に遊んでくれていいし、代金はすべて俺が持つ。」
「…いいぜ! 別にゲームは逃げねぇ~よ。それに奢ってもらわなくても平気だ!ただし、俺が気が済むまで思う存分付き合ってもらうからな…!!」
「ああ…。もちろんだ。」
ニヤッと歯を見せ、歓喜に満ちた微笑みを向けるレオに達也も優しい笑顔で返す。
暖かい友情が垣間見えたところで、達也がゲームセンターからの脱出経路を導き出す。先ほど離れていた時に案内掲示板にも載っていないビルの配置図を見てきた達也は、それから導き出したルートを告げながら、ゾンビ化したゲーマー集団から逃げる。
「……次は右だ。そして……この先にある奥の道を進めば外に出る非常階段がある!」
「おっしゃ~~!! 」
「やっと解放されるんだね…!」
「……同じくだ。」
三人は最後の踏ん張りだと、スピードを上げる。
「あ…、三人とも待てっ!! そっちじゃない!!」
三人の後ろを走っていた達也が間違った場所へと走っていく三人に叫んだが、時はすでに遅し。
三人はカーテンで仕切られていた奥へと勢いよく突っ込み、達也は仕方ないと、後を追った。
カーテンを通り抜けると、レオたちが固まって立ち尽くしていた。
「……ここは。」
「な、な、な、な、な、な、な!!!」
「………司波。なんていう所に連れてきたんだ…?」
「俺はここに来ようとしたつもりもない。それにそんな趣味もない。お前たちが先走って入っていったんだ。俺は止めたぞ?」
呆れ返る達也は、顔を真っ赤にして固まる三人の思考が急激に低下しているのをみて、盛大に溜息を吐いたのだった。
達也たちが入り込んでしまったのは、R-18に分類されるエロゲーが完備された大人の領域だったから…。
達也たちは立ち入り禁止の世界に入り込んでしまったのだ!!
「……ぶはっ!!」
ガタッ……
あまりにも衝撃的な空間に早くも一人吐血し、倒れる…。
今日でエピローグ終わらせようと思ったのに!!
最後まで書き終われなかった! …でも、達也たちが…ね~!!(萌え)この後どう切り抜けるんだろう!?特に幹比古と将輝!!