忍たま乱太郎〜食満留三郎の弟〜   作:誰かの影

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五年生対六年生の段if〜中編

小三郎が茂みに隠れてから間もなく狼煙が上がった。

 

小三郎「始まった…!」

 

小三郎は身を低くして息を潜める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五年生と六年生はそれぞれサッと散り、小三郎を探索する。

 

 

仙蔵「さて。何処を探したものか…。」

文次郎「やはり兵太夫と三治郎のからくり部屋か?」

 

文次郎の言葉に留三郎は首を横に振った。

 

留三郎「それは違うな。」

伊作「どうして言い切れるんだい?」

留三郎「小三郎はこういう場合、仲間に迷惑にならないように行動する。だから……そこだ!」

 

留三郎がビシッと草むらを指差した後に手裏剣を投げる。極限まで研がれた刃が戦輪の如く草むらをなぎ倒して行く。

 

小三郎「!」

小平太「いたぁぁぁ!!イケイケドンド〜〜ン!!!」

長次「ふははは!!見つけたぁぁ。」

 

七松小平太と中在家長次が小三郎に飛び掛った。しかし小三郎は直ぐに覆面を着用。そして懐から竹筒を取り出し着火。その竹筒を見て伊作がギョッとした。

 

伊作「保健委員会印のモッパン!?まずい!覆面を!」

 

しかし伊作達六年生が動くよりも早く投げたモッパンが炸裂。

 

小平太「ギヤァァァァァア!!!」

長次「ぐぼぉ!」

 

小平太と長次が叫び声を上げた。もとより目の良い小平太と長次にとってモッパンはまさに目潰し!刺激性の粉のせいで涙と鼻水が止まらなくなってしまった。小三郎は走り去るのが見え文次郎と仙蔵が追おうとした時、小三郎が地面に落としていく物体を見て仙蔵がギョッとした。

 

仙蔵「焙烙火矢だとぉ!?ぬぉぉぉお!!!」

文次郎「何なんだあいつの懐は!?ぐはぁぁ!!」

 

爆発に仙蔵と文次郎が巻き込まれた。しかも焙烙火矢が煙多めの火薬を使用しているため凄い煙。

 

留三郎「小三郎!お前はゲリラ兵かぁ!?ブェ!?」

伊作「留三郎大丈、イテッ!」

 

留三郎が顔面に飛んできた瓦礫が直撃し、伊作には小石が直撃した。

 

 

まさかのモッパン爆撃に六年生が苦戦する中小三郎は覆面をつけたまま逃走。その様子を離れた場所で見守る一年は組。

 

しんべえ「す、すごい!」

兵太夫「六年生全員を。」

虎若「爆撃しちゃった!」

庄左ヱ門「何かやらかすとは思ったけど…やっぱり僕たちとは一線も二線も画しているよね?」

伊助「本当にあの懐と袋どうなってるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は組が見ている事など知らぬ小三郎。今度は木や雑草が生い茂る訓練用の林に身を潜める。そして草を輪っかになるようにいくつか結び、袋からオニビシの実を取り出し草の影に巻く。

 

 

 

ミニコーナー。

土井先生「オニビシの実とは撒菱の事で、菱の実は三角錐の形をしており基本的にどのように置かれても、刺が上を向くようになり、追っ手の足を傷つけるように出来ているぞ。え?撒菱は鉄製ではないのかって?それは少し古い知識だ。使い捨てにしては勿体無く、鉄はこの時代では高価である為、鉄製の撒菱もなくはないが一般的に重さもさほどない菱の実が使われていたという意見もある。因みにこの菱の実は食べることも出来るぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある程度巻き終えると林の中へ入って行く。そして大きな木の影に身を潜める。

 

 

 

 

 

一方で五年生はヘムヘムの鼻を頼りに小三郎を探索中。

 

兵助「忍たま長屋にはいないか。」

勘右衛門「乱太郎達と違ってお約束は一切適応されないし……となると…。」

ヘムヘム「ヘムヘム〜!」

 

ヘムヘムの後をついて行くと林の中を指差す。

 

八左ヱ門「おほ〜。隠れ訓練用の林かぁ!」

雷蔵「マジで忍者してるよ。」

 

雷蔵が足を踏み入れた時、何かが足に引っかかり躓きかける…その時、三郎が何かに気がつき咄嗟に雷蔵の襟を掴み引き寄せた。

 

三郎「危ない!雷蔵!」

雷蔵「うわぁ!」

 

引き寄せた後に三郎は足元の草影を指差した。

 

勘右衛門「あぁ!?菱の実だ!」

 

草の影には小三郎が撒いた菱の実が転がっている。さらに転倒の罠、草結びもいくつかある。

 

兵助「しかも草結び!こんなのもしも躓いてこけたら大怪我だぞ!」

勘右衛門「っ!中に潜んでいるのは確かかもだけど…迂闊に進めないぞ!」

 

他にも撒かれているかも知れないと言う心理が五年生を揺さぶる。その時、八左ヱ門が木を指差した。

 

八左ヱ門「木だ!木を渡りながらなら!」

 

全員が成る程と頷き木に登る。流石は上級生綺麗な身のこなしで木を渡って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな木の影に隠れて様子を伺いながら次の手を考える小三郎。

 

小三郎「まだ焙烙火矢とモッパンはあるな?さて。六年生は巻いたけど五年生はどうなるかな?」

 

忍具の確認を終えると気配を感じ再び覆面を着用する。それと同時に五年生達が木から降りて来た。

 

兵助「見つけたぞ!小三郎!」

勘右衛門「まさか草結びに撒菱の二重罠を一年生でやるとは…やるじゃないか。」

八左ヱ門「だけどまだまだだな!木の上を渡れば撒菱は効果はない!」

雷蔵「またまた覆面までつけちゃって〜。」

三郎「可愛い顔が台無しだぞ?ってな訳で…。」

 

 

五年生一同「俺達に捕まれ!小三郎ぉ!」

 

全員が一斉に小三郎に飛び掛った。乱太郎達なら悲鳴をあげて何も出来ないだろうが、そこはは組一出来る子小三郎!すぐに懐から何かを取り出し着火して足元に投げつけた。すると大きな音が出て煙が立ち込めた。

 

兵助「なっ!?鳥の子!?」

 

 

 

ミニコーナー

土井先生「鳥の子とは鳥の子紙を糊貼りして中あきの玉を作り中に焔硝と発煙剤をつめる。口火に点火して投げると大音響と共に黒煙が立ち込める。発煙による煙幕を目的とした手投げ弾。要するに煙玉である。」

 

 

立ち上がる煙幕に紛れて、小三郎は五年生の間をすり抜け走る。それにしても煙が酷すぎる。

 

兵助「ごほ!ごほ!小三郎の奴!火薬委員会秘蔵の最も煙が出る火薬を使ったな!」

勘右衛門「前が見えない!」

八左ヱ門「あっちだ!裏門へ逃げ…ゴホゴホ!!」

雷蔵「いて!」

三郎「アイタッ!」

 

凄まじい煙でてんやわんや。雷蔵と三郎はお互いにぶつかってしまった。しかしそこは火薬委員会委員長久々知兵助。煙から出て小三郎を見る。小三郎は忍術学園の塀によじ登り瓦の上を走る。

 

小松田さん「ちょっとちょっと!小三郎くん!学園から出るなら出門表に!ってか出るか出ないかどっち!?」

 

事務員兼リアルセコム小松田さんが飛んできて小三郎を追跡、その後ろを五年生が追跡。

 

五年生一同「待てぇぇ!!小三郎ぉぉ!!」

 

すると前方の塀の上を爆走してくる人影が目に入った。六年生達だ。

 

六年生一同「小三郎ぉぉ!!見つけたぞぉぉ!!」

 

小三郎「ヤバッ……。」

 

小三郎が冷や汗を流す。そして六年生と五年生に挟まれる瞬間。

 

小松田さん「ギャァァアァァ!!!」

 

小松田さんの悲鳴がこだました。

 

留三郎「捕まえ……あれ?小松田さん!?」

 

留三郎が捕まえたと思ったのは小松田さん。ぶつかった時の衝撃で目を回している。

 

兵助「もう逃がさないよ!……あれ?装束の上着!?」

 

兵助が掴んだのは小三郎の上着だけ。そして上着から何かが3つ落ちた。

 

 

全員「げっ!!??」

 

 

ドカァァァァン!!!

 

 

全員「ギャァァァァァァァ!!!」

 

 

落ちたのは大きめの焙烙火矢。大爆発と共に中に仕込んでおいた白粉が舞い全員真っ白になってしまい倒れた。一方で小三郎は塀の下で事なき得ていた。

 

小三郎「危なかったぁ。小松田さん巻き込んでごめんなさい。」

 

目を回している小松田さんに謝ると出門表のバインダーの紙に名前を書き塀を再び超えて出て行った。目指すは裏山。後半へ続く。


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