忍たま乱太郎〜食満留三郎の弟〜   作:誰かの影

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作法委員会伝七を小三郎が自覚なく口説き落とします。


作法委員会のピンチの段if

一年い組、黒門伝七は作法委員会の活動で生首フィギュアの手入れの為に倉庫へ足を運んだ。

 

伝七「よし!真っ先に準備をして良いところを見せよう!」

 

外に茣蓙を敷き、その上に生首フィギュアを並べる。

 

伝七「まだ一個あったよな。」

 

再び倉庫に入り見回すと棚の上にアヒルさん学園長ヘアーの生首フィギュアがあった。

 

伝七「あれだ。あれ?」

 

伝七は踏み台に乗り手を伸ばすが、僅かに届かない。

 

伝七「くそっ!あとちょっと…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、茣蓙を敷いてある場所には他の作法委員会の綾部喜八郎、浦風藤内、笹山兵太夫が来ていた。

 

兵太夫「あれ?もう準備が整ってる!」

藤内「綾部先輩ですか?」

喜八郎「いや。来た時には準備が出来てた。立花先輩は遅れるって言ってたから…伝七かな?まだ倉庫にいるのかも。見てくるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾部喜八郎が倉庫に入る。しかし中には誰も見当たらない。喜八郎が伝七を呼ぶと。棚の陰からアヒルさんの生首フィギュアを被った誰かが出てきた。

 

喜八郎「え?で、伝七?」

アヒルさん「はい…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普段は成績優秀(授業なら)な黒門伝七が哀れな姿で茣蓙の上に座り項垂れる。何故こんな事になったかと言うとフィギュアに手が届いたが踏み台を踏み外し転倒し落ちてきたフィギュアがハマってしまったらしい。

 

 

作法メンバー伝七以外「ぶっ…クククッ…。」

喜八郎「わ、笑い事じゃない。」

 

笑いかけたが何とか堪えた。それから引っ張ったりしたが一向に抜けない。

 

伝七「どうしよう!このまま抜けないなんて…。」

兵太夫「だ、大丈夫だよ!」

 

兵太夫がフォローしていると向こうから誰かがやって来た。乱太郎きり丸しんべえだ。

 

兵太夫「あっ。乱太郎達だ。」

伝七「へっ!?ま、まずい!隠れなきゃ!普段は成績優秀な僕がこんな姿じゃ…。」

 

慌てる伝七を落ち着かせフィギュアの山の中に隠した。

 

乱太郎「こんにちわ!作法委員会の皆さん!」

きり丸「何しているんすか?」

 

兵太夫「見てわかるでしょ?作法委員会の活動で生首フィギュアの手入れだよ。」

 

乱太郎「そんなんですか?」

しんべえ「でもおかしいなぁ?こっちの方から面白そうな匂いがしたのに…。」

 

乱太郎達が周りを見回すが生首フィギュアが積んであるだけで特に面白いものはない。

 

乱太郎「気のせいみたいだね?」

きり丸「お邪魔しましたぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。」

 

作法委員会が胸をなで下ろすと兵太夫が何かを聞き取った。

 

????「ま〜さか〜りかつ〜いでき〜んたろう〜♫く〜まにま〜たがりお〜うまのけ、い、こ〜♩」

 

喜八郎「歌?」

藤内「結構上手いですね?誰が歌ってるんだろう?」

兵太夫「忍術学園で綺麗に歌える忍たまは僕達は組に一人しかいません。」

 

徐々に歌声が近づく。

 

兵太夫「筆記は庄左ヱ門以上に出来き。実技に置いては最優秀。戦闘力は一年生中最強!忍術学園一の武闘派。食満留三郎先輩の実弟。」

 

兵太夫の言葉に合わせたように歌いながら鉞を担いだ小三郎がやって来た。

 

小三郎「あれ?作法委員会の皆さん。精が出ますね?」

兵太夫「やっぱり小三郎だ!」

藤内「相変わらず歌が上手いなぁ!」

喜八郎「どうも〜サブちゃん。でもまた何で鉞持っているの?」

小三郎「いやぁ。食堂のおばちゃんが薪を切らしたらしくて薪割りを手伝っていたんです。」

 

小三郎が近づくと視界に生首フィギュアが映りその中のアヒルさん学園長のフィギュアが目に留まる。

 

小三郎「ジーー……伝七?」

伝七「な、何でわかったの!?」

小三郎「いや。途中までは誰か分からなかったけど、メンバーに見当たらなかったし、それに普段は優秀で真面目な伝七が委員会をサボるのも考えられないから。もしかしたらって思ったんだ。」

 

ニコリと小三郎は笑う。

 

伝七「//////……た、大した観察力だな……。」

小三郎「そう?見たまんまだけどね?伝七は優秀だし顔も綺麗だし……他にも他にも…ほんと伝七はカッコいいよ!」

伝七「////////////…ボン!」

 

照れ臭さと小三郎の素敵な笑顔によりそのまま伝七はひっくり返ってしまった。

 

小三郎「あれ?」

兵太夫「うわぁぁぁ!伝七!?」

藤内「で、伝七が悩殺されたぁ!?」

喜八郎「おやまぁ。」

小三郎「で、何でアヒルさん被ってるの?」

兵太夫「質問遅いよ!!!この天然!」

小三郎「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小三郎「つまり、棚の上にあったフィギュアを取ろうとして滑って転んだ弾みに被ってしまって取れなくなったって事?」

兵太夫「そうなんだよ!引っ張っても取れないし…。」

 

委員会メンバーが考える中、小三郎は鉞を振り上げる。

 

小三郎「割っちゃいますか?」

伝七「や、やめてくれ!!僕の頭まで割る気!?」

小三郎「大丈夫!痛くないから。気持ちよくて極楽だよ?」

藤内「死前提!?ダメだよ!それにこのフィギュア結構高いんだから!!」

 

割ることは却下された。

 

 

 

 

伝七「おしまいだぁ。一生取れないんだぁ。」

兵太夫「で、伝七。落ち込まないで!」

喜八郎「そうそう大丈夫だよ。」

 

伝七をフォローするのを見て小三郎は何かを思い出した。

 

小三郎「そういえば…似たような話を兄者と喜三太から聞いた事がある。」

兵太夫「喜三太と留三郎先輩から?」

小三郎「うん。少し前に用具委員会を手伝った時にみんなの思い出話を聞いてね?なんでもしんべえは昔お寺のご本尊の首を被って抜けなくなったんだって。ほら。今の伝七みたい。」

喜八郎「でもさっきしんべえ達に会ったけど。」

藤内「普通だったけど?」

小三郎「なんでも黒古毛般蔵先生って言う人が胡椒を隙間に吹き付けくしゃみの反動で抜けたらしいですよ?試してみます?」

兵太夫「やってみる?伝七?」

 

伝七を見ると少し考えてから頷いた。

 

伝七「背に腹はかえられない。頼むよ。」

 

伝七の言葉を聞くと小三郎は懐に手を入れる。

 

小三郎「確かぁ。あった!」

 

小三郎は懐から胡椒の入った袋とすり鉢とすり棒を取り出し茣蓙の上に置く。

 

兵太夫「出た!小三郎の不思議な懐!」

伝七「待て待て!何処に入っていたんだ!?」

小三郎「何処って此処さぁ?」

 

小三郎が自分の懐を指差すと作法一同はすっ転んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すり鉢で胡椒をすり竹筒に詰める。

 

小三郎「はい伝七。少しフィギュア持ち上げて?」

伝七「こう?」

小三郎「そのままね?」

 

竹筒を隙間に差し込み、息を吹き付けフィギュア内部に胡椒を散布。

 

伝七「ふ、ふぁ…ふぁ…ふぁっくしょん!!!」

 

スポーーーン!

 

兵太夫「やったぁ!取れた!」

藤内「あぁ!?フィギュアが!」

 

見事くしゃみの反動でフィギュアが取れたが弾みで飛んでいってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仙蔵「少し遅れてしまったなぁ。みんなちゃんとやっているか?」

 

実習で遅れた作法委員会委員長立花仙蔵が倉庫へ向かう途中、そこへ何かが飛んできた。

 

仙蔵「ん?なんだあれは?」

 

目を凝らしてよく見るとそれは先程伝七が被っていた学園長ヘアーのアヒルさんフィギュア。しかし反動で顔のパーツがめちゃくちゃ。

 

 

 

仙蔵「ギョエェェェェ!!なんだこの生首フィギュアは!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。伝七は泣きながら喜んでいた。

 

伝七「取れたぁ!うわぁぁぁん!」

小三郎「良かったね伝七。ってか伝七も泣くと鼻水と涙すごいなぁ?」

 

小三郎は懐にから手拭いを取り出し伝七の涙と鼻水を拭う。

 

兵太夫「何はともあれだね?」

喜八郎「良かった良かった。」

藤内「まだですよ!飛んでいったフィギュアを探しに行きませんと。」

 

藤内の発言を聞きみんなで飛んでいった方を見ると、立花仙蔵が走って来るのが見えた。

 

仙蔵「お前達!生首フィギュアが飛んできたぞ!どういう事だ!」

兵太夫「立花仙蔵先輩!」

藤内「良かった〜。手間が省けた。」

仙蔵「どういう意味だ?それになんで火薬委員の小三郎がいるんだ?」

 

小三郎「実はカクカクシカジ、ウェイクでして…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小三郎が一通り説明を終えると立花仙蔵は納得した。

 

仙蔵「なるほど。だからフィギュアが飛んできたのか。伝七。張り切るのは大いに結構だ。だが過ぎたるは及ばずが如しだ。以後、準備は複数人で行う事。いいな?」

伝七「はい…すみませんでした。」

兵太夫「今度は一緒にやろうね?」

 

しゅんとする伝七に兵太夫がフォローを入れる。

 

仙蔵「小三郎も世話をかけたな?礼を言おう。後のことは作法委員会が行う。ありがとう。」

小三郎「いえいえ。世話焼きなものですから。じゃ僕はこれで。」

 

小三郎は再び鉞を担いで金太郎を歌いながら去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

 

小三郎が寝る準備をしていると、誰かが戸を叩いてきた。

 

小三郎「はい。どうぞ。」

兵太夫「こんばんわ。小三郎。」

小三郎「兵太夫。っと後ろにいるのは…伝七?」

伝七「こんばんわ…その……ちゃんとお礼が言いたくて、昼間はありがとう…あのままじゃどうなっていたか…。」

 

伝七がお礼を言うのが慣れてないのかもじもじしながらもお礼を述べる。小三郎はふっと笑い。

 

小三郎「いいよぉ。お礼なんて。僕達友達でしょ?助けるのは当然だよ。」

伝七「と、友達?」

 

兵太夫と伝七が面食らったような表情を浮かべる。

 

小三郎「違うの?あの時の社会見学から友達と思っていたんだけど?まぁいいや。これからもよろしくね?伝七。」

 

小三郎が握手を求め手を差し出す。伝七はぎこちなくだが手を取った。小三郎の笑顔に顔を赤くする。

 

伝七「よ、よろしく…。」

兵太夫「伝七?なぁに顔赤くしてるのさぁ?」

 

兵太夫がからかうと余計に顔を赤くして小三郎から手を離し急ぎ足で自室に戻っていった。

 

小三郎「こら兵太夫!からかわないの!」

兵太夫「は〜い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一年い組の長屋。

 

戻って来た伝七は呆然と虚空を見つめていた。

 

佐吉「どうしたの伝七?顔が赤いよ?」

伝七「………。」

佐吉「伝七?」

伝七「男でも……惚れるかも…。」

佐吉「は!?」

 

 

 

これが後に小三郎の二つ名が増えるきっかけであったりなかったり。


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