忍たま乱太郎〜食満留三郎の弟〜   作:誰かの影

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予算会議の乱は僕が止めるの段

五月半ば。いよいよ予算会議。小三郎は部屋で髷を解き、つげの櫛に椿油を浸し髪を解く。その表情はまさに死地に赴く武者。しかし何処か穏やかである。

 

そんな身支度をしている小三郎を部屋の外で伊助が待っていた。そこへ火薬委員会の面々がやって来た。

 

平助「伊助。」

伊助「久々知先輩。タカ丸先輩と三郎次先輩。」

タカ丸「小三郎は?」

伊助「まだ準備中らしくて…。」

三郎次「準備って何をそんなに……小三郎〜!置いてくぞ〜!」

 

三郎次が声をかけると同時に戸がゆっくり開く。

 

 

 

 

次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ギャァァァァァアアアア!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶叫が上がった。そこには髷を解き髪が靡き、頭にロウソクを付け、右手に刀、左手に火縄銃。全身白装束に身を包んだ小三郎が立っていた。

 

 

小三郎「おまたせしました。さぁ……逝きましょうか?」

 

平助「○つ墓か!お前は!!」

タカ丸「しかも「逝きましょうか」が字が違う!!」

三郎次「本当にやめろ!シャレにならない!」

伊助「殺戮に行くんじゃないよ!?予算会議だよ!?確かに乱闘にはなる時もあるけど小三郎の野郎としている事は殺戮だよ!!!」

 

みんなが必死に止めるのを見て、小三郎はニッと笑う。

 

小三郎「冗談だよ♫冗談♬」

 

普段の様に愛想よく笑う……しかし火薬委員会のメンバーが小三郎の部屋の中にあるモノを見た瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

背筋が凍った。そこには大きな研ぎ石と試し切りしたであろう木偶が転がっていた。

 

 

 

 

 

「「「「殺る気満々……っ!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小三郎は普段の装束に着替えいざ、予算会議室へ向かう。葛を背負って。

 

伊助「その葛なに?」

小三郎「備えあれば憂いなし。でしょ?」

平助「はははっ。頼もしいな。」

 

 

 

 

 

 

 

ドォーン!!!

 

 

 

 

伊助「な、何!?」

タカ丸「爆発音…だよね?」

三郎次「それに…なんだか騒がしい声が…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予算会議室

 

小平太「文二郎貴様ぁぁ!!」

仙蔵「予算よこせぇ!」

長次「ぬわははは!ヒャハハハ!!!」

伊作「とりあえず落とし紙投げるね?」

 

文二郎「体育委員会!バレーボールを投げるなぁ!!作法委員!生首フィギュアを投げるなぁ!図書委員会!図書カードを手裏剣がわりに投げるなぁ!保健委員!嫌がらせか!?」

 

そこはもはやカオスな状況。生物委員会と学級委員長委員会のメンバーがハラハラと見ている。

 

平助「勘右衛門!八左ヱ門!無事か!?」

勘右衛門「平助!良かった!まだまともな委員会が残っていたぁ!」

八左ヱ門「生物委員会はまぁ、予算は今回は大丈夫なんだけど……これじゃ…。」

 

パチパチパチパチ。

 

八左ヱ門「ん?な、何やっているんだ?小三郎?」

 

乱闘している委員会以外の人が小三郎を見る。小三郎は葛から算盤と筆を取り出し何かを計算中。そこへ、留三郎率いる用具委員会もやって来た。

 

留三郎「な、なんじゃこりゃ!?」

作兵衛「よ、予算会議は?はっ!左門!?」

 

乱闘の中からヨタヨタと三年ろ組の神崎左門が出て来て倒れた。

 

作兵衛「左門!左門!どうした!?」

左門「と、刻が見える…。ガクッ。」

作兵衛「左門〜〜!!!」

 

それからは左門を始め次々と怪我人が続出。体育委員会が投げた砲丸に当たるもの。図書委員会のカードが刺さるもの。生首フィギュアに当たるもの。小三郎はそれらを見ながらなおも筆と算盤を動かして書き進める。

 

留三郎「こ、小三郎は何をしているんだ?」

平助「わ、分かりません。急に何かを計算し始めて…でも止めちゃダメな空気が…。」

留三郎「小三郎一体何を…なっ…。」

 

留三郎が小三郎の記入している紙を見て、思わず絶句した。そこには。

 

 

「修補及び怪我人の治療費」

机、扉、窓の格子、壁、本棚の破損。計五万文

床、天井、柱の破損。計三万文。

 

怪我人、現在70名。切り傷、打ち身、打撲など計7万文。

 

 

留三郎「こ、こいつ。こんな状況で修補代と治療費代を計算している!?」

八左ヱ門「は!?」

勘右衛門「ま、まじかよ!?」

伊助「サブちゃんすご〜い!!」

 

 

小三郎は再び葛に手を入れ、焙烙火矢に似た玉を取り出し着火。

 

小三郎「皆さん!そこまでです!!!」

留三郎「ち、ちょっと待て!ふ、伏せろ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その刹那、凄まじい爆発音が響き渡り、余りの凄まじさに爆心地にいた全員が気絶してしまった。

 

小三郎「ふぅ。何とかなった。」

留三郎「何とかなったじゃない!!焙烙火矢爆発させる奴があるかぁぁ!!」

平助「い、今のは焙烙火矢じゃなくて「鉄はう」!?大丈夫です。留三郎先輩。これは鉄はうといって大きな音がするだけです!」

留三郎「は?」

 

留三郎が振り返ると部屋は吹き飛んではいなかった。そして大量の投擲物から文二郎が這い出して来た。

 

文二郎「か、火薬委員会……焙烙火矢を投げるなぁ……。」

 

それを機に各委員会の委員長が起き出した。

 

小三郎「そこまでです。各委員会の委員長方。今回の予算は用具委員会と保健委員会で八と七で分配です。見てください!壁や天井や床や戸や窓を!破損しちゃっています!それに怪我人も出ています!乱太郎!及び保健委員会の皆さん!直ぐに見てあげて下さい!」

 

乱太郎「わ、わかったよ!伏木蔵、左近先輩!数馬先輩!伊作先輩!」

 

乱太郎の声に保健委員会は怪我人の治療の為医務室へ向かった。小三郎は紙を文二郎に突き付けた。

 

小三郎「詳しい見積もりはここに。あっ、あと拒否は出来ませんからね?他の委員長もです。誰のせいか分かりますよね?」

 

文二郎「ぐっ…。」

仙蔵「くっ。」

小平太「うっ…。」

長次「もそっ…。」

 

怪我人や破損させたのは間違いなく自分達が関わった為小三郎の意見を拒否出来なかった。その後に安藤先生がやって来た。

 

安藤先生「な、なんです!これは!」

小三郎「ご心配なく。安藤先生。予算の話し合いは既にすみました。あとお願いします。」

 

 

そのやり取りを、留三郎は誇らしく。火薬委員会のメンバーは尊敬の眼差しで見ていた。

 

留三郎「流石は俺の出来た弟!」

平助「す、凄すぎる。他の委員長を抑えちゃうなんて。」

 

 

こうして予算会議は終了し、各委員会の委員長も小三郎の言葉に異を唱えられず、予算は用具委員会と保健委員会に回った。そして小三郎に二つ名が増えた。

 


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