忍たま乱太郎〜食満留三郎の弟〜   作:誰かの影

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長らくお待たせしました!伊賀崎孫兵が登場します。


贈り物騒動の段

小三郎「たぁ!はっ!てゃ!」

 

夏真っ盛り。小三郎は毎日の鍛錬のおかげか夏バテにならずに今日も早起きをしてゴザを相手に体術の練習に挑んでいる。するとそこへ小包を持ったヘムヘムがやって来た。

 

ヘムヘム「ヘ〜ム〜。」

小三郎「ん?おはようヘムヘム。どうしたの?」

ヘムヘム「ヘムヘム〜。」

小三郎「僕宛に小包?」

 

小三郎はヘムヘムから小包を受け取り、部屋へ戻り汗を拭ってから小包の封を破る。中には母からの手紙と小壺から入っていた。

 

『小三郎へ。貴方が忍術学園に入ってから大分経ったけど順調ですか?友達はたくさん出来ましたか?先日庭のクチナシの花が咲きました。椿油に混ぜて香油にしましたので送ります。』

 

 

 

小三郎「クチナシ…そっかぁ。もう八月かぁ。ん?」

 

しみじみ思っていると手紙にまだ先がある事に気がついた。

 

 

 

 

 

 

『追伸:留三郎からの手紙で知りましたが、崖から落ちたそうですね?友達思うのは大変素晴らしい事ですが自分も大切にして下さい。それからご飯もたくさん食べて、よく遊び、よく学び、そらからそれからそれからそれから……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

小三郎「追伸が長いよ!母さん!」

 

手紙を片付けた後に返事の手紙を書き、ヘムヘムに渡してから早速髪につけようと頭巾を取り髷を外し、小壺から数滴垂らし櫛で梳かす。

 

小三郎「この香り……実家を思い出すなぁ………でも、甘えない!めげないしょげない泣かない!兄者の様な立派な忍者になるまで僕頑張る!!!シャァァァッラァァッ!!!」

 

甘えの感情と夏の暑さを吹っ飛ばすために気合いの雄叫びをあげた。

 

 

バタバタバタ!

 

途端に複数の足音が近づいて来る。

 

乱太郎「ど、どうしたの⁉︎大丈夫⁉︎」

きり丸「小銭無くしたか⁉︎」

しんべえ「ご飯ひっくり返したの⁉︎」

 

 

小三郎「あっ……///……た、ただの気合い……あっ…ハハハハハ……///……ごめん。」

 

小三郎は恥ずかしさで少し赤くなりながら頭をかいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーン!カーン!

 

ヘムヘム「へ〜ムヘムヘムヘム!」

 

 

 

 

 

 

半鐘が鳴り、一限目の授業が始まる。

 

庄左ヱ門「起立!礼!」

全員「おはようございます!」

土井先生「おはよう!では今日は……ん?クンクン……しんべえ、何か果物食べたか?」

しんべえ「僕食べていません!」

土井先生「それにしてはなんだか甘いいい匂いがするが?」

 

確かに土井先生の言う通り、は組の教室内にはほんのりと甘い香りが立ち込めている。

 

喜三太「クンクン、クンクン。ん?先生!小三郎から匂いがします。」

金吾「クンクン。あっ。ほんとだ!いい匂い。」

しんべえ「美味しそう!」

乱太郎「よだれよだれ!」

 

全員が鼻をヒクヒクさせ、香りを嗅ぐ。

 

小三郎「すみません。実家からクチナシの香油が送られて来てつけてみたんです。あっ。授業の妨げになりますか?」

土井先生「いや。むしろいい香りだ。さぁ!授業を始める。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後の火薬委員会で小三郎は斉藤タカ丸先輩と伊助に引っ張りだこにされた。

 

タカ丸「小三郎は他の忍たまとは違い清潔にしてるよね〜?」

伊助「その匂い。僕の家でも嗅いだ事あるよ?クチナシだよね?染物に使うんだよ。」

 

小三郎「褒めてくれるのは嬉しいけど…タカ丸先輩。伊助。苦しい……。」

 

タカ丸と伊助が小三郎に抱きつく様にしているため息苦しそうにしている。その様子を呆れた様に三郎次が、微笑ましく兵助が見ている。

 

三郎次「あんなに清潔にして、男としてどうなんでしょうかね?」

兵助「いいじゃないか。臭い匂い漂わすよりいい匂いを振り撒く方がいいさ。それよりもタカ丸さん!伊助!小三郎がいい加減潰れるぞ!」

 

伊助「あぁっ⁉︎」

タカ丸「ご、ごめん…。」

小三郎「ぷはぁ!極楽が見えちゃった。」

三郎次「オーバーな!」

 

しばらく他愛もない会話をしていると火薬壺を運ぼうとした三郎次が大声を上げた。

 

三郎次「うわぁぁ!へ、蛇だぁ!!」

兵助「なに⁉︎」

 

全員が三郎次が指差す壺の後ろを覗く。

 

伊助「あっ。ジュンコだ!」

小三郎「じ、ジュンコ?雌なんだ?誰かのペット?」

伊助「三年い組。通称、毒虫野郎こと。伊賀崎孫兵先輩のペットだよ。マムシのジュンコ。よく逃げちゃうんだよ。」

小三郎「ど、毒虫野郎?誰だよそんな呼び名付けたのは!野郎って失礼だと思うけど。でもそうなら孫兵先輩に返して上げないと。ホラ、こっちにおいで?」

 

小三郎が噛まれない様に注意しながら手を出す。最初こそ警戒していたが、ジュンコが鼻をひくつかせ何かを感じ取ると、それまでの警戒を解き、小三郎の手から登り首にすっと巻き付いた。ジュンコの表情はいつになく、少し酔っているかの様になっている。

 

伊助「ジュンコが自ら小三郎の首に…。」

兵助「クチナシの香りの影響だな。」

タカ丸「だね?クチナシの香りは蛇が好むって昔から言われているから。ちなみにクチナシのクチって言うのはくちなわ、すなわち蛇の事なんだよ?」

三郎次「って言うか、小三郎よく平気だな?」

 

普通なら嫌がるはずだが小三郎は平然としている。

 

小三郎「いやぁ。実家で薪拾いや草むしりすると必ず蛇に出くわしましたから慣れてますし…以外にこのジュンコちゃんだったっけ?大人しいし…よく見ると可愛いし。」

 

小三郎はジュンコの頭を指でそっと撫でる。

 

小三郎「でも孫兵先輩探しているよね?ちょっと届けてき…「ジュンコぉぉぉ!!」……目の前にいましたわ。」

 

小三郎が火薬庫の扉を開けると同時に伊賀崎孫兵が血眼になりながら火薬庫付近の草むらを探していた。

 

小三郎「孫兵先輩。ジュンコちゃんならここですよ?」

孫兵「へ?ジュンコぉぉぉ!!」

 

小三郎の首に巻きついているジュンコを見て孫兵は声を上げた。

 

小三郎「火薬庫内の壺の裏側にいました。今お届けに行こうかと。」

孫兵「そうか。よかったぁ。ジュンコぉ…心配したんだぞ…ほら、生物飼育小屋に帰ろう。」

 

孫兵が手を差し出す。しかしジュンコは一向に小三郎から離れようとしない。

 

孫兵「どうした?ジュンコ?ま、まさか浮気⁉︎」

小三郎「いやいや違います!」

兵助「小三郎のクチナシの香油の匂いが好きなんだろう。」

孫兵「久々知先輩。クチナシの香油……確かに小三郎から甘い香りが……そうか!その手があったか!小三郎!」

小三郎「は、はい?」

 

急に肩を掴まれ戸惑う。

 

孫兵「僕に香油を分けてくれ!」

小三郎「は、はぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火薬委員会の面々と孫兵を連れて小三郎は自室へと向かう。そして中へ入れる。

 

兵助「へ〜。きちんと整理整頓出来ているんだな?」

伊助「勿論です!小三郎はは組有数の部屋綺麗の一人です!」

三郎次「まっ。ましな方か。でも一人部屋とは贅沢な。」

タカ丸「乱太郎達が三人だから二人で残りを割ると一人残っちゃうから仕方ないよ。」

 

 

小三郎「はい。孫兵先輩。」

孫兵「これでもっとジュンコや他の虫達と仲良くなれる!」

 

小三郎から小壺を受け取るとなんと孫兵は香油を大量に頭に振りまいた。

 

小三郎「孫兵先輩!かけ過ぎです!ほんの数滴で……うっ。」

 

孫兵からは何故かいい匂いはせずかえって変な匂いを発した。

 

伊助「孫兵先輩……お風呂入ってます?」

孫兵「い、いや。最近虫の世話で疎かにしていたなぁ。」

 

タカ丸「そ、そりゃ、ダメだよ。香油ってものは肌や髪を清潔にしてからじゃないと……はっきり言って…。」

 

三郎次「なんとも言えない…だけど決していい匂いじゃありません。」

 

孫兵「そ、そんな!あ、あれ?じ、ジュンコ?」

 

小三郎の肩からジュンコは降りてそのまま床下に逃げてしまった。

 

孫兵「ま、待ってジュンコ!行かないで!」

 

孫兵は大慌てで部屋を飛び出し行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兵助「……どうやらジュンコには凄まじい悪臭に感じたんだろうな?」

伊助「小三郎…今度からはそれはなるべく使わないようにね?」

小三郎「う、うん……(あ〜ぁ。半分以上なくなっちゃった。)。」


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