真面目小三郎が出ます。
兵庫水軍の社会見学が終わり、いよいよお待ちかね!お魚バーベキューが始まることになった。しかし、みんなが楽しみにしている中、船頭の由良四郎が血相を変えて飛んで来た。
由良四郎「お頭大変です!」
協栄丸「どうした?由良四郎。」
由良四郎「それが、どうやらさっきの嵐で発生した高波がここまで来たらしく、お魚バーベキュー用のお魚が籠ごと流されてしまったようで。」
協栄丸&は組一同「えぇぇぇぇぇ!!!???」
鬼蜘蛛丸「うっぷ……う、迂闊でした……まさか波がここまで……ウプッ!」
疾風「陸酔い治るまで喋るな!」
鬼蜘蛛丸が青白い顔で口元を抑え、すまなそうに謝る。
しんべえ「そ、そんなぁぁぁ…!」
乱太郎「あぁ!しんべえ泣かないで!」
きり丸「サブちゃ〜〜ん!サブちゃん出番だよ〜!!」
小三郎「はい。涙とよだれと鼻水拭いて!」
しんべえ「あ、ありがとう……。」
再び小三郎が懐から手拭いとトイレットペーパーを取り出し、しんべえが受け取る。しかしみんな、小三郎も含めてとてもがっかりしている。
庄左ヱ門「まぁまぁ。みんな!なくなっちゃったのはお魚だけだからさぁ。みんなでお魚獲ればいいんじゃない?」
は組一同「え?」
庄左ヱ門の言葉にみんなが首をかしげた。
土井先生「庄左ヱ門の言う通りだ。忍者たる者、嘆いてばかりはダメだぞ?」
山田先生「それに食料調達は今の世に置いてもっとも優先される事でもある!よし、それじゃあ!特別野外授業!なんでもいいから食料を探す事!」
は組一同「えぇぇぇぇぇ⁉︎」
乱太郎「なんか授業になっちゃった!」
しんべえ「お魚バーベキューがぁ!」
きり丸「タダ働き!」
全員が文句を垂れる中小三郎が前に出た。
小三郎「でも山田先生の言葉は間違ってないよ。それにお魚バーベキューが中止とは言ってないじゃない。頑張ろうよ。そうだ!兵庫水軍の方じゃなくて僕が料理してあげるよ!」
団蔵「えっ⁉︎」
虎若「マジで⁉︎」
伊助「そりゃいいよ!小三郎味付け抜群だから!」
みんなが一気にやる気になった。その時、協栄丸達、兵庫水軍の方も集まって来た。
協栄丸「獲るのはいいけど俺たちも同行するぞ?」
由良四郎「海は美味しいものもたくさんありますが、同時に危険な生き物もたくさんいますから!」
土井先生「それじゃあ、各チームに分かれて、チーム一つに兵庫水軍の方一名と言う方で。散策開始!」
第1チーム、庄左ヱ門、伊助、団蔵、疾風。
第2チーム、虎若、三治郎、兵太夫、鬼蜘蛛丸。
第3チーム、金吾、喜三太、小三郎、由良四郎。
第4チーム、乱太郎、きり丸、しんべえ、協栄丸。
と言う振り分けになった。
第1チームは波が少しある岩場に竿と餌を持ってやって来た。
疾風「ここならたくさんの魚がいるはずだ。」
疾風の言葉に水面を覗くと、そこには沢山の魚影がある。
伊助「うわぁぁ!一杯いる!」
団蔵「これなら入れ食いじゃない?」
庄左ヱ門「じゃあ、早速取り掛かろうか?」
庄左ヱ門達は釣りの準備に取り掛かった。
第2チームは少し大きめの小舟で少し沖に出て、網の準備をしていた。本当は陸地で釣りでもやろうとしたが、鬼蜘蛛丸の陸酔いが悪化した為、海上で網漁を行うことにした。
鬼蜘蛛丸「そっち網絡まってないか?」
三治郎「大丈夫で〜す!」
兵太夫「こっちも大丈夫です。」
虎若「って言うか鬼蜘蛛丸さん。元気になりましたね?」
鬼蜘蛛丸「俺は海に出ればへっちゃらだからな!」
鬼蜘蛛丸が爽快に笑った後に網を海に投げ入れた。
第3チームは潮の引いた磯にやって来た。ちなみに何故に磯に来たかと言うと、由良四郎曰く、「もっとも確実に食料が手に入るから。」だからである。
由良四郎「ウニや尖った貝で怪我しないように気をつけて!稀にウミヘビとかもいるから!」
金吾&喜三太&小三郎「は〜い!」
三人は熊手と鑿を持ち、貝拾いを始めた。
第4チームは第3チームのすぐ側の岩場で第1チームと同じく釣りの準備をしていた。違いと言ったら波が少し大きめ。
協栄丸「ちょっと波があるが、ほら!」
乱太郎「うわー!」
しんべえ「お魚が一杯!」
きり丸「お魚で…。」
きり丸が沢山の魚影を見て銭儲けと言おうとした時だった。
小三郎「銭儲けはいいけどちゃんとお魚釣ってよ〜!きり丸〜〜!」
きり丸「だぁぁぁぁ!」
乱太郎達が磯の方を見ると小三郎が手を振っていた。
きり丸「お前小三郎!俺以上の地獄耳だな!」
それから一刻。
庄左ヱ門「わぁ!また釣れた!」
伊助「こっちも!」
団蔵「こっちも釣れた!でもまた鯵だぁ!」
庄左ヱ門と伊助は入れ食い状態だが団蔵のみ何故か鯵ばかり釣れる。
疾風「鯵釣るの上手いなぁ!団蔵くん。」
団蔵「やめてくださいよぉ〜。人を鯵獲り名人みたいに……。」
庄左ヱ門「まぁまぁ。」
第2チームは仕掛けた網を掛け声を言いながら引き揚げていた。
鬼蜘蛛丸「えいや!そらよ!」
虎若「どっこい!こらしょ!」
三治郎「オーエス!オーエス!」
兵太夫「さ、三治郎それ南蛮語?」
三治郎「少し前にカステーラさんから聞いたんだ。あっ!見えてきたよ!」
三治郎が指差すと、水底から網が上がってくる。大量では無いがいろんな魚が掛かっている。それを魚入れに入れてさぁ戻ろうとした時、鬼蜘蛛丸が何かを飲む。
兵太夫「鬼蜘蛛丸さん。何を飲んでいるんですか?
鬼蜘蛛丸「あ?陸酔い止め。」
虎若「だぁぁぁぁ!」
三治郎「お、陸酔い止めなんてあるの?」
カリカリ、ポロ、カリカリ、ポロ。
第3チームは次々に岩に張り付く貝やカメノテや食べられそうな海藻を取り籠に入れていく。だが……。
金吾「た、確かに確実に食料が手に入るけど…これは……。」
喜三太「地味すぎじゃない?小三郎、由良四郎さん。」
非っ常に地味、地味である。
由良四郎「そうか?一番安全だと思うが……。」
小三郎「そうだよ。金吾、喜三太。安全第一だよ?」
喜三太「あっ。久しぶりに真面目小三郎が出た。」
小三郎「僕はいつでも真面目だよ!まぁ、それは良しとして……金吾、喜三太!足下!!!」」
小三郎は素早く苦無を取り出し、金吾の右足元に投げた。
ジャキン!
金吾「うわぁぁぁぁ!」
喜三太「危ないじゃないか!!小三郎!」
小三郎「何言っているの?もうすぐ二人とも危なかったんだよ?」
喜三太「へ?」
訳がわからないと喜三太と金吾は足元を見る。そこには……。
金吾「ぎゃぁぁぁぁ!!ウミヘビィィ!!!」
喜三太「キャァァァァ!!」
そこには頭を苦無で刺され岩場に磔になった猛毒のウミヘビがいた。
由良四郎「やっぱりいたか!三人とも、噛まれていないか⁉︎」
小三郎「大丈夫、仕留めました!」
由良四郎はそれでも危ないと言い、持っていた刃物でウミヘビの頭を切り落とし海に捨てた。そして胴体は食べられるらしく籠に入れた。
金吾「あ、ありがとう小三郎…。」
喜三太「も、もし噛まれていたら……。」
小三郎「最悪死んでた。」
喜三太「ひぃぃぃ!!」
小三郎「いい?金吾、喜三太。忍者の食料調達は本来は地味であるものなんだよ?それにサバイバルで派手さを求めたり今みたいに油断したら次に待つは死だよ?」
小三郎の話に金吾と喜三太は青ざめる。現に先ほど死にかけたのだから。その様子を山田先生、土井先生が目を輝かせ見ていた。
山田先生「おぉ!素晴らしぞ!小三郎!」
土井先生「本当に…彼が来てくれて良かったですぅ!」
涙を流す土井先生の存在を知らずに小三郎はあれをご覧よと乱太郎達を指差した。
金吾と喜三太が乱太郎達の方を見る。お約束のごとく坊主かと思われたが意外な事にかなり大量である。
協栄丸「入れ食いだぁ!」
乱太郎「よかったねしんべえ!これならお腹一杯になるよ!」
しんべえ「うわーい!」
きり丸「余ったら分けてくれますよね⁉︎アヒャヒャヒャヒャヒャ!」
きり丸の目が小瀬になっているのは置いといて、金吾と喜三太はある事に気がついたら。海面が上昇したのか乱太郎達の立つ岩のすぐ下まで海水が来ているのだ。協栄丸も気がついていない。
そして……。
ザァァァァァァァァァァ!!!ザバァァァァアアン!!!
らんきりしん「うわぁぁぁぁ!!」
協栄丸「ぬおぉぉぉぉ!!!」
高い波がやって来てあっという間に四人を飲み込んでしまった。しかしすでに察していた土井先生、山田先生が救助にあたり事なき得た。
小三郎「ほ〜ら。油断した。で?魚釣りするの?」
金吾「………貝を……。」
喜三太「拾いますです……。」