一月が過ぎ、二月。今日は節分の為、忍術学園の生徒達は豆まきを楽しんでいた。その中でも、豆腐小僧こと久々知兵助は一番楽しんでいた。
兵助「鬼は外!福は内!豆腐小僧は俺!」
三郎次「じ、自分で言いますか?それ。」
火薬委員会は今日も詰所に集まっていた。恐らく催し物の回数は学園一だろう。今日は節分パーティー。
三郎次「しっかし…見事に大豆尽くしですねぇ〜!」
タカ丸「仕方ないよ。委員長が久々知くんだから。でも小三郎のお陰で味のバリエーションも増えたからいいじゃない?それに……久々知くん。小三郎が来る前より一層楽しそうだし。」
土井先生「だな。」
タカ丸と三郎次は兵助を見る。
兵助「鬼は外!」
伊助「福は内!」
小三郎「ドンドンドン!チャカチャッチャ!ドド〜ンがドン!チャカチャッチャ!」
小三郎だけは豆を縦横無尽に撒き散らし、聞いたことのあるフレーズを口ずさむ。
三郎次&土井先生「だぁぁぁぁ!」
三郎次と土井先生がひっくり返った。
土井先生「こ、小三郎…お前は本当に…。」
三郎次「真面目なのかふざけているのかどっちなんだ!」
タカ丸「でも髪は綺麗だよね?」
小三郎の割と綺麗な髪をタカ丸は目を輝かせてみる。
しばらくして巻き終わり、委員会全員で恵方巻きを食べる。案の定、三郎次が伊助と小三郎にちょっかいを出してきた。食べ終わるまで喋れない為、伊助は非常に嫌そうな表情を浮かべる。そして小三郎にちょっかいを出した…その時だった。
パシッ!
三郎次(は?)
小三郎「…………。」
なんと小三郎は片手で三郎次の手を掴み、片手で何食わぬ顔で恵方巻きを食べる。三郎次が次々ちょっかいを出して行くが、やる度に手を払われ、はたき落とされ、触れることも出来なかった。その内に小三郎は食べ終えた。
小三郎「ぷはぁ。ごちそうさま。三郎次先輩。何か用ですか?」
ニコリと笑い尋ねる。すると三郎次は一歩下がり土下座。
三郎次「参りました…。」
伊助「凄っ!」
土井先生「流石だな。」
土井先生に褒められ、小三郎はニコリと笑った後に立ち上がった。
伊助「どこ行くの?」
小三郎「ちょっとトイレ。」
伊助「ならついでに僕も行こう。」
伊助と詰所を出て厠に向かう。その途中であちこちから豆まきの声が聞こえてきた。
小三郎「こりゃ豆の回収が大変だね?」
伊助「小三郎も縦横無尽に撒き散らしたけどね?」
厠を済ませて戻る途中、小三郎の目に明かりがついている保健室が見えた。前の渡り廊下に豆が散乱している。
伊助「あっ。乱太郎達もやったんだ。保健委員会は別名不運委員会だからきっと沢山蒔いたんだろうね?………小三郎?」
答えぬ小三郎を伊助は覗く、小三郎は怪訝な顔で保健室を見ている。
小三郎「静か過ぎやしない?」
伊助「へ?…そう言われるとなんだか影すら動かないね?あれ?」
伊助も保健室を見る、その時。障子が僅かに開き、その中から、鼻水と涙でベタベタな顔になった伏木蔵が這いずり出てきて倒れた。
伊助「ふ、伏木蔵!!!」
伊助と小三郎は只ならぬ物を感じ取り、伏木蔵に駆け寄る。しかし。
小三郎「伏木蔵!だいじょ……んっ⁉︎」
伊助「伏木蔵!「ダメ!伊助!!!」うわぁぁ⁉︎」
咄嗟に小三郎は身を翻し伊助を抱え込み植木に突っ込んだ。
伊助「 イッタタ…何するの!」
小三郎「保健室の中から変な臭いがしたんだ!毒かも知れない!」
伊助「えぇっ⁉︎」
二人はすぐに吸わないように覆面を着用し、伏木蔵に近寄る。そして伏木蔵を揺する。
小三郎「伏木蔵!伏木蔵!」
伏木蔵「…うっ…こ、小三郎に…伊助?お、お願い…まだ中に……もっぱんが引火して…がくっ。」
伊助「伏木蔵ぉぉ!!」
『もっぱんとは、沢山の刺激物が入った竹筒で、今で言う催涙弾です。』
小三郎と伊助が中を覗くと、そこには同じく、鼻水と涙でグチャグチャになった伊作、数馬、左近、乱太郎が横たわっていた。
小三郎「こ、これはまずい!伊助!すぐに兵助先輩の所へ!土井先生もいるはず。」
伊助「わ、分かった!」
伊助が応援を連れて来る間に小三郎は外から声をかける。
小三郎「乱太郎!大丈夫⁉︎」
乱太郎「だ………大丈夫じゃない……まさか…豆が不運になるなんて……。」
乱太郎とまだマシな伏木蔵曰く、節分の為、不運を払おうと豆巻きをしたが、豆に足を取られた伏木蔵が薬棚を倒してしまい、さらにうどんを作って来た左近先輩が薬と豆に足を取られ、熱々のうどんをぶち撒けそれの一つが数馬先輩に被り、飛び上がっと同時に火鉢をひっくり返して炭が飛び、不運にももっぱんに引火してしまったそうだ。
小三郎「な、何その不運のピタゴラスイッチ。」
伊作「ずまない…みんな…ごんなづもりじゃ……。」
小三郎「伊作先輩!喋らないで!もっぱんがまだ充満しているんだから!」
しばらくすると伊助が火薬委員会と偶然出会った留三郎を連れて戻って来た。
留三郎「大丈夫か!いさ…うわっ。」
火薬委員会一同「うわぁっ……。」
あまりの惨状に思わず絶句した。それからはみんなで協力しながら何とか保健委員会を救出した。
その夜。
伊作「すまない。留三郎。また世話をかけてしまった。」
留三郎「気にするな。同室じゃないか。それにお礼なら小三郎と伊助に言え。特に小三郎な?あいつが違和感に気がつかなかったら危なかったんだぞ?」
布団で横になっている伊作を看病しながら留三郎は言う。
留三郎「しっかし。麻痺性のもっぱんとはえげつないもの作りやがる。」
伊作「いやぁ。今度の予算会議の為に使おうと思っていたんだけどね?」
留三郎「バッキャロォオ!!!死人が出るわ!!」