正月を過ぎた頃、突如寒波が全国に押し寄せ、忍術学園は雪に閉ざされていた。昼だろうが吹く風はとても冷たく、一年は組のみんなは火鉢を囲み、教室の隅により互いに暖め合っていた。
乱太郎「寒い!」
きり丸「まじこれやべぇ…。」
しんべえ「ほっぺがあかぎれになりそう…。」
らんきりしんとみんなが震える中、小三郎は少しだけ窓を開け外を見る。そとは一面銀世界。と言うより吹雪。よく見ると校庭を雪の中を縄で括られた左門と三之助を引きずる作兵衛が見えた。
作兵衛「まったく!足跡を辿ればいいだろうが!」
左門「いや。決して迷子では…なぁ!三之助?」
三之助「ただ厠へ……。」
作兵衛「黙れ!タチ悪りぃんだよ!お前ら!」
小三郎「さ、作兵衛先輩大変だなぁ…。」
昼間でも寒く夜は滅茶苦茶冷える。特に小三郎が所属する火薬委員会の火薬庫は一切火気を持ち込めないから火薬壺のチェックは最悪である。しかし、詰所は極楽。
タカ丸「う~!火薬庫寒いよ~!」
三郎次「う~!」
兵助「我慢してくれ。終わったら湯豆腐が待っているから。」
火薬委員会では久々知兵助委員長お手製の豆腐がある為、豆腐パーティーならぬ鍋パーティーをやる。詰所では仲良し伊助と小三郎が鍋パーティーの用意をしている。伊助は皿と箸を並べ、小三郎は鍋の味をチェック。今回は小三郎が味付けをする事になった。
伊助「小三郎、ほんっとお嫁さんになれるよ!」
小三郎「だから!なんで嫁なのさ!婿にしてよ!」
冗談を交えながら話していると火薬壺のチェックを終えた先輩方がやって来た。
タカ丸「詰所暖か~い!」
三郎次「おっ?なんか美味そうな匂い!」
兵助「何鍋にしたんだい?」
小三郎「今回は!」
小三郎が鍋の蓋を開ける。そこには白濁のスープに彩り野菜と魚と豆腐が浮かぶなんとも美味しそうな鍋があった。
小三郎「豆乳鍋にしてみました!」
豆乳、それを聞いた途端、兵助が目を輝かせながら小三郎を抱き上げ、抱きしめたり、回したり、高い高いしたりした。兵助は豆腐、大豆に関係することは大好きなのだ。
兵助「小三郎!やっぱりお前は分かっているなぁぁ!!お前大好きだ!」
小三郎「よ、喜んでもらえて…良かったです。」
三郎次「豆腐……だ、大豆尽くし!」
タカ丸「でも美味しそうだね~!」
伊助「兵助委員長!小三郎が困っています!」
伊助の言葉に兵助ははっとなり慌てて小三郎を下ろした。それから間も無く土井先生もやって来て火薬委員会、冬の鍋パーティーが始まった。
タカ丸「この魚は三郎次くんの実家から?」
三郎次「はい!父が送ってくれた物です!」
三郎次の実家は漁師でありたまに採れた魚を送ってくる。今回は鍋の具材になった。
三郎次「でもまぁ、よく捌けたなぁ?」
伊助「当然です!小三郎はは組一の出来る子ですから!……三郎次先輩はよく骨が混入しますけどね?(ボソッ)」
三郎次「今バカにしただろう⁉︎」
小三郎「まぁまぁ。こら伊助!「こんな」三郎次先輩でも先輩なんだから!」
兵助&タカ丸&土井先生「ぶっ!」
兵助とタカ丸と土井先生が思わず吹いた。
兵助「こ、こんな三郎次先輩って……ぶっ!」
伊助「ぶっ…くくっ。あっはははははは!!!こ、小三郎〜。君、た、タチ悪いよね?あっはははははは!」
兵助が含み笑いをして堪らず伊助は笑い転げた。小三郎はなんで笑うんだ?っといった感じでぽかんとする。
食満小三郎、普段はは組一の出来る子にして真面目で穏やかでみんなのお手本的な存在だが、少し天然な部分がある、その分タチが悪い。
三郎次「こんな三郎次先輩って…フォローになってないぞ!」
小三郎「うわぁ!すみません!決して悪気は無かったんです!」
三郎次「悪気がない分タチ悪いなぁ!お前は!」
詰所内を三郎次は両腕を上げながら小三郎を追いかけ回す。しかし土井先生が三郎次を止めた。
土井先生「まぁまぁ三郎次!小三郎に悪気は無いし謝ったんだから!」
小三郎「ごめんなさい。」
三郎次「まったくぅ。」
タカ丸「それにしても小三郎くん味付け上手いね?」
三郎次「って!タカ丸さん一人で黙々食べないで下さい!」
伊助「ヒィヒィ!だめ……つ、ツボにはまった…あっはははははは!!!」
三郎次「いつまでも笑うなぁ!伊助!」
こうして美味しく、笑いのある鍋パーティーは終わり、火薬委員会一同身も心もポカポカになった。