投稿する前に一度確認するべきでした。
ちなみに、あんハピ7巻が2月10日に発売されます。
今から待ち遠しいですね。
次回の更新は2月15日ほどになると思います。
「今日は5時限目で終わったていうのに、なんなのこの疲労感は」
幸福実技が終わり、全ての授業を終えた後も、今日は部活は休みなのでまっすぐ帰ろうとしたがヒバリさんに誘われて俺のとはなこさんとヒバリさんと牡丹さんの4人で喫茶店に来ていた。
今は全員ケーキセットを注文して来るのを待っている。
「すごろくで、最後まで残ってしまいましたからね」
「というか最下位だけどね・・」
「肉体的にも精神的にも消耗するようなことばかりだったからね、すごろく」
ヒバリさんに関しては縄跳びのお題の際はなこさんがロープに絡まったり、牡丹さんが怪我してできなくなって結局1人で回数分飛ぶことになったと聞いている。
それ以外にも、色々あったらしいのでそりゃ疲れて当然だろう。
俺自身も殆ど面識のない女子の2人とチームを組んで最下位から2番目になりいろんな意味で疲れてしまっていた。
まあ、調子に乗って安請け合いした自業自得による疲労が大きいのだが。
「本当に申し訳ありません、全くお役に立てず、あ、でもイカごときがみなさんのお役に__」
牡丹さんの自虐はいつものことだが疲労も相まってかいつも以上に激しい気がする。
しかも、イカが気に入ったのか自分の1人称にイカを使っている。
「いや、牡丹さんのおかげで科学クイズをクリアできたって聞いたよ、役に立ってるって」
3人で話しているとはなこさんがいちごオレ持って歩いてくる。
「いちごーおれー、いとごーおれーおまたせー早速今日の宿題を」
その時路地からリードをつけた犬が現れてはなこさんに背中から体当たりを食らわした。
不意に衝撃を受けたはなこさんはバランスを崩しなんとか踏みとどまったが持っていたいちごオレは地面に落下し中身は全て飛び出してしまった。
「ごめんなさい!」
飼い主らしき女性が路地からやって来てはなこさんに謝罪し、そのまま犬を追いかけて走り去ってしまった。
はなこさんは落としてしまったいちごオレを見つめながら「いちごおれ・・」と力なく呟いていてショックを受けているのが伝わってくる。
「はなこ、大丈夫? 本当についてないわね」
「どうぞ」
牡丹さんがポケットからティッシュを取り出しはなこさんに手渡す。
「ありがとう」
ティッシュを受け取るとはなこさんはたちまち笑顔に戻った。
店員さんとこぼれ落ちたいちごオレの片付けを終えるとみんなで席に戻った。
「・・・・ねえ、はなこ、あおいくん」
「なあに、ひばりちゃん」
「何?」
「2人とも、幸福実技の最後、庇ってくれたんでしょう。 私のこと、あ、ありがとね」
「え?」
俺はヒバリさんがあの『好きな人の名前を叫ぶ』という課題の時口を出したことだと察したが、はなこさんは何のことか分からないという表情を浮かべている。
1呼吸分程はなこさんとヒバリさんは見つめ合っていたがヒバリさんは顔を紅潮させ軽く混乱してしまっているみたいだ。
「違うのなら忘れて!」
「何が? 何が?」
「いいの、例の宿題の話をしに来たんでしょう! 早く始めるわよ」
恥ずかしさから必死で誤魔化しているヒバリさんの様子がおかしくて少しだけ笑ってしまう。
俺と同じように牡丹さんもおかしくて小さく笑っているのに気づき目が合い、2人して静かに笑った。
宿題についてヒバリさんから聞くと職員室で小平先生に3人ともそれぞれ異なるラッキーアイテムを週明けに提出するように言われたとのことだ。
それもラッキーアイテムを持ってくるのではなく写真を撮ってくればよくて、しかも、その宿題とは先生の信頼できる占い師から聞いたらしい。
「変わった宿題だね、写真で撮ってくればいいなんて」
それぞれどういう写真なのか聞くと、
牡丹さんは『友達との素敵な思い出』の写真。
はなこさんは「『暁の門に咲く幸福の花』の写真。
ヒバリさんは『自分のとびきりの笑顔』の写真。
と全員バラバラだった。
「見事に難易度に差があるなあ」
一応先生が言うには全てこの街で見つけられるものとのことだが、牡丹さんとヒバリさんの宿題はともかくはなこさんの宿題だけ見当もつかない。
花に詳しいわけではないが、小さい頃からこの町に住んでいるがそんな名前の花など聞いたことがなく、牡丹さんとヒバリさんも同様みたいだ。
「ヒバリさんの写真、私にできることならなんでも協力します!」
「私も!」
「よかったら俺が取ろうか?」
「1人で取れるって!」
「そんなことおっしゃらず、明日はお休みですし、みんなで集まりませんか?」
牡丹さんが話を聴きながら、さっきから気になっている、俺たちがここに来た直後にすぐやって来た謎の2人組に目だけ動かして俺だけひっそりと眺める。
俺たちがここに来た直後にやって来て他にも空いているテーブルはあるのにわざわざ隣の席に座ってきて、2人ともサングラスと帽子をしているが、見覚えのある特徴的な髪型と天野御船の制服を着ている姿から萩生さんと江古田さんだとすぐに分かった。
2人、というより萩生さんが俺たちの隣の席に座り分かりやすい視線を向けていて、新聞紙に穴を開けて片目だけで俺たちを監視していたが怪しすぎてバレバレだったが話に夢中になっている3人は気づいていなかった。
特に思い当たることはないが江古田さんはともかく萩生さんは俺とヒバリさんにすごろくの時もしてやたら絡んで来ていたことがあった。
どうしようか考えて思い切って声をかけることにする。
「萩生さんと江古田さんはそこで何してるの?」
「な、何故わかった!」
声をかけるてみると萩生さんはかなり驚いたが、江古田さんは冷静で普通に会釈を返してくる。
「だって、明らかに怪しかったから」
「響ちゃんと蓮ちゃん!」
「まあ、お二人もいらっしゃったんですか」
「どうしてあなた達がここに?」
「そ、それはひ、響達は喉が乾いてここで休んでいただけだ」
わざわざ下校中に休むために帽子を被りサングラスをかけ、更には新聞史の穴から覗き見るように監視していて、その言い訳はかなり無理がある。
「そうなんだ、響ちゃん達も一緒にお話しない?」
「だ、誰がお前達と一緒になど」
「いいよ」
「蓮!」
「響、行くよ」
江古田さんに手を引かれ萩生さんはともかく渋々といった様子でこっちのテーブルに移動してくる。
こうして萩生さんと江古田さんを含めた6人でテーブルを囲んで話をすることなになった。
俺1人だけ男子なのでちょっとだけ肩身がせまい。
「ところでお前達の宿題とは何なのだ?」
近距離なので聞こえていたはずなのだが
ヒバリさんが簡単に説明し2人に『暁の門に咲く花』について尋ねる。
「暁の門に咲く花・・聞いたことがないな」
「そう、江古田さんはどう?」
「ごめん、私も聞いたことがない」
「蓮ちゃんも知らないんだ」
それから話は今日の幸福実技のすごろくへ移った。
はなこさんが綱を引いたら動物が落ちて来てどの道はずれだったこと、牡丹さんが科学クイズで難しい問題を簡単に正解したこと、俺たちのチームが落ちた先にはワニがいて死ぬかと思ったこと、俺も自分が調子に乗って腕立て伏せ、腹筋、スクワットなどを安請け合いしたせいで苦労したことを話し、それぞれのコスプレの話などに移る。
「ヒバリちゃんのうさぎさんも凄くかわいかったね」
「も、もうその話はいいでしょ!」
すごろくの最後の方で行なった対抗戦では観戦していた7組の男子生徒の視線を集めていたし当人からすれば一刻も早く忘れたい記憶なんだろう。
7組の生徒、特に男子(俺も含めて)にとってはいろんな意味で忘れられない記憶になったが。
「でもヒバリさんは本当にお似合いでしたよ、私が変わっても良かったのですが、私が着たらどんなにおぞましいことか、みなさんの目を潰さないためには・・」
「まあ・・それは・・ある意味」
グラマラスな牡丹さんがバニースーツ姿を想像すると男子には違う意味で目に毒になりそうなのでその言葉ある意味正しいかもしれないと思う。
「確かに雲雀丘にはあの無様な姿はお似合いだったな」
「でも、響もバニースーツを着たがってたじゃないか」
「れ、蓮、何を言う! そんなことは」
「でも、ルーレットを止める時、『来いっバニー』って」
「き、気のせいだ! 気のせい、決して蓮がうさぎ好きだからなどではないからな!」
「ぷっあはははは」
萩生さんが誤魔化しているんだが、認めているか解らない言い方に吹き出してしまう。
それ以外にも、身体測定や部活見学の話、入学初日の課題としてもらった卵がどうして割れたことなど話は多岐に渡った。
一応、同じ苦労を経験し、ある程度会話した仲なので結構会話が弾み、それ以外にも幸福クラスの話やこの前の身体測定の話などの話をして盛り上がる。
萩生さんもやたら俺とヒバリさんに絡んでは来るが悪い人ではないのだろう。
もしかしたらはなこさん達とはいい友達になれるかもしれない。
「あれ、そういえばケーキ来ないね」
確認してみると注文していたケーキセットは連絡ミスで伝わっておらず、さらに間の悪いことにケーキはもう売り切れてしまっていたので食べることはできなかった。
仕方がないのでここでお開きすることになった。
「明日はお休みですし、みんなで集まりませんか? 」
「さんせーい!」
「分かったわ」
「あおいくんと響ちゃんも・・あ、そうか、みんなは宿題は無いんだっけ」
はなこさんの言う通り俺と萩生さんと江古田さんは幸福実技のサイコロで最下位ではないので宿題は出ていない。
友達の手伝いもしたいがラッキーアイテムという位なので自分たちだけの力で探さないと見つけても効果がなさそうだし、それに特別な課題なので手伝ったら意味がないような気がするのであえて言わないことにした。
「そうですね・・全員で一緒に出かけたかったのですが残念です」
「まあ、また今度の機会があったらよろしく」
「じゃあ明日の13時に学校の近くの公園で集合ね」
「はい、待ち遠しいですね」
「みんなでいっぱい遊ぼうね」
「目的はあくまで宿題だろ、じゃあまた明後日学校で」
「じゃあね、響ちゃん、蓮ちゃん」
「響ちゃんなどど馴れ馴れしいぞ、花小泉杏!」
「さよなら、花小泉さん」
家の方角が俺だけ違ったのでみんなと別れて1人で家に帰る。
はなこさん達の宿題を聞いた俺はあることを考えていた。
「帰ったら早速調べてみるかな・・」
翌日
ジャージに着替えて休日の習慣であるジョギングをしていて天気は快晴、風も吹かず、気温もちょうどいいので気持ちよく汗を流すことができている。
そんな中、俺は昨日、自宅で調べたことを思い返していた。
今までのようにただ幸福実技を受けて行くだけでは幸運はつかめないのではないかと考えて昨日の夜に自分なりに開運について調べてみた。
俺は幸運をつかみ取ろうとは考えていたが、その具体的な方法については全く算段を立てていなかった。
それに、意識しすぎているだけかもしれないが最近不運なことが立て続けに自分に起こっているような気さえする。
だったらこの際、学校から与えられる幸福実技だけに頼り切らずに、自分で色々やってみるべきだろう。
だが、だからと言ってどうしたらいいかは検討もつかず、昨日の夜にやったのはインターネットで幸運について調べたりはしたが、結局見つかったのは、パワーストーンや幸せになる壺に怪しい宗教サイト、挙げ句の果てにはアダルトサイトの広告まで出て来て消す方法を調べる羽目になったりと結局具体的な方法は見つからなかった。
まあ、そんな方法があるならとっくに有名になってるだろうし、試しにパワーストーンを買ってみるのもいいかもしれない。
そういえば、朝見たTV番組の占いコーナーでは俺の誕生月は最下位だったがラッキーアイテムとして『珍しい花』を見つけると今日1日は幸せになれるとあった。
しかし、花の知識など全くないので珍しい花が咲いてるような場所など全く分からない。
まあ毎日やっている占いの一つの結果にこだわる必要はないのだが。
「ん、あれははなこさん?」
正面に少し離れていても分かる小柄な体格と、特徴的な四つ葉の髪飾りをつけたはなこさんの横顔が目に入った。
時間的にヒバリさんと牡丹さんとの約束の公園に向かうところなんだろう。
「おーい、はなこさん!」
「あ、あおいくん!」
声をかけるとはなこさんもこっちを向いて手を降ってきて答えてくれる。
よくみるとはなこさんがいる所は川のすぐ真横で嫌な予感がした。
そして、こっちに歩き出そうとしたその時
「あれっ?」
はなこさんは足を滑らせて川に落ちていった。
大きな水しぶきが上がって
「はなこさーん!」
急いで川岸に駆け寄って辺りを見渡したがはなこさんの姿は見えず、無我夢中で川に飛び込んだ。
「ただいまー」
「お帰りはなこ、あらその人は?」
「始めまして、天乃御船学園7組の葵坂幸太です」
川に飛び込んだ直後、浮かんで来たはなこさんを助け出し、すぐ近くに梯子を見つけて這い上がった。
当然ながら全身ずぶ濡れになっていたので着替えを借りる為にはなこさんの家にやって来た。
「あら、あなたがあの葵坂くんね、杏の友達のごめんなさい、うちの娘が迷惑をかけて」
え、娘・・?
「うん、川に落ちたところを助けてもらったんだ」
「あ、いえ、気にしないで下さい」
娘って・・はなこさんの母親なのか、花子さんに聞いてみると名前は花小泉桜というらしい。
はなこさんの姉と言っても信じられるほど見た目が若かくて、女子大生、いや女子高生と言われても十分通じる位だ。
「だからお母さん、お父さんの着替えを貸して欲しいな」
「分かったわ、あおいくん、こっちへどうぞ」
「あ、はい」
そのまま家に入り脱衣所に案内される。
「今から服を持ってくるからその間に脱いだものそこの洗濯カゴに入れて、洗っておくから」
「ありがとうございます」
濡れたジャージを脱ぎ、パンツ以外の下着も脱いでタオルで水滴が残らないよう体をしっかり拭いていく。
脱いだものを洗濯カゴに入れようとした時にある物が目に映り体が固まった。
「これって・・もしかして」
洗濯カゴにははなこさんの着ていた私服が何枚も入れてあり、それと一緒に白い布が何枚もある。
ということはこれは・・はなこさんの下着で・・そしてこれはパン・・
トントン
脱衣所の扉がノックされ飛び上がりそうなほど驚いた。
「は、はい、何ですか!?」
「着替えを持って来たわ、開けてもいいかしら?」
とりあえず、持っている服を洗濯カゴに突っ込んで視界内に下着が映らないようにしておく。
「は、はい、どうぞ!」
できる限り平静を装って声を出したつもりだったがかなりうわずった声が出る。
返事をしてすぐ、はなこさんの母親が脱衣所の扉を開けて入ってくる。
「はい、これに着替えて・・あら大丈夫、顔が赤いわよ、熱があるんじゃないの?」
「い、いえいえ、大丈夫です、本当に!」
下着を見ただけなのだが正直にそんなことを言っても自分が恥ずかしい思いをするだけなので黙っておく。
「あらそう、はいじゃあこれを着て」
はなこさんの父親の服一式を手渡され着替えてみるとほとんど違和感なく着ることができた。
「サイズはあってる?」
「はい、大丈夫です」
「それにしても、しばらく見ない間に大きくなったわね」
「え、どういうことですか?」
「葵坂くんは覚えてないと思うけど昔会ったことがあるのよ、私あなたのお母さんと友達だから」
「ああ、そうなんですか」
昔のことなので記憶に無いけど会ったことがあるらしい、そういえば俺の母さんも天の御船学園の生徒でそこで父さんと出会ったと聞いたことがある。
クラスは聞いたことがないが・・きっと俺と同じ7組なんだろうな。
母さんは父さんと違って高校時代のことは全然話そうとしないからすっかり忘れ去っていた。
帰ったら幸福クラスのことについて聞いてみることにしよう。
「じゃあ向こうの部屋で休んでて」
着替えが終えて、はなこさんと変わる形で脱衣所を出る。
はなこさんの母親からリビングで休むように言われた通り、休憩しているとお茶を貰ったので有り難く飲ませてもらう。
元々ジョギング中で喉が乾いていたこともあって凄く美味しい。
それにしてもこの部屋、いや玄関や脱衣所にもやたらクッションが敷いてあることが少し気になったが理由までは分からない。
「ッ!? ゴホッ、ゴホッ!」
何となく反対側を見てみると大きな窓があって見覚えのある服と白い布が何セットも干してあるのが目に映りお茶を吹き出してしまう。
「一体どうしたの? あらあら、ごめんなさい、変なもの見せちゃって・・キャア!」
はなこさんの母親は慌ててカーテンを閉めに向かおうとした時、途中で転倒してしまったが、クッションが敷いてあったため頭を打つことだけは避けられた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「ええ、大丈夫よ、慣れてるから」
「・・ああ、なるほど・・」
何故この家にこんなに多くのクッションが敷いてあるのか今理解した。
おそらく、はなこさんと母親である桜さんが主な理由なんだろう。
「着替え終わったよー」
桜さんがカーテンを閉めてすぐ、着替えを終えたはなこさんも部屋に現れる。
今はなこさんが着ている服は川に落ちる前と家の外に干してある物と全く同じ物のようだ。
「同じ服何枚も持ってるんだね」
「この子とってもドジだから何枚も用意しているの」
「えへへ」
「そんなに落ちたんだ・・」
「ところで、杏時間は大丈夫? 約束の時間は13時でしょう」
確かに時計を確認してみると既に12時をとっくに過ぎていてまた同じようなことがあれば間に合わないかもしれない。
「そうだね、これでも9回位落ちてるし次家に戻ったら間に合わないかも・・」
9回!? 落ちすぎだろ・・道理であんなにたくさん同じ服が干してある訳だ。
「あの、すいません、もしよかったら・・