あんハピ♪ 目指すは7組脱出!   作:トフリ

4 / 18
10月中に更新する予定でしたが遅れてしまい申し訳ありません。
次は1月10頃に更新する予定です。



4話 初めての幸福実技 前編

第3話

 

健康診断の数日後

 

今日はいつもより早い時間で家を出ているのでいつもより時間に余裕がある。

それでも普段より急いで学校へ向かっていた。

もちろん、事故には合わないように周囲に気を配りながら移動している。

 

「今日から幸福実技が始まるから絶対に遅刻しないようにって小平先生から言われていたからな・・」

 

少なくとも今日だけは絶対に遅刻するわけにはいかない。

遅刻したらどうなるか・・考えるだけでも恐ろしかった。

 

「ん、あれは?」

 

道を進んでいると天之御船学園の制服を着た赤髪の女子生徒の姿が目に入る。

よく見ると、その女子生徒は俺と同じ幸福クラスの生徒で、クラス内で見かけた記憶がある。

地図を持って辺りを見回しながら右往左往しており、しかもその最中に一時停止の標識に顔をぶつけた。

かなり痛そうで、実際その子も顔を抑えてうずくまっている。

こっちも急いでいたが放ってはおけず声をかけてみる。

 

「あの・・」

 

「ん? お前は!」

 

声をかけると、その女子生徒はこっちに鋭い視線を向けてくる。

 

「ええと、君って俺と同じ幸福クラスだよね?」

 

「ああ、知っているぞ、お前葵坂幸太だろう!」

 

やたら、強い口調で名前をフルネームで呼ばれる。

父親が有名人ということもあるが、入学初日に先生の前で直談判したこともありクラス全員俺の名前が知られていた。

しかし、目の前の女の子とは全く面識がなく鋭い視線を向けられる理由が全く心当たりがない。

 

「ああそうだけど、もしかして君道に迷ってる?」

 

「な、何を言っている響は別に道に迷ってなどいない!」

 

女子生徒は顔を赤くして大声で怒鳴ってくる。

少なくとも、恥ずかしさからではなく怒りから赤くなっていることは容易に理解できた。

 

「え、じゃあ何で地図なんて持ってるの?」

 

「こ、これはただ現在地を確認するために広げていただけだ!」

 

いや、どうみてもさっきの様子で迷っていないと言うのは無理がある。

 

「ふん、もう行くぞ、もう時間があまりないんだ、お前に構ってる時間はブホ!」

 

前をよく見ないで歩き出していたため、まともに電信柱に正面衝突する

もしかしたらわざとじゃないかと思うほど見事にぶつかった。

しかも、1分前にも同じように道路標識にぶつかっていた為なおさらそう見える。

 

「だ、大丈夫?」

 

「へ、平気だ、もう行くからな!」

 

女子生徒はそのままT字路を学校とは逆方向に進んでった。

 

「い、行っちゃたよ・・」

 

あまりにも迷いなく逆方向に進んで行ったので間違いを指摘できずつい見送ってしまった。

追いかけてでも正しい道を伝えようと思い、慌てて自転車をこぎ出そうとしたが視界の隅に妙なものが映って足が止まる。

 

「な、何だあれ!?」

 

視線の先には天之御船の女子生徒・・と正確に数え切れないほどの犬猫がいた。

正しくは女子生徒にその犬猫がまとわりつき、中には顔に張り付いているものまであいた。

そのせいで顔はうまく見れず、所々に視認できる制服から何とか同じ学園の生徒だと言うことが理解できる状態だった。

その女子生徒は自分のすぐ近くまでやってくると顔に張り付いている猫を外し、「この辺りで道に迷っている女の子は見かけなかった?」と尋ねてきた。

 

明らかにとんでもない状況に見えるが本人は至って冷静でまるでこっちが無駄に大騒ぎしているかのような錯覚も覚える程だ

 

「あ、ああそれなら・・あっちに行くのを見たよ」

 

「ありがとう、それじゃ」

 

その女子生徒は現状を気にすることなく犬猫にまとわりつかれたままゆっくりと俺が教えた方向へ進んで行った。

 

「なんだったんだ一体・・?」

 

朝からとんでもないものを見てしまった・・

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか、あおいさん?」

 

「な、何とかね・・」

 

自分の机の上に顔を載せて息を荒げて、作り笑いをする余裕もないほど疲れ切っていたが何とか小平先生とほぼ同時に教室にたどり着き遅刻は免れた。

時間にはまだ余裕があったはずなのだが、途中で自転車のタイヤがパンクしてしまい

近くに置いておこうかと考えたが生憎その付近の土地勘がなく、更に盗まれてしまうことも考え止むを得ず抱えたまま登校し遅刻はせずに済んだが疲労困憊になっていた。

 

「まあこれもいい運動になったと思えば・・」

 

「そ、そう、ポジティブね・・」

 

そんな話をしながら俺は誰も座ってない2つの机と椅子に目を向ける。

今朝登校中に出会った2人のクラスメートはまだ来ていない様でどうやら遅刻しているみたいだ。

 

「はいみなさん注目してください」

 

小平先生の一言でクラスの全員が雑談を止めて黒板に視線を向ける。

 

「はい本日から7組の特別カリキュラム、幸福実技を行います、最初の実技はみなさんで楽しいすごろくをしますよ」

 

すごろくだって・・?

先生がそう言うと教室の中がざわざわと騒がしくなる。

俺自身も幸福実技がどんなものか考えていたのだがさすがにすごろくとは予想できずあっけに取られていた。

 

「わぁ〜面白そうだね」

 

「すごろくでしたら大事故や大怪我の心配はないですからね」

 

「爆発もないよね」

 

「いや、日常生活の中でどれもそうそう起こらないから、というか起こってたまるか」

 

例外ははなこさんと牡丹さんの2人でいつもの様にのんびりとした話をしている。

まあ2人の日常を考えてみればそう考えるのも別におかしくないのだろうけど。

 

「では早速7組専用課外授業施設へ行きましょう」

 

え・・わざわざすごろくの為に移動するのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

教室を出て体育館に移動する。

前に身体測定を行った時と見た限りでは特に変わりはなかった。

 

体育館を使ってすごろくをするんだろうか?

 

「はい、みなさん大怪我したくなければ中央から離れて下さい」

 

さらりととんでもないことを言われ慌てて中央付近にいた生徒はその場から離れた。

それを確認すると先生が壁のパネルを開きボタンを押すと突然床が音を立てて動き出した。

床が開きゆっくりと開いて行き、その中から大きな何かが見えて来た。

 

「これってもしかしてエレベーター・・?」

 

少なくともデパートにある様なエレベーターではなくそれよりも大きく、一度に100人は乗れそうなほどのサイズがあった。

 

「はい、施設はこの下です」

 

「遅くなりましたー」

 

突然聞き覚えのある声が聞こえてその方向に目を向けると今朝登校中に出会ったクラスメートの女子生徒の姿があった。

何故か、というか今朝と変わらずに背の高い方の女子の顔面に猫が張り付いている。

しかも、今朝の猫とは別の猫の様だった。

 

「遅刻ですよ、萩生響さん、江古田蓮さん」

 

「うぉ、何だこれは!?」

 

萩生と呼ばれた女子生徒が体育館の中央に出ているエレベーターを見て驚く。

エレベーターが出てくる過程を見ても驚いたのに何の前置きもなくこれを見たらそりゃ驚くだろう。

 

「エレベーターだろ」

 

江古田と呼ばれた女子生徒は特に驚いた様子はなく淡々と顔に張り付いている猫を外して足元に置いた。

それでもその猫は甘える様に足元に引っ付いて離れないが江古田さんは全く気にしていない様だ。

ふと、萩生さんこっちをみてキッと目つきが鋭くなる。

自分に対しての視線だと思い気まずくなって目をそらしたが隣にいるヒバリさんも俺と同じ様に萩生さんの視線に気づき少し驚いている様子だ。

多分だが、俺とヒバリさんに向けられたものなのかもしれない。

 

「ではみなさん、移動しますよ」

 

先生の声でクラスメートが移動し始めたので取り敢えず俺達もそれに続いてエレベーターに乗った。

萩生さんと江古田さんも含めたクラス全員が乗り終わりエレベーターが動き出す。

 

「下にまいりまーす!」

 

エレベーターが動き出すと同時にはなこさんがうれしそうにそう呟いた。

 

「なんだかロボットアニメのワンシーンみたいだな」

 

「何処行くんだろうね?」

 

「す、すいません私ちょっとエレベータ酔いで・・」

 

「ちょっと大丈夫!?」

 

途中で牡丹さんが酔ってしまい倒れ込んでしまったがエレベーター酔いの対処法など分からない。

その間もだんだんとエレベーターが動き続けいつの間にか深度300mを超えていた。

 

「地下帝国!?」

 

「秘密基地かよ!」

 

そして400mに達しついに目的の場所にたどり着き、ゆっくりとエレベーターの扉が開き俺達4人が最初に降りる。

ほとんど何も見えない真っ暗な空間だったが突如明かりがつきそこには巨大な施設のようなものがあるのが目に入った。

 

「ウェールカムトゥーザー・・」

 

なにやら聞き覚えのある声が聞こえて目を向けると数日前に身体測定ででてきたあのうさぎ?(チモシー)がいた。

 

「チモシータウンッ!」

 

「うわあー遊園地みたい!」

 

「まあ・・」

 

「なんなのここ・・」

 

「もう学校ってレベルじゃないぞこれ・・」

 

俺たち以外の全員の7組の生徒の殆どが驚きを見せている。

 

「等身大のすごろくです」

 

小平先生が全員の前に出てそう伝えてくる。

 

 

「等身大?」

 

ヒバリさんが戸惑った様子でそう呟いた。

確かに目の前の施設はかなり大きい、もしかしたら学校の運動場位はあるかもしれない。

 

「運を鍛えるにすごろくはぴったりなんですよ」

 

「そうなんだ!」

 

「そんなわけないでしょう!」

 

あっさり納得するはなこさんにヒバリさんが突っ込む、俺も同意見だ、そもそも運を鍛えるなんて可能なんだろうか?

 

「やっぱりこんなゲームが授業なんておかしいですよ」

 

「では、てっとりばやくロシアンルーレットで運試ししましょうか・・?」

 

いつの間にか先生が見せつけるように拳銃(モデルガンだよな・・?)を手に持って恐ろしいことを冷静に宣言する。

 

(こ、怖い・・)

 

自分を含む全てのクラスメートが入学初日を思い出したようで全員が前持って合わせていたかのように首を横に振って否定した。

 

「みなさん、2、3人で1組のグループを作ってください」

 

俺たち4人はお互い顔を見合わせる。

順当に考えれば2人と2人に分かれて2組になる所だろう。

しかし、俺は・・

 

「俺は男子と組むからヒバリさん達は3人で組みなよ」

 

今までの人生の中で自分の友人関係というのは野球繋がりの相手ばかりだったが7組には野球部に入った生徒はいない上にまだ日が浅いこともあって未だに男子の友人と呼べるような相手はまだ少なかった。

だが、高校生にもなって女子ばかりと一緒にいると変な噂になってしまいそうなのでこの場は男子と組むことに決めた。

 

「え、でも2人と2人に別れれば大丈夫だよ?」

 

「うん、そうだけどさ・・俺は今日は男子と組もうと思うんだ」

 

「私は別にあおいさんと組んでも構いませんが」

 

「ありがとう牡丹さん、でも別の機会によろしく頼むよ」

 

「念のために言っておきますが幸福実技の結果は成績表にはばっちりきっぱり反映しますからね、真剣にやるように」

 

鬼だこの人・・

 

「幸福の成績って何だろうね?」

 

「大吉、中吉、末吉、凶、大凶の5段階評価でしょうか?」

 

「まあ少なくとも早くゴールした方が評価はよくなるんだろうね」

 

「クックック」

 

どこからかいかにも特撮番組に出てくる悪役のような含んだ笑い声、それも聞き覚えのある女子の声が聞こえてくる。

そこに視線を向けると今朝道に迷っていた赤髪の女子生徒が仁王立ちしていた。

 

「だったらこのゲーム勝つのは響だ! 響はこの学校の頂点に立ち学校王になる存在、誰が相手でも負けはしなウゴァ!」

 

言葉の途中で女子生徒の後ろにいたに長身の女子生徒が頭にいきなり肘鉄を食らわせて失神させた。

しかも、倒れこむ前に素早く脇に抱え込み「進めてください、先生」と極めて冷静に話す。

よく見ると、その2人は今朝遅刻してきた女子生徒だった。

 

「ウフ、変わったお2人ですね」

 

「そうね」

 

「ああ、悪い成績は取りたくないし俺たちも・・」

 

はなこさんと牡丹さんの顔を見てつい言葉が詰まる。

ヒバリさんも同様のようで表情が固まっていた。

本人達の前ではとても言えないが正直この2人とチームを組むのは不安を感じずにはいられなかった。

正直なところ、2人とチームになっているヒバリさんのことが心配になったが、一度別のチームに入ると言っておきながら、それをやめると言って一旦完成したチームを解散させてまで入れてもらうのは気がひける。

 

「よろしい、では始めましょうか」

 

先生の一言でまだチームを作れていないクラスメート達が騒ぎ出す。

俺もその中の一人だ。

 

「じゃあ俺は行くからお互い頑張ろうか」

 

「うん、じゃあねー!」

 

「はい、お気をつけて」

 

「ええ、じゃあまた後で」

 

そのままはなこさん達と別れてその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

「まいったな・・」

 

よく考えれば予想できたことなのだが当てにしていた2人はもう1人のクラスメートと3人でチームを作っていたので断られてしまい途方に暮れていた。

他に親しいと言えるクラスメートもいないのでそのままもたついてる間にもどんどん周りはチームを組み終わりいつまにかもう自分以外はチームを組み終わっているようだ。

このままチームを組めないと最悪その時点で最下位になっていまいかねないのでとにかく、どこか2人組のチームをところに入れてもらうことにしよう。

 

「あら、葵坂さん、まだチームを組めてないんですか?」

 

未だに1人でウロウロしているところを小平先生に見つかってしまった。

 

「・・はい、まだどこにも」

 

この先生のことだからそれを理由にもしかしたら最下位にされてしまうかもしれない。

そう考えると緊張が走る。

 

「そうですねえ・・そうだ、萩生さんと江古田さんのチームに入れてもらいましょう」

 

「何ー!」

 

その言葉を聞いて萩生さんが

 

「そうだね、3人とも今日遅刻したし遅刻仲間ということで」

 

チモシーが先生の意図を察したようでウンウンと頷いている。

 

「いや、俺は遅刻はしてないです・・」

 

俺は遅刻ではなくギリギリ間に合っていたはずだが先生はきっぱり無視している。

 

「構いませんか?、萩生さん、江古田さん」

 

「ふざけるな! なぜ響と蓮のチームにこんな余計な輩を入れねばならぬのだ!」

 

萩生さんが俺にビシッと指を指して抗議してくる。

余計な輩て・・酷い。

 

「構いません」

 

「れ、蓮! 何を言ってるのだせっかくふたりきりホゴォ」

 

江古田さんが萩生さんの頭に手刀を叩き込み黙らせた。

今回は手加減したのか先程のように失神はしてないが頭を抱えてうずくまっている。

江古田さんは俺の前まで来ると手を差し出して握手を求めてくる。

 

「江古田蓮、よろしく」

 

「あ、ああ俺は葵坂幸太、よろしく」

 

とりあえず、江古田さんと握手を交わす。

こうやって目の前で見ると同世代の女子と比べるとかなりの長身だ、先生と同じ位はあるかもしれない。

そういえば、女の子と握手するなんていつ以来だろう?

少なくとも中学校以降にそんな記憶はないし、そもそも握手なんてあまりするようなことでもない。

おそらくこれが初めてだろう。

そう考えると少しだけ恥ずかしくなってくる。

 

「やめろー!」

 

その時萩生さんが俺と江古田さんの間に割ってきて握手を離させる。

 

「言っておくが響は貴様のことを仲間だと思わんからな! いいか、蓮と響に近づくな、話しかけゴフッ」

 

3度目の一撃が萩生さんの頭部に叩きつけられる。

その後初の幸福実技であるすごろくが始まった。

しかし、わざわざみんなと別のチームになろうとしたのにまた女子だけのチームに入ることになってしまった。

 

 

 

 

 

俺と萩生さんと江古田さんのチームの前にはなこさん達のチームがサイコロを投げて1を出し、進むと一回休みのマスだった。

次は俺たちの番でとりあえずは1以外を出したほうがいいだろう。

一回休みより酷いペナルティのマスがなければだが・・

その際に萩生さんがはなこさん達に煽るように絡み、まるで小学生男子みたいな発言だったが、はなこさんらしく特に気にすることはなく逆にかっこいいと本気で思っているみたいだ。

江古田さんははなこさん達全員に握手し(この時牡丹さんの手から鈍い音が聞こえた)俺の時の同じように萩生さんが割って入りこれまた同じでサイコロを頭にぶつけられる。

江古田さんがサイコロを投げると6が出とりあえず一回休みは回避することが出来た。

 

「6が出たぞさすが蓮だ! 行くぞ、栄光への第一歩だ!」

 

そう言って萩生さんは180度違う逆方向へ走り出し、姿が見えなくなる。

 

「え、いやそっちは逆・・」

 

そのまま唖然としているとすぐに戻って来る。

 

「ちょっと道を間違えただけだ」

 

「方向音痴さんなんですね」

 

「・・そのようね」

 

牡丹さんはニコニコとヒバリさんはなんとも言えない表情を浮かべる。

 

「ま、まあ道を間違えるのは誰にだってあるよね」

 

完全に真逆方向に自信満々に進んでいたが萩生さんを刺激したくなかったのでそこは突っ込まないでおく。

 

「私が連れて言ったほうが早いだろ」

 

江古田さんが萩生さんの手を取って進み出し、俺もそれに続いて行く。

 

6にたどり着くと、ラッパ音と共に先生とチモシーが現れ「最初に6を出したチームにはスペシャルチャンス、マス目のお題をクリアすれば一気にゴールだよ!」とのことだ。

 

「ほ、本当かっ!?」

 

確かにこれはチャンスだ、絶対にクリアしたい!

 

「お題はジャカジャカジャーン! 3人とも好きな人の名前を高らかに宣言するること!」

 

「こんなお題もあるのかよっ、しかも、周りに聞かれるような状態で宣言!?」

 

「特にいません」

 

「蓮っ!?」

 

江古田さんが淡々というと隣にいた萩生さんがガクッとうなだれる。

これまでの反応から察するに萩生さんは江古田さんのことが好きなんだろうか?

 

「さて、葵坂くんと萩生さんはどうですか?」

 

余計な詮索はやめて、ここは正直に答えておく。

 

「お、俺はいません、そんな人」

 

この学校のことだしこんなことはとっくに調べているのだろう。

でも、これは俺や江古田さんとは違って好きな人が実際いる人にとってはとても答えられるような質問じゃない。

萩生さんの方へ目を向けると明らかに動揺し赤面して口ごもっている。

 

「ひ、響は・・好きな人なんて・・いるわけないっ!」

 

「ウフ」

 

先生が手に持っていたボタンを押した瞬間、足元の地面が開く。

 

「うわああああああああっ!!」

 

「はぎゃあああああああっ!?」

 

俺たちはそのまま真っ逆さまに暗闇の中に落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。