長門型とただ駄弁るだけ。 作: junk
何がとは言わないが、酷い。
私は提督だ。
詳細は省くが、この鎮守府で艦娘達の指揮をとって長くなる。
今日の業務は全て終わった。今は長門と陸奥の部屋に来ている。業務終了後、長門と陸奥と雑談する事は私の日課なのだ。
昔、私がまだまだ駆け出しだった頃。右も左も分からなかった私は、よく世界のビックセブンである二人に業務についての相談をしに来ていた。
あれから時は流れ、もう業務にも慣れた。今ではこうして、二人の部屋に行く習慣だけが残っている。
「前も言ったが、私の体は固い。戦艦『長門』の装甲を継いでいるからな。車に轢かれた程度ではビクともしない」
「そうだな」
「……カニ。カニがいたんだ。巨大なカニが。岩場に張り付いていたんだ」
「なるほど」
「小さいカニに鼻を挟ませる芸があるだろう? 私なら──この『長門』なら、あれを巨大なカニで出来ると思ったんだ」
「そうか」
「これが、この間の大破撤退の経緯だ」
「馬鹿。お前、馬鹿」
カニに鼻をさはまれて大破撤退……。
報告書になんて書けばいいんだ?
「ねえ、ちょっといいかしら?」
「……」
「……」
「ねえ、ちょっといいかしら?」
「見ろ、長門。トイレだ」
「おっ、本当だ。侘び寂びがあるな」
「誤魔化し方が雑すぎるでしょう! ちょっと聞きなさいよ」
「音楽聴きながらでいいか?」
「イヤホンをつけないで! 真面目に聞きなさいよ」
長門はクソでかい溜息をついて、私はコタツに寝っ転がった。
「よし、話していいぞ」
「態度悪っ!?」
「だって、なぁ?」
「ああ。陸奥話だぞ」
「私の話はどれだけランクの低い存在なのよ!」
これでも昔は日本の象徴の一つだったんだけど、と騒ぐ陸奥。仕方がない、付き合ってやるか。
「ゴールデンウィークあったじゃない」
「私には無かったがな」
そう。
当たり前のことだが、深海棲艦にゴールデンウィークがない以上、鎮守府にもゴールデンウィークはない。
だが艦娘達にたまの休日を与えようと思い、ローテーションを組んで大人組は二日、子供組は三日間の休みを与えた。尤も管理職である私には無かったが。
まあ鎮守府外には家族も友達もいない私だ。休日があっても持て余してしまっただろう。
「私は水曜日と金曜日が休みだったのよ」
「私は木曜日と日曜日だったな」
「お前達二人ともを同時に休みにすると、鎮守府が回らなくなるからな。被らなかったのは我慢してくれ」
「いいえ、我慢出来ないわ」
「む、何故だ?」
「ゴールデンウィーク中、提督と長門が働いていたせいで、誰も話す相手が居なかったのよ……」
「……」
「……いやほら、お前は愛宕や鳳翔さんとも──あっ」
「そうよ! 私が交流ある人はみんな、全然休みが被ってなかったのよ!」
そういえば、他の艦娘は前に調べた仲の良い艦娘同士で休みを取らせるようにしたが、長門と陸奥はその辺考慮していなかったな。
「その、ごめん」
「ぐすん……孤独だったわ」
「妹よ」
長門は陸奥肩に手を置き、優しく微笑んだ。
そして──顔を殴った。
「いたあっ! なんで!?」
「そういうのいいから」
「ちょ」
「それより私の改二の話をしよう」
そう、長門は最近改二になった。
主力である長門の戦力が上がる事は、みんなにとって喜ばしい事だ。
「この改二の衣装だが、私には一つ、どうしても我慢ならんことがある」
「何よ? その衣装かっこいいじゃない」
「布面積が多いことだ。前にも言っただろう、私は露出狂だと。前の服だってギリギリだったんだ。それが、こんな……!」
長門は歯を噛み締めながら、悔しそうに拳を握った。
「提督」
「はい」
「改二から戻る方法はないだろうか……?」
「ない。あってもやりたくない」
長門を改二にするのに、かなりの資材を注ぎ込んだ。
潜水艦達が危うくデモを起こすほどに。
もう二度とやりたくない。
「でも、いいわね。改二。私が改二になったら、どんな衣装になるのかしら?」
「長門はかっこいい系だったが……大人びたセクシー系じゃないか?」
「いや、案外バンギャ系とかになるかもしれないぞ?」
「いや、どんな方向転換よ」
「各地の提督が驚愕するだろうな。お姉さん系の陸奥が急にパンダメイクとかしだしたら」
「あらあら、が口癖だったのが急にファ◯クとか叫び出すのか。大丈夫か、我が妹よ?」
「そっくりそのままこっちのセリフよ。それ全部貴女の妄想だからね?」
「私の言葉が妄想かどうか……大本営の発表を楽しみに待つ事だな」
「なによその意味深な感じ。やめてよね。……ちょっと、本当に不安になってきたじゃない。大丈夫よね、提督?」
「大丈夫だ」
「ほっ」
「お前がバンギャになっても面倒見てやる」
「そっち!?」
陸奥が「今からパンダメイクの練習しておこうかしら……」とか言い出してしまった。不器用な癖に、相変わらず変なところだけ真面目だな。
「そうだ提督」
「なんだ?」
「猥談をしよう」
「相変わらず会話の流れ無視か。自由か」
「提督ってイクちょっと前……体感三分前位に「そろそろイクぞ……」って言うだろ?」
「今日はまた、随分と切り込んだ話できたな」
「それで私は大体こう返すわけだ。「ああ、私もだ。いつでもいいぞ、フフ……」と」
「そんな母性溢れる返しされた覚えないが」
「一方陸奥はこう返す「ああ、ダメ! もうちょっと!」とな」
「なんで私の方だけマジ体験なのよ!」
「提督としては、どっちの返しの方が好みなのだ?」
ふむ。
考えた事もなかったが……そうだな、
「強いて言うなら、長門の方が好みだな」
「えぇ!?」
「ほう、何故だ。陸奥の方がS心をくすぐるのではないか?」
「いや、私はそんなにSじゃないぞ? というかそんな事関係なくだな、私が申告する時はこっちのピークな訳だ」
「まあ、イク少し前なわけだからな」
「なのに「まだ」って言われると「えっ、まだ奉仕しなくちゃいけないの? もう大分こっちは疲れてるよ?」と思ってしまうんだ」
「あー……」
「……………でも、しょうがないじゃない。まだシ足りないんだから。命を懸けて戦った後って、その、滾るのよ」
「いやいや。そうは言うがな。こっちは執務室で神経を擦り減らして指示を出してるんだ。ぶっちゃけ疲れてるんだよ」
そう言うと、陸奥が心底驚いた顔をした。
その後、少し落ち込んでトイレへ行ってしまった。なんか、罪悪感が……。
「疲れてるといえば、提督」
「ん?」
「疲れてて気分じゃない時、感じてる演技をしてる時があるだろ?」
「……バレてたのか?」
「貴方は『提督』としての才能には溢れているが、残念ながらAV男優としての才能はないよ」
「『提督』と『AV男優』を比べたのは有史以来お前が初めてだろうな」
「ははははは。そう褒めるな」
「いや、褒めてないから……褒めてないよな?」
「提督に言いたい事なら、私もあるわ!」
トイレから帰ってきた、陸奥は何故かテンション・マックスだった。
「提督、貴方バックの時ずっと✳︎をガン見してるでしょ!?」
「……いや、毛の処理してるのかなぁ、と」
「してるわよ! むしろそれに気づいてからしたわよ!」
「私はしてないぞ」
「それはちゃんとしなさいよ!」
「しない! 私は見せる事に興奮するタチだからな!」
「いや、しろよ」
「む。じゃあ提督、貴方がしてくれ」
「いや、それはちょっと……」
「やめてよね、本当にするのは。ここにいる私は、それをどんな心境で見守ればいいのよ」
「あっ、姉さんのお尻ってあんな形なんだ……とか思いながら興奮してればいいんじゃないか?」
「私はまだそこまで思えないわ」
「そこだよ、陸奥。そこが私が改二になれて、お前がなれない所以だ」
「そこ!? 大本営は何を考えてるの!?」
……この会話を大本営に聞かれたら、私は果たしてどんな風に怒られるのだろうか。
「大本営を猥談のオチに使うな?」とかだろうか。いや、大本営に限らずここの会話を聞かれるわけにはいかないが。
「どうでもいいが、長門」
「なんだ? 筋トレメニューなら教えてやらんぞ」
「それはどうでもいい……。いやそうじゃなくてだな。お前の中の人はゆるふわな感じだっただろ? なのにお前、艦娘になったからって露出狂になったり変態になったり、ちょっと性格変わりすぎじゃないか?」
「ふむ。長門の性格は簡単に言えば「嘘がつけない実直な性格」だ。つまり、素直になっただけだな」
「えぇ……」
「貴女、あんな“オシャレ全開”みたいな見た目しておいて、そんな事考えてたの!?」
「もちろんだ」
女子って怖い。
僕はそう思った。
「……そろそろ夕ご飯の時間か」
「あー、本当ね。お姉さんなんか、食べる気分じゃなくなってきちゃったわ」
「今夜はスペアリブだぞ」
「本当!?」
「ああ。私は料理のことに関しては嘘はつかない」
「どちらかと言うとお料理じゃなくて、戦場で嘘をついて欲しくないのだけど……」
「なんだ、長門。お前また海の上で下らない嘘をついたのか?」
「そうなのよ。ちょっと聞いてよ、提督」
「私は漬けてあるスペアリブをオーブンに移してくる」
「逃げたわね……。あっ、そうそう。この間長門ったら、巨大なカニにやられて大破したとかと言うのよ」
「それ本当だぞ」
「えぇ……」
※この後めちゃめちゃ“夜戦”した。
話 の ネ タ が 尽 き ま し た。
何かお題を頂けると嬉しいです。
それか番外編の金剛みたいな感じで、出して欲しい艦娘でも構いません。
感想欄に書くと利用規約違反になっちゃうので、活動報告の設定資料集のとこにでも書いて頂けると幸いです。
今なら抽選でニンテンドー・スイッチをプレゼント!(大嘘)