長門型とただ駄弁るだけ。   作: junk

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ハーメルンでもっとも内容の無い二次創作。


ドキドキ! 貴方の心を丸裸! い・け・な・い心理学(ハート)

 私は提督だ。

 詳細は省くが、この鎮守府で艦娘達の指揮をとって長くなる。

 

 今日の業務は全て終わった。今は長門と陸奥の部屋に来ている。業務終了後、長門と陸奥と雑談する事は私の日課なのだ。

 昔、私がまだまだ駆け出しだった頃。右も左も分からなかった私は、よく世界のビックセブンである二人に業務についての相談をしに来ていた。

 あれから時は流れ、もう業務にも慣れた。今ではこうして、二人の部屋に行く習慣だけが残っている。

 

「提督、阿保。ちょっといいか?」

「なんだ?」

「……」

「阿保、お前はどうなんだ?」

「えっ、阿保って私のこと!?」

「むっ、すまん。陸奥と阿保、字面が似ているのでな……」

「字面が似ていても、お喋りには関係ないでしょ!」

「さっき図書館で、こんな物を見つけたんだがな」

「あらあらあらあらあら。お得意の無視ね。まあいいわ。聞きましょう」

 

 長門がちゃぶ台の上に置いたのは、一冊の本だった。

 ショッキングピンク色の表紙には、赤いラメラメの文字で「ドキドキ! 貴方の恋心を丸裸! い・け・な・い心理学(ハート)」と書かれている。

 これが、鎮守府の図書館に……。

 本の仕入れを担当してるのは、確か大淀だったはずだが。査定とか、大淀の精神状態とか、大丈夫だろうか。

 

 陸奥が呆れ、私が心配する中、長門は「ドキドキ! 貴方の心を丸裸! い・け・な・い心理学(ハート)」を開いた。

 

「第一問!」

「今回はグイグイ進むわねえ」

「貴方は自宅の玄関にいます。家に入ると、家族ではない親しい人が出迎えてくれました。それは誰でしょう?」

「自宅……この場合は鎮守府で良いのかしら」

「なんだ、陸奥。お前、鎮守府を自宅の様に思っていたのか? 勘違いも甚だしいな」

「えっ、今の言葉ちょっと心に来たわ、リアルに」

「なあ、ちょっといいだろうか」

「なんだ、提督よ」

「これ、結果があまりにも見え透いてないか? 絶対「その出迎えてくれた人が貴方の想い人です」的な事になるだろ」

「まあ、まあ。最初は定番でいいんじゃないかしら。後から徐々に凝った物に、みたいな」

「ま、そういう事だ。気楽にな、気楽に」

 

 気楽に、か。

 他の鎮守府の『長門』とは、最もかけ離れた言葉だな。

 

「ではこのフリップボードに答えを描いてくれ」

「出た、フリップボード。毎度、毎度どっから持ってくるのよ」

「経費から」

「おい」

「はははははは」

「笑って誤魔化すな」

「文句あるか?」

「凄んで誤魔化すな」

「アヒャヒャヒャ」

「狂ったふりをして誤魔化すな」

「……漫才をしてる所悪いけど、書けたわよ」

 

 何故か陸奥がちょっと不機嫌に言った。

 普段どれだけイジられても気にしない鋼鉄のメンタルを陸奥がこうなるのは、非常に良くない。私と長門は、急いでフリップボードに答えを書いた。

 

「……ていうか、長門も書くのね。今回は出題者に専念するのかと思ったわ」

「答えは問題が書いてあるページの、次のページに書いてあるからな。出題者も参加出来るよう配慮されているのだ、この本は」

 

 何故か長門はドヤ顔をした。

 

「それでは、フリップボード・オープン!」

「急にバラエティ番組の司会風になったわね」

 

 長門の声に合わせて、フリップボードを開く。

 陸奥のフリップボードには「大淀」、

 長門のフリップボードには「朝潮」とそれぞれ書かれている。

 私は「加賀」と書いた。

 私は職業柄ほとんど自宅(鎮守府)から出ないのだが、出るときは必ずお供兼ボディガードとして赤城をつける。そうなると出迎えは必然的に、もう一人の秘書官である加賀になる。

 故にこう書いたわけだが……心理テスト的には、どうにも間違った答えなきがするな。

 

 私が「加賀」と書いた理由を話すと、今度は長門が答えの理由を語り始めた。

 

「私は良く街へ買い物に行くだろう? 食材や家具を買いに。 それで帰ってくると、良くランニングをする朝潮に会うんだ」

「あら、私も同じ様な理由ね。何故か大淀によく会うのよ。

 ……ちょっと思ったんだけど、やっぱり自宅=鎮守府はちょっと無理があったわね」

「まあ、それは心理テストの結果を見てからでもいいんじゃないか。長門、答えを」

「ああ」

 

 長門がペラペラと「ドキドキ! 貴方の心を丸裸! い・け・な・い心理学(ハート)」をめくる。

 

「えーっと、なになに──その人は貴方が無意識に信頼している人です」

「そりゃあ家で出迎えてくれる人なんだから、信頼してるでしょ」

「──続けるぞ。自宅とは即ち、自分のパーソナルスペースを指します。そこに『招待』したのではなく、『出迎え』てくれた事が重要です。普段は頼りなく思っていても、いざという時貴方はその人を頼りにするでしょう」

「ほお。そう言われると、そうかもしれんな。現に、私は結構加賀を信頼している」

「まあ確かに、大淀は頼りになるわね。普段からよくおしゃべりするかって言われたら、またちょっと違うけれど」

「朝潮か……戦力としてはともかく、誠実ではあるな。そういう意味では信頼している」

 

 なんだ、意外と的を射てるじゃないか。

 

「それではどんどん行きましょう、続いて第二問!」

「だから、そのバラエティ番組の司会風はなんなの……?」

「貴方の母親が病気で入院しました。不安な貴方は、友人に付き添いを頼むことにしました。誰に連絡をしましたか?」

「普通、恋人や妻以外親の見舞いには連れて行かないだろ……」

 

 そう言いつつも、ツラツラと答えを書いていく。

 さっきがマトモだったせいか、少し心理テストが楽しみになっていた。恐らく長門と陸奥も、同じ様な気持ちだろう。

 

「それでは、フリップボード・オープン!」

「もうツッコミ入れないわよ」

 

 再び、長門の声に合わせてフリップボードを開く。

 陸奥のフリップボードには「愛宕」、

 長門のフリップボードには「雪風」と書かれている。

 ちなみに私は「神通」と書いた。

 古くからの付き合いだし、たとえ私が取り乱したとしても、冷静に対処してくれるだろう。それに数少ない、私が気軽に話せる船だしな。

 

「私は完全に幸運値で選んだな。艦娘になってから分かったんだが、幸運値とは中々馬鹿に出来ないものだ。海の上以外でもな」

「それを私の前で言う? 愛宕を選んだ理由は、包容力からね。もし私が泣きじゃくったりしても優しく抱き締めてくれそうだし。ただ側に寄り添ってくれるだけでも、人って安らぐものよね」

「なんだ、私も黙って側に居てやれる事くらい出来るぞ、妹よ」

「貴方の場合、黙ってても変顔とかするじゃない……」

 

 長門の変顔は凄まじい。

 隼鷹が開く「鎮守府変顔コンテスト」で初回から8回連続で優勝し、殿堂入りしたほどだ。

 

「続いて第三問!」

「はい」

「深く考えず、丸を書いてください。いくつでもいいです」

「深く考えずって言われると、逆に深く考えてしまうんだよなあ」

「難儀な性格ねぇ……」

 

 迷った挙句、私はフリップボードに大きな丸を1つだけ書いた。

 陸奥は大きい丸の中に、それより少し小さい丸を。

 長門は大小沢山の丸をフリップボード一杯に書いている。

 

「その円は、貴方の縁を示しています」

「何ちょっと上手い事言ってるのよ」

「円の数が多ければ多いほど貴方の縁は多く、その円が大きければ多いほど貴方にとってその縁は大切なものでしょう」

「なるほど。長門は確かに交友関係が広いな」

「陸奥は円が二つ……提督は一つか。まあしかし、どちらも私より大きい円だな」

「……ねえ。提督は一つしか円を書かなかったわけだけど、その円は私と長門どっちなのかしら?」

「!?」

「!?」

「ねえ、どっちなの? ねえ、ねえ」

「いや、深く考えずに書いたものだからな……」

「さっき貴方「深く考えずって言われると、逆に深く考えてしまうんだよなあ」って言ってたじゃない」

「じゃあ長門。長門を思って書いた」

「じゃあって何よ、じゃあって!」

「陸奥よ」

「なによ──ブフォ!」

 

 陸奥が長門を見た瞬間、あいつは渾身の変顔をした。

 

「続いて第四問!」

「え、三問目の話題今ので終わり!?」

「今日は憧れのあの人とデートの日! うーん、ハンカチの色はなににしよう?」

「急に「ドキドキ! 貴方の心を丸裸! い・け・な・い心理学(ハート)」ぽい質問の出し方になったな」

 

 ハンカチの色か……。

 個人的には、落ち着いた色が好みだ。ここは藍色にしておくか。

 

「フリップボード・オープン!」

 

 長門が黒、

 陸奥が赤色か。

 

「えー、これは貴方の勝負下着の色を示しています。つまりその色の下着を着けているときは、セ◯クスがしたいって事! 恋人はちゃんと気づいてあげてね!」

「……」

「……」

「……赤、か」

「く、口に出さなくていいでしょう!?」

「ふむ。陸奥、今何色の下着を履いている?」

「それはセクハラよ、提督」

「赤だ」

「なんで言っちゃうのよ! ていうか、同室とはいえなんで知ってるのよ!」

「ちょっと厠へ……」

「はいストップ!」

「まあ、今回はお前が悪いな、妹よ」

「はい、はい。この話やめやめ。次の質問行きましょう」

 

 そう言われるや否や、長門は「ドキドキ! 貴方の心を丸裸! い・け・な・い心理学(ハート)」を即座にめくり始めた。今回は本当に、テンポ重視だな……。

 

「第百二十三問!」

「5秒でバレる嘘をつかない」

「今度は四択クイズだ! 貴方は動物園にいる! 真っ先に出会ったのは次のうちどれダァ!?」

 

 そう言って長門は選択肢を出した。

 

 1、ゾウ

 2、ウマ

 3、ウサギ

 4、ネズミ

 

 ……ゾウ、かな。なんとなく。

 

「お、提督もゾウか。奇遇だな」

「貴女盲目なの? 私もゾウなんだけど。ねえ。ねえねえねえ」

「それで、結果はどうなんだ?」

「ああ、ちょっと待て──その動物の大きさが、貴方の要求不満度合いを示しています。大きければ大きいほど貴方は肉欲に飢えています。ネズミを選んだ貴方は性的要求が非常に薄く、ウサギを選んだ貴方は人並み、ウマを選んだ貴方は飢え、ゾウを選んだ貴方は非常に飢えています。ゾウを選んだ方は、もしかして今身近に気になる異性の方がいるのではないでしょうか?」

「……」

「……」

「提督よ」

「なんだ?」

「今私が履いている下着は、黒色だ」

 

 

※この後めちゃくちゃ“夜戦”した。












バレンタインとかエイプリルフールとか、時事ネタを書こうと思ってたのに、気がつけば過ぎ去っていた。
活動報告に「長門型とただ駄弁るだけ。に設定だけあるけど本編には一切出ない艦娘達の設定資料集」を置いておいたので、良ければ見て下さい。
あ、今話で出てきた心理テストは私がテキトーに作ったものなので、あてにしないで下さいね。

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