二章入ってからのお話なので、本編をお読みになってないと分からないかもです。注意。
グラブルを知らない方はキャラ名をぐぐって画像を見て頂けるとより没入出来るかもしれません。
それかグラブルを始めるといいかもしれまs
「……カリオストロ様、カリオストロ様」
世界が揺れる、いや揺さぶられている。凛とした声が耳をくすぐるが、その程度の妨害ではこの眠りは妨げられない。いや妨げてほしくない。
むずがり、妨害者から逃れるように反対側へ身体を移動させると、「……ッ」という息を飲む音。
やがて妨害は止み、安心して健やかな微睡みに自分を投げ出す。……が、投げ出した矢先、別の妨害が始まったようだ。
「ふひ、ふひひひ……ふっ、ふっ……ふひひひ」
「……」
妨害者の存在を、とても近くに感じて仕方がない。
というか近い、まるで顔を至近距離まで近づけているような気がする。
一度考え出すと意識は眠りの淵から引張りだされて、現実の世界へと帰還してしまう。
もう今は寝ようとする気にはなれない。だが、起きるにも……目を開けた先に広がる現実は果たして許容出来る現実なのだろうかという大きな不安があった。
それでも勇気を振り絞り、恐る恐る瞼を開けると――
「ふっひ、ふひ、ふひ…………あっ」
目と目があった。
カリオストロの目に入ったのは、整った目鼻に薄いブラウン色の目をした、キリっとした顔の女性だった。
女性はカリオストロが起きたことに気付くとそそくさと距離を取り、ピシリと背筋を伸ばしてカリオストロに頭を下げた。
「――おはようございますカリオストロ様。朝でございます。
間もなく朝食でございますので、お召し替えをしに参りました」
流暢な発音の後に「ふひっ」と吃音が漏れたのは気のせいだろうか。
その人物はレムでもないし、ラムでもない。しかしどこか見たことがある存在であるには間違いない。
艶やかな黒髪にぱっつんヘアーというのだろうか、耳元まで出した髪と、後頭部にシニョン(お団子)が見える。
全身を覆うメイド服も、普段のレムとラムの物に比べたら露出面積が全く存在しない、隙がないと言ってもいいだろう。
「あ……、えー……え? あぁ!?」
「は? 如何いたしましたかカリオストロ様。どこか体調が悪いのでしょうか。仕える者の心身のサポートまで出来てこそメイドです、どうぞ身体を楽にしてください、まずは触診から――」
「いや、そうじゃねえ! クラウディア! お前何でここに!?」
そう、目の前の存在は、あちらの世界で知り合ったメイド、クラウディアだった。
彼女は向こうの世界で奔走した主人を探す途中でグランに出会い、共に旅をするようになった仲間である。
普段は非常に出来るメイドなのだが、一つ問題があるとすれば美少女に目がない事だろうか。何を言われようとも、どんな目で見られようとも美少女を愛でることを止めない、変態に部類するタイプのメイドなのだ。
そんなクラウディアが目の前に居る事に気づき、慌ててここがグランサイファーなのかと辺りを見回すカリオストロ。だが部屋自体はスバルと一緒に居る屋敷と変わりはなく、元の世界に戻った訳ではないと知ると、彼女を若干の落胆が襲った。
「おかしな事をおっしゃりますね。私はラムです。
決してクラウディアなどという素晴らしい名前ではありません。寝ぼけていらっしゃるのですか? やはりこれは検査が必要です。さぁあちらでお召し物を……」
「いやお前クラウディアだろ! 何しらじらしい事言ってやがるんだ!?
っていうかナチュラルに脱がそうとしてんじゃねえ! おい、事情を説明し――」
「おっはようございま~~す! 朝ですよご主人様っ☆」
部屋の扉が勢い良く弾かれると、大声で挨拶をする存在が現れる。
浅葱色の瞳に、天真爛漫な笑顔。服はクラウディアと同じ服装に身を包んでおり、明るめの茶髪に、同じぱっつんヘア。ただし腰まで伸びるツインテールが特徴的だった。
「……って、ああ~~~~っ!! 何やってるんですかラム!
ご主人様のお着替えはジャンケンで私がやるという約束でしたよね!」
「ちっ」
「……おい。お前こそ何やってんだドロシー」
「え、ドロシー? 可愛らしい名前ですね~~っ☆
でもご主人様、間違えてはいけませんよ。私の名前はレムですっ☆」
彼女もまたあちらの世界の知り合いになったメイドだ。
本名はドロシー。クラウディアと同じく自らの主人を探す存在なのだが、途中で出会ったグランに運命を感じ、主人と慕うようになり……ソレ以降グランサイファーの仲間になった。
彼女はクラウディアと同じ変態ではないが、行き過ぎる程の主人愛を発揮し、主人に害意を表すもの、邪魔になりそうなものを燃やしつくそうとするという、割りと危な目な人物である。
「そんなっ、事よりご主人、様っ☆
もしかしたらお聞きしたかもしれっ、ませんが!
朝食の準備が整っていますのでっ、食堂までっ、お越しくださいっ☆」
「レム、順番を間違えてはいけません、ふっ!
まずはカリオストロ様のお召し物を変えるのが先決――!
あぁ少々お待ちくださいカリオストロ様っ、ふひっ、その美しいネグリジェを今私がっ、ふひひひっ」
「自分で着替えるから二人共部屋を出ていけ!
あとオレ様の部屋でバトんのやめろ!」
メイド流格闘術なのだろうか、全く無駄のない動きで一進一退の殴り合いを始めるメイド達に、カリオストロは怒鳴り声をあげるのだった。
§ § §
「やぁやぁ! おっはようカリオストロ!
ホラ見てよロズっちの皿捌き! いつもより多く皿が回ってるよ!」
「き、今日もすごいなぁロズワールはん……
あ。カリオストロおはよう……よう眠れた?」
「……」
着替えた後、食堂に入ったカリオストロが見たのはテーブルの上座に座る……いや、座るのではなく立って小さな棒を匠に使って、その上で皿を回す、ピエロメイク……と言うより全身道化師の格好の小人。
そしてどこかはんなりとした様子でそれを見守る、獣耳と尻尾を携えた少女だった。少女の方はカリオストロを見つけると、ふさふさの尻尾をぱたぱたぱたと嬉しそうに動かし始めた。
「ウラムヌラン……いや、もしかしてロズワールか?」
「? おかしな事言うねカリオストロ! ロズっちはいつでもロズワールって名前だよ!
やっ、ほっ! ほっと! さぁさぁお立ち会い! よーく見てておくれよっ!
王国一の魔術師と謳われたロズワールが、この不安定な椅子の上で、片足立ちで皿を回すからねっ! 3、2、1……」
「早く座って下さい、朝食が出せません」
「ふぎゃっ!!?」
ドラムロールが聞こえてきそうな程の大芸は、ラム……クラウディアに椅子を引かれることによって強制的にお開きとなった。バランスを崩したロズ……ウラムヌランは無様に床に倒れる。回していた皿はと言うと……そちらはクラウディアによって見事に受け止められていた。
「……き、キミさぁ。芸人におさわりは禁止だって習ってなかったかい!?」
「朝食の場に芸人が居る習慣がないものなので」
一応主従関係であると思っていたが、このやり取りを見るに敬う心も何もあったものではなさそうである。
「あ、あかんよラム……そないに言うたら……い、一応ロズワールも領主なんやから……ね?
ほ、ほら朝ごはん食べよ……お日様もあがってもうたし……一杯食べて元気にせなあかん……」
「エミリア様だーいぶ容赦ないよね! 追い打ちが痛いよ!」
「?」
「しかも無自覚だから始末におけないよね……わかったよ、ご飯食べよう」
そうして何事もなく起き上がったウラムヌランが席へつき、カリオストロもあれよあれよと着席を勧められて朝食が始まった。
(……どういう事だ、これ)
今まで理解が及ばなかったカリオストロはここまで来て、この世界の異常性に気付いた。
どう言う理由かはしらないが、「こちら」で知り合った人物が「向こう」の人物に成り代わっている。
星晶獣の仕業か、はたまたただの夢かは分からない。もしも星晶獣の仕業ならとっちめなければならないだろうが……
「……? えっと、カリオストロ……どないしたん?
お食事、あんま美味しなかった?」
「……あの、エミリア様。無自覚で他人をディスるのやめてください」
「え? でぃす……?」
「……何でもありません」
考え込んだカリオストロを気遣うエミリアの無自覚の口撃に、食事担当のクラウディアが突っ込んだが、更なる天然を返されて言葉を失った。
カリオストロはこちらを伺ってくる少女に問いかけた。
「……あーお前は……エミリアだよな?」
「ん。そやよ? 昨日もあったのに……ふふ、もしかして寝ぼけてるん?
カリオストロのそう言う所見るん、ちょっと珍しいかも……」
ぱたぱたと尻尾を揺らして話す少女、彼女は向こうでは「ソシエ」と呼ばれている、エルーン族の少女だ。
ソシエは故郷に伝わる、失われた八つの神器とか魔物とか舞人とか友達とか色々追っている途中でグランに出会い、意気投合した後に旅に加わった。
故郷に伝わる巫女服を身にまとい、直伝の舞で戦う美しい彼女だが、人見知りで恥ずかしがり屋であったりする。
そんな彼女はカリオストロを微笑ましい物を見るような目で見て、口元に手を当ててほんわりと笑っていた。
「今日のカリオストロは珍しいね!
まるでボク達の顔に何かがついてる見たいにじろじろ見てくるし!
ところでボクの朝食はまだかな? まだこの皿の上に何も乗ってないようだけど……」
「流石ですロズワール様っ!
よもや手品で朝食を消してしまわれるなんてっ☆」
「待って、これただ配膳されてないだけ――」
「流石ですロズワール様っ!
あ。ご主人様こちら新鮮卵のスクランブルエッグでございます~☆」
「あ~~……うん、どうも」
そして露骨にカリオストロ贔屓にするご主人ラブメイド、レム……ドロシー。恐らく普段からこのような関係なのだろう。元のロズワールと比べて哀れと思う他ない。
そんな哀れなロズワール役は、あちらの世界では「ウラヌムラン」と呼ばれているハーヴィン族の少年だ。全空一の大道芸人を自負しているストリートパフォーマーの彼もまた、グランが目指す空の果て「イスタルシア」という伝説の場所に惹かれてついていく一人だった。大道芸が非常に上手いのだが、持ち前のドジっぷりが玉に瑕だったりする。
メイドに至れり尽くされ、普段より豪華な食事を済ませると、ふとした疑問が浮かびあがった。
「すっかり忘れちまったが……スバルはどこに行った?」
「スバル? んっと……どこ行ったんやろなぁ……
ら、ラムとレムは知っとる? ……ベアトリスとパックは一緒に部屋におるんのは分かるけど……」
「野郎のことなんか知りません」
「レムもご主人様の事しか知りませんので☆」
聞かれたエミリアがラムとレムに質問をし、帰ってきたのは清々しいまでの即答。
かたや一人は見麗しい少女にしか興味がなく、かたや一人は仕える主人のこと以外に興味を咲かせようとしない。
期待した結果が得られず、エミリ……ソシエは非常に悲しそうな顔でカリオストロに謝罪した。
「……ぁぅ……か、堪忍なカリオストロ……役立たずで……」
「気にすんな。って言うかお前本当無自覚にディスるな!?
向こうじゃそんな性格じゃなかっただろ!?」
「でぃす……って言葉今流行ってるん?
どう言う意味なんやろか……」
「あー……いや、もういい。そのままのお前で居てくれ」
「???」
本当に意味が分かっていないエミリアに頭痛を覚えながら、どうしたものかと考えていると、どこから手に入れたのかパンを口に頬張りながらロズワ……ウラヌムランがカリオストロに告げた。
「スバルなら、屋敷の中を歩き回ってたよ。あむあむ
もしかしたら、あむっ。ベアトリスのところに居るのかもねー」
「分かった。ありがとロズワール☆」
「お礼ついでに彼女達にボクの朝食を出して貰えるように口添えして欲しいな!」
「行ってくるね~☆」
「ちょっと!」
世界がおかしくなっているのか、それとも自分が夢を見ているのかは分からないが、目下気になったのはスバルだった。
彼はどうなっているのだろうか。漏れなく影響を受けているのか、それとも影響を受けておらずに混乱しているのだろうか。
特に大きな悪さするような異常ではないが、彼に何かがあると自分にも影響がある、探す他ないだろう。
カリオストロは若干の期待と不安を抱きながらも長い廊下を進んでいった。
ラム→クラウディア
レム→ドロシー
エミリア→ソシエ
ロズワール→ウラヌムラン
エミリアはエリンだろオォン!?っていう方に弁明しますと、
エリンイベやってないんです(半ギレ)なので大好きなソシエにしました。
《ハーヴィン族》
グラブル世界にしかいない、平均身長90cm程の小柄な種族。
男性も女性も例外なく小さい。
《エルーン族》
グラブル世界にしかいない、獣耳獣尻尾を携えた種族。
身長は人と同じくらい。男女問わず、やたらとみんな背中を露出したがる。
エルーン族は体内の放熱機構が背中に集中しているという説がある。
《クラウディア》
人間のメイド。文中の説明通り。
美少女大好きクールメイドだけど、眺める程度で満足の変態紳士。
彼女の本当の主人はいつになったら分かるんですかね……
《ドロシー》
人間のメイド。文中の説明通り。
ご主人様大好きで、24時間お世話したい系のサイコ。
邪魔者は火炎放射器で燃やし尽くすとか。
彼女の本当の主人はいつになったら分かるんですかね……
《ウラヌムラン》
ハーヴィンの大道芸人。文中の説明通り。
普段使わないから慌てて育てて調べました。
はえー、最終上限解放してたんっすね……
《ソシエ》
エルーンの巫女。文中の説明通り。
尻尾と耳がもっふもっふしてて凄いモフモフしたい。可愛い
原作では作中のように無自覚ディスはしないので悪しからず。ただの小声の人見知り狐です。
火属性と水属性のSSRが居る。どっちも可愛い(強いとは言ってない)