RE:世界一可愛い美少女錬金術師☆   作:月兎耳のべる

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スバルカウンセリング回。(暴力つき)

2016/10/23
一部カリオストロの描写が足りなかった部分を追記。誤字修正。


【第ニ章】二人の異世界人と、屋敷の人々
第十話 二人だけの真実


 エミリア、レム、ラムの三人には席を外して貰い、スバルとカリオストロは豪華な客室で二人きりになった。

 

 大きなベッドの上で寝巻き姿のスバルが座り、そのすぐ隣にカリオストロがちょこんと隣り合っている。年頃の少年と少女が寝室で二人きり。カリオストロの類稀なる美貌もあいまって、未だ思春期すら抜けきれていない少年にはこの状況は酷なほど刺激的で――

 

「……何だろう。俺、今凄く喜んでいいはずなのにその反面すげー緊張してる。もう何か聞こえるくらいに俺の心音がバクバク言ってる」

 

「本当……☆ スバルの心臓がどきどきって言ってるの、カリオストロにも聞こえる☆ ふふふ…それはぁ☆ カリオストロの可愛さに参ってるからだよっ☆」

 

「あぁ、そうだよ、カリオストロ様マジ天使……! ……だけど可愛さだけじゃなくてプレッシャーにも参ってんだよ!? あと無駄に近いんだよ! お話する姿勢じゃないだろ絶対!?」

 

 美少女がすぐ隣に、しかも体を密着させて座るというアニメやライトなノベルでしか見たことがないシチュエーションに、否応無くスバルの顔は赤らみ、声が上擦る。だが反面、スバルはこの美少女の本性が「とんでもないドS」だという事を知っていた。故に女性経験が皆無の少年は女性の柔らかさと美貌への興奮と、何をされるか分からない恐怖の板ばさみにされて、極度の緊張に陥っていた。

 

「好きなんだろ? こういうのがさぁ!」

 

「好きだけど切実に相手は選びてぇよ!? ふもっご!?」

 

 間髪要れずにカリオストロの加減した腹パンが突き刺さり、スバルはそのままベッドに仰向けに倒れ込んだ。この腹黒さとドS加減がなければ間違いなく喜んでいたのにと、続けて言おうとしていた悪い口は強制的に閉ざされた。

 

「……カリオストロ様カリオストロ様、暴力反対。ストップザウォー……」

 

「お前が失礼なこと言うのが悪い。っつかこんなイチャつきしたくて二人きりになった訳じゃねえんだ。昼飯が遠ざかるからさっさと本題に入るぞ」

 

 イチャつき……?と疑問を浮かべる少年を放って憮然そうな顔をしたカリオストロが寝転がったスバルに本題を突きつける。

 

「お前。どこから来た?」

 

「……ものっそい東から、って言っても納得はしねえよな」

 

 不機嫌そうな顔のまま続きを促すカリオストロに、スバルは顔だけ上げて真剣な面持ちで続ける。同郷であることを願って、そして同郷でなくともその世界を知っている事を願って。

 

「日本だ。……知ってるか?カリオストロは」

 

「知らん」

 

「知らねえのかよ!」

 

 一瞬で期待を裏切られたが、カリオストロはまあ落ち着けと手で制するとスバルに確認するように言葉を連ねる。

 

「知らないが、この世界の人は誰も知らない国なんだろ?」

「ついで言えばお前はこの世界に来て間もない」

「更に言えば、知人も友人もこの世界には居なくて、この国の言語は話せるけど何一つ読めない、一文無しでコネすらない」

 

 そのどれにも力強く頷くスバル。カリオストロもその反応に自分の考えと答えが一致していく感触を得ていた。つまりこの男は自分と同じ――

 

 

「「異世界から来たって訳か」」

 

 

 二人の声が重なり、自然と二人は頷き合った。

 

「じゃあカリオストロは日本から来たんじゃなくて別の世界からか?」

 

「あぁ。この世界と文明レベルは似てるが、はっきりと違う世界からな。オレ様はある魔物と戦ってたらこの世界に放り込まれた」

 

「ファンタジー世界、やっぱり色々あるもんなんだな……平行世界って奴か? うおおお、って事は俺やカリオストロ以外にも色々な転生者が居そうだな! あ、そうそう俺はコンビニ……あー、ある店で買い物して外に出たら急にあの広場に居た。いやー夜だったのにいきなり昼になるからな、びっくりしたぜ!」

 

「……他にも同じ奴が居るかは分からねえが、まあほぼ同時刻に放り込まれたって事だな……じゃあ次だ」

 

「おぉ! 同郷のよしみ、っつーか同じ境遇の奴だし色々助けられたからな、俺でよければ何でも聞けよカリオストロ!」

 

「そうか? じゃあ嘘偽りなく答えろよ」

 

 にっこりと笑ったカリオストロは体を起こして質問に答えようとしたスバルに肺が潰れるほど力強く、すばやく肘を胸に押し当て、ベッドに乱暴に押しつけた。

 肺からは漏れた空気がこひゅという音を立て、いきなりの展開と痛みに混乱を隠せぬスバルは押し倒すカリオストロを仰ぎ見た。ふとすれば顔同士がくっつきそうなほど近い距離。彼の瞳に映るのは、ぬくもりを感じさせない冷めた少女の眼だった。

 

 

「――何が目的だ?」

 

 

 体を押さえる手と反対の空いた手が、何らかの魔法を起動中なのか淡い光を放ちスバルの顔を照らす。これがいつものカリオストロの悪い冗談かと考えたスバルだったが、そんな気配は微塵も感じられず、スバルは困惑と恐怖に声を震わせながらも言い返した。

 

「もっ、目的なんか何もねえよ。ただいきなりこの世界に放り込まれて、それで宛ても無く――」

 

「知らばっくれる気か? あんな力を使っておいて、天才のオレ様を()()()()()味あわせておいて、はいそうですかって納得できる訳ねえだろうが」

 

「あ、あんな力? あんな目?」

 

「お前はこの世界に来て三回あの力を使ってんだろ。一度目は夜。二度目は夕方、三度目は昼だ。確かに理不尽なまでに強い力だがなぁ、何故オレ様を巻き込む? 何故オレ様をこの世界に放り込んだ? テメェは一体何を目論んでんだ?」

 

「ちょ、落ち、落ち着けよカリオストロ!」

 

 まくし立てるカリオストロに慌てるスバル。氷点下の視線で見下すカリオストロの返答は、スバルへと翳す手の光がより輝度を増すだけ。スバルは恐怖で泣き出しそうになるのをこらえてたまらず叫んだ。

 

「わ、分かった! 分かった何があったか分からねえけど全部話す! 隠し事なんて絶対しない! 話すから!!」

 

 片手で顔を隠しながら必死に懇願するスバル。数瞬の後にカリオストロも翳した手を下げてスバルの上から移動した。必死に息を整えたスバルは起き上がって、カリオストロへと語りだした。

 

「ま、まずは俺は本当に、この世界に飛ばされただけだ。唐突に。何の理由もなく。何の説明も受けずに」

 

「じゃあお前の持ってる力は一体なんなんだ」

 

「それは俺も知りてえよ! 何の因果か知らない間に使えるようになってた。勿論使えるようになったのはこっちの世界に来てからだ。つっても、使えるっつーか。勝手に発動するって感じだけどな。……俺の世界の物語とか、小説で流行ってる異世界召喚っていうのと同じだと思ってたぜ。それは前世で事故死した若者とかが、異世界で神様に強い能力を貰って無双してハーレム築くって言う感じなんだけど……」

 

「は、そりゃまた寂しい夢物語が流行ってるんだな。つまりお前は特に意図せず、勝手にオレ様を巻き込んでるって訳なんだな?」

 

「だから別に巻き込むつもりは……――そうか、カリオストロもあの盗品蔵での件を知ってたって言うことは別に俺と同じ力を持ってるというわけじゃないのか」

 

 スバルは勘違いしていた、カリオストロも自分と同じ「死に戻りが出来る人物」だと。ただそれは間違いで、実際には「スバルの死に戻りに巻き込まれながらも、その事実を知る人物」というのが正しかった。もし彼女が同じく死に戻りが出来るだけならば、スバルが死に戻りした時点で彼女の記憶もリセットされている筈だった。

 

 だがそうではなかった。彼女は全てを記憶していた。エルザに闇討ちされて、エルザに拷問され、チンピラに刺されて、都度三回スバルが死に至り、その度に死に戻りが発動した事を。ではカリオストロの言うあんな目というのは何だろうか? 疑問を呈する前にカリオストロは自身に起こった出来事を話始めた。

 

「全部だ。お前の力に巻き込まれて一日でやった事、起こった事全部無駄にされた。ただそれは別にいい。あぁ、たかが数日を無駄にしただけで嘆くほどオレ様は柔じゃねえさ。だがなぁ、その度にオレ様の身体があの日の起点に強制的に戻される。位置も、新陳代謝も、()()()()()()()()()も。それを一身に味わって見れば分かる。あれは二度と味わいたくない、反吐が出るような感覚だってな」

 

 その顔に浮かぶのは嫌悪感と明確な怒り。いくら見た目が少女といえど、中身は海千山千のベテラン騎空士であり、数百年以上生きた錬金術師である。そんな少女の怒りの矛先に据えられたスバルは、その強い眼差しの前では怯える他なかった。そして彼女が宿す怒りは留まるどころか更に燃え上がる。

 

「だがそれすらも百歩譲って、別にいい――オレ様が一番怒ってるのは、この世界にいきなり放り込まれた事だ」

 

「だ、ちが、だか、だからそれは俺のせいじゃ……」

 

「お前のせいじゃない? かもしれねえな。だがお前には絶対関係がある。オレ様がこの世界に放り込まれた時に、ある黒い手に放り込まれた。お前が起こした力の雰囲気とそっくりのな! そこに関係がないとは言わせねえぞ……そんな事知らないだと? なら思い出せ。思い出せよナツキスバル。何かがお前を呼び、そしてオレ様も何かに呼ばれた。お前は力を与えられ、オレ様はお前を手伝わざるを得なくなったんだ。そこに因果関係がないなんて言わせねえぞ。何故お前はエミリアを手助けした? 何故お前はオレ様にぶつかった? 何故お前は三度死んだ? それは全部偶然なのか? それとも何かに誘導されていなかったのか? 考えろ。思考しろ、思い出せ。捻り出せ。搾り出せ! 覚えてること、分かったこと、些細なことでも何でも全て、ひとつたりとも余すことなくオレに教えろ!」

 

「そんなの……そんなのわからねえよ! 俺はただっ! エミリアに助けられて、恩を返そうと我武者羅に足掻いて! それで"()()()()"を――」

 

 

 

――瞬間。世界が色褪せた。

 

 

(……嘘、だろ?)

 

 二人の意識を残して、音も、空気の流れも、鼓動すらも止まる。そして困惑と驚愕をよそに、どこからともなくスバルの背後からゆっくりと黒い手が現れるのをカリオストロは見た。

 立ち込める甘い香りと共に、今から起こることを見守ることしか出来ない二人をあざ笑うかのように、それは徐々にスバルへと近づき……身体の内部に悠々と入り込む。不思議とそれはスバルだけでなく、カリオストロにも分かった。その手が優しく、愛おしい相手にするようにスバルの心臓を撫で――そして軽く握りしめたという事を。

 

 そして力をこめた指がゆっくりと心臓から離される。スバルの心臓を愛で終わったその手は次にカリオストロへと手を伸ばし――

 

 

 

「――がっはぁッッ!!? あ゛ぁっ!!!!」

 

 世界が再度歩みを取り戻し、スバルは心臓を握り潰されそうになった感触に胸を押さえて身をよじった。カリオストロも眼前まで迫った手が立ち消えたことに驚き、そして尋常ではないスバルの様子に慌てて近寄った。

 

「おい! おい大丈夫かスバル!」

 

「さ、いあくだ。は、腹切り開かれるか、心臓撫で、られるかって言ったら甲乙つけがたいくらいに、どっちも二度とごめんだってくらいには……味わいたくねぇ」

 

「そんだけ憎まれ口叩けるなら大丈夫そうだな……いいか深呼吸しろ。ゆっくりとだ」

 

 喘ぐスバルの背中を撫でてやりながらとりあえずスバルを落ち着かせるカリオストロ。そうしていくうちに荒い息も青い顔も何とかマシにはなったスバルを見て、ふぅと安堵の息をついた。

 

「……あれが、カリオストロの言う黒い手か?」

 

「あぁ……ってことはお前、あれは初めて見たのか?」

 

「18年間生きてきた俺だけど、あいにくあんな禍々しい手一度だって見てはねえよ……何で、あいつは俺の心臓を……?」

 

「さぁな。だが、何となくの推測は立つ。お前、あいつにハートキャッチされそうになった直前に何か言おうとしてただろ?」

 

「何か一気に可愛い雰囲気になったけど、実情知ってると全然可愛くねえなそれ……あぁ。確か死…げぶぅし!? ちょっと奥さんけが人に暴力はよろしくないですわよ!?」

 

「またハートキャッチされてえのかお前はよぉ!?」

 

 迂闊にも竜の尾を再度踏もうとしたスバルをカリオストロがすんでの所で妨害した。この男、知恵が足りてないにも程があるぞ苛立ちながら、彼女は説明を続ける。

 

「多分だけどな。警告だ。他人に迂闊に話さないようにってな」

 

「!」

 

「お前を呼び込んだ奴は、お前に何かをさせるためにその力を与えて呼び込んだ。だが何を思ったかそいつはその力を他人に話すことは許さず、スバルだけの秘密にさせたいんだろうな。……オレ様を除いて」

 

 スバルは先ほどの自分の発言で、再度あの感覚を味わう羽目になると考えてぞっとした。そして、何故自分にそのような制約を与えたのか。目的が見えない元凶を呪った。対するカリオストロは怒りを宿しながらも話を続けた。

 

「オレ様は多分、ちょうどいい駒としてそいつに選ばれたって所だろうな。お前にさせたい何かの、手伝いの為とかな。……オレ様を顎で使おうって訳か? いい度胸じゃねえか、絶対錬金の材料にしてやる」

 

「俺としても是非ともその元凶はとっちめてもらいたいのは同意するところだぜ……」

 

 スバルの脳内で、なぜかその元凶に対してゴールデンボールスマッシャーを決めるカリオストロの姿が思い描かれた。

 

「もう根堀葉掘りは聞かねえ。どこまで喋るのがセーフかアウトかすらも分からない現状、また奴のセンサーに引っかかるとあれだからな。だがこれだけは教えろ。スバル、お前の目的は? ……怯えるんじゃねえよ、お前の事はもうほとんど疑ってねえ。お前が訳もわからずこの世界に呼ばれたってのは信じてやる。なら次の話だ。これからお前はこの世界で、どうするつもりなんだ?」

 

「一応疑いは残ってんのな…………俺は……」

 

「……決まってないようなら先にオレ様の目的を教えてやる。オレ様の目的は、元の世界に戻ることだ。あの世界には天才のオレ様を必要とする奴が居る。そいつのためにも、この世界には居続けられねえ」

 

「……」

 

 いきなり異世界に飛ばされた。だから帰る。カリオストロが語る目的は至極当然の事だった。しかしスバルも同じ気持ちに駆られるかと言えば、そうではなかった。

 また苦痛な日々(引きこもり)に戻るのか。誰とも話さず、ただ一日中部屋に篭り、生産的なこともせずにただひたすら時間を浪費し続ける毎日。出来ることならやり直したい。その全てを、やり直したい。

 だが、やり直すといっても自分は何をすればいいんだ? 自分はこの世界で何が出来るというんだ? 与えられた死に戻りの力だけで何をなせばいいんだ? そもそも一度挫折した自分が何かを成し遂げられるのか? スバルの中で思考が悪い方に、悪い方に向かっていく。そして薄っぺらい虚勢で隠していた、今まで抱えてきた不安が、死の恐怖までもがぶり返しそうになり――

 

 

 ぱちんッ

 

「!」

 

 カリオストロの合わせた両手から発せられた乾いた音が、スバルを現実に引き戻した。  

 

 

「……何考えてるかは知らねえが、酷い顔してやがったぞ。はぁ……本来ならこんな事言うつもりはなかったが……アドバイスをやる。スバル、目的が決まらないなら今お前がしたいことを考えろ。出来るか、出来ないかで考えるんじゃねえ。本当にやりたいって思ったことだ」

 

「俺が、やりたいこと――」

 

「あぁ。そうだ。ただし生理的欲求とかそういうのじゃねえぞ? お前が最終的にやってよかったって思える事だ。オレ様が元の世界に戻るためには、非常に、ひっっっじょうに癪だけど、お前の手助けをしないといけないってのは分かってる。……あー……だからな……。最後までついてやれはしねえだろうが、少なくともそれまでにお前のしたい事を決め、それを目的にしろ。オレ様は"片手間で"お前の目的の手助けをしてやる」

 

 カリオストロは最初は元凶であると思われるスバルへ、()()()()()()尋問するつもりだった。だが結局スバルは巻き込まれただけでしかないと分かり、罪悪感が生まれてつい口が出た。「これもまた"あいつ"に影響されたせいかもしれない」と考え舌打ちしたくなったが、エルザの襲撃を完全に防げなかった分、サービスしてやっただけだと自分の中で無理矢理、理由付けした。

 対するスバルはさぞ面倒くさそうに、頭を掻きながらアドバイスを告げる彼女の態度と真反対の手厚い言葉に、笑みが毀れそうになった。美少女の皮を被ったドSでプライドの高いカリオストロ。だがその実、意地っ張りで、世話焼きで、優しさを表に出せない性格なのだというのがスバルにはよく理解できた。

 

「あ――あぁカリオストロ! 悪いけど、それまでいっちょ頼りにさせて貰うぜ!」

 

 だからスバルは満面の笑みで返した。そんなスバルにカリオストロはふん、と顔を背けるのだった。

  

 

 

 

「……で、だ。カリオストロ、なぜ貴方様はワタクシから身体を引いてるんでしょうか?」

 

「……」

 

 先ほどスバルを介抱したカリオストロは今はなぜかスバルから距離をとっており、不審に思ったスバルがそれを尋ねた。

 

「……お前も、あの臭い感じられただろ?」

 

「匂い? いや、特に何も感じなかったけど……」

 

「まあ、なんつーかな。その手が現れるあるいはお前の力が発動すると、お前から臭いを感じるんだよ。甘いっつーか、腐った果実みたいな妙に気持ち悪い匂いがな」

 

「……なんか嫌な予感がするんだけど、続けてくれ」

 

「お前、今その臭いが凄い。全身から漂ってくる」

 

「……悪臭つき!? 他人に話すデメリットがハートキャッチ+悪臭つきかよ!?」

 

「スバルくさ~い☆」

 

「思春期にその発言はめちゃくちゃ突き刺さるからやめてくれねえか!? あー昼飯前に先に風呂に入りてぇ! 先に湯浴みさせてくれー!!」

 

「……お客様? お客様どうしましたか?」

 

 騒いでいる音に気付き様子を見に来たレムのノックの音で、一旦二人の内緒の話は終わりとなりスバルは一旦元の服装に着替えて昼食に赴くことになった。

 

 

 

 § § §

 

 

 

「なんつーか、二日間も眠ってるとやっぱ腹減るな。思えばあの日から何も食べてない気がするし……でも病み上がりでがっつり食えるか心配だ」

 

「お客様の体調に合わせた軽い料理も用意しています。ご安心ください」

 

「おぉサンキューレム! 美少女メイドキャラってドジッ娘か超有能かの二択かと思ってたけど、案の定、超有能で何より!」

 

「恐れ入りますお客様」

 

 食堂まで進むがてら、レムに先導されてスバルとカリオストロが通路を移動する。相変わらずの戯言を垂れ流すスバルにカリオストロが裾を引いてこちらを向かせると、小声で話し始めた。

 

(おいスバル、このあとお前はこの地の領主に出会うことになるからな)

 

(マジ?いきなり貴族謁見ルート? 俺実はこの力見込まれて戦争に巻き込まれるとかねえだろうな)

 

(あんな制約かけられててお前の力知ってる奴が居るとは思えねえよ。で、だ。お前はその領主にエミリアを助けたお礼を何でもどうぞって言われる)

 

(おぉぉ、まさしくとんとん拍子…! そこで俺はエミリアたんをくださいって言う流れって奴だな!)

 

(そんな願い一瞬で却下されるのが目に見えてるだろうが。ここで提案だ。そこでの願い、ここで働かせて貰う事にしろ。拠点を持たないオレ様達にとって、出来るなら権力者の後ろ盾は有ったほうがいいからな)

 

(そ、それもそうだな。いやマジでカリオストロ先生、為になります)

 

(授業料はあとでがっつり請求するからな?)

 

「お客様、こちらが食堂でございます」

「お、おぉ!案内ありがとなレム!」

「ありがと~☆」

 

 そうこうしてる内に食堂についたらしい、レムが扉を開け食堂の全容を見せた。

 細長い、純白のテーブルクロスに包まれた机には色とりどり、食欲を誘う様々な食事が。そしてそれを囲うのはエミリア、ロズワール、ラム、そして黄色髪の少女ベアトリスの姿。二人は意気揚々に、誘われるように席へと移動していった。

 

 

 ――そんなスバルとカリオストロを見るレムの目は、到底客に向けるような視線ではない、冷ややかな色をしていたのだった。

 

 

 




自分がろくな人生経験つんでないという事がよく滲み出るクソみたいな文章ですね(白目)

デレおっさん書くのたんのすぃ~。


《好きなんだろ? こういうのがさぁ!》
グラブルで実際に喋るカリオストロの台詞。
本当は「好きなんだろ? こういう女の子がさぁ!」
大好きに決まってるだろ!

《死に戻り》
スバルが授かったチート能力。
物語が最善の道を進むまで何度でも死んでやり直せる力。
死ぬ度にスバルからえも言えぬ香りが濃くなっていく。
その臭いが分かる人とそうでない人が居る。

《スバルの死因》
1回目:盗品蔵でエルザに腹を割かれて、エミリア共々死亡
2回目:同じく盗品蔵でフェルト、ロム爺の二人と共にエルザに腹を割かれて死亡
3回目:チンピラであるトンチンカンに背中を刺されて死亡

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