絢瀬絵里に出会った   作:優しい傭兵

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仮面ライダー龍騎みたいだ。


仮面ライダー隆也

「…………」

 

貧乏ゆすりが止まらない。

通帳に書かれてある残高を見て俺は頭を抱えていた。

いや、確かに今月は色々あったよ?絵里とデートにいったりとか、ホーネットのディスクを変えたりとか、光熱費払ったりとか大変だったよ?けどこれ全部俺の事だから仕方ないんだけど…。

 

 

 

「今月の生活がぁ・・・・・・」

 

 

 

あとほんの少しあれば大丈夫なんだ。あと少しあれば生活に支障は出ないんだよ。

 

「どうしよう……。給料日までまーだ大分あるぞ」

 

 

仕方がねえ。ネットで一日バイトでも探すか。絵里には悪いが今週のデートを無にしていただくしかない…か。大学のゼミだの言っておけば大丈夫なは……ず!!

 

 

「ん~……引っ越しバイト…試験監督…イベントスタッフ…ん~」

 

まあ丸一日は勿論かかると思ってたけどかなり疲れそうだなこれ。まあ金を稼ぐのなんか辛くないものなんかないんだけど…。

 

 

「欲を言ってしまえば面白そうな事したいんだけどな」

 

 

マウスをコロコロと転がしながら眺めていると、変わったページがあった。

 

 

 

 

 

 

「あ?なんだこれ?」

 

 

 

【イベントスタッフ!着ぐるみを来てファンを楽しめせるお仕事!体力に自信のある方大歓迎!】

 

ん~?着ぐるみ?あれか?ゆるキャラとかそういうやつ?確かにあれはしんどそうだな。体力根性どうこうの問題じゃなさそうだな。

けど…意外といい経験になるかも?

 

 

「興味がある……」

 

 

えっと電話番号は・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、すいません。ネットでこちらのページを見た者なんですが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、とある場所にて。

 

 

「いや~助かったよ君!本来のスタッフが吹っ飛んで大変だったんだ!」

「いえいえ、自分も目に留まったものだったので……今なんて言った?」

 

ふ、吹っ飛んだ?その代役何があった?

 

「ネットに挙げたけど中々電話が無くてね。けど、そんな時に君みたいないい体をしている男の子が居たんだから!」

「そう言っていただきありがとうございます」

「ちなみに君即採用ね。体力にも自信があるからここに応募したんだろう?」

「そう…ですね。柔道とバスケットをしていたのでそれなりには」

「よぉし!頼むよ君!えっと名前は…」

「横山隆也です」

「よし隆也君!君にはイベントのスタッフをしてもらおうと思ってるんだ」

「…と言いますと?」

「実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仮面ライダーになってもらおうと思ってね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………はい?」

 

 

 

 

 

え?なに?カメンライダー?ナニソレオイシイノ?

 

 

「順を追っていくと、実は東京であるイベントがあってね。それも子供向けの。その子供向きのイベントで、仮面ライダーショーを我々は考えているんだ。勿論、本家並みの事はできない。せいぜいそれらしきアクションをするぐらいがせいぜいだ。その方針に決まったんだが、仮面ライダーの本来の役の人間が文字通り吹っ飛んで怪我しちゃってさ。なんとか代役を探したんだけど見つからなくて頭を抱えていたんだ」

「…なるほど」

「それで、どうにかして代役を探した結果、君がいたと!いうわけなんだよ!」

「ほほう…」

 

吹っ飛んだっていうのがすごい気になるがな…。

 

 

 

「け、けどそれはさすがにそこらの学生である自分がするのは無理があるのでは…」

「いや、これが意外と単純で、子供の前でそれなりの動きをしてもらうだけなんだ。セリフは別の声優さんがいるから大丈夫」

「現場経験ないんですが…」

「そこも大丈夫!それっぽい動きをしてもらえば良いんだ。ワザとやられたり怪人をやっつけたりとか、なりきってくれればいいんだよ」

「む、難しそうですね…」

「勿論練習はしてもらう。スタントマンもどきみたいな事をしてもらうからね」

「わ、わかりました。自分ができるとは思えませんが…頑張ります!」

「ありがとう!本当に助かった!予定していた給料より少し水増しさせてもらうからよろしく!」

「まじか……」

 

こりゃ意外とかなりおいしい話なのではないだろうか…。

 

 

 

 

「じゃ、また連絡するけど一度服を着てもらって動いてもらう必要あるから、後日予定空けていてね」

「は、はい!よろしくお願いします!!」

 

 

 

 

 

 

 

まさかこの歳で小さいころ憧れた仮面ライダーになれるとはな。

 

 

 

 

 

 

 

バイクも乗れるか聞いてみたらそれは無いって言われた。

そっすか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

いやきっついなこれ。予想以上にきっつい。

文字通りに仮面ライダーに変身した俺だがありえないくらい動きづらい。自分の体重が倍になったくらいに感じる。まあそりゃそうだろうな。こんな完成度高いもの作るのを軽く低コストで済ますことなんて無理な話だ。それなりの素材でできてるんだろうな。汗とまらねえ…。

 

 

こいつに身を包んで約4時間たった。やっと慣れてきた。けど何か動作を起こそうと思っても重すぎて1秒くらいのロスが生じてしまう。先読みして体を動かすしかない。

 

 

 

「はい、次は回し蹴り」

「ふっ!」

「次は右ストレート」

「はっ!」

「受け身」

「ぬんっ!」

「跳ね起き」

「ふんぬぁっ!!」

「オラオララッシュ」

「オラオラ…ってできるかぁ!」

「君ノリいいね」

「キツいんですけどぉ!?」

「はい、次はジャンプ」

「これが一番キッツいんだよおらぁっ!!」

 

 

これドラゴンボールで見た甲羅背負っての修行と変わらない気がする…。凄い重い…。

 

 

 

「はぁっ!はぁっ!ぜぇっ!ぜぇっ!」

「いいよ隆也君!少し休憩にしようか」

「っ……っ…うっす」

 

完全に舐めてた。こういう仕事してる人尊敬しますよ。ある意味トレーニングになるけど尋常じゃなかった。汗が全然止まらない。

 

 

 

「良い経験だが…やばい…」

「そうとう堪えてるね」

「そ、そりゃそうですよ…」

「けど、君で本当に良かったよ。これならイベントも成功させることができる」

 

そう言われると誇らしく思う。俺がしたことによって喜んでくれる人がいるなら猶更だ。

少し元気出た気がする。

 

 

「次はなんですか…?」

「んーっとね。次は……」

 

 

 

 

 

俺のトレーニングは止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

「でかい赤ん坊ね」

「うるせ」

 

正座で座っている絵里の膝に抱き着いて頭を撫でてもらっている俺。あ~…癒される。

 

 

「そんなに疲れるのねその仮面ライダー」

「体の水分飛ぶぞアレ」

「干からびてたわね」

「乾物になっちまう…」

「まあお金を稼ぐためだからそれは仕方ないわね」

「それに疲れたら絵里がこうしてくれるからなおさら頑張れる」

「匂いも嗅ぐ?」

「後で」

「するのね…」

 

とうとう明日が本番だ。今日は早めに寝て体力を温存しよう。

 

 

「もう寝ちゃう?」

「寝ちゃう…」

「ちゃんとベットで寝なさいよ。体痛めるんだから」

「絵里と寝れるならどこででも」

「私が痛いから嫌」

「ちぇ」

「明日ちゃんとご褒美あげるから」

「寝るぅ」

「現金な人ね」

「絵里のご褒美大好き!」

「はいはい、分かったから」

「解せぬ…」

 

 

仕方ない。ちゃんとベットで寝ましょうかね。

 

 

 

 

 

「あ、それと隆也」

「ん~…?」

「明日私用事があるからまた夜会いましょうね」

「ん~…」

 

 

 

寝ぼけてたから全然俺の頭には入らなかった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、頼んだよ隆也君」

「うっす」

「もし何か変更点あったらカンペで知らせるから見逃さないでね」

「了解です」

「じゃ、レッツゴー!」

 

 

外に作られた簡易ステージ。その袖にてスタンバイする俺。

ステージの外には小さな子供、その保護者の親御さん達。他にも仮面ライダーが好きな男の人たち、一眼レフを持っているカメラマンと色んな人たちがステージをじっと見てる。

緊張はしてるよ。けどさ、俺にはそれよりびっくりすることがあるんだ。

 

 

 

 

 

 

『なーんで絵里達がいるんでしょうかねぇ!?』

 

 

 

 

 

 

 

ステージの袖からチラリと顔を覗かせると、そこには絵里たちこと、μ'sのフルメンバー勢ぞろい。

そして矢澤にこの前には姉妹たちか、小さな子達が目をキラキラさせながらステージを見つめる。

要するにあれだろ?にこの妹たちを連れてきてあげて、そこに便乗して穂乃果を筆頭にここに来たってやつだろ?

絵里から何にも聞いてないんですけど?

いや、絵里の事だから元から見に来るつもりだったのか。

 

 

【寝ぼけていて聞いてませんでした】

 

 

 

っていうか穂乃果。お前が言い出しっぺのくせにもぐもぐ飯食ってないでステージ見ろよ。もぐもぐしててかわいいけど。

 

 

 

「隆也君出番だよ」

「う、うっす」

 

今は忘れろ。劇に集中するんだ。

 

 

 

アナウンスの人と子供たちが一斉に叫んだ。

 

 

 

 

【仮面ライダー!!】

 

 

 

(行くぜ!)

 

 

ステージの袖にある踏み台でジャンプし、ステージにいる怪人たちの前に立ちはだかる。

 

 

 

『き、貴様は!』

『俺は子供の笑顔を守る仮面ライダー。そこまでだ怪人ども!』

『何を生意気な!』

『返り討ちにしてやれ!』

 

 

『『『『うぉおおおおおおおお!!』』』』

 

 

 

ここからは簡単。それなりの演技も見せればいい。乱闘で怪人とやり合って俺がピンチになるって流れ。しかもどの攻撃も寸止めだから本気でやられるわけじゃないから痛くはない。

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

『くたばれこの野郎!』

『一人で戦いに来やがってなめんじゃねえぞ!』

『やっちまえ!』

 

 

 

ちょっとまって皆さんなんで本気でやりに来てるの!?話と違うんですけど!?

 

 

「あの金髪の女の子お前が言ってた彼女だろ!」ヒソヒソ

「なんて羨ましい!」ヒソヒソ

「後で食ってやる!!」ヒソヒソ

「「「しかも可愛い女の子たちと知り合いとか死に晒せぇ!」」」ヒソヒソ

 

 

交わりながら小声でやりとりをしあう俺達。この人たちどんだけ怒ってんだよっいってぇ!?おい溝に入りかけたぞ!!絵里は俺のもんだ誰にもやらねえ!!

 

 

 

「痛いですよ先輩方!」ヒソヒソ

「やかましい!ぶっ殺してやる!」ヒソヒソ

「このままみじめにやられちまえ!」ヒソヒソ

「後でお持ち帰りだ」ヒソヒソ

 

 

んだとこいつら!?いいぜ上等だ!!そっちがその気なら俺も本気だ!

あと最後の人ふざけんな!!

 

 

 

 

『あぁ!?仮面ライダーがやられちゃう!皆!応援してあげて!』

「がんばれー!」

「負けるなー!」

「勝てー!」

 

 

 

 

『頑張れーーー!』

 

 

 

 

子供たちの声援が聞こえてくる。凄いいい気分だ。なんだか本当に元気が湧いてくる。

だがまだだ、上司の人が合図を出すまで何もできない…。

 

そして俺はそのまま地面にひれ伏しリンチに遭う。

 

 

 

『はっ!所詮口だけだったな!』

『弱すぎるぞこいつ!』

『大したことないな!』

 

だが、本当の声は。

 

「くたばれ横山ァ!」ヒソヒソ

「死ねぇ!」ヒソヒソ

「金髪の子をハスハスクンカクンカしてやる」ヒソヒソ

 

 

くっそ滅茶苦茶痛いじゃねえか!足を狙わないのはいいところだけど!

そして最後の人いい加減にしろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けないで!!仮面ライダー!!!」

 

 

 

 

声が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供たちの声援の中から聞き覚えのある声が聞こえる。

この声は…。

視線をそこに移すと絵里が叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

「負けないで!頑張ってぇ!!」

 

 

【反撃開始!何かかっこいいセリフ言って!】

 

上司からのカンペが来たので反撃開始。

そして無茶ぶり!!

 

 

 

 

 

『うおおおおおおおお!!』

 

リンチで取り囲んでくる人たちから振りほどき距離をとる。

 

 

『ありがとう皆!皆の声が俺に力をくれる!!』

 

 

 

かっこいいセリフ………これしかねえっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ……お前達の罪を…数えろっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覚悟しろ(本気)

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………」

ステージは大成功。あの後の怒涛の猛攻撃により会場は大盛り上がり。怪人の人たちをぶん殴って蹴り飛ばして最後はお決まりのライダーキックで大勝利。子供から大人まで全員喜んでくれたので俺も満足。怪人の先輩達ぜってえ許さねえ…。

 

 

 

『ありがとね隆也君!君のおかげで大成功だ!』

 

 

 

上司の人も喜んでくれたからよしとしましょう。しかも給料少しだけ増やしてくれたし。

 

 

 

 

 

「あ~…つっかれた。家で寝よう…」

 

 

ベンチから立ち上がり、顔を上げると。

 

 

 

 

 

【…………………】

「…………………」

 

 

 

μ's全員がニヤニヤしていた。

 

 

 

 

 

「……お、お前の罪…ぷふっ!」

「ちょっと穂乃果ちゃん笑っちゃダメ…ふふっ!」

「大丈夫です隆也さん。翔輝には言いませんから」

「なんだか寒くないかにゃ?」

「りゅ、隆也さんかっこよかったですよ!?」

「ふふっ…あなたもあんなセリフ言うのね」

「いい動画取れたから後で送るで」

「まっ。妹たちを…くくっ…喜ばせれたから…ぷふっ!いいんじゃない…?」

「かっこよかったです!」

「仮面ライダー強いね!」

「らいだ~」

 

 

 

 

こ…こいつら…。

 

 

 

 

 

 

「り、隆也」

「……ん?」

 

 

 

絵里が苦笑いしながら…。

 

 

 

 

 

「か……かっこよかった……わよ?」

 

 

 

 

疑問形でフォローしてくれた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそったれがぁぁああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

恥ずかしさのあまりその場から逃げ出し、俺は自分の部屋で3日間引きこもった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫よ。私は凄くかっこよかったって思ってるから」

「フォローになってねえよ……」

 

 

 

絵里の膝の上で泣いた。

 




長らくお待たせいたしました。
閻魔刀さんのリクエスト「度重なるデートとバイクのメンテ代で金欠になって仮○ライダーショーのバイトをやってえりちー達からからかわれる」でした。

とは言ってもからかわれるのは最後だけです。はい。

ちなみに皆さん仮面ライダーではだれが好きですか?
自分はWと000ですね。ダントツで。


次回もリクエスト回ですのでよろしくお願いします。
リアルで色々とありますのでまた遅くなります。誠に申し訳ないです。
精一杯頑張りますのでよろしくお願いします。



では!今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では……またな!

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