絢瀬絵里に出会った   作:優しい傭兵

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今回のお話は絵里の過去のお話です


ライダーさん

 

 

 

 

 

 

 

これは、私が音ノ木坂を卒業して……μ'sが解散して1,2ヶ月が経った時の過去のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達μ'sは最後のライブをやり遂げ己の道へと進んでいった。

穂乃果、ことり、海未は生徒会で私の祖母の代から続いてきた音ノ木坂を今も守り続けてくれている。真姫、凛、花陽は次代生徒会になるために他の生徒達から見られて恥ずかしくないために努力している。

 そして希は私とは違う大学へ進んで、現在も神田明神の巫女のアルバイトを続けている。

 にこは卒業後大学に通いながら大人気アイドルの道を進んでいる。最初は苦労はしたものの、にこはそれでも負けないと強い意志を持ちあらゆる所から依頼が来るほどの人気人物となった。

 

 私、絢瀬絵里は今住んでいる家からさほど遠くない大学に入学。今は家の近くにある飲食店でアルバイトをしている。

 大学が始まるまでの間に出来るだけ自分の使える資金を集めている。現在はロシアにいる両親の仕送りで充分なのだがその甘えにすがらないように自分のお金は自分で稼いで自分や亜里沙のために使おうと決めた。

 

 

 そして初めて私が稼いだアルバイト代で買ったものは、大学やなにかしらの移動時に使用するための乗り物で、お父さんの知り合いの人から安く交わしていただいたバイクを購入。それはTZR50という名前のレーサーレプリカの原付バイクである。

ひょんな時にそのバイクの写真をみつけて以前から乗って見たいと思いやっと納車することができた。

 原付だから時速30キロでしか走れないがそこは特に気にしていない。自分が乗りたいと思っていたモノに乗れたのでそれだけで満足している。

 

 

 

 

 

時間があるときにこのバイクに跨ってどこか綺麗な景色が見れる場所に行こう……そう考えていた。

 

 

 

 

 

 

それがきっかけだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、私と私を助けてくれた『ライダーさん』との出会いの物語。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがいいかしら」

バイクに跨り海が見える場所までやってきた私。一眼レフのカメラで景色をバイクと一緒に撮る。それが私の趣味である。

それで今回は海とバイクのツーショットでの写真を収めるために来た。

ほどよい角度にバイクを移動させ、海をバックにカメラのスイッチを押す。それを数回ほど繰り返して写真を確認。

「よし!今日も良い写真が撮れたわ!」

写真をとっては家のパソコンに保存する。一見見た目は地味だが私はそれが楽しい。なにより写真を撮ることがとても楽しい。これから元μ'sの皆と遊ぶ時もこのカメラを使って沢山写真を撮ろう。

 

「そろそろ帰ろうかしら」

夕日が沈み出し、あと数分をすれば日が暮れる。暗いと色々と危ないかもしれないと考え私はカメラを鞄に仕舞いバイクに跨りエンジンを掛ける。

 

 

 

 

だが………。

 

 

 

 

「え……あれ?」

右ハンドルにあるエンジンを始動させるためのスイッチである『セル』を何回も押すがエンジンが一向に掛からない。キュルキュルキュルと空回りする音がする。

「な、なんで!?家を出た時は大丈夫だったのに!」

 少しパニックになりながら私はエンジンの掛からない原因を探した。バイクの足回りガソリンタンクの中、数多の場所を虱潰しにするとその原因が分かった。

「え…ガソリンが無い……?」

ガソリンタンクの中身を見るとガソリンがほんの少ししか入っていなかった。所謂ガス欠というやつだ。ならガソリンを入れればいいのではと考えるがそう簡単にも行かない。

「どうしよう…この近くにガソリンスタンド何てないし、それに誰かに来てもらおうにも車やバイクに乗っている人も居ないし…」

胸がチクチクしてきた。初めての出来事に完全にパニックになっている。一体どうしたらいいのか、歩いていこうにも距離があるしガソリンを運ぶ道具すらない。さらには今この道に車一台すら来ない。

「だ・・誰か…助けて…うっ…ぐすっ……」

いくら高校を卒業しても1人の女の子。怖いものは怖いのだ。このまま誰もここを通ることなく誰にも助けてもらう事なく時間が過ぎていく。目から出てくる涙を止めようと服の袖で拭うがどんどん後から涙が出てくる。

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、私はこの人に出会った。

 

 

 

 

 

 

 

泣いていると後ろから甲高いバイクの音が聞こえた。そのバイクはどんどんこちらに近付いてきて私の後ろで止まった。アイドリングの音が鳴り続けている中、私は後ろを振り向いた。

そこに居たのはR1Zに跨っている黒いバイクスーツに黒いズボン。そして白いヘルメットを被った男の人が居た。体つきは男らしくがっしりしていて私よりもずっと背が高い。ヘルメットのバイザーからは少し見えにくかったがサングラスをつけているのが見える。

だが私はそんなことより私を見て通り過ぎていくような事をせず困っている私に近付いてきてくれた事がなによりも嬉しかった。

その男の人はバイクのエンジンを切り、ヘルメットを外してサングラスを付け直し、私に近付いてこう言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうかしました?可愛いお嬢さん」

 

 

 

 

これが私とライダーさんとの初めての出会いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

(やべええええ!超絶恥ずかしいいい!)

初めて東京に来て大学始まるまで少しの期間があるから軽くバイクでも走らせようかと思って近くの海で少しだけボーッとしてたまではよかった!

んで帰るときに道の端っこで原付のTZRの近くで泣いている金髪の女の子が居たからついいつもの感じで声を掛けてしまった。

なんだよお嬢さんって!関西人の俺が言っちゃダメな台詞やんけボケェ!こういう台詞はイケメンなおにいちゃんがすることだ!

落ちつけ俺…落ちつけ。大丈夫。俺は大丈夫…。やばかったらここから逃げれば良いんや!いやそれは人間としてクズだ。

 

「えっと…あの…」

ヤバイ…金髪お嬢さんが少しアタフタしてる。しかも目じりに涙をためてウルウルさせてる。困らせたらダメだろ俺ェ…。

 

「君も海を撮りに?」

「あ、はい!そうなんです!海をバックにバイクの写真を撮っててもう日が暮れそうだから帰ろうかなって思ってたときにバイクがエンストしちゃって…」

「あ~…TZRガソリンメーターないから分からないからな。もしかして乗ってそんなに時期が経ってないのかな?」

「その…のってまだ3週間も経ってないです…」

「それは分からなくても仕方ないな。そういうのは乗っていくことに感覚で分かってくる事だから」

「はい…」

(こりゃそうとうパニックってたらしいな……)

まだ20歳にもなっていない女の子がこんな怖い体験したら泣きたくもなるよな…。

 

「えっと、お嬢さん」

「は…はい?」

「ちょっとバイク見せてもらって良いかな…?ほかに壊れてないか確かめたいからさ」

「はい…お願いします」

「では失礼」

 

TZRの前にしゃがみこみバイクに穴が開くんじゃないかというくらい見つめ1つだけ目に入った部分があった。

 

「あ」

「どうかしたんですか?」

「なにかの拍子でチェーンが切れてる。こりゃガソリンを入れても動かないな。というかこれ運転中にならなくて良かった…。もしかしたら怪我してたかも知れないよ」

「よ、良かったぁ…大きな怪我をしなくて」

お嬢さんがここが道路だというにも関わらずペタンッと座り込む。今ので緊張の糸がプツリと切れた模様。

「ま、不幸中の幸いとはこのことだな。ま、ガソリンを前にこいつをどうにかするか」

「けど…どうにかってどうするんですか?」

「君は東京に住んでる子でいいのかな?」

「え?そう…です…」

「ならこの近くにあるバイクのパーツショップは知ってる?」

「知ってます……」

 

 

 

 

そうか……なら。

 

 

 

 

「なら今すぐそこに行ってチェーンを買ってパパッと直すか」

「え!?え!?」

「えっと、俺ここらの土地勘ないから道教えてもらって良い?後ろ乗ってくれるかな?」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「え?何?」

「な、なんで私にそこまでしてくれるんですか……?さっき会ったばかりの他人なのに……」

 

 

(なんで…?なんでって言われてもなぁ…)

今まで何回も困ってる人を助けたことはあったが、俺の中でそれへの答えは決まってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けるのに理由が必要か?」

 

 

 

 

 

 

 

「え…………?」

「別に君だからっていう理由じゃない。こんなところで困っている女の子がいるのになにもしない傍観者に俺はなりたくないだけだ。『困っている奴を助けるのに理由はなんて必要ない』」

「そう……ですか……」

「そういうこと。さてと…じゃそろそろ行こうか。早くしないと真っ暗になって家の人が心配するぞ」

「は、はい!失礼します!」

 

そして俺はバイクのエンジンを掛け、タンデムシートに金髪のお嬢さんを載せる。お嬢さんに俺の体にしっかり捕まってと伝えると腰に手を回してぴったりと密着してくる。んー…この子バランス力いいな。全然揺れない。

 

 

「じゃ、行こうか。道案内よろしく」

「は、はい…よろしくお願いします」

 

 

 

 

少し急ぎ足で俺はバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

この人はなんでここまで優しく親切にしてくれるのだろう。さっき会ったばかりなのに……。普通ならここまでしてくれないはず。

パーツショップに着いても自分から私のバイクのチェーンを買ってもくれた。何度もお金を渡そうとしたのに。

 

『俺が出すよ。気にしなくて良い』

 

の一点張り。

 

 

おかしな人だ。ここまで他人に気遣いをする人は見たことが無い。まるで人を助けるために生まれてきたような男の人。

だが、この人の事を見てるともっとこの人を知ってみたいとも思う気持ちが出てきた。なぜここまで他人に気を使うのだろうか…。なぜここまで必死に困っている人を助けるのだろうか……。

 

 

 

「いやぁ~工具持ってきてて良かった。念には念をとはこのことだな」

「バイクの解体の仕方に詳しいんですね」

「まあバイクが好きだからな。できるかぎりバイク屋に頼らないように、自分で出来るようになろうと思ってな。まあ覚えるのは苦労したな」

「本当にバイクが好きなんですね」

 

 

 

「『バイクに色々したりするのもバイクの楽しみの一つだ』」

「色々?」

「自分でカスタムできるようになったりとか自分で直せれるようになるとさ、そのバイクに愛着が沸いてくるんだ。このバイクは絶対大事にしようと思ってくるんだ」

「前言撤回します。バイクが大好きなんですね」

「少ししか変わって無くないか?ま、大好きなのは否定しない」

 

手際良く私のバイクを分解していき新しいチェーンを取り替えてくれる。この人本気を出せば整備員になれるんじゃ……。

 

 

「あ、お嬢さん。タンクにガソリン今のうちに入れといて。もう少しで終わりそうだから」

「あ、はい!」

「ゆっくり入れるんだぞ。花に水を掛けるようにな」

「その例え凄く分かりにくいんですが……」

「マジで!?関西だと一応通じるんだが……」

「え?関西?」

「いや、なんでもないよ」

「はぁ……???」

 

チェーンを買うと同時にこの人は携帯式のガソリンタンク一ℓ分も買い、通り過ぎたガソリンスタンドに寄り事情を説明しガソリンを入れさせてもらった。普通なら私が言わなきゃいけないことなのにこの人は自ら先に店員に話しかけていた。なんだかこの人に会ってから色々とお世話になりすぎていて少し恥ずかしくも思った。私は賢い可愛いエリーチカと呼ばれてるのにこれじゃ賢くもなく可愛いくもない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!完了。エンジンも掛かるしこれで一安心かな」

「あの、本当にありがとうございました!この恩は忘れません!」

「大げさだよお嬢さん。俺はただただ放っとけなかっただけだ」

「でも、それでも貴方は私を助けてくれました。本当に感謝してるんです!」

「ははっ。ならお世辞としてもらっておこうかな」

「もう!お世辞じゃないですよ!」

「はははっ!悪い悪い」

私の頭を少し乱暴に撫でてくる。不覚にも私は軽くからかわれたことよりも頭を撫でてくれたのを喜んでしまった。

 

 

 

でも本当に今回は完璧にこの人に助けてもらえてよかった。別の野蛮な男の人だったら今頃一体どうなっていただろうかと想像するとゾッとしてしまう。

なら、後日どうにかしてお礼をしたいと私は考えた。

 

 

 

「それじゃ俺はもう行くな。そろそろ寒くなってくるだろうし」

 

だが私の考えは簡単にどこかえ消えてしまった。男の人はさっさと工具を片付けヘルメットを被っていた。

 

 

 

「あ、あの!せめてお礼がしたいので連絡s「お嬢さん」っは!はい!」

 

すると今度は先ほどの優しい口調とは別で厳しい口調に変化した。

 

 

「俺の目が正しければ貴方は優しい子なんだろうな。だから連絡先を交換して後日俺にお礼をさせてほしいと考えたんだろ?」

「は…はい」

 

 

 

 

「そんな事はしなくていい」

 

 

 

「え?」

「今回の事は俺が勝手にやったことだ。お礼を言われる事をしたわけじゃないしされたいと思ってしたわけじゃない。更にも、俺たちは赤の他人同士だ。そう簡単に連絡先を交換なんて口にしちゃいけない。俺は貴方のことを知らないし貴方も俺のことを知らない。いくらなんでも無用心じゃないのか?」

「それは………」

「悪いって言ってるわけじゃないが、簡単に心を許しちゃいけない。もう少しは人を疑う事も考えるんだ」

「…………」

「俺がもしかしたらその連絡先を流出してしまう悪い男かもしれないぞ?そうなったら責任もてないだろ?」

「はぃ……」

 

正論だ。確かに無用心にも程があったかもしれない。いくら助けてもらった恩人だからってこう簡単に心を許してはいけない。もう少し警戒もしなければいけない。けどお礼がしたいのは事実だ。

 

 

「でも…お礼だけでも」

「いいんだよ」

 

今度は優しく私の頭を撫でてくれた。

 

 

「へ………?」

「俺がしたくてしたことだ。お礼なんていらない。それに……」

「それに……?」

「もうお礼は貰ってる」

「え?私なにもしてないですよ?」

「わからなくていいんだ。俺だけが分かることだから」

「はぁ…そうです……か…」

「そうだよ。んじゃそれじゃ俺はもう行くよ。お嬢さんも気をつけて帰りなよ」

「はい!その本当にありがとうございました!」

「あぁ。また何処かで会えたら会おうな」

 

 

そして男の人はバイクにエンジンを掛けていつでも発進できる準備をした。

 

 

 

「あ、最後に1つだけ!」

「ん?」

「その!名前を教えてください!私は絢瀬絵里です」

「名前か…」

 

 

 

「俺の名前は……よ―――り―う―だ」

 

 

 

男の人が口を開け、名前を言う直前、道路にトラックが通りすぎて完全に名前を聞き取ることが出来なかった。

 

 

 

 

「え……?」

 

 

「じゃ、また何処かで」

 

 

 

 

それだけ言い残して男の人はバイクを発進させ一瞬で遠くにいってしまった。

私はそこに立つことしたできなくてもう一度名前を聞こうと追いかける事すら出来なかった。

 

 

 

 

 

「貴方の名前はなんだったの…………『ライダーさん』」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

これが私が大学に入るまでに起こった忘れる事のない出来事だ。

あれ以来ライダーさんに会うことすら出来なかった。何度もあの海に向かったが会うことは無かった。

けど私は1つだけ心に決めた事があった。今度彼を見たらちゃんとそのサングラスをとってもらってその素顔を見て貴方にお礼を言いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの時……私を助けてくれて………ありがとう!』と……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで自己紹介がまだだったわね。私は絢瀬絵里よ」

「俺は横山隆也。よろしくなパツ金美少女」

 

 

 

 

 

そして私は大学でニセモノの恋人役になってもらった『横山隆也』に出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(んー……このパツ金美少女。どこかで出会ったことがあるような……気のせいだな!多分……)

 

 

 

 

 




お久しぶりです。やっと大学の試験が終わりぐーたらしてる作者です。やっぱり夏休みは家に引きこもってナンボですよね!そして毎日ゲーム!←(ヤバイ)


そして今回新しく評価してくださった!
スミスさん!純宮さん!ギィすけ0413さん!ピポサルさん!
ありがとうございます!


そして次回からは新学期という設定で話を進めていきます。
シリアスあり少しイチャイチャありみたいな感じです。まぁ恐らく後半ほとんどシリアスになると思いますが。楽しんで読んで頂けるならなら嬉しいです!
それでこの小説の最終章、最終話にしようと思っていますのでよろしくお願いします!






それでは今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では・・・・・・またな!

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