絢瀬絵里に出会った   作:優しい傭兵

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今回は少し短めです


荷造り

「・・・・・・という事であり、これを計算するには統計学を使うわけで・・・・・・」

 

 

 

 

「ふあぁ・・・・・眠い・・・」

「もう、ちゃんと真面目に受けなさいよ。これだって期末試験にでるかもしれないんだから」

「悪い・・・少しだけ寝かせてくれ・・・」

「ダメよ」

大学での講義中。おれは昨日の夜中まで『とある場所に行くための準備』をしていた。バイクのツーリングという訳でもなくどこかへ旅行に行くわけでもない。高校時代でもいつもこの時期になったら部活があろうがバイトがあるだろうが全ての予定を休んで顔を出しにいくんだ。だが今回は違ってその予定と学校の休みが重なってるので心置きなくいける。

ちなみに絵里は俺の横に座って講義を受けている。さすが元音ノ木坂の生徒会長なのかどんなことでも真剣に真面目に取り組む。いやこれは絵里のご両親の育て方が良いのか、はたまた絵里自信が自負してるKKE(賢い可愛いエリーチカ)が居るからなのか。俺もこれぐらい熱心に勉強できたら以前みたいに絵里に土下座して勉強を教えてもらう事にならなかっただろうに・・・・・・。

 

「では今回の講義はここまで。今回配布した資料にしっかり目を通しておくように」

教授が教室を出て行くのを見終えると俺は自分が使っていた机に突っ伏した。

「あぁ~やっと今日の講義が終わったぁ~」

首を右、左に傾けるとゴキッと鈍い音がなる。

「今日の講義内容はまた一緒に勉強しなおすわよ」

「めんどくさいのでパスでよろしく」

「じゃないと晩御飯作ってあげないわよ」

「それは困る」

「なら頑張りなさい」

「鬼教師・・・・・」

「頑張ったら隆也の大好物作ってあげるから」

絵里が俺の頭を撫でてくる。小さな子供を甘やかすかのような撫で方。

(いいモノだ・・・・・)

「ところで今日はいつもより寝不足だったじゃない。なにかしてたの?」

「まあ荷造りかな」

「え、隆也今の住んでるところ追い出されたの!?」

「違う!!]

「もしかして今まで家賃を払わなかったからヤクザに追い回されてたり・・・」

「待て待て!話が大きくなりすぎ!家賃も光熱費もちゃんと払ってる!」

「冗談よ」

「冗談にしても早とちりしすぎだ」

「ならその荷造りっていうのは?」

「あー・・・後で話してあげるからさ。今日の講義をさっさと終わらせよう」

「そうね。話はそれからで」

俺と絵里は残りの講義を受けるため鞄にさっきまで行っていた講義の教材を詰め込み次の教室へと向かった。

 

 

 

 

***

 

 

 

それから約3、4時間後。

 

俺と絵里は学校の近くにあるカフェでお茶していた。レコーダーから奏でられるジャズとカフェの雰囲気が完全に調和しているのが特徴なカフェ。しかもここのコーヒーがまた絶品。これぞまさに大人の味。

「変な食レポしなくていいわよ隆也」

「なんでお前はそう簡単に人の心を読むことができるんだ」

「顔に出てるからよ」

「マジで?」

「マジよ」

因みに絵里が飲んでるのはロシアンティー。やっぱり母国の味は忘れられないんだな。凄い味わって飲んでるのが分かる。

「それで?なんで荷造りしてたのよ」

「あぁ、それはな・・・・・・」

コーヒーを飲んで一息ついた後、ポツリと言葉を漏らした。

 

「もうすぐしたら俺のお婆ちゃんの命日なんだ」

「ぁ・・・・・ごめんなさい。聞いちゃダメだったわよね、そういうのは」

「気にするなよ。絵里はなにも悪い事してないだろ」

「そう・・・・・だけど・・・・・・」

(ちょっと失礼なことしちゃったわね・・・・・・)

「だから、実家がある兵庫県に帰るんだよ。墓参りをしにな」

「そっか」

「だから少しだけ東京から離れる」

「どれくらいあっちに行くの?」

「2、3日くらいだな。実家には残ってる家族もいるから少しは話しがしたいしな」

「なら、少しの間だけど寂しいわね・・・・・・」

「そんなに落ち込むなよ。たかが2、3日だからさ」

絵里の頭を優しく撫でるが顔の表情は変わらず。

「寂しいか・・・・・?」

「寂しいわよ・・・・・・馬鹿・・・」

「ごめんな」

「ふんっ・・・・・・・・・」

絵里が頬を膨らませて拗ねてしまった。

 

「まあ、話はこれだけじゃないんだがな」

「何よ、まだ悲しくさせるような話でもする気?」

「いや、これはなんというか俺の我侭というか、絵里の判断に任せる」

「どういうこと?」

 

 

 

これは言っていい事なのか言ってはいけない事なのか悩んでしまったが、考えるのも面倒なので単刀直入に絵里に問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「俺と一緒に兵庫県に来てくれるか?」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「兵庫県・・・か」

その日の夜、絢瀬絵里こと私は晩御飯を作りながらカフェで言われた隆也の言葉を思い返していた。隆也の生まれ故郷の兵庫県。どんなところか興味あるし隆也のご家族がどんな人達なのかというのも気になる。

 

『答えは急には決められないよな。無理はする必要ないからな?これは俺の我侭だから絵里が無理して会わせる必要はないぞ。交通費とかは父さんが負担してくれるらしいからそこは気にしなくて大丈夫。ゆっくり考えてくれ』

 

と隆也に言われた。

行きたい行きたくないと言えばすぐに行きたいと答えるのだが、今回のお誘いは断ろうと思っている。その理由はよく考えたら簡単。

 

「お姉ちゃん!何か手伝う事ある?」

「そうね。ならお皿並べてくれるかしら?」

「はーい!」

 

そう、また(・・)亜里沙を1人にしてしまうのだ。ここ最近隆也と一緒にいることがとても楽しいからか隆也の家に泊まることが頻繁になってきていた。

亜里沙は『亜里沙は1人で大丈夫だからお姉ちゃんは隆也さんと楽しいお泊りデートしてきて!』と言ってくれる。言葉はありがたい限りなのだがこの頃はその言葉に甘えすぎた節を感じてきた。いくら亜里沙が妹だからと言ってもまだ高校生。両親はロシアにいるので家族である私が亜里沙の横からまた居なくなるわけにもいかない。

 

 

「いただきまーす!」

「いただきます」

 

別に隆也と会えなくなる訳じゃない。亜里沙と過ごす時間も大切・・・。

そんなことを考えていると亜里沙が声をかけてきた。

 

 

「お姉ちゃんどうしたの?」

「え!?何が!?」

「ずっと難しい顔してたから」

「そ、そう?そんなつもりはなかったんだけど・・・」

「今から亜里沙がお姉ちゃんの考えてる事当てるよ」

「?」

「また亜里沙に気を使わせるんじゃないかー・・・じゃない?」

「っ・・・。なんでそう思うの?」

「この頃お姉ちゃんが亜里沙に何時もより気に掛けてくれるからなにかあるんじゃにかなーって」

「いつも通りにしてるつもりなのよね・・・これでも」

 

まさかこうも簡単に当てられるとは思わなかった。まだ私が音ノ木坂の生徒会長で学校を存続させるために頑張っていた時も亜里沙は今のように私の心理を当ててきた。

なぜこう妹というのは鋭いのだろうか・・・・・・。

 

「お姉ちゃん」

「・・・・・・何?」

「亜里沙は大丈夫だよ?確かにお姉ちゃんと離れるのは凄く寂しいよ?けど」

「けど?」

「今のお姉ちゃん楽しそうだから!」

「楽し・・・そう?」

「だってお姉ちゃん、隆也さんと一緒にいるととても楽しくしてるように見えるよ?スクールアイドルしてた時も楽しそうだったけど、その時と変わらないくらい笑ってるもん!横で見てて分かるよ?お姉ちゃん隆也さんと居れて嬉しそうだなって!隆也さんが凄く好きなんだなって!」

「あ、あうぅ・・・・・・///」

聞いてると凄く恥ずかしくなってきた。

「お姉ちゃんが楽しい事してるのを亜里沙は気も使うし邪魔だってしないよ?今だって亜里沙の事が大切だから隆也さんのお誘いを断ろうって考えてたんだよね?」

(なんでここまで気付くのかしら?)

コクッと頷くと亜里沙がふふっと微笑んだ。

「亜里沙は大丈夫だよ?もう高校生なんだし!それに雪穂や穂乃果さんたちがいるからちっとも寂しくない!亜里沙が1番嫌なのはお姉ちゃんが好きなことを差し置いて亜里沙と居ようとすることなんだよ?亜里沙は、お姉ちゃんの幸せを最優先にした方がいいと考えてます!お姉ちゃん先生!」

「亜里沙・・・・・・」

ロシアからここに来て言葉も全然覚えてない中、日本の文化に中々少し頼りないと心の中で思ってた。けど私が見ない間に亜里沙はこんなに成長してたんだ。

「だからさ、お姉ちゃん。隆也さんと楽しんできてね!お土産よろしく!」

「えぇ、ありがとう亜里沙。少しの間だけ家空けるからよろしくね」

「うん!」

亜里沙のことを正面から優しく抱きしめ頭を撫でた。私って・・・面倒なお姉ちゃんよね・・・亜里沙。

 

 

 

その後、私はスマホを起動させメールを送った。

 

 

宛先『横山隆也』

 

 

 

 

***

 

 

3日後

 

 

 

 

「ふぅ・・・・・・」

東京にある新幹線乗り場である駅でスマホを触りながら軽く息を漏らした。随分長い間戻らなかった訳ではないが、なぜか俺は緊張していた。この緊張は久しぶりに家族に会うからなのかそれとも我が彼女である絢瀬絵里を連れて行くからなのか。

「隆也ー!」

「おう」

「待ったかしら?」

「いや、さっき来たばかりだよ」

「もう、正直に言えばいいのに」

「これが正直な返しなんだが・・・・・・」

絵里今の格好は黒のワイシャツを二の腕で捲くり、ぴっちりとしたジーンズを履いている。

「まさに旅行に行きますよって言ってるような格好だな」

「これってある意味旅行でしょ?私にとっては」

「まあな。絵里は高校のライブ以外で他県に行った事ないのか?」

「んー無いわね。ライブでは東京内だったから」

「1番デカイ処でしたライブはどこ?」

「東京ドーム」

「質問してすんませんでした!!」

「なんで謝るのよ!?」

「レベルが違いすぎた・・・俺とお前は月とゴキブリぐらい差がある」

「それは言いすぎよ!私の高校生活が少し特殊なだけで・・・」

「まあ。その程度で傷つく俺じゃないんだがな」

「メンタル強いわね・・・・・・」

「ま、今回は俺の我侭に付き合ってもらって悪かったな」

「いいのよ。行きたいのは事実だし、楽しみだし」

「楽しみ・・・・・か。ま、単なる墓参りだからそんなに楽しい事はないかも知れないぞ?」

「いいって言ってるでしょ?ほら、早く行きましょ!」

「お、おい絵里!待てよ!」

 

お互い自分の手に持っている鞄を持って駅の中に歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この旅で絵里は隆也の知らない過去を知る事になる・・・・・・。




はい、お久しぶりです。今回はアンケートの結果に基づき、隆也と絵里との兵庫県で過ごす数日間を書くことになりました!少しシリアスありイチャラブありで数話ほど書いていきます!そしてこの兵庫県の話でオリキャラ2人ほど増やす予定です。まあ翔輝みたいな感じのキャラです。お楽しみに!(笑)


そしてこれはお知らせです。
少し投稿ペースが落ちると思われます。いや、これまでも遅かったのですが・・・・・・。4月に入り大学も始まったので投稿する時間があまりないかもしれません。勉強なんかクソ喰らえ!小説書くぅぅぅうう!見たいな気持ちで頑張って書こうと思います!


では今回はここまで!
感想・評価お待ちしております!


では・・・・・・またな!!

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