「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
拝啓、実家にいるお母さん。俺はこの日をもって死にました。
縁起が悪いからやめておこう。だが完全に精神が死んでしまっている。それはなぜか。それはつい先ほどの大学入学式が終わった直後に、ラッキースケベで出会った絢瀬絵里というパツ金美少女との出会いから始まった。まあ色々とあり俺はコーヒーを奢ってもらうためにカフェに向かって軽く話しあった後に起こった出来事だった。なぜか知らないが俺はあいつの恋人になることになった。
数時間前。
「恋人!?」
「そうよ。私の恋人になりなさい!」
「いきなり告白とは、俺もイケメンになったという訳か」
「そんなわけないでしょ!恋人のふりよ!」
「ナンダッテ?」
「隆也には恋人になってもらうわ。決定事項よ、異論は認められないわ」
「話がぶっ飛びすぎだ!一から説明しろこんにゃろう!」
「貴方も見たでしょ?あの追いかけてくる人達を。そこで私はある手を打つことにしたの」
「手を?」
「そう。恋人がいれば流石にしつこくよってこないでしょ?」
「俺は魔よけって事か?」
「その通り。万が一それがあっても私を守ってくれるようにね」
「断る!なんで俺がそんな事を!」
「いいのかしら?胸を触ったことを警察に言ったら貴方どうなるのかしら?」
「ぐ!ぐぬぬ・・・・・・・・・」
「警察に言わない代わりに恋人のふりをしなさい。安いものでしょ?」
「元スクールアイドルのトップに立った人物がこんな腹黒いやつとは・・・」
「失礼ね!これでもちゃんと人としての心はあるわよ!」
「どの口が言いやがる!」
「ふんっ。と言うわけだからよろしくね。ついでに連絡先も教えなさい」
「俺の綺麗な大学生活が・・・・・・・・・」
涙をポロポロ(演出)と流しながら俺は渋々と連絡先を交換した。さよなら俺の大学生活・・・・・・。
「じゃまたね。言っとくけど授業始まってから恋人のふりをしなさいよ」
「へいへい・・・・・・」
ここで話を打ち切り俺と絢瀬は帰路についた。
回想終了。
というわけだ。なんだかんだでとんでもないことに巻き込まれちまったな・・・。学校やめようかな・・・。いやそれでもあいつの事だからまた脅迫してくるに違いない!俺はあいつに屈するしかないのか。と布団の上でゴロゴロしながら考えていた。キラキラ光っていた俺の素晴らしい大学生活は消え、女王に屈する大学生活に代わってしまった。ダレカタスケテー!
ピロリン♪
ちょっと待っててー!といわんばかりに携帯のアラームが鳴りそれを手にして送られて来た連絡先の名前を見ると・・・。
『絢瀬絵里』
パツ金女王だった。送られてきたメッセージを見ると、
【午前8時。学校校門前に集合。時間厳守。少しでも遅れたら・・・・・・ね?】
なんの大事件の脅迫だよ!俺の命が早々危うくなってきちまってる!明日やらかしたら俺の骨を家族に拾われなければいけないことになっちまう!
急いで目覚ましをかけ布団に上に横になり就寝の準備をする。俺は朝が弱いから7時にセットしそこから10分置きになるように目覚ましを設定する。床に就くと今日の出来事で疲れたのか瞼が重くなってきた。明日からまた忙しくなりそうだ・・・。速めに寝ておこう。
「おやすみ・・・Zzz」
夢の世界へゴー。
***
翌日
案の定。
「やべぇぇぇぇええ!!!」
これぞ某主人公にも負けない不幸体質。ちゃんと7時にセットしたのにも関わらずその目覚ましのスイッチを入れていなかった。ただいまの時間7時50分。学校までの距離約1キロ。詰んだわこれ・・・・・・。いやまだだ!俺は間に合って見せる!!
「急げえぇぇぇぇぇぇぇええ!!」
・
・
・
「7時59分。なんとかギリギリね」
「はぁ・・・はぁ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
人生で最高の走りを見せた気がする・・・。朝飯も食わずでの全力ダッシュ。飯食べてたら口からマーライオンみたいになってたところだ。絢瀬は7時半には到着して俺を待っていたとの事。さすがスクールアイドル様。時間厳守ですね。
「じゃ今日から私の恋人として頑張りなさい。こき使ってあげるから」
「全国でも有名になっていらっしゃるスクールアイドル様様がここまで人使いの荒い奴だって事がファン全員に知れ渡ったらどうなるのかね」
「入学式早々セクハラをしてくる貴方もどうかと思うわよ?」
「あれは事故だろ!?前見て走ってなかったお前にも悪いと思うけど!?」
「見苦しい言い訳はやめなさい。早く行くわよ」
「き、聞く耳もたずかよ・・・・・・」
そして俺達二人は校舎へと進んでいく。今通っている学校は中々の広さで校舎から校舎への移動に数分は掛かる。俺はその移動中に色々と質問をした。どこの学部なのか、家はどこなのかなど。そして、他の人達に聞かれたとき俺のことが恋人だと言う事をどのように説明する気なのだろうかと。
絢瀬曰く、家は大学からほんの少し離れた処にあるアパートに住んでいて。三つ離れた妹と暮らしている。学部はなんと俺と同じ学部に所属。入学式にあったときは一緒の学部なら仲良くしたいと決めていたが今となっちゃ学部を変えて欲しいくらいだ。どんな目に会うか分かったもんじゃない。俺の横には女王様が君臨しているからな。俺は絶対屈しない!アニメみたいな台詞言ってるけどもう屈しちゃってるんだがな。
「あ、あのμ'sの絢瀬絵里さんですよね?」
「え?そうだけど・・・・・・」
「すいません!俺大ファンなんですよ!握手してください!」
「俺も!サイン書いてください!」
「私も!」
「俺も!」
やっぱりな。入学式が終わってもこうなる事は予想はできた。一人のモブが声をかけたら連鎖的にこうなってしまう。気付いたら数十人ものモブ軍団に囲まれた。
「皆ごめんなさい。私はもうスクールアイドルをやって居ないのよ。仲良くなってくれるのは嬉しいけど、私の事はスクールアイドルの絢瀬絵里じゃなくて、大学での友達の絢瀬絵里として接してくれない?」
「はい!わかりました!これからよろしくお願いします!」
「私もよろしく!一緒にご飯とかたべよ?」
あんなお願いされたら誰でもそうなるわな。みんな騙されてるぞ、その女の奥底は真っ黒黒介並に黒いぞ。いつか目玉をほじくられるぞ?それはないか。ま、絢瀬も学校で男女関係無しに友達ができるのは良いことじゃないのかね。
「そういえば絢瀬さん。そっちの人は誰なの?校門から一緒に歩いてたの見たけど」
「もしかして高校時代からの友達?」
モブ女達がキャーキャーと黄色い声を上げている時、モブ男共は俺を物凄い目で見てくる。やめてくれ!俺は無実だ!と言いたい・・・。なんで言えないのかって?横の絢瀬の目が怖いんだもん。
「みんなに一応紹介しておくわね。彼は私の恋人の横山隆也よ。仲良くしてあげてね」
・
・
・
「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?」」」」
ハイ、ソノトオリデス。
「え!?それって高校時代から付き合ってたの!?でも音ノ木坂って女子高なはず・・・・」
「絢瀬さん!詳しく教えてくれない!?」
「教えてくださいエリーチカ!」
なんか最後に凄いのが混じっていたな・・・。キニシナイキニシナイ。
「そうね。実は隆也とは中学時代からの付き合いなの。中学から付き合い始めて無事に中学は卒業したのだけれど私は音ノ木坂に行く事になって事実上遠距離恋愛になってしまったのよ。でも隆也はいつもメールをくれてお前のことはいつも愛してるぞ。大学では一緒だぞって言ってくれたのよ。三年間、会うことは殆どなかったのだけれど隆也は私の事、ずっと待っていてくれたのよ・・・・・・」
最後に顔をほんの少し赤らめての全員への告白。勿論演出だ。
「「「きゃーーーーー!」」」
「絢瀬さんてすっごい可愛い乙女だったのね!」
「凄く可愛い!」
「「「コロスコロスコロスコロスコロスコロス」」」
絢瀬の野郎!なんてストーリーを完成させてんだ!しかも無駄にリアル感出しすぎだろ!みんな信じちゃってるぞ!女の子はキャーキャー言いながら興奮してるし男にとっては殺すコールだぞ!?そしてそのやってやった感あるドヤ顔やめろ!
「という訳だから告白は受け付けれないわ。それでも私と仲良くしてくれるかしら?」ウィンク
「「「了解でーす!」」」
お前ら弱・・・。簡単に騙されてるし・・・。みんなそいつが腹黒女という事に気付いてくれ!
「ほら隆也行くわよ。最初の講義に遅れちゃう」
「え?お、おい!」
俺は絢瀬の腕を引かれ最初の講義が始まる校舎へと引っ張られていく。そこに残された人達は甘ーい雰囲気を出しながら個人の始まる講義へと向かっていった。だが、その時に俺はかすかに聞こえた気がする。この関係を見ていいと思う者もいればそれを拒んでいる者もいたことに。
「ちっ・・・。なんだよアイツ・・・・・・」
こいつとどうなるかはまた別の話。
そして午前の講義が終了し、今からランチタイム!と言いたいところだが、俺は食えない。それはなぜか、『財布を忘れた・・・・・・』だってあんな急いでた状態で完璧に準備ができると思うか!否、出来るわけが無い!
「ご飯でもたべましょうか」
(止めの一撃だこいつ・・・)
「あー・・・俺腹へって無いからさ、今日特にやること無いし帰って良いか?」
「ダメに決まってるでしょ。もし私がこのランチタイムの時に囲まれたらどうすんのよ」
「さっき仲良くしてねって言ったのはどこのどいつだ」
「そうは言ってもサインを求めてくる人がいるかもでしょ?」
「魔よけ役引退したいです」
「始まってまだ一日も経ってないじゃない。男の子なんだから我慢しなさい」
「てめぇのせいでこうなっちまったんだよ・・・・・・」ボソッ
「何か言った?」
「何も」
何時もの会話が済み人が少ない場所で食事を取る絢瀬(俺も)。カバンから小さな弁当箱を取り出す。中身を覗いてみると中々女子力とやらが高い弁当である。説明するのが難しいがこれぞ弁当といえる代物だ。スクールアイドルで腹黒と言ってもちゃんと女の子なのか。
「今失礼なこと考えたでしょ」
「べ、別に?」
「本当かしら・・・・・・」モグモグ
くそ~!美味しく食べやがって!一口でもいいから食わせろと言いたい処だがそんな事言ったら、『貴方みたいな変態にあげるお弁当なんて無いわ』というに違いない。我慢我・・・・・・「ぐぅ~」あ。
「隆也、そういえばあなたお弁当は?」
「無いよ。絢瀬の時間厳守のメールに書いてあった時間に間に合おうとしたけど寝坊してろくな準備も出来なかったんだよ。弁当どころか財布すら忘れたんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
うわぁー・・・すんごい目で見てくる・・・。絶対心の中で忘れるなんて馬鹿ねとか変態とか思ってるに違いない。変態は余計だ!まぁこいつが食い終われば帰れる。我慢だ。
絢瀬から視線を逸らし頬杖を付いて携帯を触って時間を潰そうと思っていると肩をトントンと触られた。
「あん?」
「ほら、これ」
出してきたのは弁当の蓋の上に置かれた少量の白飯と少量のおかず。弁当を見てみると量は減っている。
「なんだこれ」
「私の弁当よ・・・。少しだけ分けてあげる・・・」
「この後俺をどうする気だ・・・・・・」ガタガタ
「どうもしないわよ!確かに忘れてきたのは貴方自身が悪いわよ」
「ごもっともで・・・・・・」
「でも、貴方の生活での起床時間もあるのに私が無理矢理起こしたっていうのもあるわ。それなのに貴方は時間を守ってきてくれた。セクハラをする変態だけど律儀っていうのがよく分かったの。だから・・・・・・その・・・今回は私も悪かったわよ・・。振り回して・・・・・・。だから特別として私のを少し分けてあげるわ。味は保障するわよ」
「絢瀬・・・・・・・・・」
腹黒というのは撤回しよう。こいつは本当は優しい奴なんだなと身に染みて分かった。どうやら彼女の中で俺を振り回して少しだけ悪い気がしていたのだろう。確かに俺が絢瀬にした行為は警察行きに行ってもおかしくない。なのにこいつは魔よけで許すと言ってくれた。よく考えたら寛大な処置なのかもしれない。俺の事を嫌っているはずなのにそれでも自分のこういう処が悪かったと反省してそのお詫びとして弁当を分けてくれてる。俺への扱いは酷いけど、根は優しい奴なんだな・・・・・・。
「優しいな絢瀬。ありがたくいただく」
「そうよ。おいしく頂きなさい」
「おう!」
食堂から割り箸をもらってき少量の弁当を口に含む。感想、俺の母が作った食事に似た味がした。柔らかくて優しい・・・。そんな味である。
「ご馳走様。美味かったよ」
「お粗末様。気が向いたらまた上げるわよ」
「これは俺も腕によりを掛けて弁当作らないとな」
「隆也って料理できるの?」
「こうみえても俺の母親のお墨付きだ。明日食わしてやるよ」
「期待・・・しておきましょうか」
「しとけしとけ。たまらずおかわりする事になるぞ」
「弁当でおかわりって聞いた事ないわよ・・・」
食事が済んだ後、俺達は午後の講義が無いので自宅に戻るために校門へと向かった。俺は思った。楽しい大学生活は消えたと思っていたが、そうでもないかもしれない。
「楽しみだ・・・」
「何がなの?」
「何でもねえよ。ま、これからもよろしくな。『絢瀬絵里』」
「今更何言ってるのやら。よろしくしてあげるわ。『横山隆也』」
そして俺達はお互いの帰路に付いた。
「「また明日」」
おまけ
夜にたまたま電話をしていて・・・。
『気が向いたらじゃなくてこれから俺の分も弁当作ってくれよ』
『なにを言っているのかしらこのクズ虫は』
『クズ虫!?』
二話でした。アニメのエリーチカとは違いますがそれでも楽しんで読んでいただいたら幸いです。
書いてる時にキュンキュンしましたね。こき使ってるけど隆也の事をきにかけていらっしゃる。ツンデレかな?
それでは三話でお会いしましょう!またな!
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