「ちょっと何縁起でもないこと言ってるのよ!」
「ここまでのようだ・・・・・・強く生きろよ・・・」
「やめてよ!こんなところで諦めないでよ!」
(ドッキリなんだけどなぁ笑)
「貴方がここで死んだら・・・誰が私にお金を貢ぐのよ!」
「ってそこかーーーい!!(゜o゜)」
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・
ここは東京で1番近い大病院こと、『西木野病院』の個室の病室。病室には心拍数、脈拍、脳波を測る機材と数本の点滴と酸素マスクをつけている隆也と、その隆也が横たわっているベットの横で椅子に座っている私しかいない。
「・・・・・・・・・・・・・・・隆也・・・」
ガラッ
「今、大丈夫かしら?」
「真姫・・・・・・」
病室に入ってきたのはこの西木野病院を経営している西木野先生の娘、元μ'sで今の音ノ木坂の2年生の西木野真姫。恐らく今回の出来事があったことを先生から聞いて来てくれたんだろう。
「話はパパから聞いたわ。災難だったわね・・・・・・絵里」
「私はいいのよ。けど・・・・・・隆也が私を庇って・・・・・・」
「急いで手術したおかげで傷口はすぐに塞げたわ。傷はすぐ治ると思うわよ。けど出血があまりにも・・・・・・」
「じゃあ・・・このまま目が覚めなかったら・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・なんとも言えないわ・・・・・・」
「そんなぁ・・・・・・隆也ぁ・・・・・・うわぁぁぁぁあ!!」
私は涙が止まらなかった。自分のことで2度まで隆也を巻き込んでしまった。しかも今回は私を庇ってまで・・・・・・。なんでこの人がここまで傷つけられなきゃいけないのよ・・・・・・。この人は何もしていないのに・・・・・・。
「絵里・・・・・・・・・」
「真姫・・・私はどうしたらいいの・・・?私には何も出来ないの!?」
「この人が絵里のどういった人なのかは私は分からないわ。けど・・・貴方を守ってくれた強い人よ。信じてあげなさいよ・・・・・・。この人は貴方の『ヒーロー』なんでしょ?」
「真姫・・・・・・うん・・・。私は信じてみるわ・・・・・・隆也を」
「それこそ絵里よ。じゃまた来るから後でね」
「えぇ・・・・・・ありがとう」
ガラッ・・・ピシャ・・・
ベットで寝ている隆也の頭を優しく撫でた後に隆也の左手を優しく両手で包み込む。
私はこの言葉が隆也に届くとは思えない・・・。けどお礼が言いたい・・・。
「隆也・・・・・・。私は大丈夫よ?貴方が私を守ってくれたから傷1つ無いわよ・・・・・・。私っていつも隆也に助けられてばかりよね・・・・・・。前に貴方は言ってくれたわよね?なんで私を助けてくれたの?って聞いたら・・・『助けるのに理由が必要か?』って。貴方はいつでも私を助けてくれる・・・・・・。理由がなくても助けてくれる貴方は私のヒーローよ・・・。だからお礼を言わせてちょうだい・・・・・・。これだけのお礼じゃ足りないと思うけど言わせて・・・・」
『私を守ってくれて・・・ありがとう・・・・・・』
この時、隆也の手がほんの少し動いたのは絵里も気が付かなかった。
***
あれから5日。隆也はまだ目を覚まさなかった。私はいつも大学が終わった後に隆也の病室に行っている。時には希と・・・時にはにこと・・・。私は病室に行くとすぐに涙を流してしまうようになってしまった・・・。その時希とにこが励ましてくれているけどやっぱり堪える事は出来なかった・・・・・・。考えられることじゃなかった・・・。自分の好きな人がこんなことになることが・・・・・・。今自分が隆也に出来る事が目を覚ます事を祈る事しか出来ない事が悔しかった・・・・・・・。自分の無力さに腹が立つほどだった・・・。
「今日も・・・隆也は目を覚まさないか・・・・・・」
いつも通りに大学での講義を終わらせて病院に向かった。受付で挨拶を済ましエレベーターで隆也の病室の階まで上がり、いつも通りに真姫のお父さんとお母さんに顔を見せた後、お供え用の花を持ちながら部屋に入ると見かけない人が居た。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あの・・・・・・誰ですか?」
「ん?・・・あぁ、どうも。隆也の父親です」
「え!?あ・・・・・・こ、こんにちわ!」
「そんなに改まらなくいい。絢瀬絵里さん・・・ですよね?」
「なんで・・・私の名前を・・・・・・」
「西木野先生に聞いたんだ。いつも隆也のお見舞いに来てくれている金髪の美少女がいるって」
「そ!そんな美少女だなんて!///」
「ははは。まあ座ってください」
「は、はい・・・失礼します・・・」
隆也のお父さんは凄く逞しい体をしている人だった。肩幅は隆也よりもあるし背丈だって隆也より高い。これぞ大人の男みたいな人だった。
「先生から話は聞いた。こいつは貴方を庇ったんだって?」
「はい・・・。私が襲われているところを助けてくれました・・・・・・」
「そうか。『こいつもやっとそれくらい出来る男になった』訳か・・・」
(それくらい・・・・・・?)
「刺されたのは予想外だけどな」
「そう・・・・・・ですね・・・・・・」
(何も・・・・・・言えないわね・・・・・・)
少しの沈黙の後、隆也のお父さんが口を開いた。
「こいつはさ、こんなに強くなかったんだ」
「え?」
「小さな頃からずっといじめられててな。中学校では3年間ほぼ1人みたいな状態だったんだ」
「そんな時期が・・・・・・」
(少し・・・信じられないわね)
「中学校の頃は毎日がいじめられる日々だった。部活はバスケ部に所属してたけどそこでもいじめられて大好きなバスケが出来なかったくらいなんだ」
「今の隆也から見たら信じられない事ですね」
「まあな。けど高校では恵まれたんだ。部活では仲のいい友達も増えてな。あの翔輝もその1人だ。クラスでも仲良くなれて毎日が楽しいってこいつ自分から言い始めてきたんだ」
「そうなんですね。隆也も救われたんだ・・・・・・」
「だが、一度だけ辛い事があったんだ」
「?」
「ある日のことなんだが、中学校の頃の同級生に告白されたんだ」
「え・・・・・・」
「流石に最初は疑ったがこいつはそれよりも嬉しいって気持ちが強かったんだ。あんな事があったけど今では自分事が好きになってくれたんだって」
「それのどこが辛い事なんですか?」
「この話には続きがあるんだ。その告白してきた奴はその日からLINEばかりで会おうとはしなかったんだ。高校で1番仲のいい部活の友達に相談したんだが、それは騙されてるっていうのが答えだったんだ」
「騙されてる・・・・・・」
「隆也はその言葉を信じたくなかったんだがこのままでは駄目だって友達たちに気付かされて告白してきた女は中々自分に顔を見せないから電話で白黒つけさせたんだ。そしたらそいつは電話でこう言った」
『お前みたいなクズに本気で好きだと思ってるの?死んでくれない?』
「!?」
「こいつにとっちゃそれがどれだけ辛い言葉だったか・・・。しかもその告白はその女だけが考えたことじゃなかった。隆也の中学生の同級生とその女の友達合わせて10人くらいが考えたことなんだが・・・・・・そいつらにとっちゃその告白は隆也に対するドッキリ程度のこととしか考えてなかったんだ」
「酷すぎる・・・・・・」
「隆也は悲しみと怒りで大変なことになった。電話ではその女に対して隆也は本気で怒って怒鳴り散らした。その女はその言葉を聞かずに即効で電話を切って逃げたんだ」
「最低っ・・・・・・」
「だが隆也に降りかかった悲劇はこれだけじゃなかったんだ。その後まったく知らない番号で電話がかかってきた。内容は『お前なに俺の友達泣かしてんだよ。覚悟しとけよ?』ってな。その電話は告白を考えた男でこれは仮説なんだが女が裏で隆也を懲らしめてって言ったんだろうな。その電話があった次の日に隆也は男たちにリンチにあって体にも心にも大きな傷を負ったんだ」
「酷すぎますよ!なんで隆也がそんな目に!!」
「俺も話しを聞いた時は怒りを抑えられなくてな。その計画を考えた奴らの家を中学校時代の講師から聞いて1つずつ回って隆也の前に土下座させてな。これでも足りないかってくらい俺も怒鳴った。けどその時の隆也はいつもの隆也じゃなかった・・・」
『もう・・・・・・どうでもいい・・・・・・』
「隆也はそいつらに対して怒りなんてなかった。心がまるでミキサーで掻き混ぜられたくらいにぐちゃぐちゃだったんだ。学校では偽の表情まで作って高校の友達には心配させないように振舞っていたんだ」
「なんで・・・・・・隆也がそんな目に・・・・・・」
握っている拳から血が出そうだ・・・・・・。隆也にこんな過去があるなんて・・・・・・。酷いって言葉じゃ足りないくらいだ。
「その心の傷を癒してくれたのはこいつが高校2年生になったときに部活に入ってきた新入生の女の子と同級生の男友達だったんだ。治すのに時間は掛かったが隆也は完全に元通りになったよ。隆也は泣いてそいつらに感謝してお礼を言った・・・・。本当にこいつが恵まれてるって実感したな」
「よかった・・・・・・」
うっすらだが今の話を聞いて私も涙が出た。隆也にいい友達ができて本当によかった。
「それで隆也が元に戻ったある日の事なんだがな・・・・・・。家で俺にむかってこいつはこういったんだ」
『俺は父さんみたいに強くなりたい!俺を想ってくれたあいつらを守りたい!!あいつらを助けてあげたい!俺が守りたいと想う人を守れるくらいの人になりたい!これが・・・俺を助けてくれたあいつらに対するせめてもの恩返しなんだ!!』
「隆也・・・・・・・・・」
「んでこいつは高校時代に学校の部活をしながら柔道を始めたんだ。自分が守りたいと想う人を守れる存在になるためにな」
「それで柔道を・・・・・・」
「これで話は終いだ。悪いな、長々と・・・・・・」
「い、いえとんでもないです!聞かせていただきありがとうございます!」
「ふっ。そろそろ俺も帰る時間だ・・・・・・。後は美少女に任せよう」
「だから美少女じゃ!!///」
荷物を片手に持ち部屋を出た隆也のお父さん。けど病室の部屋の扉を閉める前に一言だけ私に言葉をかけた。
「今の隆也の守りたい人は貴方なんだろうな。こいつの事・・・よろしくな」
「え・・・・・・?」
ガチャ・・・・・・バタンッ・・・・・・。
***
翌日:午後
「じゃ、病院に行きましょうか」
講義が終了し身支度を済ませる。今でも学部の友達には目を覚まさないと伝えている。真姫のお父さんは普通なら目覚めると思うんだがって言ってたけどなんで隆也はここまで目を覚まさないんだろう・・・・・・。
「早く・・・起きなさいよね。バカ隆也」
今日は希とにこも来るとの事なので急いでいこう。
ピリリリ・・・・・・ピリリリ
(電話?)
「希じゃない・・・。もしもし?」
『エリチ!?今何処!?』
「何処って学校だけど?」
『急いで病院に来て!早く!!』
「ちょっとどうしたのよ。なにかあったの?」
『何かあったとかじゃないねんよ!』
希がこれでもかってくらい焦っているのが分かる。
「落ち着いて希。どうしたのよ?」
私は、次に発した希の言葉に冷静さを失った。
『隆也君の心臓が止まったんよ!!』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
私の手からスマホが滑り落ちた。
***
ダダダダダダ!
「希!にこ!」
「エリチ!」
「絵里!」
希の声を聞いてバイクで急いで病院に到着し、隆也の病室に飛び込んだ。
そこで目に入ったのは希とにこ。そして数名の医師が隆也のベットに群がってる姿と心拍数が止まっているのを表す機材だった。
「なん・・・・・・で?」
「ウチらが来た時はお医者さんが部屋に入っててずっと人工呼吸をしてたんよ!」
「さっきからずっとしてるのに心臓が動かないのよ」
「心臓が・・・・・・動かない・・・・・・?」
なんだろう・・・。希たちの声は聞こえるけど頭ではその言葉の意味が理解出来ていなかった。
「このままじゃ駄目だ!AED!」
「準備できました!行きます!3、2、1!!」
バシュッ!ガタンッ!
教習所でみた貼り付けるAEDとは違う、まるでアイロンのような形をした電気パッドを隆也の胸に当て電気を流す。電気を流した瞬間隆也の体が跳ね上がるが心臓が動く気配はない。
「まだだ!もう一度だ!」
「はい!3、2、1!!」
バシュッ!ガタンッ!
だが、何度同じことをしても隆也の心臓が動く事はない。
「もしかして・・・・・・隆也君は・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・いやよ・・・・・・いやぁ!!」
私は医者がいるのをお構い無しに隆也の元に駆け込んで隆也の手を握った。
「隆也!死んじゃ嫌よ!!こんな事で死なないでよ!私を守ってくれるんでしょ!私のこと置いていかないでよ!まだ貴方に言ってない事があるのよ!!私は・・・・・・貴方が好きなのよ!私を守ってくれる・・・助けてくれる貴方が好きなのよ!『ニセモノ』の恋人じゃなくて・・・私の本物の・・・『ホンモノ』の恋人になってよ!!」
涙が隆也の手にポツリと零れ落ちる。
「私の・・・・・・私の側にいてよぉ・・・・・・隆也ぁ・・・・・・隆也ぁ!!」
はいどうもでござる。残念ながらシリアスは続くのでした。なんだか凄いことになっていると自分でも思っておりますです。・・・・・・・・・ついでにこれを考えたのはお風呂の時だったのは内緒で・・・・・・笑
新しく評価してくださった!
美波みさん!機動破壊さん!コープさん!滝沢さん!
ありがとうございました!
では今日はこれにて。感想・評価お待ちしております!
では・・・・・またな!!