「きゃあ!?」
霧生さんに肩を掴まれ、地面に押し倒されてしまう。
私を押し倒した直後、ナイフを持っていない手で首を掴まれギリギリと締め付けられる。
「な・・・なに・・・を・・・ぐぅっ・・・・・・」
「言ったでしょ?死んでくださいって?」
「どうして・・・・・・こんなこと・・・・・・」
「おぼえていますか?一年前に行われたラブライブ地区予選を」
「よ・・・・・・せん・・・・・・?」
「貴方達μ'sはスクールアイドルトップと呼ばれていたA-RISEを破ったスクールアイドルの新星。俺はそこが許せなかったんですよ・・・・・・。今まで頂点に君臨していたA-RISEがほんの少しの期間でしか活動していなかったちっぽけなグループがラブライブを優勝したことにねぇ!」
首を掴んでいる手に力が入り私の呼吸を本気で止めにいた。
「あぁっ・・・・・・うぅぁ・・・・・・」
ほんの少ししか出来ない呼吸をしながら考えた。この男の人は心からA-RISEを応援していたファンの一人だろう。私達がA-RISEを負かした事でファンからしたら私達を良くない物と思う人は少なくはないはずだ。私達は最終予選であった合同記者会見で私達のリーダーである穂乃果が堂々と優勝宣言をしたのだ。おそらくアレもこの人に対して火に油を注いでしまったのだと思う。
「という訳でA-RISEに楯突いた罰として死んでもらいます。心配はいりませんよ?一緒にいたあの男も殺すんで」
「っ!?」
あの男・・・隆也の事だと言う事はすぐに分かった。なんで?なんで隆也まで殺されなくていけないの?あの人は何も関係ないのに・・・。また、前みたいな事で隆也を巻き込みたくない!
「じゃ、これでお別れです。遺体は別のところに隠しておくので・・・・・・」
霧生は持っていたナイフを振り上げ、その狂気に走ってしまい濁ってしまっている目で私を睨みつけてきた。
体が恐怖で震えてしまい身動きがとれない状態。目には涙を浮べ怖いあまりに目を閉じてしまった。もう駄目だと思ってしまった。
(私・・・・・・死ぬのかしら?こんなアニメや漫画でありそうなシーンみたいなことで・・・・・・。もうみんなには会えないのかしら・・・。μ'sの皆・・・大学で友達になってくれた皆。妹の亜里沙・・・・・・。そして・・・・・・・私の偽の恋人になってくれた隆也・・・)
脳裏に次々とその人達の顔が横切っていく。これが走馬灯というものなのか・・・。隆也の顔が浮んだ瞬間、隆也と交わしたある言葉を思い出した。
『いいか絵里。お前はある意味有名人なんだ。いついかなる時に色々な方法でお前に襲ってきたりや近付いてきたりする奴がいるかもしれない。ほんの少しの護身術は覚えとくべきだ』
『柔道でも習えってこと?』
『さすがにそこまで言わない。お前でも覚えられる護身術を教えてやる』
『どういったものよ』
『これは男女に共通することだ。人間の体には中央線ってものが存在する。文字通り人間の体の中央、真ん中にある上から下まである人間の見えない線だ』
『中央?』
『ここは人間の急所がたくさんある場所だ。聞いたことあるだろ?顎を殴ったりしたら脳が揺れたりとか鳩尾を殴ると吐くとか』
『聞いたことはあるけど・・・』
『もし襲われたりしたらそこを狙え。女に襲われるって事は無いと思うけどたぶん男には襲われる可能性はあると思う。多分・・・・・・』
『襲われたくないのだけれど・・・・・・』
『それが1番だが備えあれば憂いなしっていうだろ?一応知識として覚えとけ』
『分かったわよ。貴方に教えられるのがちょっと癪だけど・・・・・・』
『今だけは目を瞑ってやろう・・・・・・・。でだ、お前みたいな女でも出来ることは二つある。ひとつは顎を殴る事だ。適度な強さで殴ると脳は脳震盪を起こす。けどそれは隙があるときだけにしろ。もう1つは・・・・・・・・・』
私はもう一度目を開け霧生の急所部分が何処にあるのか確認する。今は私が完璧に霧生に押し倒されている状態だ。左手は私の首に、右手はナイフを持っているので彼の胴体は隙だらけだ。でも体勢上腕で顎を殴ることはできない。ならば最後に残っている急所は下半身。
『もう1つは男が蹴られたら1番痛い場所だ。さすがにお前でも知ってるだろ?人間で特に急所と呼ばれている場所・・・・・・・・・股・・・。股間だ』
「ていっ!」
「うげぁ!?」
足で彼の股間を思いっきり蹴り上げた。ちょっと場所はずれたがヒット。その衝撃で彼の私の首を掴んでいた手が離れたので押し倒されている状態から脱出できた。
(やった!隆也に教えてもらったのが役にたった!ありがとう隆也!)
霧生が蹲ってるので急いでここを離れようと思った。メイド服のスカートの裾を掴んで走り去ろうとした。
「このアマぁ!!」
「きゃっ!」
蹲っていた筈の霧生が起き上がり私の服を掴んで自分の方に寄せてきた。
「は、離して!!」
「こっちが本気にならなかったから調子に乗りやがって!」
霧生の手に力が入り、メイド服の生地をビリビリに引き裂いてきた。
「いやああぁああ!」
「その綺麗な胸にこのナイフをおもいっきりブッ刺してやるよ!」
両手を左手で握られ抵抗が出来ない。下着が露になった胸に向かってナイフが振り下ろされた。
「死ねやぁあ!!」
抵抗してもこのような結果になってしまった・・・。涙が頬を伝って地面に零れ落ちた。
「隆也・・・・・・助けてよぉ・・・・・・」
バキィッ!
「ぐはぁ!」
「・・・・・・・・・え?」
ナイフが胸に刺さる感触ではなく、優しく私を抱き寄せてくれた感触だけがあった。
霧生が少し離れた場所まで吹っ飛ばされ、頬には殴られた後があった。
そして誰が私を抱き寄せているのか確かめるために視線を上に上げていく。するとそこには急いで来てくれたのか額に汗を浮ばせ、私を左腕で優しく抱きしめてくれる、私の好きな人が居た。
「絵里・・・・・・またせたな・・・・・・」
「隆・・・・・・也ぁ・・・・・・」
***
俺がここまで来たのは絵里が心配だったからだ。絵里は気にすることが出来なかったのかもしれないが今の時刻は12時30分だ。すぐに断れるはずの告白にここまで時間が掛かっているのは流石におかしいと思った。絵里の友達の愛菜さんも少しオドオドしていたくらいだ。んで2号館の近くまで来てみたら絵里の悲鳴が聞こえるから見てみたら絵里が下着丸出しの状態で金髪の男に捕まっている図が目に入った。頭で考えるより先に体が動いて金髪の男を殴り飛ばしたわけだ。こいつが霧生か・・・・・・。思っていたよりイケメンだが性根はクソ野郎だな。
「隆也・・・隆也ぁ!」
「怖かったな絵里。もう少し早く気付いてれば良かったんだけどな」
「怖かったわよ!もう少しで殺されるかと思ったわよ!なんでもっと早く来てくれなかったのよ!」
絵里が俺の胸倉を掴んで大粒の涙を流しながら訴えかけてきた。
「悪かったって・・・。ごめんな・・・」
「うぅっ・・・・・・ぐすっ・・・・・・ひぐっ・・・・・・」
絵里が俺の胸に顔を押し当ててて肩を震わせながら泣き崩れる。よほど怖かったのだろう・・・。恐怖でさっきから体が震えっぱなしだ。
「いってぇ・・・。てめぇ・・・」
「結構思いっきり殴ったのに意外とタフだな」
「なんで俺の邪魔をするんだよぉお!どいつもこいつも俺の思ったとおりに行かしてくれないんだよ!もう少しでその女を殺すことが出来たのに!」
「お前の御託はどうでもいいんだよ。俺は今絵里が傷つけられた事に腹がたってんだよ」
「殺す!お前みたいな奴が凄くムカつくんだよ!殺してやる!その顔斬り刻んで胸をメッタ刺しにする!殺す!殺す殺す!コロスコロスコロスコロス!!」
霧生はもう怒りが頂点に達したのか何も考えられなくなったのか、手に持っていたナイフを握りなおし、口から涎を垂らしながら最後には『殺す』という言葉しか出ていなかった。
「まるで薬中毒者だな」
「隆也・・・・・・どうするの・・・・・・?」
「なんとかしてこいつを黙らせないとな・・・。今の俺たちの立ち場所じゃ逃げれない」
2号館の裏は大学を覆っている柵が建物に溶接されている唯一の場所。上から俺たちの場所を見たら三角形の形をしている感じだ。そして俺たちの背後にははその溶接されている場所がある。簡潔に言うと逃げ道が無い。霧生の後ろが俺が入ってきた裏への入り口。絵里を連れて走って逃げるのは無理がある。結論・・・・・・。
「ぶちのせすか」
「隆也!?相手はナイフ持ってるのよ!?今は逃げないと!」
「流石に今の状況じゃ逃げれない。今愛菜さんに大学に来てる翔輝と教授達を呼んできてもらってる。それまであのキチガイを止める必要がある。一応ナイフ相手の護身術は受けてる。心配するなよ」
「でも!」
絵里の言葉を聞く前に着ていた服を絵里に着せた。
「大丈夫。ちゃんと守るから」
絵里の頭を優しく撫で霧生の方に振り向くと・・・。
「横山隆也ぁああああ!」
「っ!」
ナイフを俺に向かって振り下ろしてきた。ナイフの使い方を知らないのか大振りすぎて動きが読める。ナイフが当たる瞬間に横にローリングし攻撃を避けた。
「死ねよぉお!」
「少し黙れ」
今度は横に振ってきたナイフを避け、ナイフを握っていた腕を掴み外側に捻る。
「あぐっ!」
「っ!」
腕を捻って隙が出来た瞬間、右手で霧生の片方の服の袖を掴み左手で霧生の服の襟を掴み俺のほうにおもいきり引き寄せ自分の腰を捻り、テコの原理で霧生の腰を浮かし、左足で霧生の内ももを蹴り上げる。
柔道技『内股』
ドシィンッ!
「がはっ!」
蹴り上げ霧生の体を地面に叩きつけた後、手からナイフを捥ぎ取り腕を捻り上げた。
「いてててて!おい離せ!」
「ん?仕方ないな。なら離してやるよ」
手を離す前に、霧生の利き腕と思われる右腕の関節をおもいきり外した。
ゴキンッ
「あ"あ"っ?!」
「おー・・・いい音なったな」
ナイフを捥ぎ取ったがまた取られたら面倒なので奴から離れた場所の放り投げた。
「教授たちが来たら一緒に警察のところに行ってもらうぜ。完全に刑務所行きだろうけどな」
「・・・・・・っの野郎がぁ・・・・・・」
絵里視点―
凄い・・・。その一言だった。隆也が柔道をしていたのは知っているけどナイフ相手に簡単に倒してしまった。バトルアニメでありそうなシーンを見たような感じがする。
「かっこいい・・・・・・」
無意識にその一言が出た。
「絵里。大丈夫か?」
「う・・・うん。大丈夫・・・」
「怖い思いさせて本当に悪かったな。怪我がなくてよかった」
「ううん・・・。隆也が助けにきてくれたからよかった・・・・」
「とにかく今はここから離れよう。翔輝たちもそろそろ来るだろうからな」
「えぇ・・・そうね・・・・・・っ!?」
隆也から少しだけ目を逸らした瞬間、目に入ってきたのは懐から出したもう一本のナイフを持って霧生が隆也に飛び掛っている姿だった。
「隆也後ろ!!!」
「っ!?」
「死ねぇぇ!!」
グサッ!!
「っ!!あがぁっ・・・・・・・・・ぬぅああ!」
「ぐへあっ!」
隆也が霧生の腕を掴みそのまま腰を捻り一本背負いをした。
地面に鈍い音を立てて霧生はそのまま気絶した。けど私が目に入ったのはそこではない。
(さっきのナイフは・・・・・・?)
隆也の足元を見ると、真っ赤な水たまりが出来ていた。振り返った隆也のお腹を見るとナイフが隆也の腹に深く突き刺さっていた。その傷口から血が滝のように地面に滴り落ち、どんどん真っ赤な水たまりが大きくなっていった。
(・・・・・・血・・・?)
自分の顔を触ると少量だが隆也の帰り血が頬についていた。そして視線を隆也に移すと。
「絵・・・・・・里・・・・・・・・・だい・・・じょう・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
隆也の口と腹から血が出ていた。
ドサッ
隆也はまるで糸が切れた人形のように地面に倒れた。その倒れたところから血が止まる事は無い。
「隆・・・・・・也・・・?」
隆也の体に触れ摩ってみる。だが隆也から返事がない。
「隆也・・・・・・ねえ隆也・・・・・・隆也ってば・・・・・・・・・」
何度声を掛けても隆也から返事が返ってこない。さっきまで止まっていたまた涙がどんどん溢れてきた。
返事してよ・・・・・隆也・・・・・・。早く目を開けてよ・・・・・・・・・。
涙が隆也の顔にこぼれていく。だが案の定のこと・・・返事は無い。
「いやあああああああああああ!!!!」
それから数分後後。隆也は教授たちの手で救急車まで運ばれ、私は翔輝さんと一緒にその救急車の後に続いて病院に直行した。
どもどもみなさん。シリアスの襲来ですね。パターン青ですね!自分はこんな時に何を言っているんだ・・・・・。
さて隆也が刺されて意識不明に陥りました。これから一体どうなるのかは次回で!!
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それでは今回はこの辺で!では・・・またな!!