誰かマジで私にPS4買ってくれないかな、ワールドやりたくて仕方ないんだけど
それでは本編をどうぞ。
「すげえなリーシャ……どうやったんだ?」
「やっぱあいつ感覚おかしいわ」
集会所に造られた特設ステージの上で、たった今全てのパフォーマンスを終えたパノンと、最後のパフォーマンスの手伝いをすることとなったリーシャ。二人は、割れんばかりの拍手喝采を浴びていた。
パノンは跪いてリーシャの手を取り、まるで貴族のように客席へと先導する。
「君、すごいね……後で少しお話させていただいても?」
「へ?あ、はい!喜んで!」
「ありがとう。友人の皆様も是非」
狩人達の特等席にリーシャを帰し、大仰なお辞儀をした後、迅竜のように素早くトリッキーな動きでステージへ戻り、赤甲獣よりも体を回転させながらステージの中央に君臨したパノン。動きは洗練されており、舞のようにも感じられた。
「さて、皆様。本日は私の芸を観て頂きありがとうございました!……もう少し、このユクモ村には留まります、また、皆様のお目にかかれたなら……それは幸せなことでしょう」
〜〜〜
「済まない、お待たせしたかな」
先程、「後でお話する」ことを約束したリーシャと、その友人達であるヤマト達。特設ステージを片付けるのを手伝い、パノンが出てくるのを待っていたのだが。
「……お前、誰?」
声をかけてきた相手は、ヤマト達が「見たこともない」顔をしていた。全員が「パノンがやっと来た」、と信じたのだが、先程まで舞台上でパフォーマンスを披露していたパノンとは別人にしか見えない。有り体に言えば、顔が薄かった。
「さっきまでそこで色々やってただろう?パノンだよ」
「「「え?」」」
どう見ても別人にしか見えない。素っ頓狂であまりにも失礼な声をヤマト、ディン、リタの三人があげてしまうほどには驚いた。
「……成程、化粧ですか」
シルバも一瞬、目が点になるほど驚いてはいたが、すぐにそんなに顔が変わっている理由を察した。
舞台化粧というものは、普通の化粧よりも顔を濃く見せようと作られる。人の前に立ち、何か芸をする、というのは謂わば自己顕示の象徴である。その際、自らの顔を強く印象付けたいが為に、舞台化粧は濃く作られてきたのだ。
「え、化粧ってそんなに顔変わるもんなの?私もやってみたい」
「やらなくていい」
リタの無邪気な興味と、何かを感じ取ったのかすぐさま止めるヤマト。しかし、リタが興味を抱くのもおかしくないほどに、パノンの化粧は凄まじいレベルで顔を変えていた。
「化粧っていうのは仮面を作るようなものだからね……凄いでしょう?あれ、僕が自分で化粧したんだよ」
自慢げに言うパノン。確かに、旅芸人という仕事上、化粧や荷物の運搬等、雑用から何から何まで全てを一人でやっているのだろう。
ヤマトはなんとなく、魔法の裏側を見た気がした。
「さて……皆、今日は僕のパフォーマンスを観に来てくれてありがとう。改めてお礼を言うよ」
改めてお辞儀と共に礼を言うパノン。そのお辞儀をする姿は確かに先程まで輝かしい衣装に身を包んでいた旅芸人そのものだった。そしてそのまま椅子にゆったりと座る。
「君達とお話がしたかった理由は他でもない……君達、ハンターだろう?この辺りのモンスターの話を聞かせてくれないか」
パノンは至って真剣な表情で聞いていた。
何故、そんなことを聞きたいのかはヤマト達には解らない。が、確かにその事を聞くならハンター達に聞くことが最も手早いだろう。
「……一応、理由を聞かせてもらっても?」
シルバの表情も真剣になっていた。
その質問の意図が読めないからだ。旅芸人がこの辺りのモンスターのことを聞いて何になるのか、全く意味がわからない。場合によっては……犯罪に関わるかもしれないのだ。
「ハハッ、やっぱりどこのハンターも同じ反応をするんだね。ギルドナイト……だったかな?それがとても怖いと見える……僕も怖いけど」
「答えてください」
「大丈夫だよ、そんな物騒な理由がある訳じゃないから。……旅芸人って、どうして旅芸人と呼ばれているか、解るかい?」
声色に真剣味が増すシルバと、逆にまるで舞台上でこれから見せる芸の説明をしているかのようなパノン。
「どうしてって……旅をするから、じゃないんですか?」
リーシャが不思議そうな表情で答える。
「そう、「旅」をするから「旅芸人」。僕も世界中を巡っているんだけどね、何度も死にかけた。見たこともないモンスターに追いかけ回されたり、道に迷って飢えてしまったり、足を踏み外して奈落に落ちそうになったり……恐ろしいでしょう?でも、商人のように護衛のハンターも付けづらい。何故って?きな臭いでしょ?」
次々と声色を変えて、まるで物語を朗読しているかのように語るパノン。その臨場感は、狩人達を本当に未知のモンスターに襲われている、空腹が耐えられなくなるような感覚に陥らせた。
「この世界で「旅をする」っていうのはそれだけで命懸けなのさ。だからこの村を出るまでにこの辺りのモンスターのことを知っておきたい。……というか、実際この村に辿り着く前にも知らないモンスターに襲われたんだけどね」
「……理には、かなってますね」
パノンの「理由」は驚く程に普遍的で、理にかなっていた。しかし、だからこそシルバは何か勘ぐってしまう。そう、彼の言葉を借りるのであれば、パノンは「きな臭い」のだ。
情報を渡していいのだろうか。シルバは思考を巡らせる。情報が欲しい理由が先程語られた内容なら、寧ろ丁寧に教えてもいい位だ。だが、もし先程語られた内容が理由でないのであれば、簡単に教えるわけにはいかない。密猟等で生態系を乱されでもしたら、ユクモ村が破滅する可能性だってあるのだから。
どうする?もう少し、探りを入れた方が……シルバがそう考えた時。
「いいですよ、私達の知ってる限りでいいなら!」
リーシャがそう言ってしまった。
「ちょ……リーシャちゃん!?」
「お前……」
ヤマトもディンも、「シルバが考えているなら自分達は何も言わない方がいい」と考えて黙っていたのだが、リーシャは何食わぬ顔で平然と交渉を成立させてしまった。これにはヤマトもディンもシルバも驚きの表情と苦い顔を混ぜたような顔をせざるを得ない。リタはそもそもハンターではない為、何故ここで駆け引きのようなものが行われているのかがそもそも理解出来ていない。
「大丈夫ですよ、シルバさん。この人「本当の事しか」言ってないですもん」
そう言うリーシャの表情は満面の笑みだ。
恐らく理由を聞いても帰ってくる答えは「なんとなく、です」だろう。しかし、彼女は天才だからだろうか、そういった勘は恐ろしく当たる。
「ただ、本当の事を「全て」言ってない……ですよね?そこまで言って欲しいなー、って私は思うんですけど」
「……ちなみに、そう思う理由は?」
「なんとなく、です」
「…………」
パノンの雰囲気が変わる。先程まで舞台の上でパフォーマンスをしていた時と同じ、輝かしいオーラに満ち溢れていた。
「流石だね!君は一目見た時から何か感じていたが……確かに僕は「本当の事しか」言っていない。だけどそれが理由の全てではないよ。……なに、物騒な理由では無いんだがね」
そう言うとパノンは思い切り口から息を吐いた。
「これ、覚えているかな?こうやってさっきは炎を吐いてみせたよね。まるで火竜リオレウスのように……。仕掛けは教えられないが、僕はこうやって色々なモンスターの特技や動きから芸を考えるのが好きなんだ。迅竜ナルガクルガのように素早く舞台を飛び回りたい、彩鳥クルペッコのように声マネが出来たらな、じゃああのフルフルのような特徴的な声はどうすれば出せるだろう?……面白いでしょう?少なくとも「僕は」面白い。まあ、そのせいで何度も死にかけたけどね。それでも色々と面白い芸を自分のモノに出来たさ……魔法のタネ明かしをしているみたいで、この理由を話すのは好きじゃないけどね、兎の天才少女ちゃんに免じて話してあげるよ」
ハンターのように、戦う力は持っていない。
だから、モンスターと出会い、襲われたなら、本当に命があるか解らない。
それでも、「面白い」と感じるその精神。
旅芸人パノンは嬉しそうに、恥ずかしそうに、そして楽しませるようにそう語ったが。
死を隣に感じたとしても、自らの芸の新たな可能性に興奮する彼は紛れもなく「異常」だった。
「とんだ魔法のタネ明かしだよ……狂ってる」
「旅芸人って、そこまでするの……?」
「……まあ、天才の考えというものは、得てして他人に理解はされないものなのさ。だから、孤独になる。そして新たな可能性を求め、「孤独」は「唯一」になる……この辺りのモンスターの情報、頂けるかな?」
ヤマト達は、あの魔法にかけられた世界を作る為に、パノンが血の滲むような努力をしてきたであろう、と考えていた。
しかし実際はどうだっただろうか。血どころか、狂気が滲んでいたではないか。
だが、理由が「そこ」にあるなら情報を渡すことは何ら問題は無い。その点に関して言えば、良かったのかもしれない。
それでも、ヤマト、ディン、シルバの三人は彼に情報を渡す気にはなれなかった。
しかし、リーシャは笑顔で情報を渡そうとする。
やはり、彼女も「天才」であり、狂っているのだろうか。
「いいですよ、この辺りの……渓流に出るモンスターの情報。私達が知っている限りでいいなら教えます!……あ、そうだ」
そこでリーシャが何か思い出したかのように呟いた。
「天才は「孤独」って言ってたけど、それ、間違ってますよ?ヤマト君も、ディン君も。シルバさんだって皆「天才」ですけど、皆「孤独」じゃないです。勿論、私も孤独じゃないですよ!」
パノンは面食らったようにリーシャを見る。
天才とはなんだろうか。
パノンは紛れも無い、芸の天才である。様々なモンスターの特技を、人間の知恵と自らの努力や工夫で再現出来る旅芸人は彼くらいしかいない。
そのパノンから見た、素直な感想を述べるとするなら。
本当の天才と言えるのはリーシャだけだろう。
では、彼女は「孤独」だろうか?
否……そうは見えない。
羨ましい?……解らない。
「そうだね……失礼、撤回するよ」
「ですよ!……あ、今度お姉ちゃんにも芸、見せてあげてください!寝たきりだから今日、来れてないんです」
「……天才少女に免じて、特別に行ってあげるよ」
「やったっ!!」
二人の天才は、瞳の奥に鏡を見ている。
少なくとも、パノンはそんな気がしていた。
前回の最後にリーシャを呼んでパノンがどんな芸をしたのか。
それは皆さんの想像にお任せしましょう。古今東西、様々な大道芸、手品。皆さんのお気に入りの芸を、二人にやってもらいましょう。
……え?大道芸なんか観たことない?それは勿体無いですねぇ……日常の傍に非日常がやって来ますよ( ̄▽ ̄)
感想、評価等、宜しくお願いします。