モンスターハンター 〜舞い踊る嵐の歌〜   作:亜梨亜

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恋心

 ヤマトがアマネの手当てをしてから五日。

 

「せいっ!」

 

 相も変わらず朝早くから木刀を振り、稽古に励むヤマト。朝早くに目が覚めて暇だったらしく、その風景をボーッと眺めるリタもいる。

 

「……ほんっと、よくやるわ……」

 

 鳥の鳴き声を聞きながら欠伸をするリタ。朝日がヤマトをぼんやりと照らし、そのまま道を真っ直ぐに照らしていた。

 

 その照らされた道を歩く影が一つ。こんな朝早くにこの辺りを歩くのはヤマトかリタ位しかいない。リタは人影に気付き、そちらへ目をやった。

 

「へぇ、ほんとにこんな朝からやってるのね」

 

 その声に気付き、ヤマトは素振りを一度止め、声のした方を向く。そこには痛々しい包帯が左手に巻かれた女性、ヤマトが五日前に手当てをしたハンター、アマネが立っていた。

 

「きちんとお礼が言いたかったからね。マスターに家の場所聞いたの。そしたらこの時間から修行してるって聞いたから」

 

「怪我、大丈夫なのかよ」

 

「まだ左手と脇腹は痛い。でもやっぱり回復薬って凄いわね、大体の傷口は塞がったわ」

 

「……ヤマト、この人誰?」

 

 アマネの事を知らないリタが不審そうな表情でアマネを見る。ヤマトは同業者、とだけ言い、木刀を置きリタとアマネを家に招いた。

 

「治ってねえなら座れよ。家入んぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわー、見事に何もないわね」

 

「お前の家も似たようなモンだろ」

 

 家に入るなり開口一番に失礼なことを言ってのけたアマネ。それに取り合わずとりあえず座れ、と言いながら人数分のコップを取り出し、水を注ぐ。

 リタは座ってからアマネをじーっと見ていた。長い髪はハンターとは思えない程美しく、体も鍛えられているからかスタイル抜群。顔も整っており誰もが美人と言うだろう。

 

「……ハンターさん、お名前は」

 

「あら、ごめんなさい、言ってなかったわね。アマネよ」

 

「どうも、アマネさん。リタです」

 

「リタちゃんね。ヤマトの彼女?」

 

「……そんなんじゃないです」

 

 何故だろう、リタは機嫌が悪かった。その理由はリタ本人にも解っていない。ただ、ヤマトの彼女と間違えられることはよくあるが、彼女に間違えられるのは少しイラッとした。

 

「ほら、水」

 

「ありがと」

 

「……サンキュ」

 

 ヤマトがコップを机に置き、椅子に座る。三人同時に水を飲み、暫し喉がゴクリと鳴らす音だけとなった。

 

「……で?何の用事で俺の家まで」

 

「そうそう、まずはありがとう。手当てを手伝ってくれて」

 

 しっかりと頭を下げるアマネ。リタは顎を机に乗せ、欠伸をしている。

 

「いや、礼は別にいいんだが」

 

「私の気が済まないの。……で、貴方、怪我が治ったら一緒にハント行くって言ったの覚えてる?」

 

 それを聞いてリタの顎が上がった。

 

「あー……言った気もする」

 

 それを聞いてリタの目がパッチリになる。

 

「前会ったきりだけど、絶対貴方、私から言わないと行きそうになかったし。お誘いに来ました」

 

「ちょっと!?」

 

 ガタン!と椅子から立ち上がるリタ。その顔は何故か少し不機嫌そうだ。

 

「どした、リタ」

 

「……ごめん、なんでもない」

 

 急に立ち上がってしまった事への恥ずかしさか、はたまた別の感情か、顔を赤くしてしぼむように座るリタ。ヤマトは首をかしげながらアマネの方を見た。

 

「まあ、否定は出来ねえな。……で?何のモンスターを狩りに行くんだ」

 

 え、行くの!?と叫びそうになったが、心の奥でしまうリタ。表情に出ていないだろうか。

 

「水獣ロアルドロス。最近孤島周辺で被害が出てるみたいよ。報酬は山分け」

 

 水獣ロアルドロス。海竜種に属する、水辺をテリトリーとするモンスターだ。ヤマトが知っているのはそれくらいで、まだ戦ったことはない。

 

「今日の昼頃には出発したいんだけど、用意とか大丈夫?」

 

「それは問題ねえけど……お前その怪我で行くのか」

 

「これくらいはいつもよ、私」

 

 じゃあ、後で集会所で会いましょ。そう言い残し、家を出るアマネ。お邪魔しましたまできちんと言ってから家を出ていった。

 

 アマネがいなくなってからも、機嫌が悪いのはリタだ。ヤマトもリタの機嫌が悪いことには薄々気付いているが、しかし何が原因なのか、どうすればいいのかわからない。

 

「ねえ」

 

「……何だ?」

 

「ただの同業者なんだよね?」

 

「そうだけど」

 

 そうは見えなかったんだけど。ふと、そんな言葉がリタの脳裏をよぎったが、それも胸の内に留めておく。

 

「……今日狩るモンスター、強いの?」

 

「解らん。戦ったことない相手だからな」

 

「……あの人みたいに怪我しないでね」

 

「は?」

 

「返事は!?」

 

「お、おう。サンキュ」

 

 ハア、と溜め息を付きながら水を飲み干すリタ。ヤマトはやはりリタの心の中が解らない。

 

 リタはと言うと、不機嫌から不安という感情へシフトしていた。それは当然初めて戦うモンスターを狩りに行くヤマトを心配しているのが主なのだが、もう一つあった。

 

 ーー手当てって何?てかヤマト、アマネさんの家に行ったの?

 

 自分の知っているヤマトが、ハンターとしての交友関係を持ち、遠くなっていく感覚に不安を覚えていたのだ。

 今までリタはヤマトがハンターをしていて、その中で出来た友人を見たことがなかった。恐らく友人はいるのだろうが(実際居るが)、ハンター達の集まる場所と言えば、当然ながら集会所。リタがヤマトの同業者を見ることなど無いに等しい。

 

 それが初めて見たヤマトの同業者の友人、それがあんな美人だとは。しかもこの手当てを手伝った。リタの頭はパニックだ。

 更にリタを不安にさせているのは、ユクモ村の集会所には温泉があることだ。それも混浴の。

 

 リタはヤマトのことが好きなのだ。友人として、幼馴染みとしてではなく、異性として。

 

「やっぱ私もハンター目指そうかな……」

 

 不意に口から零れた言葉。ヤマトはさっきまで機嫌が悪そうにしていたのに急にそんなことを言い出すリタを見て、更によくわからなくなっていた。

 

「……まあいいや、準備するか」




 今 の 所 狩 猟 描 写 ほ ぼ 無 し

 いや本当に申し訳ないです、次回からきっと狩猟シーンが現れますので!きっと!

 どうでもいいですが恋愛系は新鮮ですが難しいですね、読みづらくないか心配です

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