モンスターハンター 〜舞い踊る嵐の歌〜   作:亜梨亜

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投稿ペースが安定しない亜梨亜でございます。申し訳ございません......

お気に入りが増えていたり、評価の色が付いていたり、いつの間にか見てくださっている方は増えているのに、私が投稿してないのはどうなんだ......

評価バーに色が付きました。本当にありがとうございます。しかもかなりオレンジで嬉しい限りでございます。

それでは本編どうぞ。





超大型ルーキー

 力任せにハンマーを振り回す、小柄な背丈からは想像出来ない豪快な戦い方。

 

 リーシャが超大型新人として名を馳せた頃に付けられた二つ名は「白兎少女」。

 

 その名の由来は小さな兎のように可愛らしい見た目をしていることだけが理由ではない。

 

 

 ーーーその二つ名の真の意味は、モンスター相手に跳ねるかのように飛び掛り、ハンマーを振るう姿が、凍土を駆ける牙獣種、「ウルクスス」と遜色ない姿に見えてしまう為である。

 

 

 「やぁぁぁっ!!」

 

 全力で振り抜かれたハンマーが、またもやドスフロギィの頭に叩き込まれる。

 既に数発頭に貰っているドスフロギィ。頭を揺らされ脳震盪を起こし始め、動きが鈍くなっている。

 

 「もう一回!」

 

 勢いそのままに一回転、更なる一撃を浴びせるリーシャ。その一撃が決定打となったのか、ドスフロギィは完全に脳震盪を起こし、フラフラと倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 「……なんつーか、俺の周りの女ハンターってみんな無茶苦茶だな」

 

 群れで次々と現れるフロギィを流れるように斬り続けながらふと洩らした本音は、リーシャの耳に届くことはない。

 何故なら倒れ込んだドスフロギィに一気にラッシュをかける前に、周りにいるフロギィを薙ぎ倒しているからだろう。大型モンスターが隙を見せたからといってそこばかりに気を取られると、周りの小型モンスターの猛攻を受けて痛い目を見ることはよくある話だ。そこのケアを欠かさないリーシャは、豪快な戦い方をしつつも頭はある程度冷静なのだろう。

 

 そしてリーシャがフロギィを薙ぎ払ったお陰で、ヤマトがドスフロギィに踏み込むスペースが生まれる。

 

 ーーーここだ。

 

 一度の踏み込みで勢いよく地面を蹴り、間合いを一気に詰めるヤマト。二歩目を踏み出すと同時に太刀を構える。

 

 「捉えたっ!!」

 

 三歩踏み出せばドスフロギィはもう目の前。倒れ込んだ胴体に鋭い突きを繰り出し、そのまま太刀筋を上へ。鱗を貫き肉を捉えた太刀は、天に向かって傷口を大きく広げた。ドスフロギィの鮮血がヤマトの頬や笠にかかる。

 その痛みが引き金となったか、ドスフロギィは立ち上がり、大きく咆哮した。吐き出される息が熱くなったか、白く見える。怒りに満ちた証拠だ。

 

 それを見たヤマトは更なる追撃は行わず、太刀を横に振りながら後ろに飛び退く。軽くドスフロギィの腕を斬り、それが牽制となった。

 

 「キレやがった!一回動ける俺が気を引く!」

 

 「了解です!お任せします!!」

 

 その隙に互いのターゲットを変更することを手短に伝える。リーシャも怒り状態のドスフロギィを相手にハンマーを抱えながら動き回るのは少しキツいと見て、フロギィの掃討に回った。

 

 尻尾による薙ぎ払いは後ろに引いて躱す。その後ヤマトを食いちぎろうとする噛み付きは横に転がって躱す。基本は同じ鳥竜種、ドスジャギィと変わらない。落ち着いて敵の攻撃を把握出来れば、範囲外へずれることは容易いことだ。その隙に剣戟を浴びせることも当然ながら忘れない。

 

 機敏に立ち回り、攻撃をヒラヒラと躱すヤマトに痺れを切らしたのか、ドスフロギィは毒袋を膨らませ、大きく口を閉じた。ドスジャギィとは違う攻撃ーーー毒霧だ。

 

 「っ!」

 

 毒袋の膨らみを視認するや否や一気に飛び退き、息を止める。吐き出された毒霧をヤマトが吸い込むことは無かったが、視界が奪われる。

 

 そしてその一瞬後、毒霧の中から悍ましい形相のドスフロギィが現れた。唐突な攻撃にヤマトは驚き、一瞬判断が遅れる。その結果、繰り出される鋭利な牙による噛みつきを逃れることが出来ない。それでも致命傷は避けるため、すぐさま左手を出した。

 

 「ぐぉっ……!」

 

 左手に容赦無く襲いかかる牙。まるで剣の檻とも言えるその牙は人間の皮膚程度、簡単に食い破り肉を捉える。その痛みは常人が耐えられるものでは無い。

 しかしヤマトは常人では到底務まらない仕事、ハンターをしている人間である。その痛みで一瞬止まった思考を無理矢理動かし、右足を振り上げ、ドスフロギィの顔面目掛けて勢いよく蹴りを叩き込んだ。元々武術を嗜んでいるヤマトだ、蹴りすら馬鹿にならない威力である。少なくとも、ドスフロギィがヤマトを放すには十分な威力であった。

 そして左手が自由になった途端、両手で太刀を構え、鬼の様なオーラを纏いながら一回転し、ドスフロギィを斬り付ける。太刀の必殺技、気刃斬りだ。

 

 そのまま太刀を一度鞘に納め、ドスフロギィと距離を取る。痛み止めと回復力強化のために回復薬を飲み干した。

 

 再度噛み付いてやる、と言わんばかりにドスフロギィが飛び掛ってくる。ヤマトは左手の傷口が足下の水に当たって染みたり、後で膿んだりしないように注意しながら身を躱す。そしてここで集中力が最大限に研ぎ澄まされた。

 

 「決めるぜ!!」

 

 怒りを全てぶつけても目の前の人間は倒れない。ならば毒で地に伏してやる。まるでそう言うかの如く毒袋を膨らませ、口を閉じたドスフロギィ。その動きと同時に、ヤマトは再度全力で一歩踏み込んだ。

 

 そして吐き出される毒霧。しかしその時既にヤマトはーーードスフロギィの喉元まで踏み込んでいた。

 

 二歩目の踏み込みと同時に、腰から引いたヤマト必殺の太刀振り。毒袋諸共、首を斬り裂く。

 

 そしてその勢いのまま倒れないように踏み込まれる三歩目。その三歩目で下半身をしっかり固定し、突き出される突き。それは先程斬り裂いた毒袋に突き立てられた。

 

 「そしてとどめですっ!!」

 

 最後に放たれたリーシャのハンマー。いつの間にかフロギィは掃討されており、ヤマトも気付かないうちにここまで接近していたらしい。三歩決殺。勝負は付いた。

 

 

 

 

 「お疲れ様です!左手、大丈夫ですか?」

 

 「なんとか大丈夫だ。あんたこそ怪我は無いのか」

 

 「えへへ……まあ、ちょろっとかすり傷がありますけど大丈夫ですよ」

 

 クエストクリア。去年の超大型ルーキーと今年の超大型ルーキーのペアハンティングは、無事成功で終わることとなった。


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