モンスターハンター 〜舞い踊る嵐の歌〜   作:亜梨亜

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 温泉回です!


温泉

「ここが」

 

「ここが?温泉!?」

 

 ユクモ村集会所名物、温泉。これがあるが為にユクモ村の集会所は「集会浴場」と呼ばれる。

 狩りの疲れを癒すため、はたまた狩りに行く前にリラックスし、英気を養うため。ハンター達はこの温泉を様々な理由で使う。湯の効能も疲れや肩こり等に効くということで、わざわざ他地方から温泉を目当てにやって来るハンターもいる程だ。

 

「そう、ここが温泉。元々ユクモ村は温泉が名物だからな。集会所にもハンターが自由に入れる温泉があるんだ」

 

 そう言いながら男子用の脱衣所に入るヤマト。そわそわした様子でディンも後に続く。

 

「あ、湯浴み用のタオルあるからそれ巻けよ。無料で入れる代わりにそれがルールだから」

 

 慣れた手際で防具を外し、籠に入れながら湯浴みセットを腰に巻く。ディンも防具を外すのに苦労はしないが、少し腰にタオルを巻くのに時間がかかった。

 

「ニャニャッ?ハンターさん、見かけない顔ですニャね。新米さんですかニャ?」

 

 タオルに悪戦苦闘しているディンを見てひょっこり現れたのは番台のような格好をしたアイルー。どうやら本当に番台のようで、タオルの巻き方を手際良く教えてくれた。

 

「サンキュ、番台ネコ。俺はディン、龍歴院から派遣されたんだ」

 

「ニャ、そうニャンですね。じゃあここの温泉も初めてですニャ!是非とも堪能して行ってくださいニャ!!」

 

「サンキュ!行くぜ、ヤマト!!」

 

 待ちきれないという表情で温泉へ繋がる道を指さすディン。ヤマトが着替え終わった頃には既にディンは温泉への暖簾をくぐり……

 

「おお、マジで温泉……うぇっ!?ごめんなさい!間違えました!!」

 

 ダッシュで戻って来ていた。

 

「……あ、ここ混浴だから間違えて女湯に入ったわけじゃねえぞ」

 

 ディンが戻って来た理由をなんとなく察し、呆れ顔で説明するヤマト。その予想は見事に当たったようで、ディンの顔は拍子抜けたような表情になった。

 

「……先言ってくれよ!」

 

「言う暇なくお前が突っ走るからだろ」

 

 気を取り直して再度暖簾をくぐる二人。

 

 溢れる湯気。

 

 透き通る様な湯は如何にも疲れが取れそうに見える。

 

 更にはなんと村の景色を見下ろせる露天風呂。商業区や狩猟者区の提灯が紅く光っている。空を見上げれば、月と、それに照らされた紅葉たち。上を見ても下を見ても、暗闇に紅が彩を加えていた。

 

 ユクモ村名物、集会浴場。それは正にハンター達の疲れと心を癒す浴場であることを物語っていた。

 

「あら、何か元気のいい狩人が来たと思えば......ヤマトの知り合いだったのね」

 

 突如かけられた声。その方向を向くと女性用湯浴みセットに身を包み、露天風呂で疲れを癒す女ハンター、アマネの姿があった。

 湯船に浸かっているので全身は見えないが、武器を振るい、全力で山や丘を駆け、命懸けで闘うハンターである彼女の体には無駄なく筋肉が付いていた。しかし、ごつごつした印象は全く無く、寧ろ健康的で扇情的なラインをしている。タオルで隠されてはいるが、胸の膨らみも小さいとは言えない。そして顔も整っている為、普通の男ならたじろぎ、ダッシュで逃げるのも無理はなかった。

 

「怪我はもう完治したのか、アマネ」

 

「おかげさまでね。……その子は?ユクモの子じゃないでしょ」

 

 元々何度もこの温泉に入っているヤマトは女性ハンターとこの温泉で鉢合わせた事は何度もある。だから何も動じずにアマネと同じ露天風呂に入り、己の疲れを癒しているが、ディンは流石にそういう訳にいかないようで、少し躊躇っていた。

 

 しかし、アマネという名前を聞いた途端に、目が見開かれる。

 

「アマネって、まさか「天空剣」のアマネ!?」

 

「あー……そんな名前で呼ばれたりもするわね」

 

 その瞬間、ディンは飛び込むように露天風呂に入った。

 

「マジっすか!?すげえ、本物初めて見たぜ!!」

 

「……何だその「天空剣」って」

 

「ヤマトお前知らねえのか!?モンスターを踏み台にして空を飛ぶようにジャンプして狩猟をするその姿と実力から付いたアマネさんの二つ名だよ!噂じゃマジな実力者じゃねえとなれない上位ハンターの最有力候補だって」

 

「あー、あのトンデモ狩猟か。確かに天空剣って感じだな」

 

「お前「天空剣」の狩猟生で見たのか!?すげえ、羨ましいぞチクショウ!!」

 

 本日最大級のテンションで捲し立てるディン。その迫力はさながら轟竜の咆哮にも思える。

 

「てか、お前そんなすげえハンターだったのか」

 

「まああんな無茶苦茶な闘い方するのなんて私くらいだしね、すごいかは別としてそれなりに目立ちはしたわ」

 

 ディンに褒めちぎられても特にいつものペースを崩さないアマネ。隣で湯船の上で浮いている盆の上に乗せられた酒を呷り、肩まで一気に湯船に浸かった。

 

「ま、貴方もゆっくりお湯に浸かって行きなさいな、ハンターさん。改めて紹介するわ、私はアマネ。機会があれば一緒にお仕事でもしましょ」

 

「お、俺は誇り高き龍歴院のハンター、ディンっす!今日からユクモ村でしばらくハンター稼業やります、お願いします!」

 

 男二人と女一人。狩人達は英気を養うために露天風呂に浸かり、体を癒しながら紅の光を眺め、心を癒した。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだヤマト、ディン君」

 

 思い出したようにアマネが口を開く。

 

「私が出くわしたあの新種モンスター、タマミツネっていうモンスターみたいね。最近ちょっと渓流で発見数が増えつつあるから、貴方達も気をつけてね。……今のところは狩猟しなきゃ行けない程凶暴だったり害があったりする訳じゃないみたいだけど、私が闘った時は物凄く凶暴で、強かったから」

 

 湯船が月を映した。その月はゆらりゆらりと、揺蕩うように消えて……




 何度か夜に露天風呂に入った経験があるのですが、月を眺めているだけで何故か楽しく思えるんですよねー......私だけでしょうか?笑

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