インフィニット・バリアンズ   作:BF・顔芸の真ゲス

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EXep.1 束のNo.

side真月

 

 

 

あの後、事情を説明された束達の母親にも歓迎され、俺はいつ以来かも分からない家族での食事というものをした。

 

そしてその夜、俺が用意された部屋に布団を敷いていると、束がやってきた。

 

束「ハロー!ウチのゴハンはどうだったれーくん!」

 

真月「何だよ煩いな。美味かったよ、それ以上に懐かしくもあったけどな」

 

束「あー確かにそうだね。れーくんが王子だったのが数千年単位で昔だからね。七皇で食事とかしなかったの?」

 

真月「彼奴らと?ハッ、冗談じゃねぇ。第一、バリアン体の俺らは口が無いからメシなんて食えねぇよ」

 

束に言われて少し想像してみる。うん、無い。彼奴らと家族とかありえないわ、特にナッシュやメラグとかと仲良く食卓を囲むとか絶対に無い。ちょっとした口論からガチの殺し合いに発展する光景が容易に想像出来る。

 

束「ああそうだ、口の話で思い出した!れーくん、ちょっとバリアン体に変身してみてくれる?」

 

真月「あぁ?何で急にそんな事・・・」

 

束「バリアンについてはれーくんの記録から大体分かったけどさぁ、やっぱり実物がいるんだからナマで見たいでしょ?それに本を読んだだけじゃ姿形が良く分からないからさ、とりあえずれーくんのを見てみようと思って」

 

真月「はあ、まあ良いけどよ。ビビるなよ?」

 

そう注意だけして、意識を集中させる。普段何気なくやっていたからか、いざやってやろうとすると少し緊張する。

 

真月「バリアルフォーゼ!!」

 

・・・変化が無い。気合いが足りなかったか?

 

真月「バリアル・・・フォォォォォゼェェェェェェ!!」

 

・・・やはり変化が無い。

 

真月「どういう事だ!?何で変身出来ねぇ!?仕方ないもう一度!」

 

束「分かった、出来ないなら仕方ないからもうやめて!?さっきれーくんもの凄い顔してたよ!?子供が百人いたら百人全員がガチ泣きするくらいヤバい顔だったよ!?何?バリアンって皆あんな感じなの?怖いんだけど!?」

 

束が半泣きで俺に言ってきたのでとりあえず変身は中断する事にした。

 

真月「一体何が原因で俺は変身出来ないんだ?このままバリアン体になれなかったら俺ただの人間だぞ?」

 

束「もうそのままで良いと思うのは私だけかな?原因については良く分からないけどさ、れーくんのバリアンとしての力が弱まってるって事は無いかな?」

 

俺のバリアンとしての力が弱まっている?確かにそう考えれば納得がいく。ドルベの奴も遊馬達の飛行船に激突してから暫くの間バリアン体になれなかったらしいし、俺にも同じ事が起こってても不思議じゃない。

 

真月「仮にそうだとしたら厄介だな。他の七皇を探そうにもこのままじゃ不便だ。バリアルフォーゼ出来ないなら、他の力も使えないかもしれねぇ」

 

束「ちなみに他の力って何があるの?」

 

真月「空を飛ぶ、高エネルギー弾を飛ばす、分身を作る、人を洗脳する・・・他にも色々有る」

 

束「怖っ!?もうそれバトル漫画に出て来るキャラクターみたいだよ⁉︎」

 

真月「分身出来るか試してみるか。・・・ハァッ!!」

 

少し気合いを入れてやってみる。どうやら成功したらしく俺の横にもう一人俺がいる。

 

束「増えたぁ!?」

 

真月「これは出来るのか。なら次は飛んでみるか」

 

そのまま意識を集中させて飛んでみる。天井を突き破る訳にもいかないので少し力を抜いてやって見た所、床から少しだけ浮いた。

 

真月「これも成功。じゃあ今度はエネルギー弾を・・・」

 

束「ストップ、ストップ!もうやめて!?」

 

また束のストップが入ったのでエネルギー弾を撃つのはやめにした。

 

束「オーケーオーケー、よーく分かった。つまりは変身だけが出来ないという事みたいだね」

 

真月「そのようだな。しかし参ったな。変身出来ないという事は、今の俺じゃシャイニングが使えない」

 

束「れーくんのNo.だっけ?確か百超えてる珍しいやつ」

 

真月「正解に言うならOverHundredNo.だな。そもそもの生い立ちが他のNo.と違う。百から下のはアストラルの記憶の欠片で、それより上のはドン・サウザンドが俺達の記憶を改竄するのに使った後から作ったNo.だ」

 

束「へー。それ、使って大丈夫なの?聞いた感じだと危ないモノでしかないんだけど」

 

真月「まあ確かに、これにはドン・サウザンドの呪いが込められてたな。でも元いた世界で戦った時に呪いは解けたから使っても問題無いだろ。それにバリアン体になれない今の俺じゃ使えないから、仮に呪いが残ってた、なんて事になっても大丈夫だろ」

 

束「ああ、そう言えばそんな感じの事本に書いてたな。バリアンはバリアン体じゃないとNo.使えないから、人間世界では本気が出せないって。でも、何で使えないと参るのさ?別にこっちで戦いをする訳でも無いのに」

 

真月「テメェに会って戦う理由が出来たんだよ。百超えのNo.以外のNo.をお前が持ってるって事は、他にもNo.を持つ奴が居るって事だからな」

 

束「それで思い出した!私自分のNo.を見たいんだった!ねぇれーくん?ちょっと私のNo.取り出して見せてよ!」

 

いきなり束が無茶な要求をしてきた。No.はデュエルを通して所有権を奪うもので、デュエル以外で取り出す方法は基本無かった筈だ。第一そんな方法があるならカイトはわざわざデュエルをして相手のNo.を奪ってない。

 

・・・そうか、カイトの真似をすれば良いのか。

 

真月「分かった、じっとしてろよ」

 

突如頭に舞い降りた名案を実行するべく、俺は束の方へと近づいていく。

 

束「ちょっと待ってれーくん顔が怖いよ!?笑顔なのにとても怖く見えるよ!?」

 

震えだした束を無視して、俺はおもむろに右腕を挙げて、手刀をするように束の胸へと突き刺した。

 

束「っぐ!?・・・がっ!?」

 

真月「暴れるな。取り出しにくいだろうが」

 

別に束を殺そうとしての行動ではない。現に今俺の腕が突き刺さった束の胸からは一滴の血も流れてない。俺は今束の中のNo.を直接取ろうとしているのだ。そう、これは嘗てカイトがナンバーズハンターをやっていた時に、敗者からNo.を回収する為にやっていた手口の応用・・・。

 

名付けるならば、「フォトンハンド(物理)」!!

 

真月「おっ!見つけたか」

 

手にカードのような手応えを感じ、束の胸から腕を出す。

 

束「っ!?ゲホッ、ゴホッ!いきなり酷いよれーくん!?私が死んだらどうする気だったのさ!」

 

若干泣きながら俺を睨みつける束。まあ確かに、いきなり胸に腕をブチ込まれて、体の中を無茶苦茶にかき回されたら誰だって怒る、俺だって怒る。

 

真月「安心しろ、死にはしない。まあ、魂がどっか行って廃人になってた可能性はあったがな」

 

束「余計タチ悪いよ!?」

 

真月「まぁそう怒るなよ。ほれ、これがお前のNo.だ」

 

そういって束にカードを差し出す。

 

『No.78 ナンバーズアーカイブ』、これが束の中にあったNo.らしい。図書館のようなイラストが描かれたそのカードを、束は暫く見つめていた。

 

束「No.78 ナンバーズアーカイブ・・・。これが私の中にあった力の正体なんだね・・・」

 

真月「ああ。アーカイブっつー名前だから、色々調べられる能力があったんだろ。今まで俺が見てきたNo.の中でもこれはトップクラスに入るくらい凄い能力を持ったNo.だ」

 

束「成る程ね。にしても私の中にこんなカードがあった何て驚きだよ。それにこれ、良く見たらM&Wのカードじゃない。あれ?でもこんな黒いカード有ったっけ?」

 

・・・何?

 

束がふと呟いた言葉を聞いて俺は固まった。

 

真月「ちょっと待て、今お前何て言った?」

 

束「へ?『こんな黒いカード有ったっけ?』って言ったんだけど「その前だ!」えーっと、『良く見たらM&Wのカードじゃない』って」

 

どういう事だ?これはどう見てもデュエルモンスターズのカードだ。M&Wなんてものじゃない。

 

真月「まず聞いておく。M&Wって何だ?これはデュエルモンスターズじゃないのか?」

 

束「何言ってんのさ。これはマジックアンドウィザーズ、通称M&Wのカードじゃん。まあ、これは束さんが知らない種類のやつだけどさ、新しい召喚法が出来たのかな?」

 

驚いた。違う名前で広まっていたのか。それならば街でデュエルモンスターズについての話を聞けなかったことにも納得がいく。

 

真月「束、多分それは俺の世界で言うデュエルモンスターズと同じものだ。この世界ではこれはどういう扱いなんだ?」

 

束「へぇ、これでれーくん達は世界を賭けた戦いをしていたんだ。変わってるね。この世界でのこのカードゲームはね、まあそこそこ流行ってるくらいかな。どこかの物好きがスポンサーになって、『デュエルアカデミア』とかいうプレイヤー育成学校を建てたりしてたけど」

 

余り流行ってないのか、意外だ。だが目的地は決まった。

 

デュエルアカデミア、そこになら他の七皇もやってくる筈だ。まずはこの家を拠点に、他の七皇を探しながら生活していこう。

 

真月「ありがとう。やるべき事が大体分かった。とりあえずデュエルアカデミア目指して頑張るか」

 

束「私はデュエルについてはあまりよく知らないけど、まあ頑張りなよ!それじゃあお休み!」

 

そう言って束は風のように去っていった。ふと時計に目をやると、もう12時を回っていた。

 

真月「・・・寝るか」

 

まだまだ問題は山積みだが、それは明日から考えていけばいい。とりあえず今は寝る事を優先しよう。

 

色々有ったが、俺の異世界生活初日がやっと終わりを迎えた。


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