インフィニット・バリアンズ   作:BF・顔芸の真ゲス

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ep.34 事後報告 そして水色少女は闇に堕ちる

side真月

 

 

 

真月「No.30、回収完了……!」

 

右手に収まったナンバーズを固く握り締め、俺はそう呟く。出血が酷い、早急に輸血が必要だろう。まあ、それよりも先にアシッドゴーレムに潰された右足をなんとかしないといけないのだが。

 

鈴音「やったわね零!ナイスファイトだったわよ!」

 

秋介「ハッ!へっぽこにしては良く頑張った方じゃないか?まあ、今回のMVPは僕だけどね」

 

ナンバーズを手にしている俺の所に機体を解除した鈴と秋介、そして簪が近づいてきた。鈴と秋介はボロボロだったが、大きな怪我は無さそうだ。

 

簪「零!」

 

真月「簪さん!僕の戦い、見ててくれましたか?」

 

簪「うん、とってもカッコ良かった……!じゃなくて、怪我は大丈夫なの!?」

 

真月「あはは、大丈夫ではないですね。骨はバッキバキですし、内臓はグッチャグチャ、おまけに右足潰されちゃいましたし」

 

秋介「それ笑い事じゃ無いだろ!?むしろ今よく起きてられるな!?」

 

鈴音「うっ!?想像したら吐き気が……!兎に角今は零を医務室に運ぶのが先決ね。秋介、簪、零運ぶの手伝って」

 

簪「わ、分かった!」

 

秋介「了解!へっぽこ、機体を解除しろ」

 

真月「あ、はい。……ごふっ!?」

 

機体を解除した途端に血を吐き出す。どうやらさっきまでの戦闘のダメージが回ってきたらしい。

 

簪「零!?しっかりして零!?」

 

秋介「ちょっ!?やばいぞ鈴!?」

 

鈴音「言われなくても分かってるっての!ほら、急いで零を運ぶわよ!」

 

そう言って鈴達は俺を担ぎ上げ、医務室へと向かおうと歩き出した。

 

千冬「待て織斑、鳳、更識妹」

 

鈴音「……あぁ?」

 

アリーナを出るべく歩き出した俺達の前に、訓練機を身に纏った駄目教師とその取り巻き達が立ち塞がり、進路を妨害した。

 

鈴音「何よ、今はアンタ達に構ってる暇なんて無いんだけど?」

 

簪「私達は急いでいる、早く其処を退け……!」

 

秋介「まあまあ二人共、教師に対してそんな喧嘩腰になるんじゃねぇよ……。千冬姉さん、見てわかると思うけど僕達は急いでいるんだ。一刻も早くへっぽこのやつを医務室に運んでやらないと……」

 

千冬「その必要は無い。真月は我々教師部隊が拘束するからな」

 

簪「……!?」

 

鈴音「なっ……!?」

 

秋介「はあぁ!?」

 

真月(……チッ、そう来たか)

 

駄目教師のその言葉に三人は驚愕するが、俺はただ一人納得した表情を浮かべながら目の前の駄目教師達を睨みつける。恐らくだが此奴らの目的はーー

 

千冬「真月には今回の襲撃事件の容疑者の疑いが掛かっている、これから地下牢に連行して尋問を行う。織斑、真月から機体を没収して此方に渡せ」

 

やはりそうだったか。此奴らは俺のホープを奪う為に此処に来たのだ。先程の戦闘で消耗した今の俺からホープを奪うのは容易いからな。

 

秋介「いやちょっと待ってくれよ千冬姉さん!襲撃事件の容疑者?何でへっぽこにそんな疑いが掛かってるんだよ!?それに地下牢に尋問!?流石にやり過ぎだろ!?へっぽこほ重症なんだぞ!?」

 

千冬「これは命令だ、黙って従え織斑」

 

鈴音「巫山戯てんじゃないわよ!零は生徒達を助ける為に必死で戦ったのよ!?その零を犯人扱いなんて、アンタら頭おかしいんじゃないの!?」

 

千冬「ふん、それ自体が信用を得る為の演技だろう?そうやって味方をつけて学園で動きやすくする算段なのだろうが、そんな猿芝居が私に通じるものか」

 

どうやら駄目教師はどうしても俺を犯人に仕立て上げたいらしい。俺を睨みつけながら嘲るようにそう言って、駄目教師は剣を構えた。周りに溶け込む為に演技自体はしているので一概に間違っているとは言えないが、猿芝居と言われる程クオリティは低くない筈だ。

 

簪「巫山戯ないで!零はこんな大怪我を負っても必死に戦った!戦いに参加もしなかった無能教師達に零の戦いを否定する資格なんて無い!」

 

駄目教師の言葉に激昂した簪が駄目教師達に怒鳴りつける。普段の大人しい感じは何処に行ったのかというようなその剣幕に、駄目教師以外の教師部隊の奴らが一歩後ずさる。

 

千冬「ほう、言うじゃないか更識妹。だが、教師に逆らうという事がどういう事か分かっているのか?」

 

そう言って駄目教師は他の教師達に合図を送り、武器を構えさせた。

 

秋介「なっ!?何してるんだよ千冬姉さん!?」

 

千冬「巻き込まれたくなければ離れていろ織斑。これは警告だ鳳、更識妹。大人しく真月から機体を奪え。私達には学園を守る義務があり、その為の攻撃は許されている」

 

つまり、『殺されたくなければ大人しく機体を渡せ』という訳か。随分と乱暴な奴等だな。

 

秋介(ま、マジで言ってるのかよ千冬姉さん!?自分が何してるのか分かってるのか!?)

 

鈴音「……却下よ」

 

簪「……退く気は、無い!」

 

そう言って二人はISを展開する。何とか二人に俺を見捨てて逃げるよう伝えようとしたが、もう今の俺には声を出すだけの力も残っていなかった。

 

千冬「ふん、あくまで従わないか。ならば仕方ない、総員攻撃準備。殺さない程度であれば何をしても構わん」

 

その言葉を聞いた教師達がニヤニヤとした笑みを浮かべながらジリジリと俺達に近づいて来る。不味いな、確かに殺す気は無いようだが痛めつける気満々だ。

 

鈴音「上等じゃない!クイーンの恐ろしさ、その腐った根性叩き直して存分に教えてあげる!」

 

簪「零はやらせない……!」

 

両者一触即発の睨み合いが続き、まさに両者が激突するかと思われた瞬間………

 

ーードガアアァァァン!

 

という音と共に目の前にいた教師の一人が吹き飛び、壁に叩きつけられて動かなくなった。

 

『なっ何!?』

 

『新しい襲撃者!?』

 

真月(いや、違う!)

 

教師の一人が吹き飛ばされる瞬間ちらりと見えた機体、あれは間違いなく……

 

ミザエル「……これは何の真似だ、織斑千冬?」

 

タキオンドラゴンを展開した乱入者、海馬ミザエルは物凄い形相で駄目教師を睨みつけながらそう言った。

 

千冬「それはこちらの台詞だ海馬。教師に手を出すとはどういう了見だ?」

 

ミザエル「質問に答えろ!私の仲間に手を出そうとするとはどういうつもりだ!」

 

千冬「真月は今回の襲撃事件の容疑者だ。私達はテロリストを拘束する為に行動しているに過ぎない。分かったら其処を退け海馬。退かないなら共犯者と見做して貴様も処罰するぞ」

 

ミザエル「巫山戯るな!何の根拠が有って真月を容疑者と考えた!ちゃんとした理由も無しに人を裁くなどあってはならない事だ!」

 

千冬「五月蝿い!此処では私が法だ!私が容疑者だと判断したのだから真月は容疑者だ!分かったら早く真月の専用機を此方に渡せ!」

 

『そうよそうよ!』

 

『さっさと寄越しなさいよ!』

 

駄目教師の暴論に賛同する取り巻き達が怒鳴って来る。雑魚の癖に群れたら強くなった気になっているのが最高に腹立たしい。

 

ミザエル「……騒ぎを起こさない為に今まで耐えてきたがもう我慢の限界だ。貴様等、私の逆鱗に触れて無事でいられると思うなよ!」

 

そう言ってミザエルは戦闘態勢に入る。やばいな、ミザエルの奴完全にキレてやがる。このままじゃ教師達の何人かが物言わぬ死人に変わってしまう。せめてメラグさえこの場に居てくれれば……

 

璃緒「待ちなさいミザエル」

 

いつの間にか現れたメラグがミザエルを制止する。良かった、俺が動けない今キレたミザエルを止められるのは現状メラグしかいない。これで何とか最悪の現状は免れる筈だ。

 

ミザエル「止めるなメラグ!仲間が危機に晒されたのだ、許していい筈が無い!」

 

璃緒「あら、誰が止めるなんて言ったの?勿論私もやるに決まってるじゃない」

 

真月「……はい?」

 

璃緒「いやまあ、口で何か言って来るだけなら私も我慢出来たのよ?でもね、私達の大切な仲間に危害を加えようとするのは流石に許せないわ……!誰一人として逃しはしない!一人残らず凍らせてあげるわ!」

 

そう言ってメラグは周囲に氷を発生させる。やばい、メラグの奴までマジギレだ。

 

千冬「小僧共が調子に乗って……!まあいい、元々貴様等の事は気に食わなかったからな。今此処で叩きのめして貴様等の機体も奪ってやる!」

 

璃緒・ミザエル『やってみろ!!』

 

駄目教師達とミザエル達が勢い良く突撃し、大惨事が生まれようとしていた。おい、頼むから誰か止めてくれ。俺が怪我している事を一人でも思い出してくれ。

 

明日香「待ちなさい!」

 

ミザエル「……!」

 

千冬「……チッ!」

 

両者が今まさにぶつかり合おうとするその瞬間、訓練機を纏った鈴のクラスの担任が同じく訓練機を纏った何人かの教師達を引き連れてアリーナに現れた。その教師達の中には俺達のクラスの副担任である山田先生も居た。

 

明日香「双方武器を下ろしなさい!降ろさない場合は武力をもって鎮圧する事になるわよ! 」

 

千冬「……天上院先生、これは何の真似だ?」

 

明日香「それはこっちの台詞よ!生徒に武器を向けるなんて貴女一体何考えてるの!」

 

千冬「彼奴等は生徒では無い!今回の襲撃を企てたテロリストとそれを庇う共犯者共だ!分かったら貴様も捕縛を手伝え!」

 

明日香「彼らをそう決めつけて裁く権限は貴女にも私にも有りはしないわ。今は学園長に今回の件の報告をする事が第一の筈よ」

 

千冬「黙れ!有事の際の指揮権を持っているのは私だ!貴様等は大人しく私に従っていれば良いんだ!」

 

明日香「良い加減にしなさい!兎に角今は学園長に今回の件を報告!言いたい事はその時に言いなさい!」

 

千冬「貴様……!」

 

鈴のクラスの担任、天上院明日香と駄目教師は互いに一歩も引かず睨み合い、彼女達に付き従う教師達もまた睨み合っていた。噂には聞いていたが、本当に教師達は学園の中で二つの派閥に分かれているんだな。見た感じ天上院明日香側にはまともな教師達が揃っているようだが。

 

千冬「……チッ!分かった、今回は大人しく従ってやる。ただし、学園長への報告はそこの真月も参加させる。無論治療している時間は無い」

 

鈴音「んなっ!?アンタ正気なの!?零は直ぐに医務室に運ばなきゃやばいって言ってんでしょ!」

 

千冬「簡単な応急手当だけで構わんだろう。たかが報告にそれ程時間がかかる訳もあるまい。治療は報告が済んだ後で良いだろう。天上院先生、それで構いませんね?」

 

明日香「……分かったわ。山田先生、真月君に手当をお願いします」

 

麻耶「は、はい!と、取り敢えず止血しますね!真月君、少し痛いかもしれませんが我慢して下さいね!」

 

そう言って山田先生は俺の出血箇所にテキパキと包帯を巻いていく。血が流れ過ぎたからかあまり痛みは感じない。

 

麻耶「出来ました!真月君大丈夫ですか?包帯キツくありませんか?」

 

真月「大丈夫、です……!むしろこれくらいキツい方が意識がはっきりします……!」

 

麻耶「……ごめんなさい。もっと早くに助けに向かえていればこんな怪我しなくて済んだのに……!」

 

真月「ははは……気にしないで下さい。先生だって他の人達の避難で手一杯だったんでしょ?仕方ないですよ」

 

麻耶「済みません……!本当に済みません……!」

 

千冬「ふん、止血は済んだようだな。ならとっとと学園長室に行くぞ。貴様等もあまり時間を掛けたく無いだろう」

 

そう言って駄目教師とその取り巻き達はさっさと行ってしまった。

 

ミザエル「彼奴等……!」

 

鈴音「ああもう超ムカつく〜!」

 

簪「…………」

 

璃緒「まあまあ、腹が立つのは私も一緒よ。でもまあ、教師達と一戦交えなくて済んだのは良かったわね。天上院先生、ありがとうございます」

 

明日香「気にしないで、教師として生徒を守るのは当然の義務よ。真月君は身体大丈夫?動くのが辛いなら私が肩を貸しましょうか?」

 

真月「いえ、大丈夫です。……ああでも、若干胸が当たる事に期待して肩を貸してもらうというのもいいえ冗談なんですごめんなさい許して下さいお願いします」

 

少しだけ場の空気を良くしようと軽く冗談を言ったのだが流石にセクハラが過ぎたらしく、簪と鈴に思いっきり睨みつけられる。簪、頼むからそんな光を失ったような濁った眼で睨みつけないでくれ怖いから。

 

明日香「ふふ、冗談を言えるならまだ大丈夫ね。さあ、学園長室に行きましょう鈴さんと更識さんは真月君を運んであげて」

 

鈴音「はい!」

 

簪「……はい」

 

二人に肩を貸してもらい歩き出す。女子二人に運んでもらうのは少し気恥ずかしかったがこの怪我ではまあ仕方がないのだろう。移動する俺達の後ろから不機嫌そうなミザエルとメラグ、そして気まずそうな様子の秋介が続き、俺達は学園長室に向かった。

 

 

 

 

 

学園長室に入ると、そこには先客がいた。

 

楯無「あら、来たわね。ってきゃああぁぁぁぁ!?真月君何その怪我大丈夫!?」

 

黒咲「五月蝿い黙れ楯無。……真月、貴様随分と苦戦したみたいだな。いや、他人を救う為に無茶をしたのか」

 

真月「あ、あはは……良かれと思って……」

 

鈴音「隼と生徒会長?何で此処に居るの?」

 

楯無「私達は校舎の襲撃者の迎撃にあたっていたの」

 

黒咲「数が多いだけの雑魚集団だったがな」

 

ちらりと二人の姿を確認した所、ほぼ無傷だと分かった。黒咲の言う通り、大した相手では無かったのだろう。俺達全員が部屋に入ったのを確認し、部屋の奥の椅子に座っていた老人が口を開いた。

 

十蔵「全員揃いましたね、それでは始めましょうか。私は轡木十蔵、この学園の学園長をしている者です」

 

ミザエル「……む?ちょっと待て、私の記憶が確かなら学園長は女ではなかったか?」

 

十蔵「このご時世、男性が高い立場にいると女性からの風当たりが厳しいですからね。表向きは妻が学園長という事にしているのですよ」

 

ミザエル「成る程、つまり貴様がこの学園の実質的な支配者という訳か」

 

十蔵「そうなりますね。では今回の件についての話に移りましょう。山田先生、アリーナで起きた事件についての報告をお願いします」

 

麻耶「は、はい!ではまず……」

 

山田先生の口から学園長にアリーナでの出来事が語られていく。内容は俺達が見た事全てと、観客席にいた生徒達を避難させていたミザエル達についてだった。

 

十蔵「ふむ……ナンバーズ、ですか。そんな物に襲われて生徒達に怪我人が出なかったのは奇跡ですね。天上院先生、本校舎前に現れた襲撃者についての報告をお願いします」

 

明日香「分かりました。襲撃者はいずれも無人で動かすタイプのロボットで、数は全部で百機を超えていました」

 

おい待て何だ百機って。それ数が多いってレベルの問題じゃないだろ。

 

十蔵「ロボット?ISでは無いのですか?」

 

明日香「はい。外見こそ全身装甲のISに酷似していますがISコアは使われていませんでした。迎撃は私の部隊と更識さんと黒咲君、二年のサラさんとフォルテさん、そして三年のダリルさんで行いました」

 

十蔵「成る程、ありがとうございます。さて、ここまでの話を聞いて何か意見がある方は挙手をお願いします」

 

その言葉を聞き、駄目教師が静かに手を挙げる。

 

千冬「学園長、今回の襲撃事件の首謀者は真月です。なので真月の専用機を没収して地下牢に拘束、尋問をすべきだと思います」

 

ミザエル「貴様ぁ!!」

 

鈴音「アンタねぇ!」

 

駄目教師の言葉に取り巻き達が賛同し、ミザエル達が殺気立った表情で駄目教師を睨みつける。

 

十蔵「……織斑先生、何故彼が犯人だと思うのです?」

 

千冬「真月がナンバーズを隠し持っていたからです。我々にナンバーズを隠していたという事は何か後ろめたい事があったという証拠、今回の襲撃に関係しているに違いありません!」

 

成る程、少々無茶があるが確かに筋は通っている。俺が精神世界で遊馬からホープを受け取った事をこいつらは知らない。ならば持っていた事を隠していたと考えるのは当然だ。

 

十蔵「ふむ、確かに一理ありますね。では織斑先生、仮に真月君が今回の件の首謀者だとして、その目的は何でしょう?先程の山田先生の報告によれば真月君は戦闘に参加する直前、ミザエル君達に生徒を避難させるよう指示していたとあります。生徒に危害を加える気が無かったのなら、何のためにそんな事をするのですか?」

 

千冬「恐らく、学園の人間の信頼を得る為でしょう。自分が起こした事件を自分で解決し、学園の生徒、教員達からの信頼を得る。そうして学園での自分の立場を少しづつ上げていき、やがて学園を掌握するつもりなのです」

 

すらすらと俺の罪をでっち上げていく駄目教師に流石の俺も感心せざるを得ない。すごいな、その発想は無かった。

 

十蔵「……つまり、今回の件は学園を掌握する為に真月君が仕組んだ自作自演、マッチポンプであると?」

 

千冬「そうです!だから早く真月を拘束しーー」

 

十蔵「その計画に、彼が全身の骨を砕かれ、右足を握り潰されるだけの価値が有るのですか?」

 

千冬「……っ!?」

 

言葉を続けようとした駄目教師を、学園長が険しい表情で睨みつけて止める。凄い威圧感、まず間違いなく一般人じゃないなこのジジイ。

 

十蔵「仮に貴女の意見が真実であった場合、彼はあと数回は今回のような事件を起こす必要があります。それなのに彼は最初の事件でこれ程の怪我を負ったのですか?これ以降の事件の解決に支障が出るかもしれないのに?」

 

千冬「それは……そうだ!会社ぐるみの犯行だ!真月だけではない、アークライトカンパニー全体での計画なんです!だから社内で一番の役立たずのゴミが怪我を負っても大した支障には……!」

 

ミザエル「巫山戯るなよ貴様ぁ!!」

 

千冬「ぐっ!?」

 

駄目教師の苦し紛れの言い逃れに激怒したミザエルが駄目教師の首を掴み、壁に勢い良く叩きつけた。

 

ミザエル「さっきから黙って聞いていれば……!役立たずのゴミだと?怪我を負っても別に構わないだと?私達の仲間に役立たずなど一人も居ない!要らない人間など誰一人だって居ない!私の仲間は、ゴミなどでは無い!次私の仲間を侮辱してみろ、私は貴様を絶対に許しはしない!」

 

千冬「ぐっ……!海馬……貴様……!」

 

『千冬様を離しなさい!』

 

『教師に暴力を振ってタダで済むと思ってるの!』

 

駄目教師が締め上げられた事に激怒した取り巻き達が口々にミザエルを罵る。耳障りなその罵倒を無視し、ミザエルは取り巻き達を睨みつける。

 

ミザエル「教師だと?よく貴様らがそんな言葉を口に出来たな!私が気づいていないと思ったか?アリーナから避難する生徒達を押しのけ、貴様ら教師が真っ先に逃げていただろうが!己の命可愛さに生徒達を守る義務を放り出して逃げ出した貴様ら屑供に、教師を名乗る資格など有りはしない!」

 

『ひっ……!?』

 

ミザエルの剣幕に気圧されて、取り巻き達は全く動けなくなった。確かに、ミザエルの性格を考えればこういう奴らは我慢ならないだろうな。

 

十蔵「……逃げ出した教師達の処分については後にしましょう。ミザエル君、織斑先生を放して下さい」

 

ミザエル「……チッ!」

 

学園長の言葉を聞き、ミザエルは駄目教師の首を放して話を聞く体勢になる。解放された駄目教師が睨みつけているが、ミザエルは全く気にしていない。

 

十蔵「織斑先生の意見は少々無茶な部分はありますが、真月君がナンバーズを隠し持っていたのも事実です。何故我々学園側に報告しなかったのか、それを教えてくれませんか?」

 

真月「……持ってなかったんですよ」

 

十蔵「持ってなかった、とは?」

 

真月「報告も何も僕はあの時、あの瞬間まで、ナンバーズを所持していませんでした。無い物を報告出来る訳ないでしょう」

 

千冬「貴様……!デタラメな事を言うな!ナンバーズが勝手に現れたとでも言う気か!」

 

駄目教師のこの反応は正しい。俺自身自分が何を言っているのか分からないからな。

 

十蔵「……仮に君の言葉が真実だとすると、何故ナンバーズは現れたのですか?」

 

真月「分かりません。ただ、これだけははっきりと言えます。このナンバーズ、ホープは僕を選んだんです。自らの主として、共に戦う仲間として」

 

十蔵「ナンバーズが君を選んだ?ナンバーズには意思があるのですか?」

 

真月「はい。だからこそナンバーズは操縦できる人間が限られているんです」

 

実際は全部のナンバーズに意思があるかは知らん。だがブラックミストや遺跡のナンバーズ達には自我があったのだから他のナンバーズにもあるだろう。

 

十蔵「……ふむ。現状ナンバーズについては詳しい事が一切分かっていないので、真月君が言ったように意思があるのかは分かりません。ですが本当にナンバーズが君を選んだというならば、悪意のある人間を選ぶとは私には思えません。今回の事件で襲撃者を退けたのは君だ。私は君の言葉を信じよう」

 

俺の目を真っ直ぐに見つめて、学園長はそう言った。なんとか山場は乗り越えたみたいだ。

 

千冬「学園長!?こいつのデタラメを信じるのですか!?こいつは間違いなく今回の襲撃の首謀者です!?」

 

十蔵「確かに真月君の話にはにわかに信じがたい部分もありますが、彼が多くの生徒達を救ったのは疑いようのない事実です。それに織斑先生、我々は教師です。教師が生徒を信じないでどうするんですか」

 

千冬「くっ……!……!」

 

笑顔でそう言った学園長に反論出来ないのか、駄目教師はそれ以上何も言わずにただ忌々しげにこちらを睨みつけるだけになっていたが、何かを思いついたのか急に悪意に満ちた笑みを浮かべた。

 

千冬「……分かりました。真月の件はもう何も言いません。ですが学園長、更識妹の処罰はどうするのですか?」

 

簪「っ……!?」

 

楯無「なっ!?どういう事ですか織斑先生!?」

 

千冬「更識妹は避難誘導に従わず無断で専用機を展開、アリーナの遮断フィールドを破壊して生徒達を危険に晒したのだ。処罰は当然だろう?」

 

真月(この野郎……!)

 

俺を罪に問えないと判断した途端標的を簪に変えてきやがった。簪が遮断フィールドを破壊して乱入したのは事実、このままじゃ簪が処罰を受けちまう。この駄目教師の事だ、相当重い罪にするよう言ってくる筈だ。

 

千冬「学園長!更識妹が犯した罪は決して許していいものではありません!故に私は更識妹を退学処分にするべきだと考えます!」

 

明日香「織斑先生!流石に退学はやり過ぎよ!」

 

千冬「黙れ!私は学園長に話しているんだ!」

 

十蔵「天上院先生の言う通りです。織斑先生、今回の件で怪我人は出なかったのですから退学までやる必要は無いでしょう」

 

千冬「それは甘過ぎると言っているのです!このガキはまた同じ事を繰り返します!そうなる前に学園から追い出すべきです!」

 

駄目教師の意見に取り巻き達が賛成し、一斉に簪を罵倒する。

 

『そうよそうよ!』

 

『そんな奴追い出しちゃえばいいのよ!』

 

『更識の出来損ないなんて居ない方が皆の為よ!』

 

簪「……!?あ、ああぁぁ……!?」

 

楯無「簪ちゃん!?貴女達……!」

 

黒咲「貴様等!人として恥ずかしいと思わないのか!」

 

涙を流しながらうずくまる簪に寄り添いながら楯無が駄目教師達を睨みつけ、黒咲が駄目教師に怒鳴る。同じ妹がいる身として我慢ならなかったのだろう。俺もそろそろ我慢の限界だ。身体が満足に動いていたならこいつらを全員ブチのめしていたところだ。

 

千冬「人として恥ずかしいのはそこの出来損ないの方だろう!何一つとして才能の無いゴミに生きる価値などない!学園長、更識妹に退学処分を……」

 

真月「僕です!」

 

千冬「……何だと?」

 

真月「僕が簪さんに遮断フィールドを破壊して戦闘に参加するよう頼みました。全て僕の判断です」

 

簪「れ、い……?」

 

駄目教師の言葉を遮り声を張り上げてそう主張する。簪を守るにはこうするしかない、簪の罪を全て俺になすりつけるのだ。

 

千冬「そんなデタラメが通じると思っているのか?管制室の通信ログにはそんな会話残っていなかった。プライベートチャネルならば履歴に残らずに会話出来るが、それを証明出来る奴はいるのか?」

 

秋介「僕がそれを証明出来るよ、姉さん」

 

千冬「秋介……!?」

 

俺の作り話に秋介が話を合わせてきた。俺達に良い感情を抱いていないコイツが俺の話に合わせてくる事に驚きを隠せない。

 

秋介「僕と鈴がエネルギーの補給をする間へっぽこ一人で相手をする事になるからね。更識さんに応援を頼むことは先に言われてたんだ。そうだろ鈴?」

 

鈴「うぇ!?そ、そうね!」

 

秋介(認めるのは癪だが助けられたのは事実だからな。これで貸し借りは無しだぞへっぽこ!)

 

そう言いたげな目で秋介はこちらを見てきた。どうやら神童様は借りを作るのが嫌いなタイプらしい。

 

千冬「……だがこちらの許可を取らずにそんな勝手な真似をして良い筈が無い!学園長、独断で指示を出した真月に処罰を!」

 

十蔵「状況が状況ですし一々指示を仰ぐ事は出来ないでしょう。遮断フィールドを破壊するのは確かに良い事ではありませんが、非常事態の為仕方ない事だと思います。この件で真月君と更識さんに罰を与える事は出来ませんよ」

 

千冬「くっ……!」

 

十蔵「さて、今回の件についてはこれで終わりです。襲撃の際に真っ先に逃げ出した教師達、そして部隊を率いて真月君達に攻撃を加えようとした織斑先生は1カ月の減給。さらに織斑先生からは有事の際の指揮権を剥奪、指揮権は天上院先生に譲渡します。分かりましたか織斑先生?」

 

千冬「……チッ!」

 

そう舌打ちをして駄目教師は取り巻きと共に部屋を出て行った。

 

真月「……!?がはっ、ごほっごほっ!?」

 

身体が限界を迎えたらしく、夥しい量の血を吐く。包帯から血が滲み出て白い制服を赤く染めていく。

 

簪「……!?零、零!?」

 

鈴音「ちょっとコレ不味いわよ!?」

 

明日香「……!山田先生!医務室の鮎川先生に連絡!緊急治療室に運ぶわよ!」

 

麻耶「了解!真月君、しっかりしてください!」

 

山田先生に返事を返そうとするが、口から絶え間なく吐き出される血の所為でまともに話せない。

 

 

 

自分の名を呼び続ける声を聞きながら、俺の意識は闇へと沈んでいった。

 

 

 

sideミザエル

 

 

 

鮎川「……治療は成功したわ。損傷が激しかった右足もなんとか修復出来た。二、三日あれば目を覚ますわ」

 

璃緒「そうですか、ありがとうございます鮎川先生」

 

鮎川「お礼なんて必要ないわよ、怪我人の治療が私の仕事なんだから。それじゃあ、私は職員会議に出るから暫く医務室を空けるし今日はもう帰りなさい。貴方達も疲れているでしょう?」

 

そう言って保険医の鮎川は去っていく。医務室にはベッドで眠っているベクターの他に私とメラグと鳳と簪が居た。

 

ミザエル「クソッ!何が最強のドラゴン使いだ!私は仲間一人救えないのか!?」

 

璃緒「落ち着きなさいミザエル、医務室では静かにするものよ」

 

ミザエル「これが落ち着いていられるか!私がもう少し早く来ていればこんな事にはならなかった!これは敵のナンバーズの実力を見誤った、私の慢心が招いた結果だ!」

 

璃緒「貴方は立派に与えられた役目を果たした。同じように零も簪達を守るという役目を果たす為に戦った結果こうなった。これは、零自身が望んだ結果なのよ」

 

ミザエル「だが……!」

 

後悔が絶えない。私がベクターの指示に逆らってあのナンバーズを相手していれば、こうはならなかった。アリーナへは本来私が行くべきだったのだ。

 

璃緒「俯いて後悔してる暇があるなら前を向きなさい。そして今回の後悔を次に生かすよう考えなさい。立ち止まった所で運命は待ってはくれないわ」

 

ミザエル「……そうだな」

 

メラグの言う通り、切り替えていくべきなのだろう。後悔してウダウダとし続けていたらあの高笑い馬鹿にジュラルミンケースで顔を思い切り殴られてしまう。

 

璃緒「ほら、反省会は終わり!鮎川先生の言う通り今日はもう休みましょう?ここで暗くなっていたって零は目覚めないわ」

 

鈴音「……ま、それもそうね。アタシとしたことが、少しの間でも暗くなってしまったなんてね。クイーンは応援してくれる人達の為にも笑顔でいなくちゃ!簪、寮に戻るわよ」

 

簪「……ごめん。私はもう少しここに残る」

 

憔悴しきった顔で簪はそう言った。自分の目の前で零が大怪我を負ったのだ、無理も無いだろう。

 

鈴音「……分かった。ちゃんと寮に戻りなさいよ?天音達が心配しているだろうし」

 

簪「……分かった」

 

眠り続けるベクターに一人寄り添う簪を残して、私達はそれぞれの部屋へと戻っていった。

 

 

 

side簪

 

 

 

簪「……零」

 

ベッドで眠り続ける零をただずっと見つめていた。零、私の大切な友達で、馬鹿な真似をした私を庇って傷ついて倒れた人。

 

簪「……私は」

 

私は弱い。お姉ちゃんや零達の足元にも及ばない程に才能の無い、弱い人間だ。私が弱かったから零は怪我をした。私の弱さが、零を殺しかけたのだ。

 

簪「……強くなりたい」

 

強くなりたい。零は私を自分の命も顧みずに助けてくれた。あの時の零は今まで見て来たどんな人よりもカッコよかった。あの時の零は私にとってヒーローだったのだ。

 

簪「……力が欲しい」

 

力が欲しい。誰にも負けない力が欲しい。誰にも負けない力を手に入れて、零の助けになりたい。今度は私が、零を守るんだ。

 

簪「待ってて零、私……強くなるから。強くなって、今度は零の隣に立って戦えるようになるから」

 

眠り続ける零にそう言って、私は医務室を後にした。

 

 

 

ティナ「ふふ、貴女なら私の誘いに乗ってくれるって信じていたわ、簪」

 

整備室に呼び出したティナは嬉しそうにそう言った。

 

簪「私は貴女の提案を受ける。だから私に力を頂戴」

 

ティナ「まあそう焦らない焦らない。簪、一応確認しておくけど本当に私達の所に来るの?」

 

簪「私はもう日本の代表候補生じゃない。だから私がアメリカに所属したって誰も反対出来ない」

 

ティナ「まあそうね。一つ聞きたいんだけど、簪はなんで力が欲しいの?」

 

簪「私は強くなりたい。強くなって零の隣に立ちたい。零の隣に立って、零を守りたい」

 

ティナ「ふーん、そりゃ立派な。分かったわ、貴女に力をあげる。簪、手を出して」

 

言う通りに手を出した私に、ティナは一枚のカードを手渡した。英語で書かれたそのカードの名前は……

 

簪「The big SATURN……?」

 

ティナ「あ、ごめんやっぱそれ返して」

 

簪「……」

 

抗議の意思を目線で送りながら手渡されたカードを返す。本当にティナは私に力をくれる気があるんだろうか。

 

ティナ「やあね、そんな目で見ないでよ。貴女にこれはまだ早いと思っただけ。ちゃんと力はあげるわよ、ほら」

 

そう言ってティナは改めて一枚のカードを私に手渡した。黒いそのカードは、ほんの数時間前に零が戦ったものと同じく、数字を持っていた。

 

簪「No.65 裁断魔人ジャッジ・バスター……」

 

ティナ「そう、それが貴女に与える力。貴女達が戦ったアシッドゴーレムと同じナンバーズよ」

 

そう言ってティナはにっこりと微笑んだ。その笑顔は医務室で見た時と同じでとても綺麗でーー

 

簪「……え?」

 

ちょっと待て、今の話何かおかしい所がーー

 

簪「……!?」

 

頭に芽生えた疑問について考えようとした瞬間、眩い光と共にナンバーズが私の身体の中に入っていく。身体中が激しく痛む。自分が何かに飲み込まれていくような感覚がする。

 

簪「っ……!?何、が……!」

 

ティナ「怖がらなくて良いわ。直ぐ終わるから」

 

頭が痛い。自分という存在が分からなくなるような強い不安を感じる。痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いーー

 

簪「……あ、あぁ?」

 

不意に、痛みが収まった。あの全身を飲み込んでいくような気持ち悪い感覚も、自分を失ってしまうような不安も、嘘のように消えていた。

 

簪「……!あぁ……」

 

代わりに、力が湧いてきた。今までの自分からは考えられないような強い力が全身を駆け巡っているのが感じられた。自分が今までの自分を遥かに上回る程に強くなったのが分かる。凄い、この力があればきっとーー

 

簪「……ぁ?」

 

きっと、何?私は何をしたかったんだっけ?

 

ティナ「忘れちゃったの?簪、貴女はお姉さんを、更識楯無を殺したかったんでしょ?」

 

簪「おねえ……ちゃんを……?」

 

そうだったっけ?よく思い出せない。

 

ティナ「そう、貴女は姉である更識楯無を殺したかった。殺して自分の力を証明したかったのよ」

 

簪「ちからを、証明……」

 

ティナ「憎かったんでしょう?自分の努力を踏み躙るくらい強くて才能に溢れたお姉ちゃんが。自分を『無能』と決めつけたお姉ちゃんが」

 

……そうだ。私はお姉ちゃんが憎かった。殺してしまいたいくらいに憎かったんだ。

 

ティナ「だから殺すの。強くて才能に溢れたお姉ちゃんを殺して、自分の方が強いんだって証明するの。貴女を馬鹿にしてきた奴らを見返してやるのよ」

 

簪「みんなを、見返す……」

 

そうだ。私はお姉ちゃんを殺す為にこの力を手に入れたんだ。お姉ちゃんを殺して皆を見返してやるんだ。

 

ティナ「大丈夫、貴女に渡したその力があればきっと勝てる。見事貴女が更識楯無を殺す事が出来たなら、さっきのカードも貴女にあげる。あのカードが持つ力はその力の比じゃないわよ?」

 

簪「ちから……もっとくれるの?」

 

ティナ「ええ、だから頑張って更識楯無を殺すのよ?」

 

簪「うん……分かった……」

 

力がどんどんと湧いてくる。これならあのお姉ちゃんだって殺す事が出来る。私は無能なんかじゃないんだ。私はとても強いんだ。

 

ティナ「あ、今から殺しに行くのはナシね。まだナンバーズが貴女に深く根付いてないから。……今回の件で学校は暫く休みだし、三日後にしましょう。三日後、更識楯無を殺しましょう」

 

簪「三日後……」

 

その言葉が頭の隅に引っかかる。なんだっけ、何か大事な事があった気がする。まあ、良いか。忘れるような事なら大した事じゃないんだろう。

 

ティナ「それじゃあお休み簪。貴女の力を見るのがとても楽しみよ」

 

簪「うん……お休み、ティナ」

 

そう言ってティナと別れて部屋に戻る。あと三日、その日が来るのが凄く楽しみだ。三日後、私はお姉ちゃんを殺して自分の強さを証明するんだ。

 

簪「……あはは、あはははははははははははははははははははははははははははは!」

 

暫くの間、笑いが止まらなかった。

 

 

 

 




次回予告

凌牙「……今回の次回予告担当は俺と」
ドン『我だ』
凌牙「巫山戯んなよテメェ!どんだけ乱入すりゃ気が済むんだよ!?」
ドン『もうじき我も本編で出番があるのでな。見てくれている人間達が我を忘れて『誰コイツ?』とかならないよう定期的に出ておこうと思ってな』
凌牙「心配しなくてもテメェみたいなキャラの濃い奴忘れる奴なんて居ねえよ!」
ドン『まあそう怒るな。さあ、次回予告に移るぞ』
「お姉ちゃん、ちょっと話が有るんだけどいいかな?」
ドン『カオスに堕ちた少女とそれに気がつかない姉、これは惨劇の予感』
凌牙「嬉しそうに喋るんじゃねえ!……不味いな、相当深くナンバーズに侵食されてやがる」
ドン『我なら記憶を書き換えてバリアンにする所まで行くな』
凌牙「ぶっ飛ばすぞテメェ!」
「一人の少女の話をしようか、憧れた姉に少しでも努力をし続ける少女の話だよ」
「……簪の事か」
凌牙「ベクターの奴が簪について話を聞くみたいだな。これで何とか状況を変える事が出来れば良いんだが」
ドン『ここがあの少女を救えるかの分岐点となる。ベクター、まだ今回の事件は終わっていない。傷ついた少女の心を救って、ようやく終わりを迎えるのだ』

次回、インフィニットバリアンズ

ep.35 水色少女の狂気

凌牙「踏ん張れよベクター、ここが正念場だぜ」

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