インフィニット・バリアンズ   作:BF・顔芸の真ゲス

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ズァーク「イエェェェェイ!!」
ズァーク「空前絶後のォ!超絶怒涛のデュエリストォ!」
ズァーク「モンスターを愛し、モンスターに愛された男ぉ!!」
ズァーク「スタンダード、融合、シンクロ、エクシーズ!全ての次元の生みの親ァ!!」
ズァーク「そう!我こそはァァァ!!覇王龍!ズァークゥゥ!!」
ズァーク「ジャスティス!!」

真月「……なんだコレ?」
ドルベ「先日私が見た夢の内容だが?」
真月「いや誰だよズァークって!?」



ep.28 来訪者達

side真月

 

 

 

セシリアの専用機を選んだ後学園に戻って来た俺とセシリアはそれを山田先生に報告し、それぞれの部屋に戻る事にした。時刻はまだ昼過ぎ、今から授業に参加しても良かったが、本社の技術者連中と話してかなり疲れが溜まっていたからだ。

 

真月「はあ、かなり疲れた。ちょっと専用機貰いに行くだけで何でこんなに疲れなきゃいけねぇんだよ全く」

 

そうやって愚痴を言いながら廊下を歩き、部屋に入る。当然ルームメイトの簪は居ない。これといってやりたい事も無いので、俺は簪が帰ってくるまで一眠りする事にした。

 

真月「あいつが帰ってくるのは大体六時過ぎだから、四時間くらいは寝れそうだな。そんじゃ、寝るか!」

 

そう呟いて、俺は目を閉じた。

 

 

 

ーー夢を見た。凄く、凄く昔の夢だ。

 

夢の中の俺は母上と他愛の無い話をして共に笑っていた。周りには昔から俺を支えてくれた城の人達と、街の子供達が居た。

 

皆、笑顔だった。悲しい事だってあったが、それでも皆の顔から笑顔が消えた事は無かった。そんな皆の笑顔が、俺は大好きだった。

 

だから俺はこの笑顔を守りたかった。父上のような強い王になれなくても良い、皆から腑抜けだと罵られても構わない。ただ、この笑顔を守れれば他には何も要らなかった。

 

 

 

ーーその笑顔を消したのは、俺だった。

 

母上が、城の人達が、街の子供達が、血を流しながら死んでいく。死の間際まで俺を睨みつけ、怨嗟の声を上げながら倒れていく。

 

皆が俺を憎んだ。皆が俺を呪った。

 

『死んでしまえ』『どうして殺したんだ』

 

何万人もの人達が、そうやって叫んでいる。

 

奥の方に父上の姿を見つけた。俺の方を見て、嘲るように笑っている。

 

『なんだ、腑抜けていると思っていたが、やはり儂の息子だったか』

 

『平和な世界を作るという馬鹿げた戯言を言っていた癖に、結局儂と同じ事をしているではないか』

 

違う、俺はお前とは違うんだ。俺はこんな事望んでいなかった。俺はただ皆の笑顔を守りたかったんだ。

 

そう叫ぼうとしたが、どんなに頑張っても俺の口は声を出す事が出来なかった。

 

『何が違うのだ。実の親を殺し、自らの国の民を殺し、眼に映る全ての人間を貴様は殺した。貴様は儂以上に残虐な王だったのだ』

 

『もう分かっているだろう?貴様は、生まれてこなかった方が良かったのだ』

 

『貴様が生まれたから貴様の母は死に、民も死んだ。貴様さえ居なければ、皆が死ぬ事は無かったのだ』

 

違う、違う違う違う!否定しようとしても声が出ない。耳を塞ぎたくても手が動かない。目を背けたくても瞼が閉じない。身体が金縛りにあったように動かないのだ。

 

ふと足元を見ると、倒れていた母上が顔を上げ、俺の方を向いて何か言っているのが分かった。顔中血塗れになりながらも、母上は何かを伝えようとしていた。俺は全力で耳をすまし、母上の言葉を聞こうとした。この地獄から少しでも目を逸らしたかった。母上に救って欲しかったのだ。

 

いつものような優しい笑顔を俺に向けて、母上は言った。

 

 

 

『貴方なんか、生まれて来なければ良かったのに』

 

 

 

 

真月「あああぁぁぁっ!?」

 

見知った天井、使い慣れたベッド、正真正銘俺の部屋だ。

 

どうやら、また悪い夢を見ていたらしい。あまり細部までは覚えていないが、最悪の夢だったのは確かだ。

身体中が嫌な汗でビショビショだ。身体の震えが止まらない。過去最大級に酷い夢だったらしい。

 

簪「……零、大丈夫?」

 

その声を聞いて横に顔を向けると、心配そうな顔をした簪がいた。

 

真月「……簪か。学校は終わったみたいだな」

 

簪「とっくに終わってる。今日は用事もあるから早く帰ってきたきたの。それよりどうしたの?かなりうなされてたけど」

 

真月「気にすんな。ちょっと悪い夢を見ただけだ。それより用事ってなんだ?お前が開発室に寄らないで真っ直ぐ帰ってくるって事は、かなり大事な用事みたいだが」

 

簪「うん、かなり大事。今日は友達が遊びに来るの」

 

真月「え、お前本音以外に友達居たの?」

 

咄嗟に出てきたその一言に簪が固まる。あ、やっちまったわコレ。

 

簪「……零、一発殴らせて」

 

真月「……おう、どんと来い」

 

その後割と強めの右ストレートを顔面に食らったが、これは仕方ない事だろう。

 

 

 

簪「……兎に角、今日は友達と部屋で遊ぶ事になってるから早く帰ってきたの」

 

真月「そうか、なんか安心したぜ。お前、専用機開発ばっかでろくに人と関わってないと思ってたからな」

 

簪「……もう一発殴られたいの?」

 

殴られた頰を撫でながら俺がそう言うと、簪はまた拳を振り上げて攻撃の体勢を取った。

 

真月「はは、悪い悪い。ちょっとからかっただけだ」

 

簪「……本当に大丈夫なの?」

 

真月「何がだ?」

 

簪「今の零、大分無理して笑ってる」

 

……見抜かれてたか。余計な心配をかけない為にも平静を装っていたのだが、それが逆に簪を心配させていたみたいだ。

 

真月「……悪い、今かなり余裕無い」

 

簪「やっぱり。もう一回寝る?」

 

真月「いや、もう十分寝た。それに寝たらまた悪夢を見る気がする。お前やお前の友達とやらと遊んで気を紛らわす事にするわ。それで、その友達はいつ来るんだ?」

 

簪「そろそろ来るから、取り敢えず来るまでデュエルしよう。軽くだから、ライフは4000、山札20枚、初期手札4枚のスピードデュエル形式で」

 

真月「20枚っておい……まあやるけどさ」

 

真月・簪「デュエル!!」

 

その後、デッキデスをかました俺が簪に殴られたが、まあ楽しかったから別にいい。

 

デュエルが終わって少したった頃、俺たちの部屋をノックする音が聞こえた。どうやら簪の友達が来たらしい。

 

真月「おい、来たみたいだぞ。開けてやったらどうだ?」

 

簪「分かってる、……今開けるから待ってて!」

 

そう言って簪はドアの前まで行き、掛けていた鍵を外してドアを開けた。

 

???「お邪魔しま〜す!」

 

???「お、お邪魔します……」

 

部屋に入ってきたのは二人の女子。一人は白髪の少女で、エジプトあたりの物らしい趣味の悪い金色の首飾りを付けている。もう一人の方は小柄な茶髪の少女で、一人目の後ろに隠れながら俺を見ている。

 

???「君が簪が言っていた真月君だね?私の名前は『獏良天音』、簪のクラスメイトさ。宜しくね」

 

???「あ、あの、『光焔ねね』……です。天音ちゃんと同じで簪ちゃんのクラスメイト……です。宜しくお願いします」

 

真月「天音さんにねねさんですね。宜しくお願いします!僕は真月零です!」

 

天音「知ってるよ、あと簪と話してる時の態度で良いよ。君がどんな人間かは簪から聞いてるし」

 

おい、何勝手にバラしてんだこの野郎。そんな思いを込めて簪を睨みつけるが、簪はさっと目を逸らした。

 

真月「……まあ良い。猫被る必要ないならそれに越した事は無いからな」

 

天音「そういう事さ。さあ、先ずは何して遊ぼうか?簪から聞いたところ君もデュエリストみたいだし、デュエルでもやるかい?」

 

真月「悪い、デュエルはお前らが来るまでの間簪とやってたから他のにしてくれないか?流石に連戦はキツイ」

 

天音「分かった。ねねは何が良いと思う?」

 

ねね「え、えっと……テレビゲームとかどうかな?」

 

天音の後ろに隠れながら、恐る恐るそう提案するねね。どうやらまだ警戒されているらしい。

 

真月「テレビゲームねえ、別に俺は構わねえよ。でも、ゲーム機あんの?俺は持ってないぜ?」

 

簪「問題無い。最新の物から昔の物まで、全てのゲーム機を所有している私に死角は無い」

 

真月「そんなテメェが大問題だわ!?テメェこの部屋を何だと思ってるんだ!!」

 

簪「ゲームとアニメ鑑賞をする部屋じゃないの?」

 

真月「絶対違うわ!?」

 

天音「ははは、簪がこんな感じなのはいつもの事さ、早く慣れてあげてよ。それで、何やる?四人プレイのゲームは確定だけど、協力プレイが良い?それとも対戦が良い?」

 

簪「協力プレイで良いんじゃない?丁度マリオの最新作がここにあるし」

 

天音「お、良いねえ。それやろう。私キノピオね」

 

真月「マリオなら得意だぜ?因みに俺はマリオで頼む」

 

ねね「じゃあ、私はピーチで……」

 

簪「残った私が永遠の二番手(ルイージ)……これはお姉ちゃんを超えられない私への嫌がらせ?」

 

天音「よく分かったね、その通りだよ」

 

真月「性格悪いなテメェ!?」

 

天音「ははは、よく言われる」

 

簪「……天音、後で屋上」

 

始める前から不安しか無いような不穏な空気の中、俺たちはテレビゲームで遊び始めた。

 

 

 

side鈴

 

 

 

鈴音「あ〜暇だ〜!ティ〜ナ〜、ラーメン出来た〜?」

 

ティナ「まだ一分も経ってないわよ。少しは大人しく待つって事が出来ないのアンタは」

 

暇だ、兎に角暇なのだ。

 

謹慎を食らっているので部屋から出れない。その為食堂にも寄れないし零達の部屋にも勿論寄れない。部屋には最低限の荷物しか持って来てないので遊ぶ物も無い。放課後からはルームメイトのティナが話し相手になってくれるが、ティナが授業を受けている時間帯はアタシ一人で過ごさなきゃいけない。皆が楽しく学校生活を送っている間、アタシは部屋でラーメンを食べて寝るを繰り返すだけ。これは余りにも酷いではないか、アタシはただ思いっきり戦っただけなのに。

 

鈴音「飽きた!ちょっと出掛けてくる!」

 

ティナ「駄目に決まってんでしょ。織斑先生に見つかったら謹慎が伸びるよ。ほら、ラーメン出来たわよ」

 

鈴音「ありがと。……あー、やっぱピリ辛レッドデーモンズヌードルは最高ね」

 

傷ついた心が癒されていくような感じがする。師匠に出会って以来カップ麺はこれの系統しか食べられなくなってしまう位、アタシはこれが大好きだった。

 

ティナ「朝昼晩の三食同じの食べてよく飽きないわね。それ、そんなに美味しいの?」

 

鈴音「メッチャ美味いわよ。一口食べる?」

 

ティナ「それじゃ遠慮なく……辛!?ナニコレかっら!?何処がピリ辛よ普通に激辛じゃない!?」

 

一口食べた途端顔を真っ赤にして叫ぶティナ。これが辛いなんて、舌がおかしいんじゃないだろうか。

 

ティナ「おかしいのはアンタの舌よ!鈴、ちょっと水持って来て!」

 

鈴音「あら、口に出してた?」

 

ティナ「それはどうでもいいから!早く水!」

 

鈴音「はいはい、分かったわよ。全く、ティナはまだまだお子様ね」

 

ティナ「アンタマジでぶっ飛ばすわよ!?」

 

そろそろティナが本気でキレそうなので、大人しく水を持ってくる事にした。

 

鈴音「ほい、水を持ってきたわよ」

 

ティナ「ありがと。……ふう、楽になったわ」

 

鈴音「そりゃ良かったわ。……ティナ、アタシやっぱ出掛けるわ」

 

ティナ「アンタ私の話聞いてたの?バレたら不味いんだって。それにこの時間帯は廊下に人が沢山居るから誰にも見つからないって事はあり得ないのよ?」

 

鈴音「誰が廊下を使うなんて言ったのよ?」

 

ティナ「いや、廊下使わずにどうやって行くのよ……」

 

ティナの疑問はもっともだ。だがアタシはその問題を解決する画期的な策を思いついたのだ。

 

鈴音「簡単よ、ベランダを飛び移って行けば良いのよ」

 

ティナ「……は?」

 

鈴音「だーかーらー!ベランダを飛び移って行くのよ!」

 

ティナ「アンタ馬鹿じゃないの!?」

 

鈴音「大丈夫大丈夫、イケるって」

 

ティナ「いやそういう問題じゃ無いっつの!?」

 

鈴音「大丈夫よ、アタシクイーンだし」

 

そう言ってアタシはティナを担ぎ上げ、ベランダの鍵を開けて中に入った。

 

ティナ「だからそういう問題じゃ……ちょっと待って、なんで私担ぎ上げられてるの!?」

 

鈴音「そりゃあ勿論一緒に行くからよ」

 

ティナ「巫山戯んな!?なんで私まで行かなきゃいけないのよ!?」

 

鈴音「だってアンタ、私が行ったら絶対チクるでしょ?だったら共犯者に仕立て上げてチクれないようにしようかと思って」

 

ティナ「鬼だ!?鬼がいる!?」

 

鈴音「鬼?何処にいんのよ?」

 

ティナ「アンタよ!」

 

鈴音「え〜何聞こえな〜い!ほら、舌噛むから喋らない方が良いわよ?」

 

ティナが何か言っていたが、無視してベランダの縁に飛び乗り、勢いよく跳躍した。

 

鈴音「よ〜し!出発進行〜!」

 

ティナ「だから少しは人の話しを聞けやあぁぁぁ!?」

 

 

 

side真月

 

 

 

協力プレイにより皆仲良く和気藹々、とはならなかった。

 

真月「天音テメェ!またアイテム取りやがったな!」

 

天音「ははは、君がトロいのが悪いのさ」

 

真月「あぁ!?」

 

簪「……天音、貴女に踏み台にされて私死んだんだけど」

 

天音「ははは、仲間の助けになれたんだ、誇りに思ったらどうだい?」

 

簪「……殺す」

 

ねね「あ、あの……協力プレイなんだから、皆仲良くした方が……」

 

天音「あ、手が滑ってねねちゃんに甲羅当てちゃった〜」

 

ねね「……ぐすっ」

 

現在、俺たちの部屋は険悪なムードで満たされていた。原因は見ての通り天音だ。アイテムを必要としていないのに必要としている奴から横取りする、他の奴を踏み台にして殺す、わざと甲羅をぶつけて俺たちを殺すなど、協力プレイとは何だったのかと言いたくなるような行為を繰り返して俺たちを苛つかせている。

 

真月「天音ェ!テメェマジで良い加減にしろよ!これは協力プレイだろうが!何一人だけPvPやってんだよ!」

 

天音「ははは、何を言ってるのかな?マリオは他の奴の邪魔をして自分一人が生き残ってゴールするゲームじゃなかったっけ?」

 

簪「ぐっ、否定出来ない部分があるのが悔しい……」

 

真月「いや全面的に否定しろや!つーか否定出来ないなら何でこれ提案したんだよお前!」

 

天音「ははは、弱い犬程よく吠える〜とはよく言ったものだね」

 

真月「もう殴っても良いよなコイツ!?」

 

天音「おいおい、女を殴るなんて野蛮過ぎないかい?ゲームくらいでムキになるなんてみっともないよ?」

 

真月「があぁぁぁムカつく!殴りたい、マジで殴りたいんだけどコイツ!」

 

絶えず此方を挑発する天音に俺がブチ切れそうになったその時、不意にベランダの方からコツコツと音がした。

 

真月「……あん?」

 

気になったのでベランダの方へ向かうと、知らない女を担ぎ上げた鈴がニヤニヤしながら窓の外に立っていた。

 

真月「いや何してんのお前!?」

 

鍵を開けて窓を開けると、担いでいた女をベッドに投げて鈴が入ってきた。

 

鈴音「ヤッホー零!遊びに来たわよ!」

 

ティナ「覚えておきなさいよ鈴……!」

 

真月「もう一回言う、何してんのお前!?」

 

鈴音「そりゃ勿論、遊びに来たのよ?」

 

簪「あ、鈴。鈴も遊びに来たんだ」

 

鈴音「ええ!どうやら今はマリオやってるみたいね!零、ちょっと操作変わって?」

 

そう言うと鈴は俺からコントローラーを奪い、テレビの前に胡座をかいた。というか、何で簪はベランダから入って来た鈴を何も気にせずに受け入れられるんだよ。

 

天音「おや、プレイヤー交代かい?」

 

鈴音「ええ、アタシは二組の鳳鈴音、アンタ達は?」

 

天音「私は四組の獏良天音、それでこっちが光焔ねね。成る程君が転入早々謹慎になった問題児か。確かにヤンチャな顔してるね。それで、そこのベッドに転がってるのは君の友達かい?」

 

鈴音「ええ!アタシのルームメイトのティナよ!名字はえっと……ティナ、あんた名字何て言ったっけ?」

 

ティナ「マッケンジー、ティナ・マッケンジーよ。一応アメリカの代表候補生でもあるわ」

 

成る程、この女の名字はマッケンジーと言うのか。丁度アメリカの大統領と同じ名字だな。それにしても……

 

真月「お前、胸デケェな。箒くらいあんじゃねぇの?」

 

ティナ「知り合って初めての言葉がそれ!?」

 

鈴音「お、気付いたわね。ティナの胸は良いわよ〜?デカイし柔らかいしで揉んでて気持ち良いわ」

 

ティナ「アンタも便乗してんじゃないわよこの変態女!」

 

簪「というか、揉まれた事が有るの?」

 

ティナ「有るわよ!コイツ私が自己紹介した後挨拶がわりに揉んできたのよ!信じられる!?」

 

天音「何というか、意外だね。鈴さんみたいなぺったんこな人って巨乳を憎んでいると思ってたんだけど」

 

鈴音「鈴で良いわよ。まあ、一昔前のアタシならティナを目の敵にしたでしょうね。でもね、師匠に弟子入りしてしばらくした時に気付いたの」

 

そこで一旦話を切り、鈴はベッドの上に立って胸を張ってこう言った。

 

鈴音「他人のデカイ胸は、憎むものじゃなくて揉んで楽しむものなんだって」

 

真月「何でだああぁぁぁ!?」

 

マジで何を言ってるんだコイツ。どういう思考回路してたらそんな結論に至るんだ。

 

簪「成る程、そういった考え方も有るのか……」

 

真月「いや何感心してんだよ!?」

 

鈴音「ふっふっふ、簪アンタもティナの胸揉んでみる?癖になるわよ?」

 

簪「じゃあ、遠慮なく」

 

ティナ「いや揉ませないわよ!?」

 

抵抗するティナを鈴が羽交い締めにし、簪が手をわしわしとしながらジリジリと近づいていく。そのレベルの高い連携は一体何なんだ。

 

天音「……ねえ、ゲームしないの?」

 

天音のその一言で簪達はコントローラーを持ち直し、ティナはなんとか揉まれずに済んだ。

 

簪「……ごめん、少し正気じゃなかった」

 

天音「あはは、同性とはいえ女の子の胸を揉もうとするのは少し正気じゃないどころじゃないと思うよ」

 

ねね「それに、その……真月君も居るんだし、そういった事はやめた方が良いと、私は思う」

 

真月「……俺は別に気にしないんだが、まあいいか」

 

鈴音「ちぇ〜!仕方ない、ティナの胸を堪能するのは帰ってからにして、ゲームを楽しみますか!先に言っておくきどアタシ、マリオは超得意よ!」

 

天音「ははは、ならその自信を木っ端微塵に消し飛ばしてあげるよ!」

 

こうして鈴と天音による激しいゴール争いが始まった。マリオは協力ゲームじゃなかったのか?

 

 

 

鈴音「あはは!アタシの勝ちぃ!」

 

天音「ははは、まさか負けるとは……」

 

結果だけ言うと鈴の勝ちだ。天音はあらゆる手を使って鈴を仕留めようとしたが、鈴はそのさらに上をいくプレイで天音を圧倒し、天音の残機を削り切った。鈴の動物的な勘も勝利の要因だが、鈴のプレイスキルも圧倒的に天音を上回っていた。

 

天音「いやぁ、鈴は凄いね。私もゲームは結構やるけど、全然歯が立たなかったよ」

 

鈴音「当然よ!アタシはゲームも結構やってるからね。代表候補生としての仕事が無い日は大体家でゲームやってたから大抵のゲームは出来るわ!」

 

真月「……意外だな、休みの日もひたすら練習しているものと思ってたぜ」

 

鈴音「『休む時は全力で休め』が師匠の教えだからね。ダラダラ過ごす時はひたすらダラダラしてるのよ」

 

あのニートそんな事言ってたのか。というか、毎日のようにダラダラと過ごしてるだろうがあのニート。お前の休みはどんだけ長いんだよと言ってやりたい。

 

簪「……その師匠がいたから、鈴は強くなれたの?」

 

少し暗い顔をしながら、簪は鈴にそう言った。姉を越えたいという焦りが簪にそう言わせたのだろう。

 

鈴音「まあ、そうなるわね。師匠がいたからアタシは色んな迷いを吹っ切る事が出来た訳だし。師匠が居なかったら多分クイーンなんて呼ばれなかったわね」

 

簪「……私も、鈴みたいに強くなれるかな?」

 

鈴音「なれるに決まってるじゃない。自分じゃ認めないみたいだけど、アンタ日本の代表候補生の中で一番才能有るわよ」

 

簪「そう、かな?」

 

鈴音「そうよ!だから簪、アンタはもっと自分に自信を持ちなさい!」

 

簪「……分かった。鈴、ありがとう」

 

そう言って照れ臭そうに笑う簪を見て、簪はもう大丈夫だと安心した。

 

天音「お二人さんお二人さん、仲良くするのはいい事だと思うけど、他の人の存在を忘れて話し込むのはどうかと私は思うんだけど?」

 

鈴音「別に忘れてはいないわよ。それと天音、さっきから気になってたんだけど、その首飾りは何?はっきり言ってそんなに似合ってないわよ」

 

おい鈴、俺も似合ってはいないと思ったが、そこまでズバッと言うことは無いだろ。

 

天音「ああコレ?『千年リング』って言うんだ。骨董商だった父さんが昔手に入れた物で、私にとっては両親の形見だね。はは、似合ってなかったか」

 

鈴音「……ごめん」

 

天音「別に良いよ?私自身似合うと思って付けてた訳じゃないし。無くすと困るから肌身離さず持ってるだけさ」

 

けらけらと笑いながらそう言った天音。その言葉通り鈴の言葉を気にしている様子は全く無い。

 

ティナ「…………」

 

ふとベッドに目を向けると、ティナが千年リングをじっと見つめているのに気がついた。

 

天音「おや、そんなに見つめてどうしたのティナちゃん?コレが珍しいから気になるのは分かるけど、そんなに胸を見つめられると流石に恥ずかしいな」

 

ティナ「……!?い、いやっ、私別にそんなつもりで見ていたんじゃ……」

 

鈴音「お?ティナ、アンタにも胸の良さが分かるようになったの?分かるわよ、天音ちゃんの胸も柔らかそうで良いわよね!」

 

ティナ「アンタと一緒にすんな変態女!?」

 

鈴のセクハラ発言に対して顔を真っ赤にして怒鳴るティナを見て、コイツは苦労人ポジションなんだなと深く同情した。というか鈴、二年間の間にマジで何があった。

 

ねね「あ、あの……、そろそろ消灯時間になるので、今日はこれでお開きにしませんか?」

 

鈴音「えっマジで!?アタシまだマリオしか出来てないわよ!?」

 

ティナ「謹慎処分中に他の人の部屋でゲーム出来ただけ良かったでしょうが……。ごめんね、この馬鹿が色々と迷惑かけて」

 

真月「別に気にしちゃいねぇよ。それより鈴、ちゃんと足元気をつけろよ。どうせまたベランダから帰るんだろ?」

 

鈴音「あったり前よ!アタシはクイーンよ?クイーンの辞書に事故の二文字は無いわ!ほらティナ、帰るわよ!」

 

ティナ「ちょっと待っていきなり担がないでまだ心の準備が出来て……!?」

 

鈴音「じゃあ零、簪、天音、ねね!また遊びましょ!」

 

ティナ「ちょっと待っていきなりジャンプはやああああぁぁぁ!?」

 

そう俺たちに言い残し、鈴は絶叫するティナと共に飛び去っていった。

 

簪「……嵐みたいに去っていったね」

 

真月「……ティナも大変だな」

 

天音「あはは、それじゃあ私達も帰ろうか。じゃあ簪、また明日」

 

ねね「簪ちゃん、また……明日」

 

残っていた天音達もそう言って帰っていき、部屋には俺と簪だけが残された。

 

真月「……疲れた。お前よくあんな奴と仲良く出来るよな」

 

簪「天音の事?」

 

真月「そうだよ。今日のゲームの時の場の雰囲気の感じからして、あまり仲良く出来てるとは思えなかったんだが」

 

簪「天音達とは中学からの知り合いだからね。天音のあの感じにはもう慣れた」

 

真月「そうかい。そういや専用機の方はどうなんだ?」

 

簪「八割は完成した。後は稼働データを元にプログラムを修正すれば全部終わり」

 

真月「そりゃ良かった。で、稼働データとやらは有るのか?お前がISに乗ってるとこ見た事無いが」

 

簪「まだ無い。アリーナが壊れてなかったら今日データを収集する予定だった」

 

真月「……そりゃ残念だったな」

 

鈴と黒咲の激闘の被害者が此処にも居た。アイツら本当人様に迷惑しかかけないな。

 

簪「別に問題無い。この調子なら学年別のトーナメントまでには完成するし」

 

真月「そうか、そりゃ楽しみだ。早くテメェが作った機体と戦ってみたいぜ」

 

簪「……うん」

 

真月「んじゃ、俺は寝るんで。テメェも早く寝ろよ?」

 

簪「分かった。おやすみ、零」

 

そう言って簪はパソコンを弄り、いつもの作業を始めた。

 

俺は布団を被り、今日の疲れが癒える事を願いながら目を閉じた。

 

……今度は、悪夢を見ないといいんだが。

 

 




次回予告

天音「やあ、今回の予告担当は私とねねだ」
ねね「よ、よろしくお願いします」
『織斑君、クラス代表就任おめでとう!!』
天音「一組は代表就任パーティーを開くみたいだね。こういうのってもっと早い内にやるものじゃないかい?」
「どーも!清く正しいIS学園新聞部部長の黛薫子です!突然ですが男性操縦者の皆さん、好きな女性のタイプを答えて下さい!」
ねね「あ、この人知ってる……。前に一組のクラス代表決定戦で賭け事を仕切ってた人だ……」
天音「それ生徒としてどうなのさ……」
『簪さん、このままじゃ貴女が代表候補生を辞める事になるかもしれない』
天音「簪がクビ!?」
ねね「どうしてそんな事に……!?」

次回、インフィニットバリアンズ
ep.29 クラス代表就任パーティと水色少女の絶望
天音「次回もお楽しみに!」
ねね「お、お楽しみに……」

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