インフィニット・バリアンズ   作:BF・顔芸の真ゲス

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ep.26 隼と絶対王者 後編

side真月

 

 

 

真月「鈴の奴……!遅えよ!どんだけ待たせる気だ!」

 

放課後、鈴とデュエルをする為に待ち合わせをしていた俺と簪は、集合場所である食堂に集まっていた。

 

しかし、待ち合わせの時間から三十分を過ぎた今になっても、鈴が来ないのだ。

 

簪「転入初日だから色々ゴタゴタしてるんじゃない?」

 

真月「それだったら連絡の一つや二つ寄こしやがれって話だ!俺は待たせるのは好きだけど待つのは嫌いなんだよ!」

 

簪「……零って本当性格腐ってるよね」

 

真月「ハッ!そんなの今に始まった事じゃねえだろうが」

 

簪「まあそうだけどさ。……零は、いつからそんな性格なの?生まれた時から?」

 

真月「生まれた時はここまで屑じゃ無かったぜ?まあ、生まれた時から屑になる運命だったのかもしれないがな」

 

あの戦争大好きなクソ親父の血を継いでいるんだ、ドン・サウザンドの野郎に変えられる前から俺には屑の素養はあったんだろう。

 

簪「……?それってどう言う……「大変です真月君!?」……山田先生?」

 

簪が俺に何か言おうとしたが、前からやって来た山田先生によって遮られた。

 

真月「山田先生?そんなに慌てて一体どうしたんですか?」

 

真耶「くくく黒咲君が!?黒咲君がぁ!?」

 

黒咲?ああ、そう言えば復帰させるって連絡がさっき来ていたな。それににしてもこの先生驚き過ぎじゃないか?

 

真月「落ち着いてる下さいよ山田先生。黒咲さんが復帰するっていうのは僕も本社から連絡を受けてますから」

 

真耶「違うんです!黒咲君がアリーナで鳳さんと戦って、アリーナを滅茶苦茶にしてるんです!」

 

真月「はあぁ!?」

 

簪「……!?」

 

おい待て!?何で黒咲が鈴と戦ってんだよ!?

 

真月「どうしてそんな事になったんですか!?」

 

真耶「私も良く分かりませんよ!?今教師部隊が総出で止めに向かってますが、念の為アークライトカンパニーの皆さんも力を貸してくれると助かります!」

 

真月「分かりました!今すぐ一夏君達に連絡します!」

 

真耶「ありがとうございます!それじゃあアリーナに向かうので私についてきて下さい!連絡はアリーナに向かいながらお願いします!」

 

真月「はい!簪さん、悪いですが今日のデュエルはキャンセルでお願いします!」

 

簪「分かった、気をつけてね」

 

真月「はい!それでは簪さん、行ってきます!」

 

簪にそう言って、俺は山田先生と共にアリーナに向かった。

 

 

 

side隼

 

 

 

鈴音「どりゃああぁぁ!『アブソリュート・パワーフォース』!」

 

隼「チッ……!防げライズ・ファルコン!」

 

振り下ろされた拳をライズ・ファルコンを壁にして防ぐ。

 

燃え盛る拳がライズ・ファルコンに激突し、炎が周囲を焼き尽くしていく。

 

隼「なんて威力だ……!」

 

鈴音「やるじゃない!これを耐えきる奴はそうは居なかったわよ!でもね、防御の姿勢はクイーンの前では無力なのよ!焼き尽くせ!『デモン・メテオ』!」

 

隼「何ぃっ!?ぐおぉぉぉ!?」

 

ライズ・ファルコンが鳳の攻撃を防ぎきった直後、鳳の機体から巨大な火球が放たれ、ライズ・ファルコンを跡形も無く消し飛ばした。

 

隼「防御に反応して相手を破壊する効果か、かなり厄介な効果だな……!」

 

鈴音「さあ、アンタのご自慢の鳥は倒したわ!さっさと新しい奴を用意しなさい!」

 

隼「舐めるなよ!トラップ発動!『エクシーズ・リボーン』!墓地のエクシーズモンスターを蘇生し、このカードを蘇生させたモンスターのオーバーレイユニットにする!蘇れライズ・ファルコン!」

 

『キーッ!!』

 

鈴音「あら、またその鳥?そいつを出しても壁にしかならないわよ?」

 

隼「果たしてそうかな?ライズ・ファルコンの効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、相手の場の特殊召喚されたモンスター一体を選択し、その攻撃力分このカードの攻撃力をアップする!レッド・デーモンズ・ドラゴンの攻撃力は3000!よって3000ポイントアップだ!」

 

『キーッ!!』

 

ライズ・ファルコンが炎を纏い、不死鳥の様な姿へと変化する。オルコットが恐怖したその光景を見ても、鳳の目から闘志は消えなかった。

 

鈴音「へえ、ただの壁じゃ無かったのね。良いわ、掛かって来なさい!」

 

隼「その余裕、この一撃で吹き飛ばしてやる!行けライズ・ファルコン!レッド・デーモンズ・ドラゴンに攻撃しろ!『ブレイブクロー・レボリューション』!!」

 

『キーッ!!』

 

鈴音「うおっ!?これかなり速い……わあぁ!?」

 

炎を纏ったライズ・ファルコンが鳳に直撃し、大爆発が発生した。

 

隼「……フン、終わったか」

 

鈴音「ちょっと、勝手に終わらせないでくれない?」

 

隼「……しぶといな」

 

爆発による砂煙が晴れ、そこから鳳が砂を払いながら現れた。

 

鈴音「ぺっ!……口に砂入っちゃったじゃない」

 

隼「……あの一撃を受けた感想がそれか。結構本気だったのだがな」

 

鈴音「アレが本気?なら拍子抜けね。アタシまだ実力の半分も出してないわよ?」

 

隼「舐めるなよ、俺の切り札はまだまだ残っている」

 

冷静に言ってはいるが、実際の所かなり驚いている。見た所大したダメージも見当たらないし、何よりあの一撃を食らった筈なのに精神的なダメージを一切負っていない。

 

リアルソリッドビジョンによって実体化したモンスターの攻撃は、モンスターにもよるが少なからず相手に恐怖を与える。鳳はライズ・ファルコンの攻撃をまともに食らった。それでも恐怖を一切抱いていないという事は、こいつは今まで余程の死線を潜り抜けて来たのだろう。

 

鈴音「へえ、それは楽しみね。じゃ、その鳥をさっさと片付けて新しい鳥を見せて貰おうかしら!」

 

隼「残念だがライズ・ファルコン以外貴様に見せる気は無い。貴様はライズ・ファルコンのみで倒す!」

 

鈴音「そう、なら出さざるを得ないくらいボッコボコにしてるわ!」

 

隼「ボッコボコになるのは貴様だ!ライズ・ファルコン!もう一度攻撃だ!」

 

『キーッ!!』

 

俺の命令に従って、ライズ・ファルコンが鳳へと突撃していく。

 

鈴音「悪いけど、そいつの攻撃はもう見切ったわ!」

 

そう言って鳳は右に大きく跳躍しライズ・ファルコンの攻撃を回避、がら空きになった背後に思い切り燃え盛る拳をぶつけた。

 

鈴音「オラァ!『アブソリュート・パワーフォース』!」

 

『キーッ!?』

 

背後からの奇襲によって身体のど真ん中に大穴を開けられ、ライズ・ファルコンは爆散した。

 

鈴音「よっしゃあ!もっかい撃破したわよ!さあ、新しい奴を出しなさい!」

 

隼「……悪いがそれは出来ない。お前はこれで終わりだからな!トラップ発動!『破壊輪』!」

 

そのカードの発動と共に、手榴弾が大量に取り付けられた首輪が鳳目掛けて飛んでいき、鳳の首に装着された。

 

鈴音「……ん?何よコレ?」

 

隼「破壊輪の効果はとてもシンプルだ。相手の場のモンスターを一体破壊し、お互いにその攻撃力分のダメージを与えるというもの。俺は、レッド・デーモンズ・ドラゴンを選択する!」

 

鈴音「……え?ちょっと待ってもしかしてこれ爆だ「吹き飛べぇ!!」ふぎゃあああああぁぁぁぁ!?」

 

破壊輪が爆発し、爆風が俺のライフを削っていく。

 

隼「ぐぅっ!!……3000か、かなり減ったな」

 

鈴音「いったた……アンタ物騒なモノ使い過ぎよ!?こっちは首取れるかと思ったわよ!?」

 

隼「そう言っていられるならまだ大丈夫だろう。というか、貴様まだ倒れんのか」

 

鈴音「この程度で倒れてたらクイーンなんてやってられないわよ!」

 

隼「そうか、どうやら俺は貴様の事を侮っていたようだ。貴様からは俺達と同じ鉄の意志と、鋼の強さを感じる」

 

鈴音「そりゃどうも。アタシも何か楽しくなってきたわ。アンタ位強い奴と戦うのは師匠以来よ!」

 

隼「それは光栄だな。だが勝つのは俺だ!」

 

鈴音「絶対王者に負けは無い!勝つのはアタシよ!」

 

女達への恨みなどもはや関係無い、今の俺にはただ奴に勝ちたいという感情だけがあった。

 

鈴音「さあ、第三ラウンドの始まりよ!」

 

隼「良いだろう、かかって来い鳳鈴音!」

 

そう言って、俺はデュエルディスク構え鳳へと向かっていった。

 

 

 

side真月

 

 

 

真耶「こ、これは……」

 

真月「……何じゃこりゃ」

 

アリーナの惨状は凄まじいものだった。遮断シールドは破壊され、観客席は完膚なきまでに破壊されていた。燃え盛る炎はアリーナのいたるところに燃え広がり、今すぐ消火しなければ外の方にも燃え移ってしまうだろう。

 

真耶「く、黒咲君と鳳さんは!?」

 

真月「あ、あそこです!」

 

慌てて二人を探す山田先生に俺がそう言ってフィールドの方を指差すと、爆発と共に黒咲と鈴が飛び出した。

 

隼「ハハハハハ!此処まで心踊る戦いは久しぶりだ!」

 

鈴音「ええ、本当にね!アンタの切り札、もっとアタシに見せてよ!」

 

真耶「二人共!周りが酷いことになってるのでやめて下さい!?」

 

隼「やれ、ブレイズ・ファルコン!『迅雷の、ラプターズブレイク』!」

 

鈴音「イギリスのビット兵器みたいな奴ね……。そんな物、レッド・デーモンズ・ドラゴンの炎の前では無力よ!『クリムゾン・ヘルフレア』!」

 

鈴の機体から放たれた炎が黒咲のビットを破壊し、爆風がアリーナを更に破壊していく。

 

真耶「駄目です!こっちの声が全然聞こえてません!?」

 

お互いにテンションが上がっているらしく、二人は俺や山田先生がここにいる事さえ気がついていないようだ。

 

真月「山田先生!教師部隊の到着はまだですか!?」

 

真耶「もうすぐです!ただ火事が酷すぎます!このままじゃ黒咲君達を止めてもアリーナが焼け落ちてしまいます!」

 

真月「十分二人を抑えて下さい!そうすれば璃緒さん達が来ます!僕は消火活動をします!山田先生は教師部隊と一緒にあの二人を止めて下さい!」

 

真耶「分かりました!真月君、火傷には気をつけて下さいね!」

 

真月「はい!山田先生も気をつけて下さい!」

 

そう言って黒咲達を止めに行く山田先生と別れ、俺はアリーナの火事を止めるべく消火活動に移った。

 

……はあ、胃が痛くて死にそう。

 

 

 

side隼

 

 

 

隼「やれ、レヴォリューション・ファルコン!『レヴォリューショナル・エアレイド』!」

 

『キーッ!!』

 

レヴォリューション・ファルコンが上空から大量の爆弾を投下し、鳳を攻撃する。

 

鈴音「甘い甘い!『クリムゾン・ヘルフレア』!」

 

それを火炎放射によって全て爆散し、鳳は俺の方に飛び掛かった。

 

鈴音「トドメよ!『アブソリュート・パワーフォース』!」

 

隼「まだだ!トラップ発動!『和睦の使者』!このターン、俺のモンスターは戦闘破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージもゼロになる!」

 

鳳の拳が俺に当たる直前に光の壁に阻まれ静止する。その光景を見て鳳は舌打ちしながら後ろに飛び俺から距離を取った。

 

鈴音「チッ!決まらなかったか!次で決めてやるわよ!」

 

隼「フン、面白い。やってみろ、鳳鈴音!」

 

鈴音「言われなくても!行くわよ、『アブソリュート「止まりなさい!」……ああ?」

 

勝負に水を差された事に苛立ちながら声がした方を見ると、教師共がISを展開して此方に銃を構えていた。

 

「そこの二人、今すぐ戦闘をやめてISを解除しなさい!」

 

「大人しくしないと撃つわよ!」

 

真耶「これ以上やるとアリーナが完全に壊れちゃいます!二人共今すぐ戦闘をやめて下さい!」

 

鈴音「真剣勝負の!」

 

隼「邪魔をするなぁ!」

 

真耶「へ?……きゃあああぁぁ!?」

 

真剣な勝負を邪魔した罪は重い。俺と鳳はひとまず休戦し、勝負の邪魔をした教師共を殲滅する事にした。

 

「ちょっと!教師に暴力振るう気!?」

 

隼「知るか!くたばれ雑魚共!『レヴォリューショナル・エアレイド』!」

 

「きゃああああぁぁぁ!?」

 

真耶「あわわわ!?二人共落ちついて下さい!?」

 

鈴音「せっかくの真剣勝負を邪魔するなんて!覚悟しなさいよアンタ等!『クリムゾン・ヘルフレア』!」

 

真耶「ほわあああぁぁぁぁ!?」

 

明日香「鳳さん落ち着きなさい!……駄目、全く話聞いてない!?」

 

鈴音「トドメよ!クイーンの戦いを邪魔した事、後悔しなさい!『アブソリュート・パワーフォース』!」

 

隼「終わりだ!革命の火に焼かれて散れぇ!『レヴォリューショナル・エアレイド』!」

 

教師共の部隊を半壊させ、残り半数を壊滅させるべく攻撃を加えようとした瞬間、突如発生した冷気がアリーナ全体を凍らせた。

 

鈴音「何よコレ!?」

 

隼「う、動けん……!」

 

璃緒「全く、復帰早々問題を起こすなんて何を考えているのかしら?」

 

鈴音「あ、アンタ確か代表決定戦に出てた……」

 

隼「神代……!これは何の真似だ!」

 

璃緒「何って、復帰早々バカやらかした貴方にお仕置きしてるだけよ。アリーナ崩壊一歩手前までやらかすとか、ありえないんだけど」

 

鈴音「崩壊一歩手前?……うわっ!?何よコレ!?」

 

隼「何……!?」

 

神代に言われて辺りを見渡して初めて、俺はアリーナの大惨事に気が付いた。鳳も今初めて気が付いたらしく、目を丸くして絶句している。

 

璃緒「……呆れた。今まで気付いていなかったの?」

 

鈴音「全然気が付かなかった……。やばい、政府の奴らにめっちゃ叱られる……!」

 

隼「不味い、ユートに殺される……!」

 

明日香「やらかした事の重大さに気が付いたみたいね。さ、二人共ISを解除しなさい。処分は学園長に任せるわ」

 

真耶「えっと……。取り敢えず、二人共学園長室まで付いてきて下さい」

 

鈴音「はい……」

 

隼「……分かった」

 

こうして、俺と鳳の戦いは引き分けに終わった。

 

俺達はアリーナ破壊、教師部隊のISの破壊、その他諸々の処罰として反省文三十枚の提出と一週間の自宅謹慎を命じられた。少し軽いのは零や神代達が色々と取り計らってくれたかららしい。いずれあいつ等には礼を言わねばならないな。

 

処罰を下され、学園長室から出た時鳳に呼び止められた。

 

鈴音「黒咲!また戦いましょうね!」

 

隼「ああ、次は決着をつけよう。それと別に名前で構わないぞ?」

 

鈴音「あらそう?なら隼、次は引き分けになんかしない、アタシが勝つわ!」

 

隼「いや、俺が勝つ!」

 

鈴音「あはは!それじゃ隼、また今度、謹慎解けたらね!」

 

隼「ああ、また今度」

 

そう言って、俺達はお互いの部屋へと戻っていった。

 

 

 

部屋には既に楯無が居た。

 

楯無「お!おかえり黒咲君、色々やらかしたらしいね〜?お姉さんキミをそんな不良に育てた覚えは無いわよ?」

 

隼「フン、貴様に育てられた覚えは無い」

 

楯無「あらら、相変わらずつれないわね黒咲君。せっかく美人のお姉さんが裸エプロンで迎えてるのに何の反応も示さないし」

 

隼「反応しないのは前からなんだから良い加減普通の格好をしろ。貴様の格好は際どくて目の毒だ。それに裸と言いつつ貴様水着下に着てるだろうが」

 

楯無「あら?際どいって事は私のこの格好すこし意識してるのね。全く反応しないからお姉さんてっきり黒咲君は女性に興味無いのかと思ってたわ」

 

隼「そんな訳無いだろう。俺は別に女に興味無い訳ではない、今はそんな物にうつつをぬかしている暇は無いというだけだ」

 

俺だって男だ。あんな格好されたら嫌でも意識してしまう。楯無はもう少し羞恥心という物を持ってもいいと俺は思う。

 

楯無「……それは貴方がレジスタンスの活動をしているから?」

 

隼「……調べたのか。流石日本政府直属の暗部だな」

 

楯無「あら、気付いてたの?」

 

隼「俺達にとって日本政府は敵だ。敵について調べるのは当然の事だ」

 

この女がルームメイトになった後、篠ノ之束に頼んで日本政府にハッキングをした。その時に更識家について知り、以来ずっとこの女を警戒していた。しかしかなり駄目な女だったので拍子抜けしていたが、俺の素性を突き止めるくらいにはこの女は優秀らしい。

 

隼「一つ聞かせろ。俺の正体を知っていながら、何故俺を放置した?日本政府から俺をどうにかしろという命令が来ている筈だろう」

 

楯無「答えは単純、政府が信用出来なかったから。確かに私はキミを殺せという命令を受けていたわ。でもね、何の理由も説明せずにただ殺せっていうのは、どう考えてもおかしいでしょう?私は危ない橋は渡りたくない、だから放置したの」

 

隼「……そんな理由で政府に逆らっているのか?」

 

楯無「裏の世界は信用が命。信用に欠ける仕事は受けないってのが、裏で生きていく人間のルールよ。そういう黒咲君こそ、何で私を放置していたの?キミの性格から考えて、私が政府の手駒って知ったらすぐに攻撃すると思ったんだけど」

 

隼「貴様には利用価値があるからだ。それに学園の人間をカードにするなとユートにキツく言われているからな」

 

楯無「利用価値?」

 

隼「貴様が俺と敵対する気が無いなら、貴様とは手を組む事が出来るかもしれないからな」

 

コイツは政府直属の暗部だ。上手く味方に出来れば政府を内側から探る事が出来る強力なカードを手に入れる事が出来る。

 

楯無「へえ、面白い事を考えるわね。良いわ、キミ達レジスタンスに手を貸してあげる」

 

隼「……随分あっさりと手を組もうとするな」

 

楯無「元々真月君達に手を貸すって契約を真月君と結んでいるのよ。だったら真月君の仲間のキミにも力を貸すのは当たり前よ。ただし!一つだけ条件があるわ」

 

隼「……その条件とは何だ?」

 

楯無「私の家族、簪ちゃんと虚ちゃん、本音に手を出さない事。それだけ守ってくれたら後は何もいらないわ」

 

随分と軽い条件だ。この女は政府を敵に回すというリスクがあるのに、こちらが負うリスクはそれに全く釣り合っていない。

 

隼「……それだけでいいのか?」

 

楯無「ええ、それだけで充分よ」

 

隼「……そうか。感謝する」

 

楯無「感謝はありがたく受け取るわ。……ねえ黒咲君、これを聞くのはどうかと思うんだけど、君の過去について聞かせて貰っても良いかしら?」

 

隼「……悪いが今は話せん。いつか話してやるから今は何も聞かないでくれ」

 

楯無「……分かった。変な事聞いてゴメンね。さあ!お腹も空いてきたし、そろそろ夕食にしましょう。黒咲君は何食べたい?お姉さんが腕によりをかけて作っちゃうわよ?」

 

隼「いや別にいい、お湯を沸かしてくれ。カップ麺で済ませる」

 

楯無「いやいやいや!?それ前も食べてたわよね!?お姉さんの料理そんなに嫌!?」

 

隼「別にそういう訳じゃない。人の作った料理が信用出来ないだけだ」

 

楯無「別に毒なんて盛らないわよ!?」

 

隼「分かっている。これは習慣みたいなものだ」

 

楯無「……その習慣、直した方が良いわよ?」

 

隼「お前の言っている事は正しい。だが俺にとってこの学園は敵地だ。敵地で振舞われる食事を食うのは自殺行為に等しい。だから俺は缶詰やカップ麺を食べる。調理する過程で他人が手を加える事が無いから信用出来る」

 

楯無「……分かったわ。でも栄養バランスが偏るから無理にとは言わないからいつか私の料理を食べて欲しいな」

 

隼「……努力する」

 

楯無「今はそれで充分よ、じゃあお湯を沸かすから、それまでのんびり待っててね」

 

隼「ああ。ありがとうな、楯無」

 

楯無「ふふふ、どういたしまして」

 

そう言って楯無が台所に向かった後、俺はベッドに横たわり、今日の事を思い返していた。

 

隼(学園に戻るのはあまり気が進まなかったが、鳳と出会えたのは良かったな。それに、楯無も頼もしい味方になった。初めは最悪な生活だと思っていたが、ここでの生活も案外悪く無いかもしれないな)

 

楯無「黒咲君、お湯沸いたわよ!」

 

隼「ありがとう、今行く」

 

さて、謹慎処分が解けるまでの一週間、何をして時間を潰そうか。そう考えながら俺はカップ麺の完成を待つのだった。

 

 

 

おまけ 男子達の夜

 

 

 

真月の場合

 

 

 

真月「はあ、胃が超痛え……」

 

簪「零、大丈夫?」

 

真月「何で俺こんなに苦労してるんだろう。俺どっちかっていうと苦労かける側なのに……」

 

簪「今までの分のツケが回って来てるんじゃない?」

 

真月「はあ、もうちょっと真面目に生きてれば良かった……」

 

 

 

秋介の場合

 

 

 

秋介「……『打鉄弐式の開発凍結』、ねえ……。姉さん、これ職権乱用ってレベル軽く越えてるだろ。そりゃあの子も僕殴りたくもなるね。……姉さんがやらかした事で僕が殴られる、ちょっと理不尽過ぎないかな?」

 

 

 

ミザエルの場合

 

 

 

本音「す〜、す〜」

 

ミザエル「寝てるのか。全く、布団ぐらいちゃんと掛けて寝ろ馬鹿者が。……私も丸くなったものだな」

 

 

 

一夏の場合

 

 

 

箒「聞いたか一夏、黒咲と鳳がアリーナで大暴れしたらしい」

 

一夏「マジか、どうなった?」

 

箒「アリーナは半壊、二人は一週間の謹慎処分を下されたらしい」

 

一夏「それはそれは。復帰直後に謹慎なんて、黒咲さんも大変だな」

 

箒「割と自業自得だろう。それより転入初日から問題起こして謹慎食らった鳳の方が心配だ」

 

一夏「まあ鈴なら大丈夫だろ。だって鈴だし」

 

箒「その謎の信頼は一体何なんだ……?」




次回予告

鈴音「青き雫に代わる新しい機体を手に入れる為にアークライトカンパニーにやってきたセシリア。個性的な技術者達が彼女を迎える」
「ミサイルポッド、グォレンダァ!!」
「良い子だね〜、すぐにきれいにしてあげるからね〜」
「ダニエルです」
鈴音「彼らに若干押され気味になるセシリア。そんな時、彼女はある機体に心を奪われる」
次回、インフィニットバリアンズ
ep.27 青き眼の龍
鈴音「零もブルーアイズマウンテン飲む?コクが違うわよ?」
零「おお、確かに美味いな。……って一杯三千円!?」

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