インフィニット・バリアンズ   作:BF・顔芸の真ゲス

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ep.22 クラス代表決定戦決着!青き雫と誇り高き銀河龍!

side真月

 

 

 

自称天才を倒して戻ってきた一夏にまず俺がした事はツッコミだった。

 

真月「テメェは獣か何かか!ちゃんと人の言葉を話せやこのブラコン!」

 

一夏「す、すまない。ハルトへの愛が溢れ出して止まらなくなってしまって……」

 

真月「溢れ出したらああなるのかよ!?カイトでもこうはならねえぞ!?」

 

一夏「そんな事ない。俺なんかカイト兄さんの足元にも及ばないよ」

 

真月「更に進化したのかよあのブラコン!?」

 

頭が痛くなってきた。一夏がこれならそれを上回るカイトは一体どうなっているのか、考えるのも恐ろしい。

 

一夏「それより、次はミザエルさんの試合だよな?相手は秋介なのか?」

 

真月「いや、お前がアイツの唯一の武装を駄目にしたから、アイツはもう試合に出れねえ。アイツが拳一つで戦うとか言い出したら話は別だがな」

 

一夏「いや、それは多分無いな。アイツ勝てない勝負は絶対にやらないから」

 

簪「勝てる試合しかやらないで天才名乗ってるとか、本当性格腐ってるね」

 

真月「いや誰だって勝てる戦いを選ぶだろ?俺だってミザエルとはやりたくないし」

 

簪「へえ、零でも戦いたくない相手が居るんだ?」

 

真月「ミザエルは超絶パワー型だからな、どんだけこっちが罠張ってもお構い無しでブッ潰しに掛かってくる。本当、強い脳筋は厄介だぜ」

 

ミザエルの場合、罠に掛けてもタキオンドラゴンで巻き戻すからたちが悪い。

 

一夏「本当ミザエルさんってバケモノだよな。この前模擬戦した時も何も出来ずに負けたし」

 

簪「ふーん、黒咲君と戦ったらどっちが勝つのかな?」

 

真月「知らん、あいつらが戦ったとこ見た事が無いから知らん。黒咲は基本的に無駄な戦いをしたがらないからな」

 

簪「へえー。さっきの試合を見た感じだと好戦的なタイプに見えたから意外」

 

真月「黒咲はあまり手の内を見せたがらないからな。ピンチにでもならねえとアイツの本当の切り札は見られねえだろうな」

 

簪「え……?さっきの試合結構ノリノリでエースモンスター出してなかった?」

 

真月「あれはまあ黒咲がガチギレしてて冷静さを失っていたからな。でも一応あれの進化形出してないだけマシだな。出してたら間違いなくオルコットは死んでた」

 

簪「絶対防御込みで死に追いやるエースって一体……」

 

かなりドン引きしてるようだが、アイツ何気にまだまだ使ってないエクシーズモンスター居るんだよなぁ。多分ランクアップマジックをバリアン以外で一番使いこなしてると思う。

 

一夏「……ん?なあ零、秋介も出ないならミザエルさんとは誰が戦うんだ?俺達本社組は味方内で戦わないんだろ?」

 

真月「そういやそうだな。ならミザエルは試合無しか?」

 

簪「……!?二人共、アナウンス聞いて!」

 

そう言った簪に従ってアナウンスを聞くと、信じられない事を言っていた。

 

真耶『最終戦、セシリア・オルコットさん対海馬ミザエル君の試合を始めます。選手は出撃準備をして下さい』

 

一夏「マジか、凄いなセシリアさん」

 

真月「いやおかしいだろ!?機体も本人も戦える状態じゃないだろうが!?」

 

慌てて放送室に居る筈の山田先生に連絡を取る。少しの時間が経った後、山田先生が出た。

 

真耶『はい、何か有りましたか真月君?』

 

真月「いや何か有りましたかじゃないですよ山田先生!?オルコットさんは今戦える状態じゃない筈です!それなのに何で彼女が試合に出てるんですか!?」

 

真耶『いやぁ、私も止めたんですよ?でも自分の誇りの為とか言われたら駄目って言えないじゃないですかデュエリストとして』

 

何て理由で許可してんだよこの教師!?いや確かに誇りとか持ち出されたら断りにくいけど!?

 

真月「武装は!?ビットもライフルも使用不可能って聞きましたけど!?」

 

真耶『それは私も言ったんですが、まだ他にも武器が有るらしいんですよ』

 

それは知ってる、でもアイツに残された武器って確かアレだよな!?

 

真月「確かオルコットさんの機体の残された武器って近接型のものじゃ有りませんでしたか!?射撃型のオルコットさんにとってこれは無謀過ぎます!?」

 

真耶『……真月君、確かにこれは無謀な勝負かもしれません。しかし、それでも諦めず、最期まで戦うのがデュエリストってものじゃないですか!』

 

真月「いやオルコットさんはデュエリストじゃ無いでしょ!?」

 

真耶『大丈夫です!今はまだデュエリストではなくても、これから布教すれば良いんです!幸い彼女にはデュエリストとしての素質がありますし、デュエルの魅力を知ればすぐに一人前のデュエリストになれますよ!』

 

真月「いや何言ってるんですか!?」

 

駄目だこの教師、完全にデュエルに思考を乗っ取られてる。そしてこの教師の言葉に納得しかけた自分がいるのが悔しい。

 

真耶『危ないと思ったらすぐに試合を中断しますから問題有りません!さあ、レッツゴーです!』

 

全く聞く耳持たないぞこの教師。何でデュエリストには人の話を聞かない奴が多いんだ。

 

……はあ、胃が痛くなってきた。

 

 

 

sideミザエル

 

 

 

璃緒「あら、これは意外ね。あの状態でも戦おうとするなんて」

 

控え室でアナウンスを聞きながら、メラグはそう言った。

 

オルコットが出るというのには私も驚いたが、嬉しくも思った。黒咲との試合はオルコットに深い傷を残した筈、その傷を背負いながらも試合に出ようとするその精神はとても気高いものだと私は思う。だからこそ、私も全力でこの決闘に臨まなければならない。

 

璃緒「……ミザエル、何か碌でもない事を考えてはいないかしら?」

 

ミザエル「そんな訳が無いだろう、そういう事を考えるのはベクターの役割だ」

 

璃緒「そこはかとなく嫌な予感がするのは気のせいかしら……?まあいいわ、手加減してあげなさいよ?」

 

手加減?巫山戯るな、決闘においてそれは相手への最大の侮辱だ。それをした瞬間、私はタキオンドラゴンを使う資格が無くなる。

 

ミザエル「フン、する訳無いだろう。メラグ、貴様私を馬鹿にしているのか?」

 

璃緒「別に馬鹿になんてしてないわよ。ただ、あの状態で貴方と戦った後のオルコットさんの安否が心配なのよ」

 

ミザエル「あの状態で試合に出るという事は、オルコットも覚悟を決めているという事だ。こちらがそれを気にするのは逆に失礼だろう」

 

璃緒「いやまあそうかもしれないけど……。どうやらこれ以上は言っても無駄みたいね。私はもう何も言わないわ」

 

ミザエル「当たり前だ。人の決闘に口出しするなど、デュエリストとしてやってはならない事だ」

 

璃緒「今からやるのはデュエルじゃ無いわよ……」

 

ミザエル「試合もデュエルと同じだ」

 

璃緒「……一応言っておくけど、ナンバーズは…」

 

ミザエル「行ってくる」

 

璃緒「ちょっ!?ミザエル貴方まさか!?」

 

メラグが何か言い切る前にハッチへと向かった。

 

 

 

真月「おう、来たかミザエル」

 

ハッチには一夏とベクター、そしてベクターの同室の少女がいた。確か簪、だったか?

 

ミザエル「何だ、応援でもしに来たのか?」

 

真月「まさか、わざわざ応援なんてしなくてもテメェは勝つだろ?」

 

ミザエル「まあな、逆に貴様に応援されると気分が悪くなって負けそうだ」

 

真月「はっはっは、ブチ殺すぞテメェ」

 

ミザエル「ほう、やるか?」

 

一夏「二人共落ち着いてくれ!?こんなとこで喧嘩始めないでくれよ!?」

 

真月「一番落ち着きの無いテメェにだけは言われたかねえよこのブラコン二号!」

 

一夏「二号!?一号じゃないのかよ!?」

 

真月「一号は間違い無くテメェの兄貴だよ!あと驚くとこそこかよ!?」

 

目の前で言い合いをするベクターと一夏を見て喧嘩を売ったのが馬鹿らしくなったので、私はさっさと出撃する事にした。

 

ミザエル「海馬ミザエル、出撃するぞ」

 

真月「あ、おい待てやコラ!喧嘩売っといて逃げてんじゃねえぞドラゴン馬鹿!」

 

……ベクターには後で手刀をしよう。

 

 

 

セシリア「……来ましたわね」

 

オルコットの姿は酷いものだった。

 

青き雫は全身が無惨に焼け焦げており、機体の至る所にヒビが入っている。正直に言って動いているのが奇跡だと言えるだろう。更にオルコット自身も中々の深手を負っており、身体は包帯でグルグル巻きになっている。

 

ミザエル「……ああ、その怪我は大丈夫なのか?」

 

セシリア「ええ。ISの絶対防御に救われて、表面の火傷以外は大した事有りませんわ。火傷の方も残るような重症ではありませんでしたし」

 

その言葉に私は安堵した。オルコットがこうなったのは彼女が黒咲の逆鱗に触れる行動を取ったからで彼女の自業自得なのだが、それでも黒咲がやり過ぎたのは事実だ。もしオルコットに傷が残ったりしたら黒咲をどうしてやろうかと思っていたが、傷にならないなら良かった。

 

ミザエル「……そうか。貴様、武器はあるのか?」

 

セシリア「ええ。使い慣れてはいませんが、一応ありますわ。ミザエルさんは黒咲さんと同じようなISなんですか?」

 

ミザエル「いや、私は違う。オルコット、貴様良い目をするようになったな。一週間前とは大違いだ」

 

セシリア「黒咲さんとの試合での敗北は私に恐怖を与えましたが、同時わたくしに自分を見つめ直す機会を与えてくれました。あの試合を通して、自分がいかに愚かだったかを知る事が出来ました」

 

ミザエル「そうか。本当にその状態で戦う気か?その機体、もう限界だろう」

 

セシリア「ええ。もしかしたらこの試合が終わるまで持たないかもしれませんわね。でも、私はこの試合を棄権する気はありませんわ」

 

ミザエル「何故だ?」

 

セシリア「これはわたくしが貴方に挑んだ『決闘』です。決闘を挑んだわたくしが決闘を放棄するという事は、わたくし自身の誇りを汚すという事ですわ。どんな醜態を晒す事になろうとも、わたくしの誇りだけは汚す訳にはいきません。それがわたくしが今ここに立っている理由です」

 

ミザエル「そうか。認めよう、セシリア・オルコット。今の貴様の姿は誰が見ても貴様は誇り高き戦士だ。その姿に敬意を評し、私も全力で貴様と戦う事を誓おう!我が魂、タキオンドラゴンに!!」

 

そう言ってタキオンドラゴンのカードを天に掲げる。

 

真月『おい待てミザエル!?テメェまさかアレを使う気じゃ……!?』

 

ミザエル「悪いなベクター、使わせて貰う」

 

真月『巫山戯んな!?支給されたやつが……』

 

通信を切り、タキオンドラゴンを展開させる。カードから目が眩む程の光が放たれ、私を包み込んでいく。

 

ミザエル「宇宙を貫く雄叫びよ!遥かなる時を遡り、銀河の源より甦れ!顕現せよ、そして我を勝利へと導け!No.107 !『銀河眼の時空龍(ギャラクシーアイズ・タキオンドラゴン)』!!」

 

『ギュオオオオオオォォォォ!!』

 

光が晴れた時、私の身体はタキオンドラゴンに覆われていた。自分が使っていたカードを身に纏うというのは少し違和感を感じるが、これはこれでタキオンドラゴンと一心同体となった感じがして良い。

 

セシリア「ナンバーズ……!それが貴方の専用機なんですね」

 

ミザエル「ああ、我が最強のしもべにして私の魂そのものとも言えるかけがえのない存在だ」

 

セシリア「そうですか、羨ましいですわね。そういう存在がいるのは」

 

ミザエル「貴様にもいずれそう呼べる存在が現れる。これからゆっくり探していけば良い。さあ、始めるぞ!」

 

セシリア「分かりましたわ。インターセプター!」

 

オルコットがそう叫ぶと、オルコットの手に短剣のようなものが出現した。

 

ミザエル「それが貴様の武器か」

 

セシリア「ええ、私が苦手とする武器であり、現在使える唯一の武器ですわ。さあ、いきましょうか!」

 

ミザエル「ならば決闘らしく名乗りをあげるとしよう。最強のドラゴン使い、ミザエル!!」

 

セシリア「それは良いですね。イギリス代表候補生兼オルコット家現当主、セシリア・オルコット!!」

 

真耶『名乗りもあげた事だし両者準備は万端ですね!それでは最終試合を始めます!レディー、ファイトォ!!』

 

ミザエル「はあっ!」

 

開始した瞬間に加速してオルコットに接近、その勢いを利用してオルコットの顔面を狙って殴り飛ばす。

 

セシリア「速っ……!?きゃあっ!?」

 

殴り飛ばされたオルコットはそのまま壁に叩きつけられ、シールドエネルギーの五割が消失する。

 

セシリア「今のスピード……!瞬間加速ですか?」

 

ミザエル「いや、ただの加速だ。単一能力なんかも使ってはいないぞ」

 

セシリア「っ……!それは凄いですね。ただのパンチでシールドエネルギーの五割を消し飛ばすなんて普通のISには到底真似出来ない芸当です。流石ナンバーズ、格が違いますわね。……それでも!」

 

そう言いながらオルコットは加速し、私に向かって斬りかかってきた。

 

セシリア「それでも、わたくしは諦めません!勝利の可能性が1パーセントでも残っている限り!」

 

振り下ろされる刃を受け止めながら、私はオルコットの変化に驚きを隠せなかった。あのような敗北を経験し、挫折せずに前に進もうとするなど、到底出来る事ではない。

 

ミザエル「……そうか。貴様の覚悟は分かった、ならば私もそれに応えるだけだ!」

 

受け止めていた刃をへし折り、がら空きの腹に蹴りを叩き込み、そのままラッシュに持っていく。

 

セシリア「ぐっ……!うぅ……」

 

ミザエル「終わりだぁ!」

 

もう一度腹に蹴りを叩き込み、再度壁に叩きつけた。シールドエネルギーはもう残り一割を切っており、セシリア自身も戦える状態ではない。誰がどう見ても試合終了だ。

 

セシリア「……終わり、ですわね。私も、ティアーズも……」

 

ミザエル「終わりなどではない。この戦いは未来永劫続く貴様の戦いのロード、そのスタートラインに過ぎん。一度の敗北で終わりではない、それは次の勝利への糧となるからだ。『負けて勝て!!』貴様の人生はまだ序章、終幕までの道は果てし無く長いのだから!」

 

かって私を育て、カイト以外で初めて私を倒したドラゴン使いが言っていた事だ。

 

セシリア「負けて勝て、ですか。中々にかっこいい言葉ですわね。ミザエルさん、一つお願いがあります」

 

ミザエル「……何だ?」

 

セシリア「最後は……、貴方の最大級の一撃でトドメを刺して頂けますか?わたくしが全力を尽くしたこの決闘、最後も全力の一撃で幕を下ろしたいのです」

 

オルコットのその願いに応える為、私はタキオンドラゴンのエネルギーをチャージした。

 

ミザエル「……これで終わりだ。セシリア・オルコット、貴様は誇り高く、強き戦士だった」

 

セシリア「勝者である貴方にそう言って頂けるとは、全力で戦った者としてこれに優る栄光はありませんわ。ありがとうございます、ミザエルさん」

 

ミザエル「終幕だ、『戦慄の、タキオンスパイラル!!』」

 

タキオンドラゴンから放たれた光線がオルコットを飲み込み、僅かに残ったシールドエネルギーを消滅させた。

 

光線が消えた後、そこにあったのは意識を失ったオルコットと、主を守り、その役目を終え砕け散った青き雫の姿だった。




次回予告

ユート「試合に敗北し、青き雫を失ったセシリア、そんな彼女に与えられた処罰はやはり軽いものでは無かった。傷心の彼女に、悪魔が忍び寄る」
「セシリア・オルコット、俺達に協力して良からぬ事をする気はねえか?」
ユート「セシリアに語りかけるベクター、そして彼女が下した決断は……」
次回、インフィニットバリアンズ
ep.23 決着、青き雫と闇の誘惑
ユート「零、彼女に笑顔を……(隼へ無言の腹パンをしながら)」
隼「ぐあぁ!?何故俺がこんな目に……!」

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