インフィニット・バリアンズ   作:BF・顔芸の真ゲス

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ep.18 クラス代表決定戦!全てを凍結させる氷の剣

side真月

 

 

 

あれから試合までの数日間、俺は簪にISについて色々と教えて貰った。一応この学園に入学するにあたって大抵の事は頭に入れておいたのだが、流石は日常的にISを扱っている代表候補生、教えて貰える内容のレベルが参考書とは違った。やはり何事においても経験者の話という物は大事なものだ。

 

さて、そんな感じで時は進み、とうとう試合の日がやってきた訳だが、俺から一言言いたい。

 

真月(どうしてコイツら殺気ダダ漏れなんだよ!?)

 

試合前の控え室に、あの金髪ドリルや自称天才以外が集まっているのだが、コイツらの放つ殺気のせいで息苦しい。

 

特に黒咲がヤバい、特に目がヤバい。今のコイツを出したら間違いなく惨劇が起こると確信出来るくらいヤバい。

 

ミザエル「黒咲、殺気を抑えろ。お前があの女と戦うこの日をどれだけ待ち望んだかは大体分かる。だから少し落ち着きを持て」

 

隼「……黙っていろ。今俺はどうやってやつに地獄を見せるかを考えている。話しかけてくるな鬱陶しい」

 

ミザエル「何だと?やるのか、この私と?」

 

隼「良いだろう、真のドラゴン使いだか何だか知らないが、俺の敵ではないという事を教えてやる!」

 

ミザエル「フン!貴様など我がタキオンドラゴンの前では塵芥に等しいという事を知るが良い!」

 

隼・ミザエル『デュエルッ!!』

 

試合前に何やろうとしてんだこの馬鹿共!?

 

何とか二人を止めようと、控え室に居る筈の一夏とメラグを探したが、メラグはトイレにでも行ってるのか姿が見えず、一夏はと言えば……

 

一夏「ハルトォ……、ハア、ハア、ハルトォォ……!」

 

なんか黒咲以上にヤバい目をしながら携帯を眺めていた。……胃が痛え。

 

璃緒「ごめんなさい、少しトイレに行ってたわ。……あら?何この状況?」

 

丁度良いタイミングでメラグが帰って来た。ヤバい、今この瞬間コイツが女神に見える。

 

真月「良い所に来たなメラグ、俺は黒咲を抑えるから、お前はミザエルを抑えてくれ」

 

璃緒「……良く分からないけど、この二人が馬鹿やってるのは理解出来たわ。任せなさい」

 

そうして俺達はデュエルを始めた馬鹿二人を何とか取り押さえる事に成功した。

 

隼「離せ!奴とのデュエルがまだ終わっていない!」

 

真月「そのデュエルをやめろっつってんだよ馬鹿が!」

 

ミザエル「ええい!デュエルを中断させるとは、貴様それでもデュエリストか!」

 

璃緒「試合前に体力消耗しようとする馬鹿に言われたくないわよ。二人共一旦落ち着きなさいな。そろそろ一回戦の組み合わせが出るから。あと一夏、良い加減写真見るのやめなさい、今貴方酷い顔してますわよ」

 

一夏「……ハッ!?いやあ悪い悪い、ハルトが可愛い過ぎてつい夢中になってしまった」

 

こいつ下手したらカイトより重症なんじゃ……?カイトに助けられてからのこいつに一体何が起こったんだ?

 

璃緒「やれやれ、これだからブラコンは……。うちの凌牙もこれくらい私の事を大切に思ってくれたら良いんだけど……」

 

お前もブラコンだろうが。それとナッシュはまごう事無きシスコンだよ。自称天才の抹殺命じられた俺が言うんだから間違い無い。

 

隼「……良いだろう、今は貴様の言葉に従ってやる。だがこれだけは言っておく!あの女、セシリア・オルコットは俺の獲物だ!あの女を仕留めるのは俺の役目、貴様らが仕留める事など許さん!」

 

真月「いや殺す気なのかよ!?頼むからもう少し落ち着きというものを持ってくれよぉ!?」

 

ミザエル「黒咲、私はあの女と決闘をすると約束した。よって貴様に殺させる訳にはいかない」

 

隼「何だと貴様!」

 

ミザエル「やるのか貴様!」

 

璃緒「貴方達、良い加減にしないと……凍らすよ?」

 

メラグのその言葉でピタリと止まる二人、何だろう、涙でそう。

 

璃緒「全く、男の子って何故すぐ喧嘩を始めようとするのかしら……?ほら、試合の組み合わせが出たわよ。……あら、いきなり私の番、しかも二連続」

 

メラグの言葉を聞いて俺達は備え付けのテレビ画面に目を向けた。そこにはメラグとあの金髪ドリル、セシリア・オルコットの写真が出ていた。ちなみに二回戦は自称天才が相手だ。

 

ミザエル「二連続、か。疲労などを考えると頭のおかしい組み合わせだな」

 

一夏「だな。それに見てみろよ、秋介の奴、どの試合も誰かの後だぜ?」

 

隼「つまり、織斑秋介は全てのISを一度見た状態で戦う事が出来ると言う訳だ。フン、何処かの誰かさんの依怙贔屓が露骨に現れているな」

 

璃緒「そうね、まあ機体の調整とかが有るから最初に出られないのは仕方ないだろうけど」

 

真月「まあテメェなら負けないだろ。それと一応忠告しておくが……」

 

璃緒「ナンバーズは使うな、よね?分かってるわ」

 

真月「なら良い。まあ余程の相手でない限りはナンバーズを使わなくてもいけるだろ」

 

璃緒「分かってるわよ、私も下手に騒ぎを起こしたくないから使う気はありませんわ」

 

現在飛び散った百体のナンバーズは世界に適応する為にISの形をとっている。それらはナンバーズ以外の攻撃を受けつけず、通常の機体を遥かに上回る性能を持っている。

 

その為どの国も血眼になってナンバーズを探し回っていて、ナンバーズを回収しているアリト達ともよく衝突するらしい。そんな物を所持していると知ったらどの国も黙ってはいない。どんな手を使ってでも自分の国に引き入れようとするだろう。

 

だから俺は護衛として選んだミザエルとメラグに、ナンバーズとは別の機体を渡し、最悪の場合以外ナンバーズを使わないように言ってある。勿論俺も別の機体を使う予定だ。

 

千冬『神代、そろそろ試合時間だ。ハッチに来い』

 

アナウンスで担任がそう言ってきた。

 

璃緒「あら、もうそんな時間?じゃあ、ささっと勝ってくるわ」

 

ミザエル「フン、油断はするなよ」

 

璃緒「ふふ、分かってるわよ」

 

そう言ってメラグは控え室を出て行った。

 

 

 

side璃緒

 

 

 

ハッチに行ってみると、山田先生がいた。

 

真耶「あ!璃緒さん、待ってましたよ。それじゃあ出撃の準備をするので、ISを展開して下さい」

 

璃緒「はい。……来なさい、『零鳥獣シルフィーネ』!」

 

私がそう言った瞬間、目が眩むような閃光が私の身体を包み込み、光が止んだ時、私はISを身に纏っていた。

 

青を基調とした装甲に氷の翼、かつての私のエースモンスターであったシルフィーネの姿そのもののこのISは、私が無理を言って束さんに作って貰ったものだ。

 

真耶「ほええ、綺麗なISですねぇ……」

 

璃緒「綺麗なだけではないですわよ。それでは山田先生、出撃してもよろしいですか?」

 

真耶「ああ、ハイ。頑張って下さいね!」

 

璃緒「ありがとうございます。では、出撃します!」

 

そうして私はハッチから飛び立ち、オルコットさんの待っているであろうアリーナに出撃した。

 

 

 

セシリア「あら、随分と素敵なISですわね」

 

アリーナに来た時にオルコットさんが最初に口にしたのはそれだった。かつてのエースを褒められるのは悪い気がしない。

 

璃緒「ありがとう、貴女のISも素敵ですわよ。お互い、悔いの残らない試合にしましょう!」

 

セシリア「当然ですわ!さあ、代表候補生の実力を見せて差し上げましょう!」

 

千冬『両者準備は良いな?では、試合開始!』

 

その合図と同時に、私目掛けて光弾が発射された。

 

璃緒「よっと!あら、いきなり攻撃してくるなんて、イギリスのレディは好戦的ですわね」

 

セシリア「それを簡単に躱した貴女も中々のものだと思いますわ!」

 

そう言いながら次々とライフルから光弾を打ち出すオルコットさん。休みなく放たれるその光弾は、一発一発が正確に私の頭に向かって飛んで来ている。

 

少し、オルコットさんの実力を過小評価していた様だ。この正確な射撃は、才能だけで可能になるものではない。血の滲むような努力を必死にしなければ出来ない技術だ。

 

間違いないだろう、オルコットさんは努力の天才だ。

 

璃緒「しまっ……!?」

 

そんな事を考えていたからか、一発の光弾の回避に失敗してしまった。命中した光弾の威力によろめいている隙に、一発、二発と光弾が私に命中していく。

 

セシリア「これで、フィナーレですわ!」

 

機体の損傷によって動きが鈍くなった私に、オルコットさんのトドメの一撃が迫って来る。

 

回避は間に合わない、このままでは私の負けだ。

 

そう、このままであれば。

 

璃緒「アイスエイジ、発動!!」

 

その言葉と共に、シルフィーネの装甲から冷気が溢れだし、私の目の前に氷の壁を作った。

 

光弾は私が作った壁に命中し、壁を粉砕して消滅した。

 

セシリア「なっ……!?」

 

オルコットさんが驚愕の表情を浮かべる。トドメの一撃を防がれた事に驚いているのだろう。

 

アイスエイジ、シルフィーネの単一能力(ワンオフアビリティー)だ。シルフィーネの装甲から冷気を生成し、それを使って様々な行動を行う能力だ。先程のように氷の壁を生成して攻撃を防御したり、氷の塊を弾丸のように打ち出して相手を攻撃する事も出来る。

 

セシリア「氷の壁……、それが貴女のISの力ですか」

 

璃緒「ええ、壁以外も作れますのよ?」

 

セシリア「それは凄いですね。ですが、シールドエネルギーは私の方が上、このまま押し切らせて貰いますわ!」

 

確かにシルフィーネのシールドエネルギーは先程の猛攻によって残り三割を切っている。しかし……

 

璃緒「いいえ、貴女はもう終わりですわ」

 

セシリア「……?何を言って……!?」

 

そこまで言いかけてオルコットさんは固まった。シルフィーネから発せられた冷気が、オルコットさんの機体にまで達し、彼女の機体を凍りつかせているのだ。

 

璃緒「壁に気を取られて気がつかなかった様ですわね。その状態ではもう満足に動けないでしょう。どうです?降参しては頂けないでしょうか?」

 

セシリア「巫山戯ないで下さいまし!たとえ動きを封じられても、わたくしにはまだ切り札がありますわ!」

 

璃緒「ブルーティアーズの事でしたら諦めた方が良いですわよ?そこをまず凍らせましたから」

 

セシリア「……!?知っていましたの?」

 

璃緒「ええ、この一週間、貴女の機体を研究していましたから」

 

オルコットさんの専用機青き雫(ブルーティアーズ)の単一能力は、機体と同じ名前のビット兵器『ブルーティアーズ』の操作だった。

 

ビットはオルコットさんが脳内で直接操作するので、身体が凍っていても私を攻撃出来た。

 

ビットは全部で6機あり、もし私がその全てを凍らせて無かったら、私は負けていたかもしれない。

 

セシリア「……打つ手無し、と言う訳ですか。分かりました、降参です」

 

オルコットさんがそう宣言すると、試合終了のブザーが鳴り、山田先生のアナウンスが聞こえてきた。

 

真耶『オルコットさんは降参しました。よって勝者、神代璃緒さんです!』

 

そのアナウンスと同時に観客席から大きな拍手が送られてきた。

 

真耶『次は璃緒さんと織斑君の試合なので、璃緒さんはエネルギー補給の為に速やかにハッチに戻って下さい!』

 

その言葉を聞いて、私はハッチに戻っていった。

 

 

 

真月「おつかれさん!いやぁ中々に見応えのある良い試合だったぜメラグゥ?」

 

ハッチに戻って早々ベクターがニヤニヤしながらそう言ってきた。

 

璃緒「それ、遠回しに馬鹿にしてないかしら?」

 

真月「いやいや、そんな事ねぇよ。ただ、ささっと勝って来るとか言ってたのは何処のどいつだったかな〜っと思ってるだけだぜぇ?」

 

璃緒「やっぱり馬鹿にしてるんじゃない……」

 

ミザエル「馬鹿にする訳では無いが、私もベクターと大体似た意見だ。油断するな、そう私は出撃前に言った筈だが?」

 

璃緒「……ごめんなさい、少し彼女を舐めていたわ」

 

ミザエル「まあ勝ったのだからこれ以上は言わん。次の試合が近い、次は油断するなよ?」

 

璃緒「ええ、分かったわ」

 

真耶『璃緒さん!エネルギー補給は終わりましたか?そろそろ次の試合を始めますので、準備をお願いします!』

 

璃緒「あらいけない、エネルギー補給がまだだったわ」

 

真月「良かれと思ってさっきミザエルと話してる時に俺がやっといたぜ。感謝するんだなメラグ?」

 

璃緒「ええ、ありがとうベクター」

 

真月「……とっとと行け、油断すんじゃねぇぞ」

 

そう言ってふて腐れた様な顔をするベクター、どうやらまだ人から感謝されるのに慣れていないらしい。

 

璃緒「それじゃあ行ってくるわ!」

 

ミザエル「ああ、勝ってこい」

 

二人の声援を受けて、私は飛び出した。

 

一夏「アア……ハルトォォォ……!」

 

それと、誰か一夏を正気に戻して欲しいのだけど。

 

 

 

秋介「やあ、待ってたよ神代さん」

 

ハッチを出てすぐの私に、織斑秋介はそう言った。

 

璃緒「あら、お待たせして申し訳ありませんわ」

 

秋介「いや、僕は気にしてないから大丈夫さ。それにしてもそのISは綺麗だね、間近で見ると余計にそう思う。美しい神代さんが使っているからかな?」

 

そう言って私を褒めてくるのだが、正直全く嬉しくない。

 

璃緒「あら、嬉しい事を言ってくれるのね」

 

秋介「当然さ、僕は女性に優しくをモットーにしているからね。そうだ、この後僕と一緒に食事でもどうかな?」

 

そう言ってにこやかに私を誘ってきた。普通の女子なら即行OKするのだろうが、ベクターから彼の本性を聞かされている私にとっては寒気がする提案だ。

 

璃緒「嬉しいですが、私は自分より強い殿方の誘いしか受けませんの。私を誘うのならば、まずは自分の力を私に示して頂けませんか?」

 

秋介「良いよ。神童と謳われる僕の実力、見せてあげるよ!」

 

千冬『双方、準備が完了したようだな。では、始め!』

 

秋介「うおおおおぉぉッ!」

 

開始の合図と同時に、織斑秋介が突撃してきた。

 

彼のISである白式は、武装がブレードだけという頭のおかしい機体で、単一能力による一撃必殺が主な戦法となるとても玄人向きな機体だ。

 

璃緒「成る程、流石は天才。もうISを使いこなしているのね」

 

秋介「言っただろう?僕は神童、天才なのさ!はああぁっ!零落白夜ぁ!!」

 

自慢しながらも距離を詰めた織斑秋介がブレード、『雪片弐型』を振り下ろした。彼の単一能力零落白夜は、相手のシールドを無効化し、通常より多くのシールドエネルギーを減少させる強力なものだ。

 

まあ、当てられればの話だが。

 

璃緒「アイスエイジ、発動!」

 

即座に単一能力を使用して冷気を白式にぶつける。その瞬間、白式の装甲が凍りつき、振り下ろされそうになったブレードが私の頭上で止まる。

 

秋介「何っ!?クソッ、動けない!?」

 

凍りついた機体をなんとか動かそうともがく彼の姿を見て、私は彼の武装が本当にブレードしか無い事を確信した。

 

璃緒「無駄です、完全に凍らせてましたから。さあ、打つ手が無いようであれば大人しく降参したらどうですか?」

 

秋介「クソッ!?卑怯だぞ!正々堂々戦え!」

 

璃緒「卑怯?一体どこが卑怯なのか、教えては頂けませんか?」

 

秋介「だってそうだろ!?僕がブレードで勝負を仕掛けたんだ、こんな手を使わず君もブレードで勝負するべきだ!さあ、分かったらこの氷を解除しろ!」

 

……呆れた。まるで駄々をこねる子供だ。

 

璃緒「何を言い出すかと思えばそんな下らない事ですか。これは剣道ではありません。剣以外を使ってはならないというルールは無いのですよ?」

 

秋介「五月蝿い!僕は天才なんだ!普通に戦えば僕が負けるはずが無いんだ!」

 

璃緒「……これ以上何を言っても無駄ですわね。さっさと終わらせましょう」

 

そう言って私はアイスエイジを使い空中に巨大な氷塊を生成、それを砕いて無数の氷の刃を作っていく。

 

秋介「なっ……!?」

 

璃緒「安心しなさい、絶対防御があるから怪我はしないわ。……終わりよ、アイスレイ!」

 

その言葉と共に氷の刃が次々と白式に降り注ぎ、そのシールドエネルギーを削り切った。

 

真耶『白式、シールドエネルギーエンプティ。よって勝者は、神代璃緒さんです!』

 

先程と同じように歓声が上がり、鼓膜を刺激する。

 

璃緒「そこで暫く凍っていなさい。大丈夫、十分もすれば氷は溶けるわ」

 

そう言い残し、私はハッチへと戻った。

 

 

 

 




次回予告

楯無「いやあ璃緒ちゃんのIS凄かったわねえ!お姉さん負けちゃうかもってヒヤヒヤしちゃった!そして次は黒咲君の番、ってどうしてIS展開してないの!?」
「貴様はカードの、M&Wの力で倒す!」
楯無「ちょっとちょっと!?なんでデュエルディスクなんてつけてるの!?なんでそのまま戦うの!?」

次回、インフィニットバリアンズ
ep.19 クラス代表決定戦!雫を狩る反逆の翼
ユート「隼……、殺すなよ……」
楯無「貴方誰!?いきなり物騒な事言わないでよ!?」

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