インフィニット・バリアンズ   作:BF・顔芸の真ゲス

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ep.14 入学初日、面倒な金髪ドリル

side一夏

 

 

 

女子、女子、女子。見える範囲が女子に囲まれた教室で、俺はただ黙々と座っていた。

 

 

 

先日のISコア発表の後、IS学園に入学する事になった俺は、現在周りからの視線に耐えながらホームルームを待っていた。窓際の席にはかつての兄である織斑秋介が、若干ニヤケながら座っている。あまり尊敬出来ない兄だったが、今だけはあいつを羨ましく思えてくる。

 

緊張を紛らわす為に、携帯を開き天使(ハルト)の写真を眺める。やっぱりハルトは可愛い。思わず叫び出しそうになるのを堪え、俺は後ろの方を見た。

 

そこには俺の護衛として零達が居るんだが、俺は護衛の面子について色々と言いたい事が有った。

 

一夏(何で人の話を聞かない脳筋ばっかなんだよ!?)

 

束さんの所に居た時にミザエルさんと黒咲さんとは会って居るのだが、どちらも人の話を聞かずに突進していくタイプだった事を覚えている。一応璃緒さんも居るのだが、あの人も結構パワー型だった気がするので、護衛で頭を使うのは多分零だけだろう。

 

???「はーい!今からホームルームを始めます!」

 

そうこうしていると、先生らしき人が教室に入ってきた。小柄で童顔だが胸がデカイ、神様はこの人に色々与えすぎなんじゃあないだろうか。

 

???「私はこのクラスの副担任を務める、山田真耶です!皆さんよろしくお願いします!」

 

返事は無い、皆俺達男子の方に視線を送っている。誰か返事をしてやれよ、あの先生泣いちゃうだろ。

 

零「よろしくお願いしまーす!」

 

山田先生が涙目になった所で零が挨拶を返した。どうやら、今回零は猫被った状態で護衛をするらしい。

 

真耶「ありがとうございます!それじゃあ早速自己紹介から始めましょう!」

 

山田先生のその言葉から自己紹介が始まった。現在席は後から入る事になった俺達以外は五十音順になってるので、すぐに元兄の番が来た。

 

秋介「織斑秋介です。趣味は読書と機械弄りで、子供の時から剣道をやっています。まだISに関しては素人なので、色々と教えてくれると助かります」

 

非の打ち所の無い完璧な自己紹介にクラス中から黄色い声が上がる。元兄は爽やかに笑っているが、瞳の中にドス黒いものが見えたのを俺は見逃さなかった。

 

その後も何事もなく自己紹介は進み、俺の番がやってきた。

 

一夏「天城一夏です。得意な事は家事全般、苦手な事は特にありません。企業のISのテストパイロットですが、ISを動かしてまだ日が浅いので、皆さんと一緒に頑張っていきたいと思います」

 

何とかいけた。自分で言うのもアレだが完璧だったと思う。そう思っていたら、頭に何か降って来たので、咄嗟に受け止めると、俺の手に出席簿が収まっていた。

 

一夏「……何故に出席簿?」

 

千冬「真面目に自己紹介しろ織斑弟」

 

その声に顔を上げると、元姉が居た。おい束さん、コイツが此処に居るなんて聞いてねぇぞ。

 

一夏「……何ですか織斑千冬さん、俺は大真面目ですが?それと俺は『織斑』じゃなくて『天城』です」

 

千冬「……まあ良い。諸君、私がこのクラスを担当する織斑千冬だ。いいか、このクラスでは私がトップだ、私の命令には『はい』か『イエス』で答えろ。良いな?」

 

何処の独裁者だアンタは。そう思ったのは俺や零達ぐらいしか居なかったらしく、他の人達は猿みたいにキャーキャー騒いでいた。どうやらこのクラスにはM気質の人間が多いらしい。

 

真耶「織斑先生、会議は終わったんですか?」

 

千冬「ああ、ホームルームを任せてしまって済まない。もう自己紹介は終わったのか?」

 

真耶「いえ、アークライトカンパニーの生徒達がまだ残ってます」

 

千冬「そうか、とっとと自己紹介をしろ」

 

お前が中断したんだろうがとツッコミたい所だが、それをするとまた時間がかかるので黙っておこう。

 

璃緒「アークライトカンパニーテストパイロット、神代璃緒です。得意なものはスポーツ全般、苦手なものは猫です。よろしくお願いしますわ」

 

璃緒さんの自己紹介でもキャーキャー騒ぐ人が居た事に驚いた。この学園の生徒百合が多いのか?あと元兄、璃緒さんみてだらしない顔をするな、殺されるぞ。

 

ミザエル「海馬ミザエルだ。名字で呼ばれるのは気に入らないからミザエルで良い」

 

それだけ言ってミザエルさんは席に着いた。ちなみにミザエルさんの名字である『海馬』はミザエルさんを拾って育てた人の名字らしい。ミザエルさんはその人の事を話すのがあまり好きでは無いらしく、高笑いが五月蝿い男としか聞いていない。

 

真月「今日から皆さんと共に勉強する事になった真月零です!一生懸命頑張るので、皆さん、よろしくお願いします!」

 

明るい顔をしながら挨拶する零。普段の零に慣れてるからか、今の零が果てしなく気持ち悪い。

 

隼「…………黒咲隼」

 

それだけ言って黒咲さんは席に着いてカードを弄り始めた。これは関係無い話だが、少し前に俺達の会社がM&Wをデュエルモンスターズと言う名前に変えて再販した。相変わらず女性からの風当たりは厳しいが、そこそこ売れているらしい。

 

千冬「おい黒咲、ホームルーム中にカードを弄るとは、良い度胸だな貴様?」

 

黒咲「あと数分もしたらホームルームは終わる。お前の話に興味は無い」

 

直後に振り下ろされた出席簿を軽々受け止めながら黙々とカードを弄る黒咲さん。周りが軽蔑の眼差しを送っていても平然としていられるその精神は本当に凄いと思う。

 

千冬「……チッ!これでホームルームを終わる。次の時間の準備をして置け」

 

そう言って元姉は教室を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

side真月

 

 

 

箒「少し良いか?」

 

ホームルーム終了後、次の時間の準備をしていた俺に、箒はそう話しかけてきた。

 

真月「はい!構いませんよ!」

 

箒「そ、そうか。それではちょっとついてきてくれ」

 

そう言って俺の前を歩いいく箒を追っていくと、校舎の屋上に着いた。

 

箒「久しぶりだな零、今は人が居ないからその気持ち悪い話し方はやめても良いぞ」

 

真月「気持ち悪いとか言うな脳筋侍。それにしても元気そうじゃねぇか箒ィ?胸もまた一段とデカくなったなオイ」

 

箒「流れるようにセクハラ発言をするな。頭をかち割られたいのか?」

 

真月「おお怖い怖い。まあ元気なら良いんだよ」

 

箒「そうか。所で、天城は私達が知る一夏なのか?」

 

真月「おう、正真正銘俺らの友人の一夏だぜ。まあ、色々あって今は天城を名乗ってるけどな」

 

箒「成る程。行方不明と聞いていたから心配していたが、無事なら良かった」

 

真月「お前の所在が分からなくて今まで連絡出来なかったからな、報告が遅れて済まない」

 

箒「気にするな。そろそろ戻るぞ、遅刻したら大変だからな」

 

箒の言葉に従って、俺達は教室に戻った。

 

 

 

教室に戻ると、何やら空気がピリピリしていた。なぜか疑問に思ったので、近くにいた一夏に聞いてみた所、俺が箒に連れられて屋上に行っていた時に、秋介のやつの所にイギリスの代表候補生の金髪ドリルが絡みに行ったらしい。金髪ドリルは秋介に対して見下したような言動をとり、それに腹を立てた秋介が金髪ドリルを挑発したりしてどんどんと空気が悪くなって今に至るとの事だ。

 

正直言ってどっちも悪いのだが、自分の立場を理解していない金髪ドリルの方は問題だと思う。

 

千冬「席に着け!授業を始め……む?何だこの空気は?」

 

結局この空気を何とかする前に織斑千冬が来てしまい、俺達はこの淀んだ空気の中授業をする事になった。

 

千冬「まあ良い。授業を始める前にこのクラスのクラス代表を決めたいと思う。クラス代表、などと聞けば大層な名前だと思うだろうが、要は学級委員だ。自薦他薦は問わん、やりたい奴、やらせたい人がいる奴は挙手しろ」

 

クラス代表、クラスの話し合いの纏め役をしたり、他クラスのクラス代表とISによる試合をしたりする仕事だ。いかにも良い子ちゃんがやりそうな役職ではあるが、どうやらそういう奴はこのクラスの中では少ないらしい。

 

「はい!織斑君が良いと思います!」

 

「私はミザエル君!」

 

「天城君を推薦します!」

 

次々と推薦される男子連中。ふと例の金髪ドリルを見てみると、顔を真っ赤にして震えていた。そんなにキレるくらいなら自薦すれば良いのにと思ったが、よく考えたら自分で自分を推薦するってかなり勇気が要る事に気づいた。

 

一夏「ちょっと待ってくれ!俺はやらないぞ!?」

 

千冬「推薦された者に拒否権は無い。諦めろ天城」

 

一夏「……なら俺は璃緒さんを推薦する!」

 

逃れられないと知った一夏がメラグを道連れにした。候補を増やせば自分がなる確率は減るが、後が怖いぞ一夏。

 

璃緒「あら、じゃあ私は零を推薦しようかしら」

 

真月「えぇ!?僕ですか!?」

 

この野郎、俺を巻き込みやがった!殺意のこもった視線をメラグに送るが、メラグは涼しい顔をしている。

 

「ええ〜真月君?」

 

「別に良いんだけど、ちょっと弱そうだよね」

 

オイ、今俺を馬鹿にした奴一ポイント追加な。

 

真月「じゃ、じゃあ!僕は黒咲君を推薦します!」

 

黒咲「おい!俺を巻き込むな!?」

 

うるせぇ、こうなったらお前も道連れだ。

 

千冬「ふむ、ならばこの六人から決めるとするか。全員それで構わないな?」

 

???「待って下さい!納得いきませんわ!」

 

クラス代表候補を締め切るそのタイミングで金髪ドリルが爆発した。

 

千冬「どうしたセシリア・オルコット、意見があるなら挙手してから言え」

 

その言葉を受け、一度挙手してから金髪ドリル、オルコットは立ち上がった。

 

セシリア「男がクラス代表など恥晒しもいいところです!実力から考えてもわたくしがクラス代表に選ばれるのは当然の事で、ただ珍しいという理由で男をクラス代表に選ぶなんて間違っています!」

 

金髪ドリルの言う事は間違ってはいないのだが、言葉の端々から男性を馬鹿にしているのが分かる為、聞いていてあまり気分の良いものではない。

 

金髪ドリルの話はそれからも続いていき、何故か日本という国に対しての暴言へと変わっていった。オイ、それでいいのか代表候補生。

 

秋介「ハッ!イギリスだって大したお国自慢も無いだろ?不味い食べ物ランキング何年連続優勝だったっけ?」

 

おい自称天才、火に油注ぐんじゃねぇよ馬鹿。

 

セシリア「貴方!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

秋介「先に言ってきたのはそっちだろ?自分がされて嫌な事人にするなって親から教わらなかったのかい?」

 

それをお前が言うか自称天才。

 

セシリア「っ!決闘ですわ!」

 

秋介「良いよ!その方が分かりやすい!」

 

なんか勝手に盛り上がってんだけど、止めろよ担任。

 

千冬「ふむ、ならば一週間後にアリーナを使って候補者全員で試合を行おう。全員それで構わんな?」

 

なんでテメェが乗ってんだよ担任。

 

黒咲「おい待て!そんな下らない事を何故俺がやらなければならない!」

 

千冬「お前も推薦された候補者だろう、無関係ではあるまい」

 

黒咲「巫山戯るな!俺はそもそもクラス代表をやる気が無い!この試合を受ける義理は無い!」

 

セシリア「あら、逃げますの?これだから男はダメなのですわ!」

 

黒咲「……何?」

 

セシリア「まあ、仮に貴方が出たとして、私に勝てるとは思いませんが。そんな下らない紙屑などで遊ぶような低俗な男に、クラス代表など務まる訳が有りませんからね!」

 

あ、死んだなコイツ。

 

黒咲「……訂正しろ」

 

セシリア「……?何か言いましたか?」

 

黒咲「訂正しろと言ったんだ!」

 

そう言うと黒咲は金髪ドリルに詰め寄った。

 

セシリア「あら、何を訂正しろと言うんです?」

 

黒咲「これは…… M&Wは紙屑では無い!俺の、俺達デュエリストの魂だ!!」

 

それを聞いた途端、クラスの女子達は笑いだした。

 

セシリア「あらあら、随分と薄っぺらい魂をお持ちのようですわね!」

 

「カードが魂だって!」

 

「馬鹿みたいだよねー!」

 

セシリア「では望み通り訂正致しましょう!そのような薄っぺらい魂しか持てないゴミで遊ぶような男に、クラス代表など務まる訳が有りませんわ!」

 

黒咲「っ!貴様ぁ!!」

 

金髪ドリルの侮辱に激昂した黒咲はセシリアに対して拳を振り上げ、金髪ドリルを殴り飛ばそうとした。

 

ミザエル「やめろ黒咲!」

 

拳を振り上げた黒咲を制止したのは、先程まで黙って話を聞いていたミザエルだった。

 

黒咲「何故止める!コイツは俺達デュエリストを、カードを侮辱したのだぞ!」

 

ミザエル「だからと言って手を出すな。相手の挑発に乗るのは馬鹿のする事だ」

 

セシリア「あらあら、殴ろうとしてくるとは、やはり男は野蛮ですわね!」

 

ミザエル「そろそろ黙れセシリア・オルコット。自分の立場を理解していない愚か者が」

 

セシリア「……何ですって?」

 

ミザエル「貴様仮にも代表候補生だろう?それが日本人が殆どのこの教室で日本を侮辱するなど、愚かな行いでなくてなんだと言うのだ?」

 

セシリア「そ、それは……」

 

ミザエル「更には企業のテストパイロットを侮辱するような数々の発言。自分の立場を分かった上での発言だと言うのなら尊敬モノだな!」

 

セシリア「何処までもわたくしをコケにして……!貴方にも決闘を申し込みますわ!」

 

ミザエル「元よりそのつもりだ」

 

セシリア「言っておきますがわたくしが勝ったら貴方を小間使い、いいえ奴隷にしますわよ!」

 

ミザエル「随分な物言いだな。奴隷制などとうの昔に廃止されているというのに。それで、ハンデはどうする?」

 

セシリア「……?決闘前からもう命乞いですか?」

 

ミザエル「勘違いしているようだな。『私が貴様にハンデをつけてやる』のだ。さあ、どうする?」

 

ミザエルのその発言を聞いた瞬間、女子達がまた笑いだした。

 

「それ本気で言ってるの?」

 

「男が女より強かったのなんてもう昔の事だよ?」

 

「オルコットさんは代表候補生なんだよ?ミザエル君、悪い事言わないからハンデ貰ったら?」

 

ミザエル「ククク、ハハハハハ!全く滑稽だな!女が男より強い?貴様らこそそれを本気で言ってるのか?」

 

ミザエルの言葉に、先程まで笑っていた女子達は一斉にミザエルを睨みつけた。

 

ミザエル「貴様らが威張ってられるのは、ISと言う鎧を身につけているからだ!ISの無い貴様らの内一体何人が私達に勝てる?それに勘違いしているようだが、『ISに乗れる』女が偉いのではない、『ISを使いこなせる』女が偉いのだ!今の世界には貴様らのようなそこを勘違いして威張り散らす馬鹿が多過ぎる!」

 

ミザエルが話す度に教室の空気がどんどん悪くなっていく。山田先生なんて泡吹いて気絶してるぞ。

 

ミザエル「それに男がISを起動出来ないのはもう過去の話だ。あと数年もすれば男の操縦者なんてざらにいる時代になるだろう。それでも貴様らは女の方が強いと言い張るのか?」

 

クラスの女子の何人かが顔を俯かせている。ミザエルの言葉が真実だと理解したのだろう。

 

ミザエル「さて話を戻そうかセシリア・オルコット。ハンデは要るか?」

 

セシリア「馬鹿にしないで下らないまし。わたくしはイギリスの代表候補生ですわ!ハンデなど要りません!わたくしに対してそのような口を聞いた事を後悔させてあげますわ!」

 

ミザエル「良いだろう!貴様のその思い上がった態度を叩き潰してやる!」

 

 

 

こうして、俺達の学園生活初日は最悪な形で幕を開けた。

 

……どうしてこうなった?

 

 

 

 




次回予告

オービタル『セシリアとの決闘騒ぎに巻き込まれたベクター、彼は安息の地を求めて自室に向かう』
「私は更識簪、よろしく」
オービタル『何故か相方が女性であったベクター、彼に平穏は訪れるのだろうか』
次回、インフィニットバリアンズ
ep.15 水色少女との出会い
オービタル『そうそう、オイラとオボミちゃんの子供が出来たのでアリマス!』
凌牙「それはめでたいな、所でどうやって生まれたんだ!?」

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