インフィニット・バリアンズ   作:BF・顔芸の真ゲス

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EXep.3 悪しき皇子と孤高の隼

sideユート

 

 

 

あの日以来、俺達は奴等から仲間を取り戻す為に俺達と同じ様に奴等に大切な人を奪われた人を集めて奴等に対抗する為の組織『レジスタンス』を結成した。

 

その後は仲間の手がかりを探す為に各地の女性権利団体の所有する施設や非合法な実験を行うISの研究施設を襲撃していった。しかし、攫われた仲間達の居場所は未だに分からなかった。

 

隼「クソッ!此処も外れか!」

 

ユート「その様だな。ユーリと遊矢を回収して早く退却しよう。ユーゴ!二人を探してきてくれ!」

 

ユーゴ「分かった!すぐ戻る!」

 

今日襲撃した施設にも手がかりは無かった。近くに居た仲間に他の仲間の回収を任せて、俺は隼に話し掛けた。

 

ユート「隼、焦る気持ちも分かるが落ち着け。最近お前無茶し過ぎだ」

 

隼「落ち着いてなどいられるか!俺達がこうしている間にも仲間達は、瑠璃は苦しんでいるんだぞ!」

 

ユート「分かっている。だが焦りは失敗に繋がる。今の俺達にとって失敗は命に関わるものだ。瑠璃達を助ける為にも、冷静になるんだ」

 

隼「くっ……!分かった、済まないユート」

 

ユート「気にするな。お前に落ち着きが無いのは今に始まった事じゃない。そろそろユーゴが遊矢達を回収した頃だろう。隠れ家に戻るぞ」

 

隼「ああ、分かった」

 

そうして俺達は隠れ家に帰還した。

 

 

 

ユーゴ「おう!待ってたぞ二人共!」

 

隠れ家にはユーゴ達が先に戻っていた。ユーゴは俺に似た顔をしていて、バイクの運転や機械弄りが得意なので、レジスタンスの装備の点検を担当している。

 

ユーリ「へえ、無事だったんだ」

 

そう言った少年はユーリと言って、彼も俺と似た顔をしている。ユーリはレジスタンスでもかなりの実力者なのだが、その好戦的な性格とある趣味のせいであまり人が寄り付かない。俺もこいつは苦手だ。

 

遊矢「おかえり!ユートも黒咲も、無事で良かったよ!」

 

そう言って俺達に笑いかけたのは遊矢で、変わり者ばかりが集まったレジスタンスの中では比較的まともな部類に入る。エンターテイナーの父親の影響を強く受けたらしく人を笑顔にする事をモットーにしている。

 

しかし、本気で怒った時の様子は凄まじく、レジスタンスの中では遊矢を怒らせてはいけないというルールが遊矢の知らない所で作られている。

 

この三人も俺達と同じ様に女性権利団体によって大切な人を奪われており、その人を助ける為にレジスタンスに加入した。

 

ユート「ああ、ただいま皆。それで、何か手がかりは見つかったか?」

 

ユーリ「その言い方だと、君の方は見つかってないみたいだね」

 

ユーゴ「え!?ユーリ手がかり見つけたのか!?」

 

ユーリ「いや全然。セレナのセの字も無かったよ」

 

ユーゴ「何だよ……。リンのリの字は?」

 

ユーリ「無いよ。こんだけ探しても見つからない事を考えると、攫われた皆はもう死んでるんじゃないの?」

 

遊矢「なっ!?縁起でもない事を言うなよ!?」

 

ユーリ「冗談だよ。本気にしないでよ」

 

ユート「瑠璃達が死んでいる可能性は低いだろう。攫われたのは皆女性だ。恐らく奴等は瑠璃達に利用価値を見出したから攫ったんだ。死なせるくらいなら最初から殺してるさ」

 

ユーリ「君の意見も分からないでも無いけどさぁ、ユート、君ちょっと前向き過ぎない?人体実験とかやるつもりで攫ったかもしれないじゃん」

 

ユート「前向きで何が悪い?瑠璃達を助ける為に俺達は今こうして生きてるんだ。死んでるなんて考えるだけ無駄だろう」

 

ユーゴ「ユートの言う通りだぜ!俺はリンが生きてるって信じてる!お前だってそうだろユーリ?」

 

ユーリ「まあ、あのポンコツ頭は悪いけど体は丈夫だからね。なんだかんだいってしぶとく生きてるでしょ。それより見てよこのカード!いい表情してると思わない?」

 

そう言って一枚のカードを取り出すユーリを見て、俺達は顔を顰めた。そこには、苦悶の表情を浮かべる女が写っていた。

 

俺達がレジスタンスとして活動を始めてから暫く経った頃、ある男が俺達の協力者になった。その男によって、俺達は奴等に対抗する力を手に入れたのだ。その一つが、『人をカードに封印する技術』で、これによって今までよりも安全に活動出来るようになった。しかし、元々の性格なのか、ユーリがこの技術をとても気に入って、カードにした人間をファイルにとじてコレクションするようになった。それで俺達に毎回新しいコレクションを見せて来るのだが、カードに封印された奴は大抵苦悶の表情を浮かべているので見ていてあまり気分が良いものではない。

 

遊矢「ユーリ、頼むから毎回集めたカード見せるのやめてくれないか?精神的にキツイ……」

 

ユーリ「え〜?こんなにいい表情してるのに、どうして皆嫌がるのさ?」

 

ユーゴ「悪趣味極まりないんだよ!?」

 

遊矢「お前絶対Sだろ!?」

 

ユーリ「まあ否定はしないさ。他にも趣味は有るよ」

 

ユート「……嫌な予感がするが、一応聞いておこう。もう一つの趣味とは何だ?」

 

ユーリ「食虫植物の餌やり。餌が必死にもがく姿を見るのが最高に楽しいんだよね」

 

ユーゴ「やっぱ悪趣味じゃねえか!?」

 

ユーリ「失礼だね。皆可愛いよ?」

 

遊矢「食虫植物可愛いって言ってる時点でアウトだよ!お前友達居ないだろ!?」

 

ユーリ「失礼な、二人は居たよ」

 

ユート「二人だけか!?」

 

ユーリ「そう二人、デニスとセレナね」

 

遊矢「素良は!?お前のとこの出身だろ!?」

 

ユーリ「ああ居たねそういえば」

 

ユーゴ「そういうトコだよ!?お前のそういうトコが原因で友達出来ないんだよ!?」

 

隼「静かにしろ!?俺達には遊んでいる暇など無いんだぞ!」

 

遊矢「わ、悪い黒咲。ちょっとはしゃいでた」

 

隼「全く、貴様らには危機感という物が足りん。そんな事ではいつまで経っても「仲間を取り戻す事は出来ない、ってかぁ?」そうだ、分かっているなら……!?」

 

ユーリ「っ!?」

 

ユーゴ「何だ!?」

 

遊矢「敵襲か!?」

 

???「後ろだよう・し・ろ!」

 

ユート「何だと!?」

 

突然の声に驚く俺達に、声の主は楽しそうに声をかけた。

 

俺達が声の方に顔を向けデュエルディスクを構えると、そこには見慣れぬ少年がいた。

 

???「突然の来訪で申し訳ねぇ。俺は真月零、お前らと同じデュエリストさ」

 

真月零と名乗った少年はそう言って右腕に付けたデュエルディスクを俺達に見える様に振ってみせた。

 

ユート「デュエリストだと……?」

 

ユーリ「成る程そうなんだ。ところで一つ聞いておきたい事が有るんだけど良いかな?」

 

真月「ああ、構わないぜ?」

 

ユーリ「ここ、周りにバレないように細心の注意を払って使ってるんだけど、どうしてここが分かったの?」

 

真月「俺には独自の情報網が有るんだよ。それじゃ俺からも一つ聞いて良いか?」

 

ユーリ「……ああ、良いよ」

 

真月「お前らが最近噂の反IS、いや反女尊男卑を掲げてるデュエリスト集団『レジスタンス』で間違い無いか?」

 

ユーリ「……!」

 

真月と言う男の言葉に俺達は驚いた。世間では俺達の事は『反ISを掲げる過激派武装組織』と報道されており、俺達が女尊男卑に反抗している事も、デュエリストである事も報道されていない。だから政府関係者しか知らない筈の事を知っているこの男を警戒するのは当然の事だった。

 

隼「……貴様、政府の関係者か?」

 

真月「違うね、むしろ逆、お前らの同業者さ」

 

ユーゴ「同業者?」

 

首を傾げたユーゴを見てその男はニヤリと笑いながらこう続けた。

 

真月「なあお前ら、俺と組んで良からぬ事をする気は無いか?」

 

ユーリ「君と組む?何でそんな事しなきゃいけないのさ?君と組んだって僕達には何のメリットも無い、ただ胡散臭い奴を仲間に加えるだけでしょ?」

 

遊矢「そもそも、お前の目的は一体何なんだ!?」

 

真月「俺の目的?決まってる。このクソみたいな世界をブッ壊して、正しい姿に戻す事さ!」

 

ユート「世界を……」

 

隼「壊すだと?」

 

真月「そうだ、今の世の中は腐ってる。ISに乗れるってだけで女が威張り散らし、男が蔑ろにされる。生まれて来るガキが男だったら良くて奴隷で悪くてポイ捨て、酷え話だよなあ?生まれて来るガキに罪は無いってのにさあ?」

 

真月の言葉に嘘は無い。今の世界では彼が言った通りの事が平気で行われている。

 

真月「それだけじゃねぇ。政府はISを兵器としてしか見ていねえ。どこの国も自分たちが世界の頂点に立つ為に裏で非合法の実験なんかをバンバンやってやがる。おかしいよなあ?ISは元々宇宙開発の為に作られたのになあ?」

 

そう、今の政府は腐ってる。今日俺達が潰した研究施設もISに関する人体実験を行っていた。

 

真月「どいつもこいつも自分の利益の為だけに動いて、そのせいで涙を流す人の事を見なかった事にしやがる。巫山戯てるよなあ?」

 

そう、巫山戯ている。女性権利団体も、政府も、自分達が得をする為にやりたい放題だ。

 

真月「だからブッ壊すんだよ!この世界を!!女尊男卑とかいうくだらないものが蔓延したこの世界を壊して、世界を、ISを有るべき姿に戻す!それが俺達の目的だ」

 

隼「……成る程。確かにその点では俺とお前の利害は一致する」

 

真月「だろ?だから俺と組「だがな」……あ?」

 

隼「これは俺の、俺達の問題だ!誰の助けも借りん!俺達は俺達の力で奪われた仲間を取り戻す!」

 

ユーゴ「そうだ!リンは俺自身の力で助けだす!」

 

隼とユーゴの言葉を聞いて真月は暫く黙ったあと、大きく溜め息をついた。

 

真月「大した覚悟だな、尊敬するぜ。だがよぉ、お前ら、それで結果出せてるのかぁ?」

 

隼「っ!?」

 

真月「出せてないよなぁ!仲間を取り戻す事は勿論の事、誰が仲間を攫ったかすら分かってないよなぁ!」

 

確かにそうだ。俺達は未だに囚われた仲間達の手がかりを掴めていない。

 

隼「っ、確かにそうだ!だが俺達は必ず取り戻す!取り戻してみせる!」

 

真月「黒咲瑠璃、だったか?」

 

隼「っ!?何故瑠璃の名を知っている!?」

 

真月「他にも色々知ってるぜ?柊柚子、月宮セレナ、鈴城リンの三人の事も、その所在もなあ?」

 

遊矢「何だって!?」

 

ユーゴ「リンの居所を知ってるのか!?」

 

ユーリ「セレナが何処にいるのか知っているのかい!?」

 

真月が言った言葉に俺達は驚愕した。俺達が今まで血眼になって探し回っても見つからなかった情報を、この男は知っていると言ったのだ。

 

真月「そもそも、お前らは根本から間違ってんだよ。いくら女性権利団体の施設襲ったって、そいつらは見つかりはしねぇよ」

 

隼「どういう事だ!?」

 

真月「女性権利団体はあくまで実行犯、お前らの仲間を攫わせた黒幕は別にいるのさ」

 

ユーゴ「勿体ぶらないで教えろ!リンを攫ったのは何処のどいつだ!」

 

真月「良いぜぇ?ジャンジャジャーン!今明かされる衝撃の真実ゥ〜!お前らの大切な仲間を攫ったのは何と!日本政府さ!!」

 

ユート「何……だと!?」

 

遊矢「柚子が、日本政府に!?」

 

ユーリ「どういう事か、説明して貰えるかな?」

 

真月「はあ?仲間でも無い奴らにどうして親切丁寧に説明してやらなきゃいけないんだよ?」

 

ユーリ「なっ!?」

 

ユート「まさかお前っ!?」

 

真月「そうだ!これは取引だ!お前らの大切なお仲間が何故攫われたか、そして今どこに居るのか!これをお前らへの交渉材料とする!」

 

やられた。こいつは初めからこれを狙っていたのだ。俺達に攻撃する暇を与えず、交渉に応じなければいけない状況を作ったのだ。そしてこいつが持っている情報は俺達にとって今何よりも重要なもの、もう俺達はこいつの取引に応じるしかない。

 

真月「俺からの要求は二つ!俺達と協力関係を結ぶ事と、お前らのバックにいる協力者、赤馬零児と話をする場を用意する事だ!」

 

遊矢「零児の事まで知ってるのか!?」

 

真月「言っただろ!俺には独自の情報網が有るってな!さあ!どうするレジスタンス!」

 

隼「……お前が持つ情報の信憑性は?」

 

真月「かの天才篠ノ之束が国の中枢にハッキングをかけて手に入れた情報だ。信頼出来るぜ?」

 

隼「……そうか。ならば!」

 

そう言ってデュエルディスクを構える隼。それに続き、遊矢とユーリもデュエルディスクを構えた。

 

ユート「おい!何をしているんだお前ら!?」

 

隼「この男の取引など応じる必要は無い!力尽くで聞き出す!」

 

ユーリ「そう言う事さ。さあ、大人しく情報を渡せば痛い目に遭わなくて済むよ?」

 

遊矢「お前達の都合なんてどうでもいい!柚子はどこに居る!……答えろォ!!」

 

ユーゴ「ちょっ!?待てよお前ら!?こんなトコで暴れんなよ!?」

 

俺とユーゴが必死に制止するが、三人共先程の話で冷静さを失っているらしく、話を聞いてくれない。

 

真月「……はあ、人がせっかく穏便に済ませようとしてやったのに……。おい、突入して良いぞ」

 

真月が溜め息をつきながら誰かにそう言ったのと同時に、俺達が居た部屋の天井を突き破って何かが入ってきた。

 

ユーゴ「うおっ!?何だ何だ!?」

 

ユート「ISだと!?」

 

???「はいはい、大人しくしろよクソガキ共。俺がその気になればそこのクライアントごとお前らを蜂の巣に出来るんだからな〜」

 

隼「その声……オータムか!?」

 

オータム「おう!久しぶりだなレジスタンスのクソガキ!二ヶ月前の研究所以来か?」

 

突如現れたISのパイロット、オータムは俺達と同じように各地のIS施設を襲撃しているテロ組織亡国企業(ファントムタスク)のメンバーで、その仕事上俺達と鉢合わせる事が多く、会うたび殺し合い、時に協力したりする。

 

隼「貴様が居るという事は、その男は亡国企業のメンバーか!」

 

オータム「いや、まあそう考えるのが普通だけどさ、俺もう亡国企業抜けたんだよね」

 

ユーリ「抜けた?それはまた何で?」

 

オータム「いや、その、抜けたというより、抜けさせられたと言う方が正しいと言うか……」

 

ユーゴ「まどろっこしい!とっとと教えやがれ!」

 

オータム「……亡国企業、壊滅させられたんだよね、コイツ一人に」

 

隼「何だと!?」

 

オータム「だからな、現在俺と他数名のメンバーはコイツに雇われた下っ端と言う扱いで……」

 

真月「つまり、俺達はISをいくつか所持しているって事さ。勿論、俺達に協力してくれればお前らにもISを用意してやる」

 

遊矢「ちょっと待ってくれ!ISなんて貰っても男の俺達じゃ使えない!」

 

真月「俺達は篠ノ之束の協力によって、男性にも反応するISコアの開発に成功してる。その問題は解決済みだ」

 

ユーゴ「今さらっと凄い事言わなかったか!?」

 

真月「俺達はこのISコアの量産化を目指している。それが成功すれば、この女尊男卑の風潮を木っ端微塵に粉砕出来る。そしてそれが成功した暁には、お前達の仲間を取り戻す為に全力を尽くそう」

 

ユーリ「すぐには教えないって事?」

 

真月「さっきまでのやり取りから考えて、お前ら教えた途端に契約破棄してどっか行くだろ。安心しろ、お前達の仲間が危機に瀕したなら、真っ先にお前達に知らせて援護する」

 

隼「……本当だな?」

 

真月「当然だ。仲間にする奴を騙す気なんざねぇよ」

 

隼「……そうか。分かった、貴様の提案に乗る。取引に応じよう」

 

遊矢「良いのか!?」

 

隼「ISを連れてきてる時点で、コイツは断らせる気はない。ならば従うしかないだろう」

 

真月「話が分かる奴で助かったぜ。安心しな、お前らの待遇は保証する」

 

そうして、真月が手を差し出してきた。隼はそれを見て数秒迷った後握手に応じた。

 

真月「契約成立だ。今日から俺達は仲間ってわけだ。さあ、一緒に世界を巻き込んだ良からぬ事を始めようじゃねェか!」

 

 

 

この日、俺達の反逆は、胡散臭い仲間が増えた事により一歩前進した。

 

 

 

 




次回予告

ハルト「見事レジスタンスを仲間に引き入れる事に成功したベクター。そんな彼の下にさらなる面倒事が舞い込んでくる」
「世界初の男性操縦者、織斑秋介君が発見されました!」
ハルト「そのニュースをきっかけに大きく動く世界。それを機にベクター達も世界改革を進める為大きく動く」
次回、インフィニットバリアンズ
ep.13 IS学園入学

カイト「ハルト可愛いよハルトオオォォォォォォ!!」
一夏「一人で予告が出来て偉いねハルトオォォォォォォ!!」
ハルト「……騒がしい兄さん達マジで死ね……」

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