インフィニット・バリアンズ   作:BF・顔芸の真ゲス

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ep.12 世界改革の一歩

side真月

 

 

 

ミザエル「世界を……」

 

ドルベ「……変える?」

 

束「オーウイェス!束さんは君達と協力して世界を変えるんだ!」

 

束が満面の笑みでそう答える。確かに今の世界は変えた方が良いとは俺も思う。だが……

 

ミザエル「巫山戯るな!元はといえば貴様が開発したISがもたらした変化だろうが!それを変えたいから私達に力を貸せ?冗談はその珍妙な格好だけにしろ!」

 

そう言って掴みかかろうとするミザエルを俺とギラグ、アリトの三人がかりでなんとか抑えつける。

 

ドルベ「やめろミザエル。……篠ノ之束、仮に私達が貴様の言う世界の改革に乗ったとして、他に誰が貴様の味方になると言うのだ?まさか貴様と我等の八人でやるとは言うまい?」

 

ミザエルの反応は間違ってはいない。あの時の束の状況や白騎士事件の裏側を知る人物で無ければ皆がミザエルの様に怒るだろう。男はISによって低い立場に追いやられた。きっとミザエルもそういったトラブルに巻き込まれた事が有るのだろう。

 

だから男は篠ノ之束を許さない、協力などしない。

 

逆に女はISによって頂点に君臨したと思ってる馬鹿共が圧倒的に多い。束の言う改革は恐らくその馬鹿共の地位を脅かすだろう。

 

だから女も束に協力しない。よって束の味方につく奴などゼロに近いだろう。

 

だからこそ、事情を知っている俺が上手く動いて、せめてこいつらだけでも束の味方になってくれるようにしなければならない。最悪土下座してでもこいつらを説得しなければ。

 

束「分かってる。この世界を歪めたのは私だって事も、私の言葉を聞いてくれる人がゼロに等しい事も。だからこそ、私はこの世界を変えなきゃいけない。私には、その義務が有る。……だから!」

 

そう言って束は人参から降りて、地面に頭をつけて土下座の体勢を取った。

 

束「お願い!私に力を貸して!私の所為で傷ついた人達を救う為に、これから生まれてくる命の為に!」

 

そう言って俺達に必死に頼み続ける束の横に立ち、俺もミザエル達に向けて土下座の体勢を取った。

 

真月「俺からも頼む!束の話を聞いてやってくれ!束だって望んでこんな世界を作った訳じゃない!束自身激しく後悔してた!涙を流して悲しんでたんだ!だから、こいつに力を貸してやってくれ!!」

 

ミザエル「何!?」

 

璃緒「驚いたわ……!」

 

アリト「ベクターが……」

 

ギラグ「土下座した……!?」

 

ドルベ「ベクター……君は……!」

 

俺と束が土下座していると、ナッシュが俺達の方に近づいて来た。

 

凌牙「二人共頭を上げろよみっともない。俺は元々お前の話に乗ったから皆を呼んだんだぜ?」

 

ミザエル「しかしナッシュ!この女の改革とやらをやるならば我々だけでは足りない!」

 

凌牙「なら俺達で探せば良いだろ。アテはあるしな」

 

ドルベ「ナッシュがそう言うならば私は賛成だ!」

 

ミザエル「貴様は黙っていろドルベ!確かに私の方も協力者のアテが無い訳ではない!だが私達はまだこの女がどうやって世界を変えるのか聞いていない!世界に戦争を仕掛けるなどと言ったらどうする!」

 

凌牙「まあ確かにお前の言い分も分かる。だがミザエル、お前も今のこの世界は不味いと思っている筈だ。こいつが居なければ七皇がこうして揃う事も無かっただろう。これも何かの縁だと思って協力しないか?」

 

ミザエル「……チッ!まず方法を教えろ。話はそれからだ」

 

束「ありがとう。まずは女尊男卑を無くす」

 

ミザエル「当然だ。その方法は?」

 

束「男性にも反応するISコアの開発と量産。開発の方はもう成功してるから、後は量産出来る様に改良していくだけだよ」

 

ドルベ「待て、もう開発出来ているのか!?」

 

束「うん。まあ、私一人じゃ多分出来なかったけどね」

 

ギラグ「凄えな、流石は天才だ」

 

アリト「なあ、女尊男卑って何だ?とゆーかISって何なんだ?」

 

アリトがそう言った途端、アリト以外の全員がズッコケた。もちろん俺もだ。

 

ミザエル「貴様は一体何処の山奥で暮らしてたんだ!?」

 

アリト「さあ?気がついた時には山にいて、それからはずっと修行してたからな、世界情勢とか全く分からん。ギラグと合流したのもつい最近だしな」

 

璃緒「まるで現代にタイムスリップした原始人ですわね。……ギラグ、説明をお願いするわ」

 

ギラグ「おう。じゃ話は聞いといてくれ」

 

璃緒「ええ、分かったわ」

 

ミザエル「……話を戻すが、先程貴様は一人では無理だったと言っていたな?協力者が居たのか?」

 

束「うん。君達バリアンと同じ世界から来た人で、『天城カイト』と『クリストファー・アークライト』って人だよ」

 

ミザエル「カイトだと!?カイトがこの世界に来ているのか!?」

 

真月「Ⅴの奴も居るのかよ……」

 

カイトの名前を聞いた途端に嬉しそうな顔をするミザエルを見て一瞬笑いそうになったが、次に聞いた名前に少し驚いた。まさかアイツが働くなんて思わなかった。

 

束「ああ、カイト君とも知り合いだったんだ。それで、話は少し変わるんだけど、二人に会った事で君達がこっちに来た理由が分かったんだ」

 

ドルベ「何だと!?」

 

真月「へえ……」

 

束「まず、ヌメロンコードを巡る戦いの結末について説明するよ。れーくんが消えた後、完全体に近づいたドン・サウザンドはミザちゃんと戦ったの」

 

真月「ああ、お前月から帰ってたの?」

 

ミザエル「……何故私が月に行った事を知っている?」

 

真月「そりゃお前がⅢとⅤとデュエルしてたの見てたからな。ドヤ顔で七皇の剣(ザ・セブンスワン)使ったは良いけどネオタキオン出せなかった時のお前の顔は傑作だったぜ(笑)」

 

ミザエル「貴様……!九十九遊馬を追いもせず何をしている!!」

 

ドルベ「落ち着けミザエル!あの時の君の顔は私も笑いそうになった!ベクターに限った話ではない!」

 

ミザエル「何のフォローにもなってないからなドルベ!」

 

束「……話を戻していい?ドン・サウザンドと戦ったミザエルは自分を道連れにドン・サウザンドを倒そうとしたんだけど、カードを書き換えられて負けちゃったの」

 

ミザエル「カードを書き換えていたのか!?」

 

ドルベ「何!?カードの書き換えはルール違反では無いのか!?」

 

真月「ひっでえなそれ。何処の遊馬君だよ」

 

束「その後、九十九遊馬君が凌ちんと協力してドン・サウザンドと戦うんだけど、圧倒的な力によってどんどんと追い込まれていくの」

 

璃緒「あら?遊馬は敵だって言ってたのに、結局協力したの凌牙?」

 

凌牙「仕方ねえだろ!?状況が状況だったんだから!」

 

束「あのさぁ、一々話の腰を折るのやめてくれないかな?……それで、絶対絶命の二人を救ったのは、ミザちゃんが渡していた、『No.100 ヌメロンドラゴン』に宿っていたカイトの魂だったんだ。二人はヌメロンドラゴンを使い、ドン・サウザンドと戦ったんだ」

 

ミザエル「私のファインプレーだな!」

 

真月「そこは認めてやるからそのドヤ顔やめろ!」

 

束「……もういいや。最後は遊馬君、凌ちん、カイトの三人の力を合わせての攻撃力20万越えのホープでドン・サウザンドを倒したんだ」

 

真月「おい待てぇ!?何だよ20万越えのホープって!?何したらそんな事になるんだよ!?」

 

束「そこは問題じゃないでしょ。それでね、この話には続きがあって、凌ちん対遊馬君のヌメロンコードを巡るラストバトルがスタートするんだ!」

 

ドルベ「何!?ドン・サウザンドを倒したのならばハッピーエンドではないのか!?」

 

真月「もう黙ってろよドルベェ!?」

 

話の合間にミザエル達が騒ぐから話が一向に進まねえ。後さっきからドルベの後ろに変なポーズ取った奴が見えるのは俺の気のせいだろうか?

 

束「……二人の戦いは激しさを増していったの。凌ちんは七皇のNo.の集合体である『冀望皇バリアン』、遊馬君はホープの最終進化形態である『ビヨンド・ザ・ホープ』を出してぶつかり合った。そして最後は遊馬君が凌ちんを倒す事でヌメロンコードを巡る戦いは終結したの」

 

真月「へえ、遊馬が勝ったのか。まあ当然だな遊馬だし」

 

璃緒「そうね、遊馬だもの」

 

アリト・ギラグ『遊馬なら仕方ない』

 

凌牙「テメェら人が負けた事ネタにしてそんなに楽しいか!?」

 

ドルベ「気にするなナッシュ!九十九遊馬なら負けても仕方ない!ナッシュは頑張った!」

 

凌牙「テメェは馬鹿にしてんのか慰めてんのか分からないんだよドルベェ!」

 

ミザエル「貴様ら静かにしろォ!?」

 

束「全員五月蝿いわ!?」

 

遂に束がブチ切れた。逆によく此処まで怒らずにいられたなコイツ。

 

束「はあ〜、もう勘弁してよ。後少しで終わるからさ。見事ヌメロンコードを手に入れた遊馬とアストラルは、戦いによって消滅した人々を復活させたの。君達バリアンも人間として復活させたんだけど少しトラブルが有ってね」

 

真月「成る程な。人間になったからバリアン体になれなかったのか。それで?トラブルって何だ?」

 

束「ヌメロンコードが暴走したの。そのせいでれーくん達バリアンはこの世界で復活し、更にNo.がこの世界に流れ込んだの」

 

真月「それで束の中にNo.が有るのか、納得した」

 

ミザエル「暴走の原因は分かっているのか?」

 

束「ドン・サウザンドの力の一部がヌメロンコードの中に紛れ込んでたのが原因だろうってアストラルは言ってたらしいよ」

 

真月「ドン・サウザンドの最期の嫌がらせって訳か。何処までも人に迷惑かけるなアイツ」

 

ミザエル「貴様がそれを言うか。所で、カイトとⅤはどうやってこの世界にやって来たのだ?」

 

束「クリスが開発していた、『次元転送装置』を使ったらしいよ。あの人達は私の遥か先を行く天才達だね」

 

確かにあの二人の技術力は大分おかしい。そして二人がこの世界に来た目的も見えて来た。恐らく俺達七皇の捜索と、飛び散ったNo.の回収。その過程で束と出会ったのだろう。

 

ミザエル「成る程な。大体分かった。貴様の信念が本物である事も、七皇以外の協力者が居る事もな。それで、その後、女尊男卑を無くした後、貴様はどうやって世界を変えるつもりだ?」

 

束「ISの兵器としての理由を一切禁止して、宇宙開発にしか使えないようにする」

 

ミザエル「具体的な案は?」

 

束「まだ決まって無い。まずは女尊男卑を消滅させる事を目的として行動する。その後の事はその時考える」

 

ミザエル「そうか……。良いだろう、その話乗った!私は貴様の改革とやらに協力してやる!他の面々もそれで構わないか?」

 

アリト「いやそもそもお前しか反対してないし」

 

璃緒「凌牙が賛成してるのだから、臣下の私達が従わない訳無いでしょう?」

 

真月「俺は元々束の味方する気だったからな。テメェが勝手に一人で盛り上がってただけだぞ?」

 

ミザエル「貴様ら私をからかって楽しいか!?」

 

真月「うん、とっても」

 

ミザエル「ベェクタアァァァ!!」

 

凌牙「テメェら少し落ち着けぇ!?」

 

束「……取り敢えず、手伝ってくれるのは分かった。ありがとうね。それじゃあ、今から君達を私のラボに連れて行くね!」

 

真月「あ、束ちょっとタンマ」

 

束「……?どったのれーくん?」

 

真月「俺は皆とは別行動な」

 

『……はあああぁぁぁ!?』

 

俺の発言で倉庫内はまた騒がしくなった。

 

ドルベ「何を言っているんだベクター!?」

 

ミザエル「貴様一体何を考えている!?」

 

真月「仲間探し。俺はなんのアテも無いからな」

 

アリト「それなら俺達と一緒にやれば良いだろ!?」

 

真月「俺が団体行動苦手なの知ってるだろ?俺は裏で一人コソコソ良からぬ事をやる方が得意なんだよ」

 

璃緒「余計貴方を一人に出来ませんわ!?」

 

真月「安心しろ。テメェらに害を与える気は無いっつの。お前達が表で活躍して、俺が裏からお前達をサポートする。完璧だろ?」

 

ミザエル「後ろから貴様に背中刺される未来しか見えないのだが!?」

 

失礼な事を言われたが無視する。これは束の話を聞いた時から考えていた事だ。確かにこいつらは強い、大抵の奴らは楽勝だろう。だがこいつらは揃いも揃って正々堂々が好きな甘ちゃんだ。見えない所に潜む悪意に気づけない。そう、俺の裏切りにも気づけないくらいに。

 

だからこそ俺が裏からこいつらを助ける。俺は他の奴らと違って性根が腐っている。だからこそ人の悪意に対抗できる。ベクター()にしか出来ない事も有るのだ。

 

真月「と言う訳で、俺裏方な〜!」

 

ミザエル「待てベクター!話はまだ……」

 

凌牙「分かった。頼りにしているぞベクター」

 

ミザエル「ナッシュ!?コイツを野放しにして良いのか!?」

 

凌牙「今のコイツは味方だ。味方を信用しない奴が何処に居る?」

 

真月「此処に居ますが何か?」

 

凌牙「黙ってろ。とにかく、コイツのやる事に俺は文句は言わない。だからお前もコイツの事を信頼してやれ」

 

ミザエル「……分かった。ベクター!ナッシュがこう言う以上、私からはもうとやかく言わないが、仮に私達を裏切った場合、タキオンドラゴンの餌食になって貰う!」

 

真月「おお、怖い怖い」

 

束「れーくん、これを渡しておくね」

 

そう言って束は俺にある物を渡してきた。それは俺にとって、とても懐かしい物だった。

 

真月「俺の……Dパッド」

 

束「れーくんが使ってたのと全く同じ物を用意したんだ。ラボの場所も登録してあるから、いつでも寄って来てね」

 

真月「ありがとな、束」

 

束「どういたしまして!あとれーくん、ちょっとNo.貸してくれないかな?」

 

そう言って手を出してくる束にNo.を渡すと、束はポケットをゴソゴソと探ってISのコアを取り出した。おい、お前ポケットに何てもの入れてんだ。

 

束「これをこうして〜」

 

取り出したISのコアを弄った後、束はそのコアにNo.を突っ込んだ。

 

真月「お前何を……!?」

 

No.を取り込んだコアは暫く沈黙していたが、やがて光に包まれて消滅し、そこには取り込まれていたNo.だけが残された。

 

真月「何をしたんだ?」

 

束「No.の改良。これでシャイニングはISとして展開出来るようになったよ」

 

真月「どういう原理だよそれ……」

 

束「よく分からないけど、M&Wが衰退した結果No.が使われなくなったから、No.が使われようとして世界に適合しようとした結果だと私は考えてるよ」

 

真月「相変わらず無茶苦茶だなNo.……」

 

束「れーくん、絶対に無茶しないでね。れーくんが死んじゃったら、悲しむ人が沢山居るんだから。私も、いっくんもその一人だよ」

 

真月「沢山は居ねえよ。あとやっぱ一夏生きてたんだな」

 

束「あれ?反応薄いね」

 

真月「あいつを凄い可愛がってたお前が、あいつを見殺しにする訳無いからな」

 

束「なーる程。流石れーくん賢い。カイトに頼んで助けて貰ってたんだ〜」

 

アイツか、今度礼をしなければ。

 

真月「んじゃ俺そろそろ行くから、皆頑張れよ〜!」

 

ミザエル「貴様もな」

 

ドルベ「怪我に気を付けろよベクター!」

 

アリト「たまには顔だせよ〜!」

 

ギラグ「さなぎちゃんのライブチケットとか手に入ったら俺にくれよ!」

 

璃緒「まあ、頑張りなさいな」

 

凌牙「……行ってこい」

 

真月「おう!またな!」

 

そうして、俺は倉庫を後にした。

 

 

 

 

 

この日、俺達は世界改革の第一歩を踏み出した。




次回予告

ユート「あの日以来、全てを奪われた俺達は仲間を取り戻す為にレジスタンスとして奴らと戦っていた」
「なあ、俺と組んで良からぬ事をする気はないか?」
ユート「そう言って俺達に声を掛けてきた謎の少年。この少年との出会いが俺達の運命を大きく変えていく」
次回、インフィニットバリアンズ
EXep.3 悪しき皇子と孤高の隼
隼「瑠璃ィィィィィィ!!」
ユート「五月蝿い!!」

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