インフィニット・バリアンズ   作:BF・顔芸の真ゲス

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ep.8 第2回モンド・グロッソ

side真月

 

 

 

『ー次のニュースです。イギリスがBT兵器搭載型第三世代機の開発に成功したと、国際IS委員会に発表しました。この機体はー』

 

 

 

真月「なあ弾、BT兵器って何だ?」

 

弾「ビットっていう小型のメカ飛ばして攻撃するやつだよ。俺達に馴染みのある言い方するならファン○ル」

 

真月「ああ、アレか。しっかしそんなモンまで出来るなんて、世界は変わったなぁ」

 

弾「八割方ダメな方にだけどな」

 

厳「テメェら駄弁ってないで働けやぁ!!」

 

真月&弾『うぇーい』

 

 

 

ISによって世界が変化してから数年経った現在、俺は定食屋で働いていた。

 

 

 

こうなった原因は俺が路地裏に逆戻りした日に遡る。

 

路地裏に捨てられた俺は、最初と同じ一文無しだった。何とか食料を確保しようと色々やったのだが見事に失敗し、挙げ句の果てに通りかかった女尊男卑主義の女どもに袋叩きに遭う始末。そんなズタボロの俺を見かねて声をかけて来たのが今俺が世話になってる定食屋の店主である厳さんだった。

 

厳さんは帰る家の無い俺を店に連れて行き、俺の面倒を見てくれると言ってきた。当然他にアテの無い俺は厳さんの提案を受け入れ、その日から俺は『五反田家』の一員になったのだが・・・。

 

残念ながらタダでは無かった。俺は厳さんのやっている定食屋に住み込みのバイトとして雇われる事になり、毎日店の手伝いをやることになった。

 

別に今の待遇に不満を感じている訳では無い。あのまま野垂死にコース確定だった俺を救ってくれた恩人だし、バイトなので給料も出る。何よりも衣食住が保証された生活を送れるのが一番有難い。だが、面倒を見てくれると言っておいて働かせるのは酷くないか?俺はてっきりタダで面倒見てくれると思っていたんだぞ?

 

厳「ぼーっとしてるんじゃねぇ!」

 

真月「ぐはあぁ!?」

 

昔の事を思い出してたら厳さんに拳骨ブチかまされた。

 

真月「いってえなこの糞ジジイ!こぶができたらどうするつもりだ!」

 

厳「調理中にボケっとしてるからだろうが!客に出すもん作ってる時に考え事してんじゃねぇ!」

 

真月「第一何で俺が飯作ってるんだよ!客に出すもんガキに作らせんなよ!」

 

厳「人手が足りねぇんだよ!弾はまだ半人前だし、蘭はまだ小さいから必然的にお前しか作れねぇんだよ!」

 

真月「小さいとかいってるけど蘭は弾のいっこ下じゃねぇか!十分やれるだろ!」

 

厳「小学生働かせる定食屋が有るか!」

 

真月「学校通って無いけど俺一応中学生だぞジジイ!大して変わらねぇだろうが!」

 

厳「うるせぇ!つべこべ言わずに働けぇ!」

 

真月「横暴だ!」

 

弾「・・・あれ?零のやつさりげなく一人前って認められてね?」

 

こんな感じで、俺達は毎日を騒がしく過ごしていた。

 

 

 

真月「あーやっと休憩だよ全く、人使い荒すぎだろあのジジイ」

 

弾「お疲れさん。まあそんだけじいちゃんもお前の事認めてるって事だからさ、そうカッカするなよ」

 

休憩時間、そう言って俺に話しかけてきたのは厳さんの孫の弾だ。こいつは何というか残念な奴で、中学の美女に告白してはフラれ、その事を家に帰ってから俺に延々と愚痴ってくるのだ。顏は整ってる方で、俺自身何でこいつがモテないのか疑問に思っている。

 

鈴「そうそう、厳さんに認められるなんて凄い事なんだから、もうちょいシャキッとしなさいよ」

 

こいつは弾の同級生の鳳鈴音(ファン・リンイン)。中国から来た奴だ。以前コイツが苛められていた所を、たまたま買い出しで外に出ていた俺が成り行きで助けたのがコイツとの付き合いの始まりで、それ以来毎日のように此処に寄って俺と駄弁っている暇人だ。

 

真月「うるせぇよちんちく鈴。つーかお前、店の手伝いやんなくていいのかよ」

 

鈴音「んなっ!?誰がちんちくりんよ!それに店の手伝いはとっくに終わらせたわよ!」

 

真月「なら女友達とでもどっか出かけろよ。此処に来るぐらいしかやる事無いの?暇なのお前?」

 

鈴音「うっさいわね!?何、私が此処に来たら悪いの!?」

 

真月「嫌、別に悪くは無いが、定食屋に来てただ駄弁ってるだけじゃつまらんだろ?」

 

鈴音「別に私はあんたと話してるのつまらないなんて思って無いわよ!」

 

何が悪かったのかは分からんが怒らせてしまった。女ってのは本当に訳分からん生き物だ。

 

弾「はあ、コイツ本当に鈍感だな・・・」

 

そう言って俺を見て溜息つく弾、俺が一体何をした。

 

 

 

真月「そういやお前ら、学校はどうよ?」

 

弾「大して変わらねぇよ。一夏のやつがドイツに行ったぐらいだ」

 

鈴音「ついでに、あの自称天才もね」

 

食器を洗いながら、俺は二人に学校の事を聞いた。

 

真月「ドイツだあ?何でまたそんなトコに行ってんの彼奴ら?家族旅行か何か?」

 

弾「違うっつの。少しはニュース見ろ。モンド・グロッソだよ。あの女が国家代表なの知ってるだろ?その応援に連れてかれたんだよ一夏は」

 

鈴音「まあ、一夏の方は多分サンドバッグにでもする為じゃないの?あの姉弟、最近一夏を甚振って無いからストレス感じてるんでしょ」

 

そう言って思いっきり嫌な顔をする二人。一夏は二人のクラスメイトで、この女尊男卑になってから更に激しくなった苛めから一夏を守っている、一夏の数少ない理解者達だ。俺も何とかしてやりたいが、学校に通って無い俺では出来る事が限られてくる。一夏を守る為にも学校には通いたいのだが、俺には戸籍が無いし、これ以上厳さんに迷惑をかけられない。

 

真月「何だ、まだ生きてたのか秋介(あのクズ)。とっとと死ねば良かったのに」

 

鈴音「それには同感ね。アイツ、私の事馴れ馴れしくも呼び捨てで呼ぶのよ!?大して話した事無いのに!?それに自分の弟である一夏を平気で屑呼ばわりするのよ!?信じられる!?」

 

弾「でもアイツ、実際天才だからなあ、勉強も出来るしスポーツ万能、おまけに容姿も良いとか、神様色々と与え過ぎだろ」

 

鈴音「幾ら容姿が良くても中身クズなんだから意味無いわよ!」

 

真月「悪かったな中身クズで」

 

鈴音「いやアンタの事じゃないわよ!?」

 

俺の言葉に鈴が鋭いツッコミを入れる。コイツ、優秀なボケがいれば良い芸人になれるな。

 

弾「つーかお前、自分の容姿良いと思ってるのか?」

 

真月「蘭の奴がいつだか言ってたからな。それに俺、昔は結構モテてたんだぜ?」

 

弾「適当な事言いやがって・・・。つーか、蘭も堕としたのかお前・・・。うちの店で修羅場とか勘弁してくれよ?」

 

真月「・・・?たまに変な事言うよなお前」

 

ちなみに蘭とは弾の妹だ。弾と同じく整ってた容姿をしていて、よく鈴と睨み合っている。恐らく、俺とナッシュみたいに、特に理由は無いが相容れない感じの関係なのだろう。

 

鈴音「ちょっと!昔はモテてたってどう言う事よ!?」

 

そう言って俺に詰め寄って来る鈴。鈴よ、何故そこでお前がキレる。やっぱ女って奴はよく分からん。

 

 

 

真月「・・・で?いつ帰んのお前?」

 

鈴音「アンタどんだけ私を帰らせたいの!?」

 

真月「注文もしないで五時間も居座られたらそりゃ帰らせたくもなるだろ」

 

鈴音「分かった、要は注文すればいいのね?弾!五反田スペシャル一つお願い!」

 

弾「へいへい、じいちゃん!五反田スペシャル一つ!」

 

鈴音「これで文句無いわね!」

 

真月「客に文句言える訳ねぇだろ。それで、何で残るんだ?もうじき夕飯だろ?」

 

鈴音「あんた、新聞とか見ないの?今日はモンド・グロッソの決勝がある日よ」

 

モンド・グロッソ。それはIS操縦者の世界最強を決める大会で、昔のオリンピックの様なものだ。過去に一回開催されており、その時はあの女、織斑千冬が優勝し、『ブリュンヒルデ』の称号を手にしていた。それ以来、あの女は世の女性達の憧れの的になり、その一方であの女を姉に持つ一夏への苛めは激しくなった。世の人間は一夏の事を『織斑千冬の顔に泥を塗る屑』であるという認識をしたのだ。

 

真月「俺としては、あの女には惨敗して欲しいんだがな」

 

鈴音「それに激しく同意するわ。でもアイツ、人間辞めてるって言っても過言じゃないくらい強いのよねぇ」

 

弾「俺も負けて欲しいと思うぜ。アイツがまた優勝したら一夏が更に酷い目に遭いそうだからな」

 

真月「そうなんだよなぁ。でも負けても一夏に被害が来そうだし、どうすればいいんですかねぇ?」

 

鈴音「まあそれは一夏が帰ってきてから考えましょ。それより、そろそろ試合が始まるわよ」

 

弾「みたいだな。確か相手はイタリアだったっけ?」

 

そう言って俺達はテレビに注目した。あの女が使っているISは『暮桜』と言って、相手のバリアを無効にするとかいう能力を使って刀一本で今まで戦ってきたらしい。とゆーか、刀だけしか積んでないとか、あのIS酷過ぎだろ。対するイタリアの代表の機体は『テンペスタ』とかいう奴で、結構強いらしい。

 

真月「お、始まったぞ」

 

始めに動いたのはイタリアの代表だった。あの女から距離を取り、弾幕を張っていく。対するあの女は弾幕の中を猛スピードで突っ切ってテンペスタの懐に入り込み斬撃を繰り出す。

 

弾「あちゃー、もう決着ついたか」

 

真月「アホ、よく見ろ」

 

斬撃が当たる瞬間にテンペスタはグレネードをあの女の刀にぶつけて爆破、その爆風を利用して大きく距離をとった。

 

鈴音「何よアレ!?無茶苦茶じゃない!?」

 

真月「いやあの場じゃアレが最適解だ。アイツの刀は一撃必殺だからな。アレ食らうぐらいならグレネード使ってでも避けた方がマシだ。そういう判断を瞬時に出来るあたり流石は国家代表、肩書きに恥じない腕前だ」

 

弾「何でお前はちょっと上から目線なんだよ」

 

真月「実際上だからな。仮に戦っても負けない自信がある」

 

鈴音「一体何処からそんな自信が来るのよ・・・?」

 

真月「そんな事より、また戦局が動くぞ」

 

そんな感じで俺達が駄弁っている間に、先程まで拮抗状態だったあの女とイタリア代表の戦いはクライマックスを迎えつつあった。

 

相手との絶妙な距離を保ち、あの女に一切攻撃をさせなかったイタリア代表だが、ここで体力の限界が来た。弾薬の交換の際にミスを犯し、一瞬弾幕が緩んでしまった。

 

その瞬間をあの女は見逃さず、一気に加速して間合いに入り、イタリア代表を一閃した。

 

『テンペスタ、シールドエネルギーエンプティ!よって勝者、織斑千冬!』

 

そう言ったアナウンスが響き、その直後耳がおかしくなりそうなぐらい歓声が響き渡った。

 

鈴音「ああー、惜しい!もうちょっとだったのに!」

 

弾「実際、イタリアの代表の弾幕が緩まなかったら勝ってたよな今の試合」

 

真月「ああ、結局勝敗を分けたのは体力の差。まあ、あの女より体力が多い奴なんてそう居ないけどな」

 

鈴音「それにしてもこれで二連覇。あの自称天才、更に調子に乗るわよね・・・」

 

弾「ついでに一夏への苛めも酷くなるんだろうなぁ」

 

真月「ま、どうなろうが俺達のやる事は変わらない。これからも一夏を助けてくだけだ」

 

そう言った次の瞬間、信じ難いニュースが報道された。

 

『緊急速報です!ドイツ、モンド・グロッソ会場付近で、反ISを掲げるテロリスト集団レジスタンスによる爆破テロが発生!死傷者の数はまだ確認できていませんが、現在判明している中では、ブリュンヒルデ織斑千冬選手の弟である織斑一夏君が行方不明との事です!』

 

弾「はあぁ!?」

 

鈴音「嘘でしょ!?」

 

真月「マジか!?」

 

 

 

 

 

一夏の行方不明、その事実は、俺達の心を乱すには十分過ぎるものだった。

 

 

 

 




次回予告

Ⅳ「親友である一夏の行方不明に激しく動揺するベクター達。そして当の一夏はその直前ある場所に誘拐されていた」
「どうやら、あなたの家族はあなたのような出来損ないの命なんてどうでもいいみたいね」
Ⅳ「実の家族に見放され、絶望する一夏。彼を救ったのは一人の青年だった」
次回、インフィニットバリアンズ
ep.9 絶望を振り払う銀河の眼
Ⅳ「ところで凌牙、いつになったらⅤは働いてくれるんだろうな・・・」
ナッシュ「こっちまで悲しくなるからやめろぉ!?」

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