東方神殺伝~八雲紫の師~【リメイク】   作:十六夜やと

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 最初のコラボはホワイト・ラム先生の『東方生迷伝』です。
 このようなノリでコラボします(`・ω・´)ゞ


混章 神殺の居酒屋~一周年コラボ回~
一話 東方生迷伝


 この幻想郷の人里にある、ある店には不思議な客が来る。

 

 

 

 紫苑は諸事情からその店の店主に店番をお願いされた。店主には常日頃お世話になっているので。

 店を任されるとき、店主から妙な話を聞かされる。

 

「――は? 変な客が来ることがある?」

 

「時々ね。人里では見かけたことのない客が、夜に来ることがあるんだよ。紫苑ちゃんなら何かされる心配もないし、ちゃんと金を払って帰ってくれるから心配ないんだけど……」

 

「おばちゃん、『ちゃん』付けは止めてくれ……」

 

 そんなこんなで紫苑は夜の居酒屋を任されることに。

 料理を作るのは慣れてるから心配ないとして、問題は『時折来る見慣れない客』。被害を被ったという話は聞かない上、変でも客は客だからと黒髪の少年対応することになった。

 

 ――少年は知らなかった。

 その店の扉は夜零時に空間そのものが捻じ曲がることを。

 とある悪戯好きの存在により、現在過去未来、あらゆる時空・次元の客が迷い込んでしまうことを。

 

 

 お披露目するは一夜限りの邂逅。

 交わるはずのなかった物語の主人公との出会い。

 その出会いは偶然か必然か。

 

 

 今宵、店の扉は開かれる。

 短い出会いの中、あなたは何を得る?

 ほら、扉を開けたその先には――

 

 

 

 

「――いらっしゃい、お客さん」

 

 

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

「ふぅ……こんな感じでいいかね?」

 

 戸棚に酒を並べながら自己満足する俺。

 居酒屋だからこそ酒を表に出すのは基本中の基本だろうし、客が『あの酒にしてくれ』と指名もしやすい。我ながら何というアイデアなのだろうか。

 店内には人がいないからこそ整理できたのだが……こんな時間に来る客なんざ少数だろう。おばちゃんに任されたとはいえ、閉店二時は遅すぎはしないか? やることもないのでスマホからBGMを流しつつ、カウンター辺りを掃除する。

 

 そこで俺は『時折来る変な客』の言葉を思い出す。

 人里では見たこともないような人妖が店を訪れる……それの犯人にめっちゃ心当たりがあるのだが、今は文句を言えるような場所じゃないので割愛する。

 アイツなら紫の作った幻想郷に悪影響を及ぼすような奴を呼び込むとは思えないし、来るとしても俺が難なく制圧できる類しか迷い込ませない……はず。こればかりは暗闇の脳ミソ掻っ捌かない限り分からない上、んなことできるはずもない。

 まぁ、今日も変な客は来なかった。いやー、幻想郷は今日も平和でしたな――

 

 なんて思っているとカランカランと扉の開く際に鳴る竹製の板が店内に響く。

 入ってきたのは――なんだか白狼を彷彿させる少女? 若干髪に黒色が見え、その彼女は店に飲みに来たというよりも何かから逃げて来た雰囲気を察知する。

 白狼の少女は店内をきょろきょろと見渡し不思議そうな表情を浮かべた。

 

「あれ? ここは……」

 

「いらっしゃい、お客さん」

 

 ふむ、これが『時折来る変な客』か。

 あん野郎一切の同意もなしに連れて来やがったな、という感情は表に出さず、カウンター席に水とおしぼりを置いて着席を促す。その反応に白狼の彼女は驚いたように声をかけてきた。

 

「えっと……さっきまで借金取りに追われてて、それで……」

 

「でもその借金取りとやらは入ってこないが、なんかの間違いじゃないのか? まぁ、どうせ居酒屋に入ってきたんだ。何かの縁だろう。その()()()()()()()()()()()で何か注文したらどうだ?」

 

 何言ってんだコイツと言いたげな表情を浮かべた彼女は、ポケットをまさぐって身に覚えのない金を取りだしながら驚愕の顔色を映し出す。俺も昔に暗闇からやられた金銭渡しの手口で、この奇妙な現象があのアホの犯行だということが証明された瞬間である。

 そのことを知らない彼女は、とりあえず場の雰囲気を読んで椅子に座る。

 そうそう、アレに巻き込まれたんなら諦めが肝心だぜ?

 

「ほれ、注文票だ。好きなものを頼むといい」

 

「……じゃあ、この焼き鳥と日本酒で」

 

 残り僅かな串に刺さった生肉を炭火で炙りながら、後方にある酒を手に取った。

 この様子を眺めていたのか、白狼の少女から声をかけられる。

 

「おにぃさん、ボクが白狼天狗の()()だって知ってるよね? 怖くないのかなぁ?」

 

「幻想郷で妖怪なんざ掃いて捨てるほど生息してるだろ? いちいち驚いてたらキリがないと思わないか?」

 

「そういう意味で言ったわけじゃないんだけど……まぁ、いいや」

 

 振り返ると呆れ顔のお客さんの姿が。

 俺はグラスを彼女の前に置いて、日本酒を程よい量まで注いだ。

 彼女は酒を注ぐ俺を眺めながら、人懐っこくも裏がありそうな感じで、フレンドリーに話しかけてくる。

 

「ボクの名前は狗灰(ですく)。おにぃさんの名前は?」

 

「夜刀神紫苑だが……机とはまぁ不思議な名前だなぁ」

 

 そうかそうかと含みのある笑顔に、俺は元の街で住んでいた時に交流のあった『切裂き魔』と『詐欺師』を足して二で割ったような妖怪――という印象を受けた。喋り方が切裂き魔のイントネーションに近く、雰囲気があの胡散臭い詐欺師を彷彿させるのだ。

 あの二人よりは可愛いけれどね。あれと一緒にしたら目の前の机ちゃんが可哀そうだ。

 

 塩胡椒を焼き鳥に振りかけて裏返す。

 

「話は変わるけどおにぃさん、君はギャンブルとかに興味はないかなぁ?」

 

「ギャンブル、ねぇ……あんまり好んで賭け事はしたことないぞ。いや、環境的にはそういう施設があったのは否定できないけど、好きでもないし嫌いでもないってのが答えかな」

 

「それまたどうして?」

 

 思い出すのは街にあったカジノ。

 そこそこ大きな賭博場であり、一度だけ詐欺師の野郎に連れられて入ったことがある。スロットにルーレット、ポーカーなどのゲームは面白かったもんだ。特に詐欺師のイカサマなどは注意深く観察しても見破ることが出来ず、驚きを通り越して呆れたのはいい思い出。

 ニヤニヤと笑みを浮かべる机ちゃんを尻目に、俺は苦笑いを浮かべながら出来上がった焼き鳥を彼女の前に置き、質問に答えた。

 

 

 

 

 

「俺、賭け事で負けたことが少ないんだよ」

 

 

 

 

 

 カジノの施設すべてのコンテンツを総なめにして出禁を喰らったくらい、俺は賭け事と称する物に負けたことが限りなく少ないのだ。それこそイカサマ込みの詐欺師や暗闇ぐらいにしか負けたことがなく、金銭は無論のこと、駄菓子一個でも賭けたりすると勝率がおかしな値になる。

 というか昔から『賭け事』――勝敗を決めるものに関しては、妙に運が回ってくることが多い。

 麻雀で四槓子(出現率0.00003%)の役を4回連続で出した時は不正を疑われた過去がある。

 

 能力の元ネタの神様のせいなのか、それ以外の要因が俺にあるのか。

 こうなると賭け事など容易に行えるものではなく、ギャンブルは好きになれない。

 

「……そうなんだぁ、じゃあさ、ここにトランプがあるんだけどポーカーでも少ししてみない?」

 

 という説明をしたにも関わらず、むしろ燃えてしまったのか机ちゃんは自分の懐からトランプを取りだしてシャッフルし始める。トランプ常備しているとは……もしかしてギャンブラーなのかな?

 カウンターに乗り出すように彼女と対峙する俺は、接客中でも他に誰もいないのでポーカーに乗ることにした。俺と机ちゃんは各々トランプの山からカードを5枚めくり、俺は適当に手札の4枚を捨てて、同じ枚数をカードの山からドローす……あ、うん。はい。

 

「ボクはツーペアだよぉ? 君は?」

 

「……ファイブカード」

 

「はぁ!?」

 

 各模様の『K』と記されたカードと『joker』のカードを彼女に見せる。

 もちろん俺は彼女が持っていたトランプに細工もしていないし、この体勢だとイカサマを仕込むこともできないだろう。……俺の体質そのものがイカサマのような気がするが、こればかりはオンオフ切り替えられないからどーしようもないぞ。

 一方で唖然としていた彼女は、ポーカーフェイスを装う。

 

「さ、最初からおにぃさんは運がいいなぁ。で、でもその運、どこまで続くかな?」

 

「動揺し過ぎじゃね?」

 

 そこから始まるカードゲーム。

 結果は……一方的なものだった。

 

「スリーペア!」

 

「俺は……っと、フルハウスやね」

 

 一方的なものだった。

 

「フォーカード……これなら!」

 

「ストレートフラーッシュ」

 

 本当に一方的なものだった。

 

「どうだ、ストレートフラッシュ!」

 

「おー、ロイヤルストレートフラッシュじゃん。狙ってみたけど案外揃うもんだね」

 

「イカサマまでしたのに!」

 

「うん。見てた」

 

 何百戦したのだろうか。

 机ちゃんは定期的に強い手札をドヤ顔で見せて来たり、イカサマを混ぜてまで勝とうと躍起になっていたのだが、俺の体質は敗北を許さないらしく、終始一徹彼女の上をいく手札を引き寄せた。

 イカサマも敢えて見逃していし、途中から俺の持ってるトランプを使っていたのだが……ここまでくるとクソゲーである。

 俺のギャンブルが好きになれない理由を理解できただろうか?

 

 最後の勝負途中でカウンターで項垂れる彼女に詫びの焼き鳥を追加して出す俺。

 仏頂面でそれを咀嚼する机ちゃん。

 

「……美味しい」

 

「そりゃよかった」

 

 納得いかない……と言いたげな彼女を尻目に、俺は時計の時刻を確認する。

 おいおい、俺達一時間もポーカーやってたのかよ。

 

「っと、お客さん。そろそろ閉店時間だ」

 

「……次は負けないよ!」

 

 お金をカウンターに置いた白狼の少女は、なんか負け惜しみを込めて捨て台詞を吐いた後、走って店を出ていった。おそらく――自分の居た世界に戻ったんだろうよ。

 俺は肩をすくめながらカウンターの食器を片付けようとする。

 

「やれやれ、負けず嫌いな娘だった……」

 

 片付けようと最後の食器を手にしたところで、カウンター散らばっていた最後のカードに目を通す。結局のところ両方が疲れていて確認していなかったのだが、手に取ってみる。

 手札は……ジョーカー込みのフォーカード。

 基本的には良い手札なのだが、後半からロイヤルストレートフラッシュを連発していた俺相手には厳しい手札とも言えよう。俺に確立なんて通用しない。

 

 苦笑いして、ふと思い出す。

 あれ? 俺の最後の手札ってフルハウスじゃなかったけ?

 つまり――え、俺負けた?

 

「……ふふふははははははははははっっっ!!」

 

 誰もいない店内で不思議と笑い声が出る。

 ぶっちゃけ彼女の能力は、万能ではないが運を操作する類の能力であったと推測する。この手札にイカサマを用いられた可能性もあるが、後半は諦めの境地にあった彼女がイカサマをしていたとは思えない。

 要するに……そういうことだ。

 

「いやぁ、本当に面白い」

 

 狗灰机、だったか。

 ちょっと犬じみた、可愛らしい白狼の少女を思い浮かべて微笑むのだった。

 

 

 

 

 

「次は……負けねぇぞ?」

 

 

 

 




【名前】狗灰 机(ですく)
    (自称)次世代型白狼天狗
【年齢】100歳程度(本人は気にしていないから不明)
【能力】運を操る程度の能力。無限に運が良くなる訳ではない、むしろ運が良くなるとその後ほぼ同じ量の不運もやってくる。だが、不運を受けるとその後ほぼ同じ量の幸運がやってく。イメージとしては使い勝手の悪いレミリア+早苗の完全下位交換。
【性格】基本だらっとしたいい加減な性格。刹那主義的にその場を楽しむ性格。
【主人公と話したいこと】何かしらのテーブルゲームをさせたい。ギャンブル系のゲームが好きなので、相手をさせてくれると嬉しいです。
【食いたいもの】肉類、焼き鳥が良いですね。

 とのことでした。

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