カルパンデス
帝side
思考は目の前に広がる星の海のように広く深く落ちていた
その考えは、最早掌返しと言ってもいいほどに今までの俺の思いからは矛盾していた
「……ハァ……どうにも、アイツの行動理由はもっと別にあるように見えるが、根拠が分からない以上は何とも言えんか……」
自問自答を繰り返しながら、再び
「まぁ、このまま考えても埒が明かないか」
俺からすればアイツは悪だ。それでもアイツは恐らく自分の行為を善……正義と考えているだろう。もしその行動理念が己の為でなく誰かの為のものであるとすれば……
俺の耳には自分の声が届いていなかったらしい
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「よし、もういいぞ帝」
アザゼルは計測を終え、透明な扉を開けた
「やっと終わったか……」
体中に貼り付けられた計測器を外した
最初は冷たくひんやりとして心地よかったそれも、膨大な熱を帯びていた
「あづっ!?……火傷した……」
「おいおい大丈夫かよ……どうしたんだ?いつもは自分から外したりしねぇ癖に」
「いや、なんだか胸騒ぎというか嫌な予感というかな……で、それで?覇煌龍と禁手第二段階の同時併用の調子は?」
「おう、同調率98%だ。後は維持に必要な魔力と体力だが、正直魔力はそうでもないだろ。別に戦闘に使う分には構わんが、それは奥の手にして短期決戦で望め。長引けば長引く程お前の不利になる。最悪体が耐えきれずに身体の機能を無くすからな」
「わかってるよ、それぐらい。それより早く体力剤くれ……スゲー疲れてんだよ……」
「おっと、そうだったな。ほらよ、グリゴリ印の疲労回復剤入りの体力回復剤だ」
「……大丈夫だよなこれ……?前みたいに精力剤入れてないよな?」
「ん?入れてるが?」
「よし一発殴らせろ」
殴るという言葉とは一切関係ない剣を取り出した
「わ、わかったわかった!わかったからその剣を降ろせ!異形殺しの概念が付いた剣で切られたらいくら俺でも死ぬからな」
「え?死ねばいいじゃん。どうせ生きてても面倒事しか起こさないくせに」
「おいテメェこの状況でそれを言うか!?俺だって多少は役に立ってるだろ!」
あっけらかんと答える俺にアザゼルは猛反撃した
「ふーん、例えば?あ、これは無しで」
「ち、ちびちびマシーン一号君とか……」
「アレのどこが役に立つんだ!?ええ!?言ってみ!」
「ほ、ほら使えるだろ?そういうプレイとかに……」
「使えるかバカヤロォォォォ!!!!……他には……?」
「精力剤とか……」
「アホかっ!」
「***とか……」
「誰か規制掛けろぉぉぉぉ!!!!」
「全自動性欲処理機とか……」
「なんだそれ!?初めて聞いたわ!?」
「腕相撲に勝てる神器とか……」
「これに至っては論外ッ!」
「あとは……」
「もういい、わかった……」
まだ続けようとするアザゼルの言葉を手を出して遮った
「…………お前下半身に関わるモノしか作ってないな!?
最後に至っては使う用途がねえだろ!?さっき言ってたのは嘘か!?なんか言えよこの脳内ドピンク万年発情期未婚総督!!!!
|閃光と暗黒の龍絶刀《ブレイザーシャイニング・オア・ダークネスサムライブレード》総督!!!!」
女の尻揉んで堕天したというのは伊達じゃないね!堕天使だけに
「オイそれどこで知りやがったぁぁぁぁ!!!!」
「企業秘密じゃぁぁぁぁ!!!!って突っ込むとこそこぉ!!??」
ゼェゼェハァハァと互いに切らした荒い息を整える
「アザゼル、これ以上やっても不毛な言い争いだと俺は思うんだが……」
「よ、よし、ここは一時休戦だ……」
「ああ、そうしよう……」
アザゼルから受け取った体力回復剤を原液で飲んだ。しかし、普段は発動しない俺のうっかりが発動した
「…………」
下半身に膨大な熱を感じ、思わず前屈みとなった
「……どうした……まさか飲んだのか……?」
「……………………そのまさかだ……………………」
認識阻害の魔方陣を即座に下半身に組み込み、俺以外の人物からは見えないようにした
アザゼルは見たくもないものを見てしまったというような表情だった
「お前のって結構でかいのな……」
「言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「ぐわぶぅっ!?」
アザゼルの顔を殴り飛ばして、目元に腕を当ててその場から逃亡した
あれ、なんだろう……人殺しして怖くなってその場から逃げ出した犯人みたいな心境……
程なくして居間にたどり着いた
はい、ここで問題です。居間には上気した表情の女性陣の方々がいます。近くにはリアス、美優、ジャンヌがいます。この後俺はどうなるでしょう
A.捕まります
「あ、エミル~ちょっとこっち来てぇ~」
リアスは俺の手首を掴み
「ほら、エミルくん早くぅ、無くなっちゃいますよぉ?」
ジャンヌは腕に抱き付き
「お兄ちゃんも一緒に食べよぅよぉ、美味しいよぉ?」
美優は俺の背後から抱きつく
おい待て!?美優お前いつの間にバックとりやがった!?全然気づかなかったんだけど!?
「アハハハハハ!ちきしょぅ!離れるぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
勿論俺は抵抗した。だってね……ぼくのつるぎがかたくなってるんだもの……知られるわけにはいかないっ!!というか最早痛いっ!!
しがみついてきたやつらからは、微かにアルコールの匂いが漂っていた
「まさかお前ら、来客用のウィスキーボンボン食ったな!?畜生やってられるか!去らばでござるっドロン!」
ここで炸裂したのは俺の新技、シャドウダイヴである
補足説明をすると、自信の体内で形成した闇の魔力を影として表面に出し、瞬間的に自分の体を影とする技である
魔力消費も少なく、回避には結構重宝できるので、これから先お世話になるかも
まぁ弱点らしい弱点と言えば光や聖なる力には弱いってところなんだけど……っていうか影がない場所だと使えない……あれ?結構致命的な弱点が多い……?
そんなこんなで拘束から逃れた俺は現在キャスタニエ邸を疾走中
眼前から迫る朱乃さんを壁キックで回避
後で壁の汚れは落としとくとして、追っ手からの視界から外れた俺は、近場の部屋に潜伏させていただくことにした
あ、ここってアルトリアさんの部屋じゃねぇか……
退散しようとドアノブに手をかけると同時に、俺の手首を何者かが掴んだ
「ふふふ、どこに行こうというのですか?マスター」
部屋の照明がつくと同時に暗闇から浮かび上がったのは、満面の笑みでニコニコと笑うアルトリアさんだった
その目は、まるで獲物を見つけた獅子のようだ。……いや訂正。獅子である
「……僅かながらに漂う逞しい雄の匂い……もしかしなくても……マスター、私でよければお相手しますが……?」
「結構ですっ!!!!」
シャドウダイヴの応用で今度は肘から先の腕だけを影とし、微かに空いたドアの隙間から、体を影にして通り抜け、廊下を駆け抜ける
【アハハハハ!もう死んじゃえよミカド!】
「う、うるさい黙れぇ!今捕まったら本気で死ぬからぁ!!」
【ご主人様ご主人様ぁ~ボクでよかったらーー】
「結・構・デス!!!!」
【…………もう諦めて捕まっちまえよ、ミカド…………】
「ゼフィぃぃぃぃ!?さっきの話聞いてたかぁ!?捕まったら俺死ぬから!!あの人達明らか獣の目してたから!!皆さん頭のネジぶっ壊れてるから!!腹上死とか笑えないから!!俺は諦めんぞ!!絶対!!何があろうと!!」
【女の子には勝てなかったよ♪】
「何処の即落ち2コマだぁぁぁぁ!!!!楽しげに言うなシエル!マジで現実になったらどうする気だ!!!!」
心の声で喋れるがそれをできないくらいの焦りっぷり……わかります?
全力疾走の末、とうとう自分の部屋にたどり着いた
「よ、よぉし、鍵かけてっと……」
腕で汗を拭い、ガチャリと音が鳴ったのを確認して前を見ると、あらビックリ、目前には邪ンヌちゃんがいるではありませんか
じゃぁ何、あれか?焦りすぎて邪ンヌの部屋と俺の部屋を間違えたと?……あり得るね。一応お隣の部屋なわけだし、疲れで距離感覚が麻痺ってきてるのもあるだろうし
「……………………なんでアンタ来てんのよ……………………」
「えっと……………………」
どうすべきか脳をフル回転させ、悩みに悩んだ末導き出したのは…………
「お願いします邪ンヌ様、どうかこの私めを暫しの間匿ってくださいませ」
端から見ればキレイな土下座だろう?惚れ惚れするぜ
あん?男のプライド?……なんだねそれは(錯乱
To be continued.
お、遅くなったのも全部ギャレッドってヤツと夏休みの課題ってヤツの所為なんだ……
そう言えばもうすぐ一周年なんだよなー……誰かお祝いしてくれないかなー……(/ω・\)チラッ