-10年前-
帝(過)「うわぁぁぁぁぁぁん!!!!ちょっと待ってコレ無理ゲーだろぉぉぉぉぉ!!!!っつか何この数!鬼畜仕様にも程があるだろうが!俺そんな被虐趣味じゃないから!どっちかと言えば加虐趣味だから!」
そう言って叫んで、アホ毛をぴょこぴょこと動かし、涙目で魔物の群れから逃げるのは、まだ髪が金髪だった時の幼い俺。
今思うととんでもない性癖暴露って待て待て待て!ちょっと何メモしてんのかなぁ君たち!?んな恥ずかしいこと覚えないでいいから!……え?いやいやいや、俺が満足できるように頑張るってお前……頑張るとこ間違ってるからな!?別んとこで頑張ってくれよ!!
えっとどこまで行ってたか……あ、そうだそうだ、特にこの時は地道に体とか鍛えてたりしてただけだし面白味のない場面ばっかだから2年後までカットで。
で、その2年後のある日だ。どこかは忘れたが、山の獣道を歩いてると小さな女の子が倒れていた。まぁこれがまさか俺が守れなかった人達との初めての邂逅になるとは当時の俺は想像もしなかったわけだが。
帝(過)「だ、大丈夫か!?」
?「はい……なん……とか……」
帝(過)「帰り道はわかる?なんなら送ってくけど……?」
?「えっと……じゃぁ少しだけ、お言葉に甘えさせていただきます……」
と、その瞬間だった。背後から地に響くような轟音が聞こえてきた。地響きもそれに伴って起こり、段々とこちらに近づいくるかのように激しくなっていた。
帝(過)「……はぁ、どうしてここまで運が悪いんですかね、俺は……」
巻き込まれないようにとっととその場から俺は逃げ出した。
帝(過)「あっ、ちょっと待って!?案外早いんだけど!?」
……この時はよく逃げ切れたよ……。
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帝(過)「ゼェ……ハァ……ゼェ……ハァ……マジ巫山戯んな……!少しは空気読めってんだよ……!」
?「えっとまぁ……お疲れ様。それとありがとう、シエルをここまで運んでくれて」
そう言うのは、緑髪赤目の少年、俺の頼れる兄貴分(笑)の、ゼフィリム・ヴェルデヴェルデュ。
?「姉ちゃーん、大丈夫ー?死んでないよね?」
俺が運んだ、床で横になっている金髪の少女、シエル・エスターニャと、彼女の頬をペチペチと叩く赤茶の髪と金目の少年、ルアン・エスターニャ。
帝「う、うん、多分死んではいないよ。それはそうと俺も自己紹介をしてなかったね。俺は皇 帝って言うんだ。気安く帝って呼んでよ」
ゼフィ「ああ、こちらからもぜひお願いするよ、ミカド」
とまぁ、そこから俺らの関係は始まっていった。そこからの生活は本当に楽しいものだった。
ゼフィ「ミカドミカド、アイスに醤油かけてみなよ!プリンの味になるぞ!」
帝(過)「へぇ、どれどれ……ブフゥァッ!?まっず!?お前嘘吐くんじゃねぇよ!」
ある時は弄られて……
シエル「はいミカド、喉乾いたでしょ?」
帝(過)「おぅ、牛乳か。……ブベァッ!?ぎ、牛乳に炭酸とは……貴様、計ったな……!」
またある時は弄られて……
ルアン「はいミカド!キンキンに冷えたコーラだよ!」
帝(過)「サンキュ、ルアン……ゴホッ!?ゲホッゲホッ!み、水で薄めた醤油じゃねぇかコレ!」
はたまたある時は……ってちょっと待てぇ!?俺の思い出は弄られたことだけか!?
あー、まぁとにかく、そんなある日だった。
ハイマと呼ばれる山の隣の山の頂上で、大の字に寝そべって夜の空をを見上げていた最中だった。
ゼフィ「ミカド、君は何のために強くなりたいんだ?」
帝(過)「みんなが話してくれたら俺も話すよ。」
ゼフィ「うーん……俺はさ、正体を隠して、メルトキオの王様直属の騎士団の軍師になりたいんだ」
ゼフィには似合う役柄だった。でも一つ疑問に思うことが。
帝(過)「ん?何で正体を隠す必要があるんだ?」
ゼフィ「……俺、本当は貴族なんだ。ヴェルデヴェルデュ家のご子息様ってやつ。正体がバレちゃうとさ、家の親が五月蝿いんだ。何かある度に貴族たるもの貴族たるものって。鬱陶しいったらありゃしない。そんな生活が嫌で、家を飛び出して今に至るって感じ」
帝(過)「へぇー、そーなんだ。シエルは?」
シエル「わ、私!?うん……その……ね?私さ、一族の中では結構罵られててね。ハーフだから、人間の血が混じってるからってだけで。だからどうにかして一族のバカちん達に私を認めさせたかったの。それで行き着いた先が強くなるってこと」
帝(過)「ルアンはどうなんだ?」
ルアン「んー僕は姉ちゃんと同じかな。何とかしてあのおバカちゃん達に僕の存在を認めさせたい。ハーフだからってなんだ、お前達よりよっぽど凄いんだぞーって。そう言うミカドはどうなのさ?」
その時の問いには少し戸惑ってしまった。皆は強くなる理由がしっかりあったのに、俺にはなかったからだ。
帝(過)「俺は……そうだな……うん、そうだな……」
でも、答えを出すには、そう時間はかからなかった。
帝(過)「……護る人になりたい……自分の手の届く範囲で、家族や、友達や、仲間の幸せを護る人に、俺はなりたい……」
この4人で過ごした日々は何物にも代え難いかけがえのないものだったんだ。
当然、俺はその中でゼフィ達と一緒に、自分の強さを共に高めていった。今俺が使っている神淵剣の操作だって、千刃奥義だって、その中で得た技、技術だったりするんだ。
でも、そんな幸せは突如として崩された。
それから5年後のある日のこと、俺の首の痣が奇妙に光った。その時だ、俺の悪夢を知らせる鐘が鳴ったのは……
ある神が作り出した、絶対悪に最も近い存在、魔神王ヴェルフリートが現れたのは。
とはいえそいつは分霊、言わばヴェルフリートの分身体だ。それでも俺はなす術もなく奴にボロボロにされていった。
そして突然、ヴェルフリートはゼフィ達に向かって解析し難い言語を話した。
瞬間、ゼフィ達は苦しみ始めた。
ヴェル「クハハハハハハハハハ!!!!残念だったな奴隷よ!貴様の友には魔力暴走の呪いを掛けた!後数時間でこの世界の三分の一は消えるであろう!クフッ!クハッ!フハハハハハハハハハハハ!!!!」
その時、俺の何かが切れた。今思えば、これが
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気が付けば、俺は上半身裸の状態。辺り一面は荒れた土地が広がっていた。
ヴェルフリートの姿は既になく、いるのは起きた俺をボロボロの状態で見るゼフィ、シエル、ルアンの3人。
ゼフィ「ハァ……ハァ……やっと起きたんだ、ミカド……」
ルアン「全く……少しは僕らの……ことぐらい考えて……よね……」
シエル「……………………」
そして俺は気が付いた。自分が暴走して、ゼフィ達を傷つけたのだと。それを知ると共に、顔から血の気が引いていっていたのを俺はまだ覚えている。
帝(過)「あ……あぁ……ああぁ……!!!!」
ゼフィ「丁度いいかな……ミカド……落ち着いて聞いてくれよ……」
シエル「さっきのあなたと似た人物は……私達に……呪いを掛けていったの……」
ルアン「僕らがかけられた呪いは魔力暴走……僕らの魔力はかなり高い……それが同じ場所で三つ爆発したら……ミカドならわかるでしょ……?」
この時に俺は察した。ゼフィ達が何を思っているのか。何を言おうとしているのかを。
その瞬間、既に出ていた俺の涙は、さらに止めどなく溢れた。
言わないで……それ以上はもう言わないでくれ……!
声に出そうとも叶わなかった。声に出せなかった。
ゼフィ「だからミカド……俺達を……」
ルアン「世界を危機に陥れるくらいなら……いっそのこと僕らを……」
シエル「世界を救うためだと思って……私達を……」
3人『殺して(くれ)!!!』
嫌だ……嫌だ……!嫌だ……!!嫌だ……!!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!!!!!
嫌だの一点張り。俺の頭はただ現実を拒絶していた。
わかっている。わかってはいる。でも、俺の心がそれを許さなかった。
もう何をどう信じていいかもわからず、いつの間にか、俺はゼフィ達の首を斬っていた。その時、ゼフィ達の顔が穏やかだったのは見間違いではなかったと思う。
帝(過)「……ぁ……ぁぁ……ああ……ぅあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そのあとは……喉が潰れるまで泣き叫んだ。いや……喉が潰れてもまだ泣き叫んでいたかもしれない。
俺がやったことに、理解が追いつかなかった。理解したくなかった。ずっと共に過ごした、家族と言っても差し支えない友人達を殺したんだ。もしかしたら、俺の体だけはゼフィ達の言うことに従ったんじゃないかって今はそう思ってる。
正直、そこから向こう1年半の記憶はない。多分考えるのを恐れて、思考を放棄していたんだと思う。ただ少し覚えているのは、俺がどこの誰ともわからないやつに見つかったこと、そして監獄に1年ぶち込まれたことくらい。多分記憶を無くしたのは、その1年の間に過去を否定し続けたせいだと思う。
釈放された後は、ただ宛もなく彷徨った。多分そん時はあんまり感情を感じていなかったと思う。
暫く彷徨って、ある日だったかな。俺はレイソルさんとラナさんに出会った。そこから、俺の、再び世界を救う戦いが始まった。
To be continued.